冠婚葬祭の会社の規定はどう定める?慶弔休暇の内容や取得日数、有休について導入の注意点をまとめました

現代の働き方改革の中で、多くの企業が取り入れている福利厚生の制度の中でも、冠婚葬祭のときの「慶弔休暇制度」です。 慶弔は「けいちょう」と読み、従業員の人生の大切な節目、例えば結婚や出産、家族の死亡などの際に休暇を与えるというものです。 慶弔休暇の規定は、従業員のライフイベントを大切することを目的として多くの企業で取り入れられています。しかし、この規定を「なんとなく」で設定しているだけでは、従業員の真のニーズに応えることは難しいでしょう。 私たちが作成した福利厚生制度30選のまとめ資料では、冠婚葬祭をはじめとした福利厚生の具体的な策を紹介しています。ご自由にダウンロードください。

慶弔休暇とは?

慶弔休暇とは

慶弔休暇(けいちょうきゅうか)とは、お祝い事である「慶事」と、お悔やみ事である「弔事」があった際に、社員が会社に対して申請できる休暇のことを指します。 具体的には、「慶事」には、結婚や出産などのおめでたいことで、「弔事」は、葬儀や通夜などのお悔やみごとを指しています。 会社において法で実施が定められている休暇(法廷休暇)には、有給休暇、産前産後休暇、介護休暇・育児休暇などがありますが、その他、法の規定ではなく会社の判断で定めている休暇(法定外休暇)があり、特別休暇とも呼ばれ、慶弔休暇も含まれます。 そのため、慶弔休暇が無い企業の場合で慶事・弔事があった場合は、有給休暇を代わりに取得することになります。 平成30年度に、厚生労働省が無作為抽出した民間企業1万2,000 社(農林漁業、鉱業を除いた15大産業)と、そこで働く従業員約5万 4,000 人を対象にしたアンケ―トによれば、福利厚生制度・施策の実施状況では、慶弔休暇制度を設けている企業が90.7%、慶弔見舞金制度についても86.5%の企業が導入しているとのことでした。
「企業に福利厚生施策の有無を尋ねると、40%以上が「ある」と答えた項目には、「健康管理」(「人間ドック受診の補助」44.6%など)、「休暇制度」(「慶弔休暇制度」 90.7%、「病気休職制度」62.1%など)に関するものがあがった。また、伝統的な施策では、「慶弔災害」「住宅」「余暇活動」に関する項目があげられた」
引用元;https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000428993.pdf また、従業員が、特に必要であると回答した項目では、「人間ドック受診の補助」 (21.8%)、「慶弔休暇制度」(20.0%)があげられたそうです。 実際には、多くの企業で特別休暇として、慶弔休暇の制度が設けられていることがほとんどであり、社員にとっても必要とされている休暇制度であることが分かります。 参考記事: 特別休暇とは?法定休暇との違い、種類や日数、有休扱いについて解説します

休暇をとるための本人との関係性について

慶弔休暇に当てはまる慶事か弔事かというのは、自分との関係性、自分自身や近親者に限ります。「二親等までを対象」とするなど、何親等かによって慶弔休暇を取得できる範囲を就業規則で決められていることが大半です。 例えば、1親等(両親や子供、義理の両親)が亡くなった場合は5日の休暇が認められますが、2親等(祖父母、兄弟姉妹)が亡くなった場合は3日という風に、日数が異なります。

有休か無休か

慶弔休暇の際に、有給休暇にするのか無給休暇であるのかは、法で定められているわけではなく、会社側で決めることができます。 注意したいのは、就業規則に慶弔休暇の記載がある場合、従業員側から見ると「有給休暇である」という風に受け取りがちです。無給休暇の場合は、その旨を明示することを忘れないことが大切です。 お役立ち資料「福利厚生制度30選」はこちら

慶弔休暇の日数

慶事の場合

一般的な慶事の際の休暇日数は下記のようなものがあります。
<例> ・結婚休暇…従業員本人が結婚する場合:5日 ・子供の結婚休暇…従業員の子が結婚する場合:2日 ・配偶者出産休暇…従業員の配偶者が出産する場合:2日
出産の場合は、女性従業員であれば、法定休暇である産前産後休暇や、男性であれば育児休業の申請をすることもできます。 参考記事: >>結婚休暇とは?日数や有給、制度導入のステップをまとめました >>子の看護休暇とは?制度の対象者や設計のポイントについて

弔事の場合

一般的な弔事の際の休暇日数は下記のようなものがあります。
・0親等の配偶者が亡くなった場合・・・10日 ・1親等の父母、子供であれば・・・7日間 ・1親等の義理の父母が亡くなった場合・・・5日間 ・2親等の兄弟姉妹・祖父母・義理の父母・孫が亡くなった場合・・・3日間 ・3親等の親族が亡くなった場合・・・1日間
通夜・葬儀が遠方だった場合、往復に必要な日数が考慮される場合もあります。 ちなみに「労政時報」を発行する労務行政研究所の調査によれば、平均日数として、本人の結婚のは5.3日、配偶者の死亡で5、6日というデータがあります。 参考元URL;https://www.rosei.jp/readers-taiken/article.php?entry_no=71379 その他休暇についての記事はこちら >>ボランティア休暇とは?制度設計のポイントや他社事例について >>誕生日休暇とは?導入するメリットから就業規則の設定まで

いつからとれるもの?

