サバティカル休暇とは?メリットとデメリット、導入における注意点を企業事例とともにご紹介
現代の働き方改革の中で、多くの企業が取り入れている福利厚生の制度の中でも、今回は「サバティカル休暇」というキーワードに焦点を当てて解説します。
サバティカル休暇は、長期の休暇を取得する制度で、従業員のリフレッシュやスキルアップのための時間を提供するものとして導入されています。この制度は、米国ハーバード大学で始まった研究のための有給休暇が起源とされ、日本でもヤフーやソニーなどの大手企業が導入しています。
しかし、この制度を「なんとなく」で実施しているだけでは、従業員の真のニーズに応えることは難しいでしょう。
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サバティカル休暇とは
長期勤続者に対して一定期間長期休暇を与えられた休暇のこと
サバティカル休暇とは、長期勤続者に対し、休暇理由に関係なく与えられる一定期間の長期休暇のことです。 有給休暇などは休暇理由に規定がありますが、サバティカル休暇の取得には理由は必要ありません。サバティカル休暇は企業によって内容が異なりますが、海外では少なくとも1ヶ月以上、場合によっては1年にも及ぶ休暇が取得できるケースもあります。注目される背景
サバティカル休暇は、ヨーロッパの企業で生まれました。1990年代頃から、「ワークライフバランス」の考え方により、仕事だけでなく家族や自分自身の生活も重要視するという価値観が生まれた頃に取り入れられています。 そのような価値観を背景に、人材の流出を防ぐためには、理由を問わず取得できる長期休暇の導入が必要と考えた企業が導入し始めたのが、サバティカル休暇です。 近年、日本でも働き方改革やワークライフバランスを重視する流れにのっとり、従来のように「仕事のために私生活を犠牲にする」という考えは古いものになってきています。一方、仕事とプライベートを明確に分けずに、どちらも充実した時間にしていきたいという考え方も広まってきています。 働き方への価値観が多様化する中、選択肢の一つとしてサバティカル休暇のような休暇制度を検討する動きが出てきているのではないでしょうか。サバティカル休暇のメリット
従業員にとってはいいことづくめに思えるサバティカル休暇ですが、企業にとってもメリットがあります。従業員側、企業側の双方のメリットをご紹介します。短期の休暇では得られない貴重な経験を積むことができる
これまでの日本企業は、1ヶ月以上という長期休暇を取得するという概念はあまりありませんでした。そのため、海外留学や大学院進学などの経験を積みたい場合、休職や退職を選ぶ人が多かったのが現実です。 サバティカル休暇を利用すれば、会社を退職することなく、自己成長に繋がる貴重な経験を積むことができます。また、社員がサバティカル休暇を利用してキャリアアップすることで、企業にとっても優秀な人材を確保できるメリットが生まれます。 サバティカル休暇を導入している企業の中には、留学や大学院進学、研究機関での勉強には手当てを支給するところも増えています。自社の社員がキャリアアップし、専門性を向上させることで、さらなる会社への貢献を期待するのが狙いです。休養をとってリフレッシュし、新たな可能性が広がる
通常の休暇だけでは、日頃溜まったストレスや疲れを完全に解消するのは難しいでしょう。サバティカル休暇なら、長期にわたって休暇を取得できるので、これまでのストレスや疲れをリセットすることができます。 また、自分の新たな可能性や価値観を見つけるためにはまとまった時間が必要です。サバティカル休暇を利用してしばらくの間仕事から離れることで、新しいアイデアが生まれたり、自分を見つめ直す良い機会になったりするでしょう。企業に対する評価がアップする
サバティカル休暇は、まだまだ一般的には浸透していません。「長期休暇なんてとれない」という雰囲気がある中で、サバティカル休暇を企業が導入すれば、イメージは大いにアップすることでしょう。 また、社員が、「社員のことを考えてくれている」という感謝の気持ちが芽生え、自社に対する忠誠心や帰属意識を高める効果も期待できます。この点は、企業にとって大きなメリットといえるでしょう。社員の離職を防ぐのに役立つ
