モチベーション低下による社員の退職を防ぐには?要因、取り組み、成功事例を解説

企業にとって中堅・ベテラン社員の離職は、豊富なスキルを持つ人材を失うため大きな痛手です。中には、モチベーションの低下による退職者が増えていて悩んでいるという企業も多いのではないでしょうか。

社員のモチベーションが低下する理由は推測できるものの、本当の原因がつかめず、具体的な対処が進められていない方もいると思います。

今回はモチベーション低下により退職が起こる3つの要因と社員のモチベーションの低下を防ぐ具体的な方法を解説します。また、社員のモチベーション向上により定着率を改善した企業事例も紹介しますので、参考にしてください。

モチベーション低下による退職はどうして起こるのか?

モチベーション低下による退職には、主に3つの要因があります。

最初に、モチベーション低下が起こり退職につながるそれぞれの要因を詳しく解説します。

職場環境による要因

上司や同僚など周囲との折り合いが悪いと、仕事に十分に集中できず、知らないうちにストレスが蓄積します。例えば協力体制が整っていない職場や同僚間の反発が絶えない場所では、改善の見込みがない限り、社員は良い待遇を提供されていても会社に留まろうとは思わないでしょう。

心理学の三大巨頭によるアドラーは「すべての悩みは対人関係の悩みである」と述べているように、人間関係の悪さは仕事のやる気を削ぐ大きな要因です。

また長時間労働や休日が少ない、休暇が取りづらいといった労働環境は、心身に疲労が溜まりリフレッシュする機会を取れません。集中力を発揮できず、生産性も下がり仕事で思うように成果を発揮できないため、仕事へのモチベーションは低下します。

業務内容による要因

業務内容が社員の期待や希望と異なると不満が生まれ、主体的なキャリアプランを描けません。例えば業務量が多く、絶え間ない締め切りやタスクに追われている場合、心にゆとりがなくなり仕事に対するやる気も失われます。また、毎日同じ仕事や慣れた仕事を繰り返しをしていると、飽きが生じてモチベーションが低下することもあります。

また、個人の裁量が少ないこともモチベーション低下の原因です。例えば会社都合で無駄な会議に出席させられたり、アナログな方法での作業を強いられたりすることが該当します。自分の意見や業務改善のアイデアを活かせず自由度が感じられない状態では、主体的に仕事に取り組む意欲を失ってしまいます。

このように自分の提案が常に却下される環境では、主体的な成長が見込めず明確なキャリアステップが描けないために、他の機会を求めて退職を考えるでしょう。

人事評価などに関する要因

評価基準が明確でないと、社員は自分の仕事の成果が適切に評価されているのか不安になります。どのようにすれば評価を改善できるのかが分からないため、目標を定められずモチベーションが低下します。

また、個々の社員の能力や適性が考慮されずに仕事が割り当てられた場合、社員は自分の強みを活かせません。弱みをカバーして努力するよりも自分の強みを発揮する仕事の方が、少ない力で成果を出せることは明らかです。適材適所でない人材配置では社員のポテンシャルを発揮できる機会が少ないため、仕事に対する満足感が得られずモチベーションが下がります。

【職場環境編】モチベーション低下を防止する取り組み

次に、モチベーション低下による退職を防ぐために、職場環境に関してできる取り組みを解説します。

経営方針の浸透を図る

経営方針を通して会社の目指すべき方向をその意図や背景を含めて伝えることで、職場全体が同じ方向を目指すことにつながり一体感が醸成されます。

具体的な方法として社内メールやSNS、社内報を通じて経営陣の口から社員へ方針を定期的に直接伝えることがおすすめです。経営方針を伝える際には、そこにいたった背景などの物語や思いを独自の言葉で伝えましょう。社員は企業との感情的な結びつきを深く感じられるため、一層モチベーションを高められます。

また、経営方針に沿った企業の取り組みや方針に沿って成果を上げたプロジェクトの成功事例を社内で共有するのも有効です。

相互理解を促進する機会を設ける

相互理解を促進する機会を設けることで、社内のコミュニケーションを活発化させましょう。社員同士の結びつきを高めると企業への帰属感が高まり、モチベーションの低下を防げます。

社員のコミュニケーションを活性化させるには、まずお互いを知るきっかけを作ることが重要です。具体的には社内イベントや食事会などを開き、自然な流れで社員同士が交流を深められる環境を作ってください。

また、社内SNSを通して個人の取り組みや日々の所感を発信し、オンライン上で交流できる場を作ることも有効です。互いが自然に自己開示できる環境を作れば、相手との共通点を見つけたり会話のきっかけになったりして、コミュニケーションが促進されます。

社員同士の関係が深まりお互いに信頼関係ができると、職場の心理的安全性の向上につながります。

称賛文化や承認文化を醸成する

自分の努力が認められることで社員は自己効力感を高め、さらなる成果を目指す動機付けになります。また、お互いの成果を称賛し合う文化は、チームメンバー間の信頼と連帯感を深めます。

