ジョブローテーション制度とは?メリット・デメリットを把握して制度設計することが重要

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ジョブローテーションとは

従業員の能力開発のために“定期的な異動や職務変更”を行うこと

ジョブローテーションとは、従業員の能力開発のために計画に基づいて「定期的な異動や職務変更を行うこと」です。新卒一括採用や終身雇用などが深く根づいた日本の雇用制度と相性がよく、特に大手企業でよくみられます。

対象となる期間

対象者と目的によって期間が異なり、新入社員の職務適性を見極めることを目的とする場合は3〜6ヶ月間ほど、幹部候補人材に幅広い知識・スキルを身につけることを目的とする場合は1〜3年間ほどの期間が一般的です。 後者の場合、10年ほどの間に3年前後の職務を3~4種類行うことが多く見られます。そこで得た広い知見と人間関係を活かして、その後の会社の中心になることが期待されています。

ジョブローテーションがすすんだ背景

背景として、終身雇用が中心の日本では10年以上の長期スパンでの勤務を前提に採用・育成計画を立てていたことがあげられます。多くの領域で経験を積んだ幹部人材を自社内で育てるために、数年ごとに様々な部署を経験させるのが有効でした。 一方で、部署や職種数に限りのある中小企業や、中途採用の多いベンチャー企業、また雇用体系の異なる欧米ではあまり見られない制度です。
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ジョブローテーション制度の目的

大きくは、長期的な視点による社員の能力開発が目的となりますが、新入社員を対象とするのか幹部候補人材を対象にするのかで、やや意味合いが変わります。

新入社員の場合

新卒入社間もない社員に対してはまず、適性を判断するために用いられます。新卒採用では経験やスキルよりも、今後の成長可能性(ポテンシャル)を重視して選考を行うことが多いのが現状です。 そのため企業側は新入社員の性格やスキルを正確に把握できていないことがあり、他方の新入社員も自分に適した職種を理解していないことがほとんどです。 それぞれの適性や上司との相性に応じた職種を見つけ出すために、いくつかの部署を3〜6ヶ月ごとの短期間でまわります。そのように時間をかけて適性を見出し、お互いが納得感を持って勤務してもらうことで、従業員の安心につながるメリットがあります。 同時に、初めの数年で複数の部署を経験することによって、会社の全体像を把握をさせることができます。社内の体制を理解したり多くの部署でつながりを作ったりすることは、その後の仕事を円滑に進めていくことにプラスに作用するでしょう。

幹部候補の場合

会社を背負っていく立場が期待される中堅社員に対しては、全社を俯瞰する目線を身につけさせるためにジョブローテーションが行われます。 経営人材に必要な、企業活動を包括的な視野でみる力を養うため、1〜3年ほど時間をかけて複数の部署を巡り、ジェネラリストとして幅広いスキルの開発を目指します。

会社全体への影響、メリットとデメリット

ジョブローテーションによって従業員本人が身に着けられる能力は上述の通りですが、会社全体にとってもメリットやデメリットが生じることを認識しておく必要があります。

メリット

会社を様々な視点から横断的に見ることができるようになる

複数の視点から経験を横断的に見ることができるので、それらを組み合わせることで新たなアイデアを生み出すこともできるでしょう。会社全体の生産性向上につなげることが期待できます。

部署間のコミュニケーション活性化につながる

色々な方が部署間をローテーションすることで、風通しがよくなり、部署同士のコミュニケーションが活性化します。違う部署での経験、ノウハウを持つ方が別の部署に移ることで、新しい発見を得ることができたり、チーム全体のモチベーション向上につながるケースもあります。

業務の属人化を防ぐ

同じようなキャリア、スキルの人が長く同じチームにいることで、業務の属人化が進むことがあります。ジョブローテーション制度はそのような業務の属人化を防ぐ効果が期待できます。

新入社員の入社後のミスマッチを防ぐ

特に新入社員の場合は、適性を判断した後に配属となるため、ミスマッチを防ぎやすいというメリットがあります。また、新入社員は自分の希望や適性をきちんと把握できていないことが多くあります。 そのため、業務を経験したのちに配属されるジョブローテーション制度は好意的に捉えられ、採用ブランディングにもつながることが期待できます。

デメリット

専門性の高い人材育成につながりにくい

一定期間で業務内容が変わってしまうため、専門性の高い人材育成ができなくなってしまう恐れがあります。 10年間一貫して同じ領域で経験を積んだ人材と、10年間で3種類の業務を経験した人材では、特定の部門での専門性の差は大きく開きます。

本人の志望とミスマッチする可能性がある

メリットに記載した内容と相反しますが、逆にミスマッチを引き起こすリスクがあります。期間を限定しているとはいえ、不得意分野で業務を行うことは大きな負担となるため、ジョブローテーションを行う目的や期待する事柄、今後の期待などを事前に伝えることが必要です。