一般的に、サバティカル休暇を取得するための理由は必要ありません。そのため、介護や育児などの理由でもサバティカル休暇を取得することができます。 介護離職者や育児離職者の増加は社会問題にもなっており、企業にとっても見過ごせません。また、社員が突発的な病気や事故で休業を余儀なくされた場合にもサバティカル休暇が役立つことが考えられます。 いざという時にサバティカル休暇の制度があれば、社員の心身の負担を軽減することができます。社員にとってはセーフティーネットとなり、企業にとっても離職を防ぐのに役立つため、双方に大きなメリットが生まれます。サバティカル休暇のデメリット
メリットばかりが目立つサバティカル休暇ですが、デメリットもいくつか存在します。サバティカル休暇取得後の復帰問題
長期の休暇を取得した後の職場復帰には、様々な問題が伴います。実際に、育児休暇や病気による長期休暇明けの復職では、職場環境の変化についていけず苦労したというケースが多々ありますので、同様のことが起こる可能性があります。 また、復帰後に同じ業務に戻れるとも限らないため、長期休暇を取得したことで昇進に響くという可能性もあります。休暇中の収入が減少する
サバティカル休暇の仕組みは企業によって異なります。海外ではサバティカル休暇取得中に手当が支給される国もありますが、日本ではまだまだそこまで制度が整備されていません。サバティカル休暇を取得する際は、休暇中の生活も見越して計画を立てることが必要です。実際にサバティカル休暇が取れない可能性
日本ではまだ長期休暇の取得は一般的ではありません。また、サバティカル休暇という概念も浸透していません。そのため、せっかくサバティカル休暇の制度があっても、休暇を取得しにくいケースもあります。上司や同僚の理解が得られなければ、休暇を取ることがコミュニケーションの悪化にもつながりかねません。 サバティカル休暇の制度がある企業でも、実際に問題なく休暇を取得できる環境づくりが重要です。企業に取り入れる際の注意点やポイント
サバティカル休暇を導入する際には、いくつか注意しておきたいポイントがあります。休暇を取得する目的を明確にする
サバティカルを導入する際は、他社事例に倣うだけでなく、自社に合った明確な目的を設定することが重要です。例えば、従業員の成長を促すためや、長年勤務する従業員が今後のキャリアを見つめ直す機会を提供するためなど、自社の状況やニーズに合った理由を持つことで、社内の混乱や企業の損失を防ぎ、より効果的な制度運用が可能になります。サバティカル休暇を取りやすい環境づくり
スウェーデンやフィンランドでは、サバティカル休暇の取得中は代替要員として失業者を雇うことが義務付けられています。そのため、社員が長期休暇を取得しても、これまでと変わらずスムーズに業務を回すことができます。 日本ではまだこのような制度がととのっていないため、自社で対策を立てなくてはいけません。社員がサバティカル休暇を取得しても、業績や他の社員に影響がないシステムを構築し、サバティカル休暇を取得しやすい環境を整えることが、導入を成功させる第一歩です。サバティカル休暇中の給料の有無と目的
サバティカル休暇は法律で定められた制度ではないため、有給か無給かの判断は企業に任されています。日本では無給の企業が多いですが、休暇の目的に応じて手当てが支給される場合もあります。 本来は取得目的が制限されないのがサバティカル休暇の特徴ですが、給料の支給の有無に伴って目的に制限を加えるのも自由です。企業と社員双方が納得できる制度を構築することで、サバティカル休暇導入の成功につながります。サバティカル休暇の制度の周知
