組織社会化のメリットと具体策。離職率を下げ、従業員エンゲージメントを高める方法

「新入社員がすぐに辞めてしまう」「異動者が馴染めない」といったトラブルが多いのは組織が機能していないサインかもしれません。
人手不足が深刻化する中、採用した人材の定着と早期戦力化は、経営にとって喫緊の課題です。

その解決の鍵となるのが「組織社会化」という考え方です。
本記事では、組織社会化とは何かを解説し、その重要性や具体的な進め方をご紹介します。

組織社会化の基本概念

企業では、新入社員の早期離職やエンゲージメント低下が課題となっています。その対策として注目されるのが「組織社会化」です。

まずは組織社会化の定義やビジネスシーンでの活用シーン、オンボーディングとの違いについて解説します。

組織社会化とは何か

組織社会化とは、社員が入社後に組織の文化・価値観や業務上のルール、人間関係を学び、組織の一員として受け入れられ、機能できるようになるまでのプロセスを指します。

新人研修などの公式プログラムだけでなく、日常のコミュニケーションや現場での経験を通じた非公式な学習も含まれます。
このプロセスを経て、社員は自社の一員としてのアイデンティティを確立し、自身の役割を理解して自信を持って業務に臨めるようになります。

組織社会化が活用されるビジネスシーン

組織社会化は、社員が組織に馴染み、早期に戦力化するために活用される重要なプロセスです。具体的には、以下のシーンで組織社会化が役立ちます。

  • 新卒社員の初期適応
  • 部署異動や昇進時の適応
  • 企業のM&A時の文化統合
  • リモートワーク環境でのオンライン社会化

このように、別のカルチャーを持つコミュニティに新たな人材が参入するときに用いられる仕組みです。

オンボーディングとの違い

「オンボーディング」とは、新入社員を迎え入れる際に実施される組織的な初期研修や業務指導などのプロセスを指し、入社直後の短期集中プログラムです。

一方、組織社会化はオンボーディングによる公式な研修に加え、その後の日常業務や社員交流を通じて行われる非公式な適応プロセスまで含む、より広範な概念を指します。

オンボーディングが企業主導で提供されるプログラムであるのに対し、組織社会化は社員が組織文化を内面化し、チームの一員となるまでの包括的なプロセスです。

組織社会化のゴールは、新人が企業への高い帰属意識と仕事への自信を得ることであり、オンボーディングはその達成に向けた主要施策の一つと位置付けられます。

組織社会化のメリット

組織社会化を徹底することで、企業と従業員の双方に多くのメリットが生まれます。

本章では、離職率の低下(定着率向上)、従業員の自己効力感の向上、そして社員同士の信頼関係構築という3つの主な利点について説明します。

定着率の向上につながる

厚生労働省の調査では、2021年度における就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が38.4%(前年度と比較して1.4ポイント上昇)、新規大学卒就職者が34.9%(同2.6ポイント上昇)という結果となりました。

つまり、およそ4割近くの新規就職者が3年以内に離職するという結果になっているのです。
その大きな原因の一つは、職場になじめず孤立感を抱くことといわれています。

組織社会化を計画的に実践すれば、新入社員が企業文化や人間関係に早くなじみ、仕事への不安を解消できるため、早期離職の防止につながります。

新入社員の定着率が上がれば、人材採用・育成コストの削減や組織の知見蓄積にも寄与するでしょう。
企業は優秀な人材を早期に失うリスクを減らし、継続的な成長を支えることが可能になります。

参照:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します|厚生労働省

従業員が自己効力感を得られる

新しい職場に適応する過程で、社員は「自分にこの仕事ができるだろうか」という不安を抱きがちです。

組織社会化を通じて必要な知識やスキルを体系的に身につけ、周囲から適切なフィードバックやサポートを得られれば、「自分はやれる」という自己効力感が高まります。

自己効力感を得た従業員は、難しい業務にも前向きに挑戦し、主体的に学習・行動するようになるでしょう。
また、不安や戸惑いが減ることでメンタル面でも安定し、結果的に生産性や仕事の質の向上につながります。