例えば、社内SNSを活用して社員同士で日々の成果や頑張りを共有しましょう。お互いに感謝のメッセージを送ることで、称賛の文化を醸成できます。また、定期的に成果を上げた社員を表彰し、その成果を全社で称える制度を設けるのも効果的です。

【業務内容編】モチベーション低下を防止する取り組み

次に、モチベーション低下による退職を防ぐために、業務内容に関してできる取り組みを解説します。

アナログで煩雑な業務を効率化する

「導入に時間がかかる」「慣れるまでに時間がかかる」などの理由で、デジタル化に注力できていない企業は多いのではないでしょうか。

アナログな業務に固着することは、かえって業務時間の長期化などを招く恐れがあります。例えば契約書や稟議書などをデジタル化せず紙ベースで作成・管理することは、ハンコの承認やファイリングなどといった業務を増やして作業をかえって煩雑にするでしょう。

この問題は文書管理システムなどのツールを使えば、ハンコをデジタル化して承認のフェーズを簡素化したり、電子データでの保存により文書の検索や共有にかかる時間を大幅に短縮できたりします。

時間のかかる業務は改善できないか考えて効率化することで、社員はやりたい仕事に集中できるためモチベーションも上がります。

仕事やキャリアの悩みを解消する

1on1やメンター制度の導入は、社員が抱える業務上の課題やキャリアの悩みを解消してモチベーション低下を防ぎます。

定期的な1on1の実施やメンターとの対話を通じて、社員は自身が抱える悩みや課題を深く考える機会が持て、この過程で問題の根本原因や自己の感情をより明確に理解できます。また、自分の考えや感情を他者に話すことで、思考が整理され自分自身問題を解決するための糸口を見つけられるでしょう。

1on1は、通常の面談とは異なり上司が積極的に部下にフィードバックや質問をせず、部下が自分の考えや悩みを自由に述べるものです。実施する際は部下が率直で誠実なコミュニケーションができる環境を整えましょう。

また、話を聞く際は傾聴を意識してください。部下の言葉を遮らず話をじっくりと聞きながら、興味を持って受け止めます。また、時折相手の話を要約しながら相槌を打つことで、部下は自身の話を客観的に把握でき深い内省につながります。

注意点として課題や改善点を指摘する際は、批判的にならずに建設的な方法で伝え、具体的な改善策を一緒に考えましょう。部下が悩みへの解決策を主体的に導き出せるようサポートしてあげてください。

成功体験を積み重ねて自信を持たせる

モチベーションが下がっている社員は、自分の努力が結果に反映されず自信を喪失している場合があります。このような社員は実現不可能な目標を設定していたり、努力の方向性が間違っていたりする可能性があります。

上司が部下の現状の問題や目標設定のプロセスや仕方を確認することで、社員一人ひとりの能力に合わせた現実的で達成可能な目標を設定しましょう。これにより社員は目標に向かっての努力が明確な成果につながると感じられるため、モチベーションを維持できます。また、上司は目標達成をするために必要なサポートを行いながら、部下が自主的に目標を達成できる環境を整えましょう。

【人事制度編】モチベーション低下を防止する取り組み

次に、モチベーション低下による退職を防ぐために、人事制度に関してできる取り組みを解説します。

従業員の適性に合わせて人事異動を柔軟に行う

社員が自身の適性や興味に合致する業務に就けると、仕事に対する満足度が高まりストレスを感じにくくなります。また、個々の強みや特性を活かせるポジションに配置することで、社員は自分の能力を最大限に発揮でき組織全体の成果も向上します

社員の適性に合わせて人事異動を行うためには、社員に適職診断テストや性格テストを受けてもらうことで、その人の強みや適性を客観的に把握しましょう。また社員のスキルや経験をデータベース化し、組織内で必要とされる業務とマッチングさせることで、適材適所の人材配置を効率的に行うのも有効です。

人事評価の項目を明確にする

人事評価制度が明確で公平であるほど、社員は自分の仕事に対する評価が公正に行われていると感じ、仕事へのモチベーションが保たれます。

評価項目を明確化する際はプロジェクトの管理やチームでの協力、顧客とのコミュニケーションなど、評価されるべき項目を明らかにしましょう。はっきりと評価項目を定めて社員に開示することで、社員は目指すべき目標に向かって意欲的に仕事に打ち込めます。

また、定期的な面談も大切です。年に一度の評価だけでなく、月に一度や四半期ごとに上司と社員が面談を行い、進捗状況や課題を話し合いましょう。これにより、社員は自分が正しい方向に進んでいるかを確認できます。

福利厚生で従業員のライフスタイルを支援する

モチベーションが下がっている社員は様々な理由がありますが、企業が社員のプライベートを充実させる福利厚生制度を作ることで、社員の仕事へのやる気を高める一助となります。