人事評価や給与決定に影響が出る

ほとんど未経験の職務を任せる場合、どう評価するのか、給与はどうなるのかなど、人事評価制度や給与決定フローについて整備が必要となります。他の従業員の不満につながるきっかけにもなるため、慎重に設計していかなければなりません。

ジョブローテーション制度の進め方

1)目的を決める

ジョブローテーションは適切に行えば大きな効果が期待できる一方、従業員からの不満を引き起こす側面も持ち合わせています。 どのような目的で行うのか、ジョブローテーションを通してどのようになってほしいのかを、対象となる従業員一人ひとりにきちんと伝えておきましょう。

2)ジョブローテーションの制度設計を行う

目的を明確にした後、その目的を達成するためにどのような制度設計が必要かを検討し、具体的な制度に落とし込みます。対象となる従業員は誰なのか、どのくらいの期間に何を身につけるのかなど、明確に設計することが重要です。 合わせて、人事評価制度や給与決定、目標管理などの関連のある制度の整備も必要となります。 ジョブローテーション制度の結果、会社や本人にどのような効果をもたらしたのか、何をもって効果があるというのかなど、経営陣などとすり合わせしておき、ジョブローテーション以外の異動や昇進などにも活用できる制度にしていくことを意識しましょう。

3)異動先の状況を理解する

ジョブローテーションの対象者は、次に担う役割を事前に把握しておくことが重要です。スムーズに業務に入り、人間関係を構築していくためには、事前の準備が重要です。 制度運用を担当する方は、異動先の部署ではどのような人がいるのか、どのような仕事をしているのか、どのような組織風土なのかを理解できるような環境を整え、対象者がスムーズに現場に馴染めるようにしていきましょう。

4)受け入れ部署への周知を行う

ジョブローテーションを行う本人はもちろんのこと、受け入れる部署からの理解を得ることも必要です。部署を超えたコミュニケーションが普段から取れている状況ができていると、スムーズにジョブローテーションの制度が進みます。

ジョブローテーション制度実施企業事例

双日株式会社

総合商社の双日社では新卒入社10年ほどの育成プログラムを組んでおり、ジョブローテーションと組み合わせることで幅広い知識やスキルを身に着けられるようなプログラムが用意されています。 また2006年から導入された社内公募制度により、それぞれの社員に合ったキャリアを選択できるようになっています。 10年という期間は長く感じますが、人材教育や組織活性化は短期間でなされるものではないため、長期的な視点をもって取り組んでいるということが分かります。

ヤマト運輸株式会社

流通大手のヤマト運輸社では、初めの1年目に顧客との最前線の現場である「宅急便センター」などで経験を積んだのち、主管支店や支社、本社などへとキャリアを積んでいくケースが多いようです。 同社は「現場主義」というキーワードを重視しており、現場での気づきが新しいサービスにつながるという考えを大事にしています。そのための制度であるという点で、目的も明確化されており、効果も高いのではないでしょうか。

三井ホーム株式会社

「工事担当から営業、その後設計担当になる」という、一見かなり異なる職種を渡り歩いているように見えるキャリアですが、インタビューでは、「設計士を目指すからこそ、営業を経験したかった」という前向きな声が上がっています。 グループ会社を持つこのような大企業では、業務の幅がとても広く、本来なら経験できない職種にも携われるメリットがあります。将来のキャリアのために、あらゆるところで学びを得ることができるという点で、ジョブローテーションがうまくまわっている例ではないでしょうか。

まとめ

これまでご紹介したように、ジョブローテーションには一定のメリットとデメリットがあります。 人材の流動化が進んだり、スペシャリストの価値が高まったりしている現在では、従来は一般的だったジョブローテーション制度を採用しない会社も増えています。そのため、社員が理解・納得したうえで様々な業務に当たれるよう、会社として工夫することが重要です。 デメリットやリスクも見極め、会社が目指す育成方針をきちんと突き詰めた上で制度を設計する必要があるでしょう。

TUNAG(ツナグ)の活用で、ジョブローテーションの土壌づくり

「ジョブローテーションの進め方」の項でご紹介したように、事前に異動先を理解したり人間関係を円滑にしておくことが、ジョブローテーションを成功させるカギの一つとなります。そのため、従業員同士がお互いを把握しやすい環境や、コミュニケーションを活性化させる環境づくりを普段から進めておくことが重要です。 『TUNAG(ツナグ)』は、エンゲージメント向上のため、あらゆる社内制度・施策のPDCAをまわすことができるサービスです。従業員同士をよく理解できる仕組み、つながりを持つ仕組みなど、会社の課題に合わせた社内施策を、TUNAG(ツナグ)のツールを活用し、専任のトレーナーが支援しながら進めることができます。 【関連導入事例】 「会社のことを見える化するだけで“助け合いの声がけ”が増えました」 他部署との距離が近くなったその理由とは
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