日本では、必要以上の休暇を取得することは怠慢だという風潮が根強く残っています。そのため、企業側でサバティカル休暇の制度を整えても、社員の間で休暇に対する理解が浸透していないと人間関係の悪化に繋がります。 まずはサバティカル休暇を取得しやすい制度を企業側が整えるのが大前提ですが、休暇を取りやすい雰囲気づくりも必要です。サバティカル休暇の取得を積極的に推奨し、社員にとってのメリットを周知することで、社員の意識も変えていきましょう。 参考:なぜ、社内制度は続かないのか? 活用されるためにとるべき7つのステップ休暇から復帰しない従業員の対策をとる
サバティカル休暇終了後も従業員が出社しないケースが想定されます。しかし、その理由のみで即座に解雇することは困難です。そのため、休暇取得前に「休暇後、一定期間出社しない場合には、労働契約が自動的に終了する」という旨を就業規則に明確に定めておくことが重要です。休暇から復帰した従業員をサポートする
復職する従業員へのサポートも重要です。可能であれば、休暇前と同じ業務に戻れるように配慮しましょう。復職直後にいままでは全く異なる業務に取り組むことは、本人に大きな負担をかけるためです。また、休暇中の業務担当者からしっかりと引き継ぎを行うことも大切です。サバティカル休暇を取得する手順
サバティカル休暇を取得する際、どのような手順を踏むのかついて、従業員の立場から取得のプロセスを解説します。取得条件について確認する
まずは、サバティカル休暇に関する社内規定を確認し、取得条件について上司と相談します。 具体的には、勤続年数や取得可能な期間、給与の支給有無、休暇手当の有無、社会保険料の取り扱い、復職に関する規定など、ルール化されている事項を一通り確認しておくことが重要です。サバティカル休暇の取得に向けて準備をはじめる
自身がサバティカル休暇の取得条件を満たし、上司からの許可を得ることができたら、準備を進めましょう。留学や進学する場合は必要な手続きを行い、旅行や入院などで長期間家を留守にする場合は、それに向けた準備を行います。 また、休暇中に給与が支給されない場合は、その期間の生活費の確保も考慮する必要があります。サバティカル休暇中の業務について相談する
準備を進める際には、サバティカル休暇中の業務についても事前に上司と相談しておくことが重要です。業務を他の人に引き継ぎ、参照できるような資料をまとめておくことや、関係者への休暇取得の連絡を行うなど、職場を不在にしている間に支障が出ないように整えておきます。 また、復職後にすぐに業務に戻れるよう、休暇中の情報共有方法についても同僚と事前に話し合っておくとスムーズに進みます。サバティカル休暇を導入している企業事例
欧米の成功例に習って、日本でもサバティカル休暇を導入する企業が増えてきました。しかし、日本ではサバティカル休暇に関する法律や規定がないため、サバティカル休暇の名勝や内容もそれぞれ異なります。日本でサバティカル休暇を導入している企業の具体的な事例をまとめました。LINEヤフー株式会社の「サバティカル制度」
LINEヤフー株式会社は、日本でいち早くサバティカル休暇を取り入れた企業のひとつです。対象は勤務年数が10年以上の正社員です。休暇期間は2ヶ月から3カ月以内での範囲で取得可能です。また、サバティカル休暇の期間は休暇支援金が支給されます。 年次有給休暇や積立有給休暇との併用も可能なので、長期にわたる休暇を取得することが可能です。ソニーの「フレキシブルキャリア休職制度」
ソニーでは、自社でのキャリアアップに役立つキャリア形成のための休暇制度を設けています。キャリア形成という目的が限られていますが、休暇期間が長いのが特徴です。 私費留学のための休職は最長2年、配偶者の海外赴任や留学に同行する場合は最長5年の休暇が得られます。休職中は無給ですが、社会保険の本人負担分が会社支給となるほか、私費留学の初期費用が最大50万円まで支給されます。 また、2017年度からは「休職キャリアプラス」という制度が導入されました。これは、育児や介護などで休職中の社員に、継続的なキャリア形成を支援するものです。休職中の在宅勤務や研修費用の補助などを行い、休職後も継続して働ける環境を提供します。株式会社リクルートテクノロジーズの「STEP休暇」
