新卒の離職率はどれぐらい?離職の原因や有効な対策について解説

新卒社員の離職率の高さは、業界・職種にかかわらず多くの企業で問題になっています。人材の早期離職が続くと、企業の成長や内部の人間のモチベーションに影響を及ぼす可能性も否定できません。新卒の離職率やその高さの原因、有効な対策について知っておきましょう。

新卒社員の離職率は高い?

近年、新卒社員の離職率は社会問題としても注目されています。就職後の早い段階で離職を決断する人材が多い場合、企業にとって大きな損失となる場合もあります。まずは、新卒社員の離職率の現状について、統計データを基に確認しておきましょう。

就職後3年以内の離職率は30%以上

厚生労働省によると、2021年(令和3年)3月に卒業した新規学卒就職者の3年以内の離職率は、新規高卒就職者が38.4%、新規大学卒就職者が34.9%です。いずれも前年度と比較して上昇しており、ここ何年も30%以上の離職率が続いています。

新卒社員10人のうち3人以上が、就職後3年以内に離職する計算であり、入社1年以内に辞めてしまう人材も、全体の1割程度です。新卒社員の早期離職は、企業にとって採用コストの増大をもたらす深刻な事態といえるでしょう。

※出典:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します|厚生労働省

事業規模別・業界別の離職率

新卒社員の離職率の高さは多くの企業にとって問題ですが、事業規模や業界によって離職率の程度には違いがあります。一般的に事業規模が小さい企業では、新卒社員が入社後3年以内に辞めてしまう可能性が高く、福利厚生やキャリア支援が充実している大企業ほど、人材が長く定着する傾向にあります。

また、飲食業や小売業・サービス業などは離職率が高く、4割を超えるケースも珍しくありません。一方、電気・ガス・水道などの社会的インフラを担う業界は、他の業界に比べて新卒社員の離職率が低い傾向にあるようです。

これは人々の生活基盤を整える業界であり、給与が安定している企業が多いためと考えられます。詳しくは後述しますが、給与や労働環境・福利厚生の充実度などは、離職率に大きく影響します。

新卒社員が離職してしまう原因

新卒社員がすぐに離職してしまう原因として、主に以下の点が挙げられます。職場環境や人間関係の問題をはじめ、仕事に対する期待値とのギャップなども影響しています。代表的な原因をみていきましょう。

職場環境のミスマッチ

職場環境が入社前のイメージと大きく異なる場合、新卒社員にとってストレスの一因となり、そのまま離職につながることがあります。職場のルールや雰囲気が合わない、過剰な長時間労働が常態化している、設備が不十分で業務効率が低いなどの理由が考えられます。

特に、社員の健康への配慮が足りない職場環境の場合、心理的にも身体的にも負担を感じる社員が出てくるでしょう。早期退職が相次ぐ可能性もあるので、社員が快適に仕事ができる環境の整備は必須です。

人間関係の問題

職場における人間関係の問題は、新卒社員の離職理由として多く挙げられる要因の一つです。新卒社員は社会人としての経験が浅いため、上司や先輩・同僚との関係構築に苦労することは珍しくありません。そこで十分なフォローを得られず、孤立してしまうと、離職につながる可能性が高いでしょう。

上司が指導ではなく過剰な叱責をしたり、チーム内での役割分担が不明瞭で人間関係のトラブルが頻発したりなどは、問題の典型例です。定期的な面談やコミュニケーションの場を設けるなど、関係の改善に向けた取り組みが必要です。

給与や労働条件に対する不満

新卒社員の多くは、入社前に期待していた給与や労働条件と、現実とのギャップに直面することもあります。基本給が過度に低かったり、残業代が適切に支払われなかったりする場合、離職を選択する可能性が十分考えられます。

また、福利厚生が不十分な企業や、休日出勤が頻繁に発生するような企業の場合も、仕事への意欲を失う社員もいるでしょう。公平な給与体系を整備し、労働条件の透明性を高めることで、社員の不満を軽減する努力が必要です。

仕事のプレッシャーがきつい

新卒社員が直面する仕事のプレッシャーは、精神的な負担となり、離職を考えるきっかけになることもあります。業務量が多かったり、過度に高い目標を与えていたりする場合、精神的な負担から心身のバランスを崩しやすくなります。

また、未経験の業務を急に任されるなど、準備不足で困難な状況に追い込まれるケースも少なくありません。新卒社員が安心して成長できるように、適切な業務量を考えるのはもちろん、適切なフォロー体制を整えることが重要です。

仕事内容に魅力や面白さを感じられない

仕事内容に対して興味や魅力を感じられない場合も、新卒社員は早期に退職を考えることがあります。定型業務ばかりで単調な作業が続く仕事の場合や、自分の成果が組織にどのように貢献しているかが見えないといった状況が続く場合、その傾向が顕著になるでしょう。

特に、自分のスキルやアイデアを生かせる場がない場合、成長の実感が得られず、仕事に不満を感じる可能性があります。新入社員が想起に自分の仕事にやりがいや価値を見出せる業務設計や、適切なフィードバックの仕組みを構築することが大事です。

理想のキャリアを実現できない

新卒社員が理想とするキャリアを実現するための道筋が描けない場合も、早期に離職を選択するケースがあります。例えば、キャリアパスが不明確な場合や、昇進やスキルアップの機会が限られている場合などが挙げられます。あるいは、他の業界や職種への関心が強くなるといった状況もあるでしょう。

また、企業が社員の成長を支援する体制をつくり上げていない場合、社員は将来的な可能性を感じられず、別の選択肢を模索するようになります。定期的に研修やキャリアカウンセリングなどを実施し、社員が目標を持って働ける環境を提供できるように、努める必要があります。

新卒の離職率の高さがもたらす影響は?

