子の看護休暇とは?制度の対象者や設計のポイントについて

子の看護休暇とは?

小学校就学までの子を養育する方が子供の看病等を理由に取得できる休暇のこと

子の看護休暇とは、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が、病気、けがをした子の看護、または子に予防接種、健康診断を受けさせるために、1年に5日(子が2人以上の場合は10日)まで取得できる休暇のことです。 2005年施行の改正育児・介護休業法で制度化され、2017年1月の改定を経て、現在に至っています。 国が出している指針において、法律の要件を満たす労働者が適正に申し出ることにより、法的効果が生じるとされていることから、事業主はあらかじめ制度を導入し、就業規則に記載する必要があるとされています。 子の看護休暇は、未就学の子を持つ労働者の権利です。人事担当者は制度内容をきちんと把握しておく必要があり、仮に制度が整備されていないのであれば、法に則り、早急に設計・整備しなければなりません。 参考:https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/ryouritu/pamph/dl/04_0003.pdf

子の看護休暇の制度について

ほぼすべての労働者が対象となる

子の看護休暇は、ほぼ全ての労働者が対象となりますが、事業主と労働者の過半数を代表する者との書面による労使協定を締結すれば、下記の労働者を子の看護休暇の対象者から除外することができます。
・継続して雇用された期間が6ヶ月に満たない者 ・1週間の所定労働日数が2日以下の者
したがって、配偶者が専業主婦である労働者、契約社員などを対象外とすることはできません。ただ、逆に対象範囲を緩和することは可能です。 参考:https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/34_08.pdf

休暇の日数は「1年に5日」まで

子の看護休暇は、法律上、1年に5日(子が2人以上の場合は10日)まで取得することができます。2017年の改正前は、1日単位での取得のみでしたが、改正により、半日単位での取得も可能となりました。 これまで、短時間の看護休暇であっても、1日でカウントせざるを得ませんでした。予防接種や軽度の病気である場合、数時間程度の休暇で事足りることが多いことから、労使双方から改善要望が挙がっていました。 半日単位の取得の義務化は、この制度の利用を促進する意味で有益な改正であったといえます。 ただ、子の看護休暇の半日単位の取得は、1日の所定労働時間が4時間以上の労働者が対象となっています。4時間未満の労働者は、これまで通り、1日単位の取得のみで問題ありませんので、この点も忘れずに、就業規則に定めるようにしましょう。

有給、無給の扱いは企業によって決定する

次に、子の看護休暇の有給・無給の扱いについてですが、法律ではどちらでもよいとされていますので、企業判断で決定することができます。 就業規則に明確に記載し、労使双方が同意しておく必要はあります。ただし、無給にする場合は、法律で定められた休暇ですので、「通常の欠勤」とは区別しておかなければなりません。 育児・介護休業法では、子の看護休暇の取得によって、勤務しなかった日数を超えて賃金を減額したり、賞与、昇給などで不利益な算定を行ったりすることは禁止されています。 給与規定に、査定対象とはならない旨の規定も定めておかなければなりません。

介護休暇との違い

介護休暇と子の看護休暇は、対象となる労働者や休暇の日数、有給・無給の扱いなど内容が非常に似ています。ただ、介護休暇は、要介護状態にある家族の介護を行う労働者が対象となり、その点が異なるといえます。 ここでいう要介護とは、国の要介護認定を受けていない場合であっても、病気や骨折などで、2週間以上に渡って介護が必要な場合は利用することができます。 なお、対象となる家族としては、配偶者、子、実父母、配偶者の父母、同居の祖父母、兄弟姉妹や孫までが含まれます。

対象となる子供の年齢は6歳まで

子の看護休暇の対象となる子は、小学校就学の始期に達するまで、つまり、6歳に達する日の属する年度の3月31日までを指します。 ただ、これはあくまで育児・介護休業法に定められた最低条件です。福利厚生を充実させるため、6歳以降も子の看護休暇の取得を認める企業も増えています。

子供の看護休暇制度の設計、申請フローについて

制度設計のポイント

具体的に制度を整備・設計していく上で、まずは、経営層に制度の方向性を決定して貰わなければなりません。 企業によって、制度に対する姿勢や経営状況は異なります。始めに方向性を決めた上で、整備・設計に入るようにしましょう。

