社員が社用携帯を紛失したらクビにすべき?紛失の原因や必要な対策を解説

社用携帯を紛失してしまうと、情報漏えいや企業の社会的信用の低下などの恐れがあります。社員の処分が求められる場合もありますが、何より問題が拡大しないための迅速な対応が必要です。社用携帯を紛失する原因とともに、対応のポイントを解説します。

社用携帯を紛失してしまう原因は?

社用携帯の紛失は、日常業務において起こり得るトラブルのひとつです。とりわけ外出の多い社員がいる場合や、業務で頻繁に携帯を使用する社員がいる場合は、そのリスクが高まります。以下では、社員が社用携帯を紛失してしまう代表的な原因を解説します。

出先での置き忘れが多い

社用携帯を紛失してしまう原因として最も多いのが、社員による出先での端末の置き忘れです。外出先では、会議や商談・移動の合間などに、社用携帯をテーブルやカウンターに置く場面があるでしょう。特に急いでいるときや、次の予定に追われている際に、携帯の存在を忘れてしまいがちです。

カフェやタクシー・電車内などでの置き忘れも少なくありません。これらの場所に置き忘れると、取り戻すのが難しくなるケースもあります。

盗難の被害に遭うケースもある

社用携帯が盗難の被害に遭うリスクもあります。上記のように、置き忘れから盗難に遭うケースが多いので、十分注意しなければいけません。

また海外に出張する場合などは、人混みが多い場所や観光地などにおいて、現地の住民から端末が狙われる可能性があります。スリに遭って携帯端末や財布を盗まれるケースもあるので、きちんと対策をしておくようにしましょう。

社用携帯の紛失により起こり得るトラブル

社用携帯の紛失は、単に端末の買い替えが必要になるだけでなく、企業に多大な影響を与えるトラブルを引き起こす可能性があります。端末の紛失によって起こり得る代表的な問題は、以下の通りです。

機密情報の漏えい

社用携帯には重要な連絡先や顧客情報が含まれているため、紛失してしまうと、社員個人の問題を超えて企業全体に影響を及ぼす恐れがあります。最も深刻なリスクは機密情報の漏えいであり、ビジネスに大きな損失をもたらす可能性があるので注意が必要です。

社用携帯には、顧客情報や社内の機密書類・業務メールなどが保存されている場合が多くあります。それが競合他社や悪意ある個人に情報が流出してしまうと、ビジネス戦略や顧客関係に影響が及ぶ場合があるので注意しましょう。

社会的信用の毀損(きそん)

社用携帯の紛失は、機密情報の漏えいだけでなく、企業の社会的信用の毀損につながる恐れもあります。企業が顧客情報や機密データの取り扱いに慎重さを欠いてしまうと、外部への情報の流出により、顧客や取引先の信頼を失いかねません。

特にニュースやSNSなどで公表されてしまうことで、企業のイメージが悪化し、信頼回復に多大な努力と時間が必要になる可能性もあります。

そのため、情報の流出が起こらないように、社用携帯の管理を徹底しなければなりません。端末の紛失を防ぐには、社員が常に携帯を身近に置き、不審な場所での使用を避けることが重要です。

社用携帯が紛失した有名な事例

過去には、社用携帯の紛失が原因で、重大なトラブルに発展したケースが少なくありません。紛失した携帯に機密情報や個人情報が含まれており、社会的な問題として、大きく報道された事例もあります。実際に発生した紛失事例を紹介するとともに、その背景と影響について詳しく紹介します。

尼崎市職員によるスマートフォンの紛失

2022年に兵庫県尼崎市の職員が業務用スマートフォンを紛失し、約46万人分の住民情報の漏洩が、疑われる事件が発生しました。当該職員は帰宅後に、端末を所持していないことに気付きましたが、その時点では職場に忘れたと判断していたようです。

しかし4日後に出勤した際、職場でもスマートフォンが見つからなかったことで、外部での紛失が発覚しました。早急に端末の使用停止手続きと、LINEアカウントの削除などを行いましたが、住民情報がすでに端末から盗まれている可能性があるため、大きな問題に発展しています。

ケアコムの社員による業務用スマートフォンの紛失

医療業界でも、業務用スマートフォンの紛失が大きな問題となっています。ナースコールやベッドサイドの表示システムなどを提供している株式会社ケアコムでは2024年5月、社員が顧客との会食の翌日、社用スマートフォンの紛失に気が付きました。

すぐに位置情報を確認し、探索しましたが、発見には至っていないようです。端末の使用停止手続きと遠隔ロックを施したものの、顧客の氏名や勤務先・電話番号・メールアドレスなどの情報など、1,300件分が外部に流出した可能性があります。

大和物流の社員による社用携帯の紛失

2019年の12月、大和物流株式会社は、社員が顧客情報の登録された社用携帯を紛失したと発表しました。端末には常時、パスワードによるロック機能を施していたものの、約1,000件(そのうち顧客情報が300件)の情報の流出が疑われています。

紛失の連絡があった際、直ちに遠隔で電話帳の削除と端末のロックを実施したものの、端末自体の発見には至っていないようです。このケースでは速やかな対応により、被害は最小限にとどまっているようですが、社用携帯の管理ミスが、大きなトラブルに発展することを示唆する事例のひとつです。

社用携帯を紛失した社員の対応をどうする?