株式会社リクルートテクノロジーズのサバティカル休暇は、「STEP休暇」という名称で導入されています。勤続年数3年以上の社員であれば、3年ごとに最大連続28日間の休暇を取得することが可能です。 STEP休暇の取得目的に制限はなく、一律30万円が支給されます。ヨーロッパで導入されているサバティカル休暇に最も近い制度といえるでしょう。株式会社ぐるなびの「プチ・サバティカル」
株式会社ぐるなびでは、勤続年数5年で連続3日間の休暇と2万円の手当が支給されます。休暇を利用した勉強やキャリアの振り返りが推奨されていますが、取得目的に制限はありません。 参考:リフレッシュ休暇の制度設計のポイントと運用ルールを解説。有休との違いや注意点も 参考:週休3日制を導入する前に検討すべきこととは? 導入企業事例やデメリットを解説海外の事例
フランスのサバティカル休暇
フランスは、企業の休暇制度が充実している国のひとつです。フランスのサバティカル休暇は「勤務年数3年以上かつ、通算勤務年数6年以上」「過去6か月間に長期休暇を利用していない」という条件のもと、6ヵ月〜11ヵ月のサバティカル休暇を取得できます。 サバティカル休暇の用途に制限はありませんが、休暇中は無給扱いです。ただし、有給休暇の補填ができたり、サバティカル休暇期間中に大学院などで学ぶ場合は費用の援助があります。スウェーデンのサバティカル休暇
スウェーデンのサバティカル休暇は、休暇中の手当ありで最長1年間の休暇を取得できます。スウェーデンでは政府がサバティカル休暇を積極的に導入しているため、サバティカル休暇の制度が充実しています。 サバティカル休暇を取得している社員がいる間は、代替要員を採用する決まりとなっており、スウェーデンの失業対策にも貢献しています。フィンランドのサバティカル休暇
フィンランドでは、フルタイムの労働者は90日から359日の範囲でサバティカル休暇を取得できます。休暇の制度はスウェーデンと似ており、休暇中も手当てが支給されます。 また、代替要員として失業者が雇い入れられるのもスウェーデンと同じで、積極的にサバティカル休暇を取得することが推奨されている国のひとつです。働き方に対する価値観の多様化に対応するために
従業員の働き方に対する価値観に対応していくことは、避けて通れない問題です。優秀な人材の流出を防ぎ、働きやすい環境を作るためにも、サバティカル休暇のような長期休暇制度は選択肢の一つとして考えられるものです。 日本ではまだ一般的ではありませんが、経済産業省は積極的にサバティカル休暇の導入を推奨しています。国内外の企業の導入例を参考にして、自社の働き方改革に取り組むことが企業の発展に繋がります。エンゲージメントを高めるための社内制度のプラットフォーム『TUNAG(ツナグ)』について
TUNAG(ツナグ)では、会社と従業員、従業員同士のエンゲージメント向上のために、課題に合わせた社内制度のPDCAをまわすことができるプラットフォームです。 会社の課題を診断し、課題に合った社内施策をご提案、その後の設計や運用のサポートまで一貫して行っています。課題の診断は、弊社の診断ツールを使い把握することが可能です。ツールと専任のコンサルタントの支援で、経営課題を解決に貢献いたします。 TUNAG(ツナグ)では、これまで実施してきた休暇制度などを含め、あらゆる社内制度の活用状況をデータで可視化することができます。 会社の課題にあわせ、どのような施策を行うと効果的かを500を超える社内制度運用事例をもとにご紹介いたします。上司部下のコミュニケーション促進に1on1MTGをTUNAG(ツナグ)上で実施したり、称賛文化をつくる「サンクスカード」の運用も可能です。▼『TUNAG(ツナグ)』について 『TUNAG(ツナグ)』では、会社として伝えたい理念やメッセージを、「社内制度」という型として表現し、伝えていくことができます。 会社様ごとにカスタマイズでき、課題に合ったアクションを継続的に実行できるところに強みがあります。 「施策が長続きしない」「定着しない」というお悩みがございましたら、「現在のお取り組み」のご相談を無料で行っておりますので、お問い合わせください。