たとえば弔事の場合、亡くなってから葬儀までの時間が空いてしまったので、何日から休暇を申請してよいか分からないといった場合や、結婚式の前後は多忙で休暇を申請できず、翌月以降に業務が落ち着いてから慶事として休暇を申請できるのか?などの疑問が生じてくる場合があります。 慶弔休暇自体、従業員に自然と発生する冠婚葬祭に合わせて、会社が福利厚生として行うものです。 ですので、あまり厳格に規定を設けず、臨機応変に話し合う余地を残したり、調整していく状態が理想的です。 ただ、取得時期について明記しておくことで、誤解や無用なトラブルを防ぐ必要もありますので、弔事では「通夜の日から開始する」ことや、「入籍日・もしくは結婚式の日から3か月以内」などと規定しておくことがおすすめです。 同時に、「やむを得ない事情があると会社が認めた場合は、例外であっても承認される場合がある」などの一文を明記してもよいかもしれません。

慶弔休暇の定めは就業規則で

就業規則の記載例

第●条 1、従業員が次に該当する場合は、所属長に届け出ることにより、慶弔休暇を申請することが出来る。 ・本人の結婚の場合…〇日間 ・子女の結婚の場合…〇日間 ・配偶者・父母・子女が死亡した場合…〇日間 ・実兄弟姉妹・配偶者の父母が死亡した場合…〇日間 (具体的なケースと、日程を明記) 2、慶弔休暇を請求する場合は原則として所属長に事前に請求すること。ただし、やむ得ない場合は、事後速やかに届けること。 3、慶弔休暇は有給とし、通常の賃金を支給する。 4、遠隔地での慶事・弔事に際しては、必要に応じて休暇日数を加算する場合がある。

就業規則を作成する際に考慮する点

慶弔休暇を会社で規定する際に、注意する点としては、社員と会社との間で誤解が生じないかどうか、配慮する点がいくつかあります。 たとえば、
・慶弔休暇の対象者は、正社員のみにするのか、パートタイマー、アルバイトは対象となるのか。 ・勤続年数によって取得に違いがあるか(入社半年以内は申請できないなど) ・日数は労働日のみを計算するのか。土日は含まれるのか。 ・5日という場合は、連続して5日であるのか、分割して2日、3日と分けて取得することはできるのか。
等の疑問が想定される場合は、規約に明記するのが望ましいでしょう。 ちなみに、前述の厚生労働省による調査によれば、
「企業全体のうちで非正規従業員にそれぞれの施策等をどのくらい「適用している」 かをみると、「慶弔見舞金制度」が 46.6%の企業、「慶弔休暇制度」が 44.3%の企業で適用さ れている。」
引用元;https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000428993.pdf とあり、半数近くの企業で、非正規従業員であっても、慶弔休暇や慶弔見舞金(慶弔見舞金については、本文下記で別途説明)が適用されていることが分かります。

取得フロー、申請の流れの例

慶弔休暇は法定休暇ではないので、何か特定の証明書が必要というわけではなく、申請のフローについても会社が自由に決めることができます。口頭やメールのみというよりも、申請書のフォーマットを会社側で用意しておくとスムーズでしょう。 「申請者名」「申請希望日程」「理由」「連絡先」などの簡潔な内容で構いません。 弔事の場合は、故人の名前、通夜や告別式等の日時・場所なども求める場合があります。これは、会社からお悔やみの電報、いわゆる弔電などを送るための連絡先として必要になるからです。 また、慶事の場合は前もって申請しておくことが可能ですが、弔事の場合は突然起こり得るため、事後に申請することがある点を考慮しておく必要があります。

併せて導入されやすい慶弔見舞金とは

また、一般的に「慶弔休暇」と併せて導入されている場合が多い制度として、「慶弔見舞金」という制度があります。慶弔見舞金とは、従業員やその家族の慶事・弔事に対して、企業から支給するお金のことです。 例として、以下のような例があります。
・結婚祝金・・・本人が結婚した際に支給される ・出産祝金・・・本人または配偶者が出産した際に支給される ・死亡弔慰金(しぼうちょういきん)・・・本人が亡くなった際に支給される ・傷病見舞金(しょうびょうみまいきん)・・・本人が病気やケガなどで会社を欠勤したり、入院した際に支給される。 ・災害見舞金・・・本人が地震や台風などの自然災害、火災や事故等の人為的災害で被害に合った際に支給される見舞金
こちらも慶弔休暇同様、法で定められている制度ではありません。しかし、多くの企業が福利厚生の一環として、導入しています。 「社員を家族のように祝う、あるいは見舞う」ということですから、導入するメリットとして、従業員の会社への帰属意識や愛着心を高める効果があります。 支給額の目安としては、例として以下のような形があります。
・結婚祝金・・・3~5万円 ・出産祝金・・・1万円 ・死亡弔慰金・・・100~3000万円など(業務中に亡くなった場合、業務外で亡くなった場合で異なる) ・災害見舞金・・・10~50万円 ・家族が亡くなった場合の香典・・・2~5万円
また、慶弔見舞金を支給するには、慶弔休暇同様、社内規約に制度の存在を明示しておくこと、(金額までは社内規約上では明記しない場合が多いようです)所定の手続き方法を決めておくことも必要です。 会社の経費として処理する事柄になるので、実際に慶事・弔事があったことを証明する書類の提出なども求めておくことが望ましいでしょう。

休暇制度は事前の周知の徹底を

目的を伝え、活用してもらえる制度にすることが必要です

慶弔休暇や特別休暇は、法律上必ず設けなければならない制度ではなく、有給休暇で対応を取っている企業ももちろんあります。 同時に、福利厚生の一環として内容を充実させることで「社員を大切にする企業」「ワークライフバランスを重視する企業」というアピールを行うことも可能です。 しかし、実際には誰も使っていない、使いづらい、という状況ではもったいないだけでなく、従業員にとって「使いづらい」というネガティブな印象を与えてしまったり、入社後のミスマッチにつあんがることもあります。 制度の目的や会社の方向性を考慮しながら検討していきましょう。

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