例えば、年に一度、通常の有給休暇とは別にリフレッシュのための追加休暇を提供してみましょう。この期間中に発生する旅行費用の一部を企業が補助することも一つの方法です。他にも社員が自宅や好きな場所で働けるようにリモートワークを奨励し、フレキシブルな勤務スケジュールを設定します。社員が自身のライフスタイルに合わせて仕事を管理できるようにサポートしてください。

社員のモチベーション向上により定着率を改善した事例

社員のモチベーション向上により定着率を改善した事例を紹介します。

ここでは社内ポータル『TUNAG(ツナグ)』を導入し、改善に導いた事例を紹介しますので参考にしてください。

コミュニケーション不足を解決し離職率が減少 (株式会社ダイセーセントレックス)

株式会社ダイセーセントレックスは、食品や日用品の配輸送を行う企業です。

社員のほとんどはドライバーであり、出勤したらすぐに事務所を出て外で一人で業務を行います。そのため、お互いに会話をする機会が少なく、コミュニケーション不足と離職率の高さに課題を抱えていました。また、社内報やドライバーミーティングでは情報が伝わりきらないこともあり、情報共有方法も改善したいと考えていたそうです。

そこで社内コミュニケーションの障壁をなくし、社員のエンゲージメントを向上させるためにTUNAGを導入しました。活用方法としては、「社長のつぶやき」と題して社長が不定期で日頃の考えや感謝などを社員に向けて継続的に発信し、社員同士のつながりや帰属意識を高めました。また、各部署での連絡や会社からのお知らせなどを発信しました。ドライバーはスマートフォンから簡単に知りたい情報にアクセスできるようになり、空き時間に情報を得られるようになっています。

TUNAGの導入後は、離職率が前年比で約10%改善しました。社員と経営陣との間のコミュニケーションギャップを解消してより良い情報共有を実現したことで、定着率の向上に成功しています。

事例記事はこちら>>物流業界ならではのコミュニケーションや離職率の課題を改善 - 株式会社ダイセーセントレックスのTUNAG活用事例

やりがいを高め、アルバイト定着率が30%改善 (株式会社BP)

株式会社BPはパート・アルバイトを含む2,000人以上の社員を抱え、ウェディング事業やホテル・レストラン運営、映像制作など多岐にわたるサービスを提供しています。

同社では、社員の頑張りを褒める承認ができていないことに課題を抱えていました。企業では多様な業務と多数のセクションが存在する中で、誰が誰に承認を与えるべきかの判断が難しく、離職者の多くは組織内の連帯感の欠如を感じていたといいます。

そこで社員の頑張りをしっかりと評価し、職場への定着を促すためにTUNAGを導入しました。TUNAGは社員の努力を認め、社内の感謝の文化を促進するために活用されました。具体的には、サンクスカードと表彰制度を紐づけて運用し、サンクスカードを送った数・もらった数が多い社員を表彰する取り組みを行っています。また、アルバイトの方には頑張ったことやできるようになったことを初出勤から10回目の勤務まで日報を書いてもらい、先輩からフォードバックをもらえる制度を作りました。

TUNAGの導入後は、アルバイト定着率が30%改善しました。社員一人ひとりの頑張りが正しく評価されることで、社員のモチベーションの向上につながっています。

事例記事はこちら>>アルバイト定着率が30%改善、3ヶ月で300名採用:BPが「友達に紹介したくなるバイト先」を作るまで

現場のためになることを実行し、離職率が8割減少(株式会社夢現様)

株式会社夢現は、整骨院・鍼灸院の運営を行う企業です。京都府を中心に約15店舗展開しています。

同社は店舗ビジネスという特性上、互いの顔が見えないために社員間のコミュニケーションがスムーズに行われず、離職者が継続して出ている課題がありました。

そこで、コミュニケーション不足と社員の定着度を上げるためにTUNAGを導入しました。TUNAGは現場の方が困っていることを支援できるコンテンツを発信したり、社長自らの情報発信を強化したりするのに活用されました。

TUNAGの導入後は、離職者が導入前と比べて8割減少し、退職者から「いい会社に変わりましたね」と声をかけられるほど環境が変化したといいます。店舗間の相互理解を深めコミュニケーションの強化に注力したことで、社員に強い帰属意識を芽生えさせ、モチベーションを向上させました。

事例記事はこちら>>『離職者8割減少』につながったコミュニケーション施策とは。「現場のためになる事をとにかく実行する」

まとめ|モチベーション低下による退職を防ぐ方法

今回はモチベーション低下により、社員の退職を防ぐ方法を紹介しました。

企業は社員のモチベーションが低下する詳しい理由を把握しながら、それらを防ぐための仕組み作りをしていくことが重要です。

今回紹介した事例を参考にしながら、職場環境や業務内容、人事評価の改善などできることから始めてみてください

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