自己効力感が高まった社員は、自身の成長にも意欲を持ち、キャリア形成にも積極的に取り組むようになるのです。

社員同士が信頼関係を構築できる

適切な組織社会化のプロセスでは、新人と既存社員が交流する機会が豊富に設けられます。
例えば、現場OJTでのペア作業やメンターとの定期的な面談、歓迎会やランチミーティングといった場は、お互いの人となりや価値観を知る機会となるでしょう。

こうした交流を通じて社員同士の相互理解が深まり、信頼関係の構築につながります。
社員同士が信頼し合える職場では、困ったときに気軽に相談や協力を求めることができ、チームワークや情報共有が円滑になります。

組織社会化の実践方法

では、具体的にどのように組織社会化を進めればよいのでしょうか。

本章では、企業が取り組むべき4つのポイントを紹介します。

学習棄却(アンラーニング)

学習棄却(アンラーニング)とは、これまでの経験で身につけた知識や習慣の中から、新しい職場では通用しないものを捨て去り、柔軟に学び直すことを指します。

特に中途入社社員の場合、前職でのやり方や文化に固執すると新しい組織に適応しづらくなるため、自社の方針や業務プロセスに合わない考え方・手法はアンラーニングを促し、新しいやり方を受け入れる姿勢を醸成することが重要です。

企業側も、単に前職のやり方を否定するのではなく、自社との違いを丁寧に説明し、新人が納得した上で新しいやり方を受け入れられるよう支援する姿勢が求められます。

なお、新卒社員に対しても、学生から社会人への意識転換を促すことがアンラーニングの一環と言えます。

業務に必要なスキルや知識の習得

新入社員が戦力となるためには、業務に必要なスキルや知識を体系的に習得させることが不可欠です。

組織社会化の一環として、研修プログラムやマニュアル整備、OJTによる実践的な指導などを通じて、新人が仕事の進め方や専門知識を段階的に身につけられる環境を整えます。

例えば、自社の商品知識や利用するITツールの使い方、業界特有のルールなどを早期に教育し、わからない点は先輩社員がフォローする体制を築くと良いでしょう。
また、一度研修した内容も定期的にフォローアップし、習得度を確認したり、必要に応じて追加研修を実施すると効果的です。

必要なスキルを着実に習得できれば、新人は業務への不安が軽減され、自信を持って仕事に取り組めるようになります。

評価基準と役割を理解する

新入社員にとって、自分の役割や評価基準が不明確だと、何に注力すべきか分からず不安を感じる原因になります。

そこで、組織社会化の一環として、早期に自身の役割と期待される成果、評価のポイントを理解させることが重要です。
職務記述書や目標設定面談を活用して、担当業務の範囲や優先順位を明確に伝え、評価項目(KPIやコンピテンシー等)を説明しましょう。

加えて、評価制度の全体像や昇進の流れについても説明することで、中長期的なキャリアの見通しを持たせられ、新人のモチベーション維持につながります。

メンター制度の導入

新入社員一人ひとりにメンター(相談役となる先輩社員)を付けるメンター制度も、組織社会化を支援する有効な方法です。
メンターは新人に対してマンツーマンで業務指導や会社のルールの説明、キャリア面での助言などを行い、困ったときに気軽に相談できる存在となります。

日々の些細な疑問や不安もメンターに打ち明けることで、新人は孤立せず安心して業務に取り組めます。

メンターと新人は少なくとも週に一度は面談の機会を設け、業務の振り返りや悩みの相談を行うと効果的です。
メンター自身も後輩を指導する経験を通じてリーダーシップを育むことができ、組織全体に知識共有と相互成長の文化が広がります。

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これらの組織社会化施策を円滑に進めるには、専用のSaaSツールを活用するのも有効です。

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掲示板やタイムラインで情報を共有し、社員同士が感謝や称賛を送り合う「サンクスメッセージ」機能もあり、称賛文化を育てます。
さらに、スマートフォン対応により、現場スタッフやリモート勤務者とも円滑に情報を共有でき、定着率向上に貢献します。

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著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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