離職証明書とは?必要なケース・書き方・離職票との違いまで徹底解説

従業員の退職手続きで必要となる「離職証明書」について、正確に理解していますか?急な退職者が発生した際、離職証明書の作成や提出で慌ててしまう人事担当者も少なくありません。この記事では、離職証明書の基本から実務での注意点まで、明日から使える知識を詳しく解説します。

離職証明書とは何か

離職証明書は、従業員の退職手続きにおいて企業が作成する重要な書類です。しかし、似たような名前の書類が複数あるため、混同しやすいのが実情でしょう。

ここでは、離職証明書の基本的な定義から、類似書類との違いまでを整理します。

離職証明書の定義と役割を理解する

離職証明書とは、正式名称を「雇用保険被保険者離職証明書」といいます。これは、従業員が雇用保険に加入していた事実と、その離職理由を証明するための書類です。

離職票・退職証明書との違い

人事担当者が混同しやすい書類として、「離職票」と「退職証明書」があります。それぞれの違いは以下の通りになります。

書類名

作成者

提出先

目的

離職証明書

企業

ハローワーク

雇用保険の手続き

離職票

ハローワーク

退職者本人

失業給付の申請

退職証明書

企業

退職者本人

退職事実の証明

離職票は、企業が離職証明書などをハローワークに提出した後、ハローワークが発行する書類です。退職者が失業給付を受けるために必要となります。

退職証明書は、退職者が転職先への提出や各種手続きで必要とする場合に、企業が任意で発行する書類です。法的な発行義務はありませんが、退職者から依頼があれば発行しなければなりません(労働基準法第22条)

離職証明書が必要なケース

離職証明書の提出が必要となるのは、以下のケースです。

  • 退職者が失業給付の受給を希望する場合
  • 59歳以上の従業員については、離職票交付を希望しない旨の申出がない限り提出が必要

離職証明書の提出が不要なケース

また以下の場合は、離職証明書の提出は不要です。

  • 退職者が失業給付を希望せず、59歳未満の場合
  • 雇用保険に加入していない従業員

ただし、退職者が後から失業給付の受給を希望する可能性もあります。そのため、離職証明書の作成に必要な資料は一定期間保管しておくことをおすすめします。

離職証明書に必要な項目

離職証明書を正確に作成するためには、記載すべき項目と添付書類を正しく理解する必要があります。記載漏れや誤記があると、退職者の失業給付に影響が出る可能性があるため、慎重に対応しましょう。

記載すべき項目

離職証明書に記載が必要な主な項目は以下の通りです。

基本情報

  • 被保険者番号
  • 事業所番号
  • 退職者の氏名、生年月日、性別
  • 資格取得年月日
  • 離職年月日
  • 離職理由

賃金支払状況

  • 離職日以前の賃金支払対象期間(原則として離職前6ヶ月分)
  • 各期間の賃金支払基礎日数
  • 賃金額(基本給、諸手当、賞与等を含む)

離職理由の詳細

  • 具体的な離職理由
  • 自己都合か会社都合かの区分
  • 離職理由コード

賃金支払状況の記載では、基本給だけでなく、残業代や各種手当も含めた総支給額を記載する必要があります。

賃金支払状況を確認できる書類の添付が必要

離職証明書には、記載した賃金支払状況を証明する書類の添付が必要です。

必要な添付書類

  • 賃金台帳
  • 従業員の基本情報
  • 出勤簿またはタイムカード
  • 雇用契約書

これらの書類は、ハローワークの審査で重要な根拠資料となります。事前に整理し、記載内容と一致していることを確認しましょう。

離職理由の記載で注意が必要なケース

離職理由の記載は、退職者の失業給付の内容に直接影響するため、特に慎重な対応が求められます。

注意が必要なケース

  • 解雇の場合:解雇理由を具体的かつ客観的に記載
  • 退職勧奨の場合:会社都合として適切に処理
  • 病気による退職:医師の診断書等の根拠を明確に
  • 家族の介護による退職:自己都合だが特定理由離職者に該当する可能性

例えば、退職勧奨による退職を自己都合として処理してしまうと、退職者の失業給付において給付制限がかかる可能性があります。離職理由は退職者と企業で認識が異なることもあるため、事前に十分な確認を行うことが重要です。

離職証明書の提出に関する疑問と注意点

実務では、離職証明書の提出期限や、退職者からの再発行依頼など、様々な疑問が生じることがあります。適切な対応ができるよう、よくある疑問と対処法を整理しましょう。

離職証明書の提出期限

離職証明書の提出には、法定の期限が設けられています。原則は被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内に提出する必要があり、59歳以上の被保険者の場合、退職者が離職票の交付を希望しない場合でも提出が必要です。

例えば、3月31日に退職した場合、4月10日が提出期限となります。期限を過ぎた場合は遅延理由書の提出が必要になるため、確実に期限内に提出しましょう。

退職者が離職証明書を紛失したら?

退職者から「離職票を紛失した」という相談を受けることがあります。この場合、再発行が必要です。退職者本人がハローワークに再発行を申請後、企業は離職証明書の写しをハローワークに提出します。

その後は、ハローワークが新しい離職票を発行するという流れです。

企業側で必要な対応は、離職証明書の写しの提出のみです。ただし、この写しは企業で保管していた控えを使用するため、離職証明書の控えは適切に保管しておく必要があります。

離職証明書の正確な作成と提出が退職者の支援につながる

離職証明書は、単なる事務手続きの書類ではありません。退職者が新しいスタートを切るための重要な支援ツールとしての側面があります。

正確な作成と迅速な提出により、退職者の生活を支える失業給付の円滑な受給につながるのです。

企業にとっても、離職証明書の適切な処理は法的義務を果たすだけでなく、退職者との良好な関係維持にもつながります。退職者が転職先で企業の評判を語る際、「最後まで丁寧に対応してくれた」という印象を持ってもらえることで、企業ブランドの向上にも寄与するでしょう。

離職証明書の正確な作成は、退職者への最後のサービスでもあります。丁寧な対応を心がけ、円滑な退職手続きを実現していきましょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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