新卒社員の離職率の高さは、企業にさまざまな影響をもたらします。例えば、人材採用や育成にかかるコストの増加をはじめ、企業イメージや採用率の低下などが挙げられるでしょう。

事実、新卒社員の早期離職が繰り返されると、企業全体に「人材が定着しにくい職場」といったイメージが付いてしまい、優秀な人材の確保が難しくなる傾向があります。さらに人材が不足することで、既存の社員に負担がかかり、全体の業務効率が低下することもあります。

特に慢性的な人手不足に陥っている企業はその傾向があり、既存社員のモチベーション低下や、さらなる離職を招く悪循環に陥ってしまうケースは珍しくありません。これらの影響を軽減するためには、離職率を下げる取り組みが必要です。

新卒社員の定着率を上げるには?

新卒社員の定着率を向上させるには、以下のポイントを意識する必要があります。入社後のフォローアップ体制や、働きやすい環境づくりが欠かせません。代表的な離職防止策を紹介します。

オンボーディングに力を入れる

新卒社員が職場にスムーズに馴染むためには、入社直後のオンボーディングの実施が有効です。オンボーディングを充実させることで、社員が早い段階で業務に必要な知識・スキルを習得し、職場環境に適応しやすくなります。

会社の理念やビジョンの共有に加えて、チームメンバーとの関係構築を促進するワークショップや、業務の基礎を学べる研修プログラムなどの実施が必要です。さらに、個別のフォローアップミーティングを実施し、疑問点や悩みを早期に解決する仕組みの導入も検討しましょう。

新卒社員が「自分は歓迎されている」「成長を支援してもらえる」と感じることで、モチベーションが向上し、早期離職のリスクを低減できます。

働きやすい環境づくりに努める

働きやすい職場環境を整えることは、新卒社員の定着率の向上に必要な要素の一つです。例えば、フレックスタイム制やテレワークの導入は、社員のライフスタイルに応じた柔軟な働き方を可能にするもので、自社で長く働く意欲を高める効果があります。

また、物理的な環境整備だけではなく、社員の心理的安全性も考慮することが大事です。上司や同僚に意見を言いやすい雰囲気をつくることで、コミュニケーションが円滑になり、職場全体の連携が強化されます。社員一人一人が自分らしく働ける環境を提供すれば、新卒社員だけではなく、ベテラン社員の定着率も向上するでしょう。

社内コミュニケーションの機会を増やす

新卒社員がスムーズに職場になじむには、社内コミュニケーションの活性化も欠かせません。業務に関する報告や連絡だけではなく、日常的な会話やカジュアルな意見交換ができる環境を整えることも重要です。

定期的な懇親会やランチミーティング、部署間を超えたプロジェクトへの参加など、多様なコミュニケーションの場を提供しましょう。

また、チャットツールや社内SNSを活用することで、リアルタイムの情報共有が可能になり、社員間の距離を縮められます。新卒社員が孤立することなく、チームの一員としての意識を持てる環境の整備に努める必要があります。

キャリア支援を強化する

新卒社員が長期的に働き続けるには、個人のキャリア形成を支援する仕組みも必要です。定期的なキャリア面談を実施し、社員一人一人が自分の将来像を描き、目標を設定できるようにサポートしましょう。

また、自らスキルアップできる研修プログラムや、異なる部署での経験を積むジョブローテーションの導入なども有効です。さらに資格の取得支援や外部セミナーへの参加補助など、個人の成長を後押しする施策を導入することで、社員が自ら成長する環境の構築につながり、優秀な人材の定着率アップに寄与するでしょう。

新卒社員の定着率を向上させる取り組みを

新卒社員の離職率を下げることは、多くの企業にとって重要な課題です。放置していると人材の採用・育成にかかるコストが増大し、企業の社会的評判も悪くなる恐れがあります。多くの新卒社員が数年で辞めてしまう原因を理解し、必要な対策を講じる必要があります。

例えば、オンボーディングの充実や職場環境の改善、キャリア支援などを総合的に実施することで、離職率の引き下げが可能です。

特に働きやすい環境やキャリア形成の支援は、社員一人一人のモチベーションや満足度を向上させるポイントであり、ベテラン社員の定着率向上にもつながります。積極的に新卒社員の成長を支援する姿勢を示し、優秀な人材の確保・定着につなげましょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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