社用携帯を紛失した場合、企業は迅速な対応が求められます。紛失した社員に対しては、以下のように厳重注意や再発防止策の徹底が必要ですが、単に叱責すれば良いわけではなく、根本的な原因を探ることが重要です。

厳重注意に加えて再発防止を徹底する

社員が業務用の携帯を紛失してしまったら、厳重な注意とともに、速やかに再発防止策を講じることが重要です。まず、紛失に至った経緯を確認し、改善点を明確にしましょう。例えば、管理方法や当該社員のセキュリティ意識の欠如が原因であれば、教育や運用方法の見直しが必要です。

その上で、同じミスを繰り返さないための対策を徹底しましょう。端末の管理手順や注意点などを文書化し、全社員に周知することも大切です。

クビ(懲戒解雇)も検討すべきか?

紛失の程度や影響によっては、社員に対して厳しい処分も検討すべきでしょう。特に、過去にも同様のミスを犯した場合や、故意に紛失した場合などには、クビ(懲戒解雇)も視野に入れる必要があります。企業としての信頼や業務の継続に障害を与えるような行為には、厳しく対応しなければいけません。

ただしミスは誰にでもあるため、状況を総合的に判断し、公正な対応を取ることが重要です。紛失した社員を糾弾するよりも、再発防止を徹底する必要があります。

社用携帯の紛失が発生した際の対応

社用携帯の紛失が発覚した場合、速やかに対応することが、企業のリスク管理において極めて重要です。

以下のように、紛失した携帯に保存されていた情報を確認し、顧客データや機密資料が含まれている場合、遠隔でのデータ削除やアクセス制限の実施が必要です。携帯の紛失が発生した際にすべき対応を確認しておきましょう。

紛失時の状況や情報流出の有無を確認

社用携帯の紛失が発覚した際には、速やかに状況を確認し、情報流出の有無を調べるのが最優先です。まずは、社員に対して端末を紛失場所や時間を確認し、端末にアクセスされた形跡がないかを調べましょう。また、リモートで端末のロックやデータ削除をすることも重要です。

対応が早いほど、情報流出のリスクを抑えることができます。さらなる被害の拡大を防ぐためにも、迅速に対応できる体制にしておきましょう。

関係各所への連絡や謝罪

端末の紛失によるトラブルや情報漏えいが確認された場合、上記のように被害の拡大を防ぐとともに、関係各所への連絡を行い、適切な謝罪と対応策を示す必要があります。

顧客や取引先に対しては、具体的な状況説明とともに、再発防止策をできる限り詳細に伝え、信頼の回復に努めましょう。また社内での報告や情報の共有も徹底し、問題が迅速に解決できるように、全社的に取り組む姿勢が求められます。

社用携帯を安全に管理するポイント

社用携帯を安全に管理するには、社員一人一人がきちんと端末を管理するのみならず、組織全体としてのセキュリティ対策を徹底する必要があります。以下のように、社員に対してセキュリティに関する教育を実施し、紛失リスクや情報漏えいの危険性を認識させることが重要です。

セキュリティに関する教育を実施する

社員に対して定期的にセキュリティ教育を実施し、社用携帯の適切な管理方法を周知することが、社用端末の紛失防止につながります。

携帯の扱いに伴うリスクやトラブルの事例を具体的に示しながら、端末の取り扱いに関する注意点を強調することで、社員のセキュリティ意識の向上が図れます。また、万が一紛失した場合の対応手順についてもきちんと教育し、速やかな対応を促すようにしましょう。

MDMなど必要な対策を実行する

社用携帯の紛失リスクを軽減するために、MDM(モバイルデバイス管理)などの導入も有効です。MDMを活用すれば、端末の遠隔管理が可能になり、紛失や盗難時にデータを即座に削除したり、ロックをかけたりできます。

また、端末の位置情報を追跡したり、紛失前の不審な活動をモニタリングしたりすることで、早期の対応が可能です。端末のOSやアプリの最新バージョンを自動で管理・更新する機能もあり、セキュリティの強化に貢献します。

情報漏えいリスクの軽減や端末の管理負担の軽減につながるので、この機会に導入を検討してみるとよいでしょう。

社用携帯は導入前の紛失対策が必須

社用携帯は利便性が高い一方で、紛失による被害は深刻になる可能性があるため、導入前から万全の対策を講じておきましょう。社員へのセキュリティ教育やMDMの導入といった対策はもちろん、万が一に備えて、対応フローを整備しておくことも重要です。

端末の紛失や盗難が発生した際の対応を決めておくことで、被害を最小限に抑えられるだけでなく、社員のセキュリティ意識の向上にもつながります。顧客や取引先からの信用を得るためにも、事前にリスクを想定した対策を講じておきましょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

理念経営」の他の記事を見る

TUNAG お役立ち資料一覧
TUNAG お役立ち資料一覧