アジャイル組織とは?特徴や注目される理由、変革のポイントを解説
アジャイル組織とは、ソフトウェア開発手法の「アジャイル開発」の考え方を取り入れた組織形態です。「従来のような長期計画に基づいた管理手法ではなく、短期間でPDCA(計画・実行・検証・改善)のサイクルを繰り返すことで、市場や環境の変化に迅速かつ柔軟に対応できます。本記事では、アジャイル組織の特徴や導入事例、アジャイル組織を形成するポイントを解説します。
アジャイル組織とは
アジャイル(agile)は「素早い、機敏な」の意味を持つ言葉です。アジャイル組織という場合はどのような意味になるのか、まずは概要から見ていきましょう。
アジャイル組織の意味
アジャイル組織とは、柔軟性や俊敏性を重視した組織のことです。事前に綿密な計画を立てるのではなく、実行と改善を繰り返しながら業務を推進する組織を意味します。
アジャイル組織の言葉の語源は、ソフトウェア開発でよく用いられるアジャイル開発です。アジャイル開発では最初に全体像をざっくりと把握し、その後、設計・実装・テストを繰り返しながら改善していきます。リリース後の仕様変更を前提とした開発手法です。
アジャイル組織も同様に、大まかな計画を立てた後、実行しながら改善を加えていきます。迅速な意思決定を求められるため、現場に一定の権限が与えられるのが特徴です。
アジャイル組織が注目される理由
現代は先行きを予測しにくいVUCA時代です。ビジネスシーンでも画期的なサービスが続々と誕生し、今までの常識が通用しないケースが増えています。
従来のピラミッド型組織構造では、プロジェクトを緻密に計画して実行に移すのが一般的でした。しかし、目まぐるしく変化するVUCA時代においては、予定通りにプロジェクトを進めるのが困難になっています。
指揮系統が上位から下位へと階層的に流れる組織のままだと、変化についていけず生き残れない恐れがあるのです。そこで、迅速な意思決定を行えるアジャイル組織が注目されています。
アジャイル組織の特徴
アジャイル組織への移行を検討するなら、特徴を押さえておくことが大切です。ここからは、アジャイル組織が持つ主な特徴について解説します。
権限の分散
アジャイル組織と比較されることが多いピラミッド型組織は、組織図の上位から下位へ階層的に権限が与えられる仕組みです。立場が上位になるほど権限も大きくなります。
一方のアジャイル組織では、従業員全員やチームに権限が分散されており、フラットな組織構造が特徴です。年齢や役職などに関わらず権限を与えられます。
フラットな組織構造は個々の自立した行動につながるほか、各自が尊重された組織文化が根づきやすくなります。個人の責任が重くなるため、パフォーマンスも高まるでしょう。
迅速な意思決定
アジャイル組織の大きな目的は、変化に対し迅速かつ柔軟に対応することです。これを実現するためには、PDCAサイクルのスピードを上げるための迅速な意思決定が求められます。
前述のように、アジャイル組織では権限が分散されているため、意思決定のスピードを上げることが可能です。高速なPDCAサイクルによりアウトプットを改善し続けることで、ニーズに対して柔軟に対応しながら短納期を実現できます。
ビジョンや目的意識の共有
個々に一定の権限が与えられたアジャイル組織では、組織が目指す方向と異なる決定がなされないように、ビジョンや目的意識が組織全体に浸透しています。
ピラミッド型組織でもビジョンや目的意識の共有は重要ですが、アジャイル組織に比べ各自の責任が重くないため、ビジョンや目的意識がそれほど浸透していないのが実情です。
一方、アジャイル組織では各自の意思決定における軸がブレてしまうと、組織としての一貫性を保てなくなります。そのため、判断基準となる価値観の共有が重要になるのです。
DXの実現
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ビジネス環境の変化に対応するためにデジタル技術を活用して変革を起こすことです。経済産業省の「DXレポート2」では、DX推進におけるアジャイルマインドの重要性を説いています。
PDCAサイクルを高速で回す必要があるアジャイル組織では、高い正確性や効率性を実現するITとの相性が良く、DXが推進されやすくなります。従来型の組織にありがちなITへの抵抗感が少ないことも、アジャイル組織でDXを実現しやすい理由の一つです。
アジャイルに適した組織づくりのポイント
自社をアジャイル組織に変革するためには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。意識しておきたいポイントや検討すべき具体的な取り組みを紹介します。
アジャイル組織の重要性と目的
アジャイル組織に移行する際は、重要性や目的について従業員に説明する必要があります。新しい取り組みに対して抵抗感を覚える人が一定数存在するためです。
権限の分散は大きな変革であり、企業風土から変える覚悟で取り組みを進めなければなりません。アジャイル組織へスムーズに移行するためには、なぜそうする必要があるのかを繰り返し伝えることが大切です。
アジャイル組織に適した人材を育成する
アジャイル組織では個々に一定の権限を与えるため、適切な意思決定を行える人材の育成が不可欠です。まずは失敗を容認する雰囲気をつくり、従業員がチャレンジできる組織文化の醸成を図りましょう。
個人に合わせた目標設定を行うことも重要です。従業員ごとに能力や適性を考慮した目標を定めれば、モチベーションや自律性の向上にもつながります。スキルアップしたい従業員のために、学習環境も整えましょう。
パイロットチームでの試験導入を行う
いきなり全社的に移行するのが不安な場合は、パイロットチームでアジャイルな働き方を検証するのもおすすめです。相性が良さそうな部署を選び、試験的な運用を進めてみましょう。
パイロットチームでの試験導入を行えば、自社で発生しやすい課題が見えてきます。その課題への対処法を検討することで、全社的な移行が成功するかどうか判断できるでしょう。
アジャイル組織の導入事例
近年はピラミッド型組織からアジャイル組織に変える企業が増えています。アジャイル組織の導入事例を見ていきましょう。
Spotify
Spotifyは世界最大級の音楽ストリーミングサービスです。アジャイル組織の代表例として知られており、業界で急成長を遂げたのも組織運営によるところが大きいといわれています。
Spotifyの組織構造の特徴は、分隊(Squad)・部隊(Tribe)・支部(Chapter)・ギルド(Guild)の4チームに分かれていることです。組織の最小単位である分隊をはじめ、それぞれに独立した権限が与えられており、連携を取りながら業務を進めています。
アジャイル拡張のための Spotify モデル | Atlassian
アクサ生命保険
アクサ生命保険は、日本におけるアジャイル組織導入の先駆け的な存在です。ビジネス部門とIT部門の再編が行われた際、IT部門にアジャイル組織が導入されています。
IT部門の柔軟性と迅速性が向上した結果、ビジネス部門とよりスムーズに連携できるようになり、トレンドの迅速な取り入れやコスト削減など、さまざまな効果を生み出しています。
アフラックとアクサが実践するアジャイル組織、「分隊」を構成して階層型から脱却
アジャイル組織を目指しDX時代に対応
アジャイル組織とは迅速性や柔軟性を重視した組織のことです。組織構造をフラットにした上で従業員にも一定の権限を与え、より高速にPDCAサイクルを回しながら改善を前提として業務を推進していきます。
アジャイル組織が増えている理由は、目まぐるしく変化するビジネスシーンに乗り遅れないようにするためです。従来のピラミッド型組織では変化についていけなくなるため、アジャイル組織が近年注目を集めています。
アジャイルな組織づくりのポイントは、ビジョンや目的意識の共有や、アジャイルに適した人材の育成です。DX時代に対応するためにも、アジャイル組織への変革を検討してみるとよいでしょう。