ポイント1. 年度の決定と取得日数に関する規定

年度は、特に規定をしなければ、4月から翌年3月が基本ですが、会計年度などに合わせたい場合は、1月から12月などに変更することも可能です。この場合は、就業規則へ年度に関する記載をしておかなければなりません。 なお、子の看護休暇の取得可能日数は、申出時点の子の人数で判断されます。対象年齢の子が1人である場合は5日、2人以上である場合は、10日となります。 ただ、3人である場合でも、人数に比例して増えるわけではなく、10日が限度となることは注意してください。また、子が2 人以上である場合、子1 人につき5 日が限度というわけではなく、同一の子で10日取得することも可能であることは頭に入れておきましょう。

ポイント2. 時間単位の取得の有無

法律では、1日単位、半日単位での取得が義務付けられています。 ただ、これは育児・介護休業法に定める最低基準であり、事業主は、労働者の子の症状、労働者の勤務状況などを勘案して、時間単位での子の看護休暇の取得にも努めることが求められています。 実際に、1時間単位で取得ができる企業もありますので、女性活躍を推進している企業であるならば、導入を検討するのも一つの方法です。 ただ、時間単位の取得を制度化すると、その後の管理が大変になることも頭に入れておかなければなりません。 例えば、1時間を超えた部分の端数時間の取り扱い、無給とする場合の減額計算方法、看護休暇残数管理など、出退勤や給与システムの変更も視野に入れておかなければなりません。

ポイント3. 時季変更権について

子の看護休暇については、事業主に時季変更権はありません。ちなみに時季変更権とは、事業主が仕事の繁閑によって、休暇取得の時期を変更できる権利のことです。 子の看護は、いつ発生するか不確定であり、労働者がコントロールできるものではないことから、労働者からの申し出に時季変更を命じることができないことも頭に入れておきましょう。

ポイント4. 有給・無給の取り扱いについて

制度設計において、一番頭を悩ませる部分が有給・無給に関する点です。先にも触れたように子の看護休暇の取得に対し、賃金を支払うかどうかは企業の判断に委ねられています。 ノーワーク・ノーペイの原則に基づき、無給としている企業も多いですが、その場合、年次有給休暇を使用するケースが多く、そもそも「子の看護休暇」という制度が定着しにくくなります。 全額だけでなく一部だけ支給して企業があったり、福利厚生の充実を図るために有給扱いにしている企業もありますので、この点は、経営層をはじめ、社内で幅広く意見を聴取する必要があるでしょう。

ポイント5. 出勤率の算定について

子の看護休暇は、有給休暇の付与に関する出勤率の算定において、法律では「出勤したものとみなす」というような規定はありません。 したがって、1日単位で休暇取得した日については、欠勤扱いにすることも可能です。ただし、半日単位の取得に関しては、0.5日の欠勤として取り扱うことはできません。 出勤率の算定は、あくまで日数が単位です。遅刻早退を欠勤として取り扱うことは認められないという判例もありますので、育児休業などと同様に、算定の基礎となる全出勤日や出勤日数から除外して、制定するのが無難であるといえます。

申請ルールについて

子の看護休暇の取得申請は、書面ではなく、電話など口頭でも認められるものとされています。 なぜなら、病気やケガはあらかじめ予測できるものではなく、当日に急に申し出るケースも多いからです。証明書類の提出を求めることもできますが、これも当日に提出させるのは現実的ではありませんので、後日の提出でも可能とするのが適切だといえます。 休暇の乱用を抑止する意味では、事後であっても証明書の提出など、申請ルールの徹底をしてもらえるように運用していきましょう。

制度の定着には設計と運用がポイント

会社の想いを制度に込めることが重要です

整備・設計する上で、特に難しい部分は先にも触れたように有給か無給かという点です。 この制度を企業として積極的に推進する意向が経営層にあれば、看護休暇は有給扱いで、出勤率算定でも「出勤したものとみなす」のが一番です。 ただ、社員数が少なく、資金的に余力のない中小企業や、人員が少なく職場の他の社員の理解が得られづらい職場の中には、急な休みを快く思わない人間も少なからず存在します。 このような場合は、子の看護休暇を無給として、出勤率算定の際も出勤とみなさなくても問題はありませんが、まずは、しっかりと経営層に法律を理解して貰い、どのような方向に進むのかを確認した上で、制度を整備・設計するのがベストだといえます。

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