特別休暇制度で働きやすい職場を実現する!種類・導入手順・成功事例を徹底解説
特別休暇制度は、企業が独自に設ける休暇制度です。導入目的や取得条件を柔軟に設定できるため、近年、従業員の働きやすさを重視する企業から注目を集めています。
特別休暇制度を適切に運用すれば、従業員のワークライフバランスの向上やモチベーション向上に加え、離職率の低下や優秀な人材の確保といった企業の成長を促す効果が期待できます。
本記事では、特別休暇の定義や有給休暇との違い、導入手順、成功事例について詳しく解説しますので、ぜひ働きやすい職場環境を整備する制度設計に役立ててください。
特別休暇とは?
特別休暇とは、企業が従業員に対して独自に定める休暇制度です。法律で義務付けられている「法定休暇」とは異なり、企業が自由に取得条件や内容を決定できます。
特別休暇制度は適切に運用すれば、従業員のモチベーション向上や企業の採用活動における魅力の向上、離職率の低下など、企業の持続的成長に寄与するものです。
近年は、従業員の働きがいを高める手段として特別休暇制度が注目され、各社が自社に合ったユニークな特別休暇を設けています。
特別休暇と有給休暇の違い
有給休暇は、労働基準法第39条に基づく法定休暇であり、勤続6カ月以上かつ8割以上の出勤率を満たせば、企業は付与する義務があります。給与は全額支払われ、翌年度まで繰り越しが可能です。
これに対し、特別休暇制度は企業独自の休暇制度であり、自社で目的を設定できます。それぞれの違いは以下の表の通りです。
項目 | 特別休暇 | 有給休暇 |
定義 | 企業が独自に定める休暇制度 | 労働基準法に基づく法定休暇 |
法的義務 | なし(企業の裁量) | あり(一定条件を満たせば付与義務あり) |
取得条件 | 企業の就業規則に基づく | 勤続6カ月以上かつ8割以上の出勤率 |
主な目的 | 自社で目的を設定できる 例)従業員のモチベーションを高める | 労働者の健康維持やワークライフバランスの確保 |
日数 | 企業ごとに異なる | 勤続年数に応じて最低10日以上(法定基準) |
給与 | 有給の場合もあれば無給の場合もある | 100%有給(賃金が支払われる) |
繰越し | 企業の規定による | 翌年度まで繰越し可能(2年で時効) |
労働者の自由度 | 企業の裁量が大きく、取得は制限される場合がある | 原則として労働者の希望で取得可能(ただし時季変更権あり) |
法定休暇とは?
法定休暇とは、労働基準法などの法律で定められた休暇です。代表的な法定休暇を三つご紹介します。
年次有給休暇(労働基準法第39条)
勤続6カ月以上かつ8割以上の出勤率を満たした労働者に最低10日以上付与される休暇制度です。企業は取得を拒否できません。
年間5日間の取得義務があり、それを除いた未取得分は翌年度へ繰り越しが可能です。繰越分は2年間で時効となり消滅します。
また、有給休暇取得日の給与は100%支給され、労働者の健康維持やワークライフバランス向上を目的としています。
参照:労働基準法第39条
生理休暇(労働基準法第68条)
女性が生理日に就業が困難な場合に申請できる休暇で、企業は取得を拒否できません。ただし、給与の支払い義務はなく、無給が一般的です。企業が独自に有給とする場合もあります。
参照:労働基準法第68条
育児休業(育児・介護休業法)
育児休業は、1歳未満の子を養育する労働者が取得できる休業制度で、一定の条件を満たせば最長2歳まで延長可能です。給与は無給ですが、育児休業給付金が支給されます。休業中の社会保険料は免除され、取得による解雇などの不利益扱いは禁止されています。
参照:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
介護休業(育児・介護休業法)
介護休業は、要介護状態の家族を介護するための休業で、通算93日まで取得可能です。給与は無給ですが、介護休業給付金が支給されます。社会保険料は免除され、取得による不利益扱いは禁止されています。
参照:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
裁判員休暇(労働基準法第7条)
裁判員休暇は、裁判員や補充裁判員に選ばれた労働者が取得する休暇で、企業は休暇取得を認める義務があります。給与の支払い義務はありませんが、企業が補償する場合もあります。不利益扱いは禁止されており、国民の義務としての位置づけがあります。
参照:労働基準法第7条
法定外休暇(特別休暇)とは?
法定休暇に対して、法定外休暇は企業が独自に定める休暇を指します。企業の裁量で有給・無給の選択が可能で、内容や取得条件も自由に決められます。
特別休暇制度が企業にもたらす効果
特別休暇制度は、従業員の働きやすさを向上させるだけでなく、企業全体の生産性向上や人材確保にも大きく貢献します。特別休暇制度が企業にもたらす効果について解説します。
従業員のワークライフバランスが向上する
まず、従業員のワークライフバランスの向上が挙げられます。特別休暇制度により、従業員は私生活や家庭の事情に合わせて柔軟に休暇を取得できるようになります。
ただし、制度を整備するだけでは不十分です。制度導入初期は、経営層が率先して利用したり、申請手続きを簡略化することで、従業員が取得しやすい環境を整えましょう。
離職防止や定着率向上に貢献する
特別休暇制度の導入は、従業員の離職防止と定着率向上に直接的な効果をもたらします。単に法定休暇を付与するだけでなく、企業独自の休暇制度を設けることで、従業員は「自分を大切にしてくれる会社」という認識を持ち、帰属意識が高まるのです。
特に効果的なのは、ライフイベントに応じた休暇制度です。結婚記念日休暇や子どもの学校行事休暇など、プライベートを尊重する姿勢が、仕事と家庭の両立を支援するメッセージとなります。
過重労働による燃え尽き症候群(バーンアウト)やメンタルヘルス不調を未然に防ぐことで、優秀な人材の突発的な離職リスクも低減できるでしょう。
採用コストや教育投資を考慮すれば、特別休暇制度への投資は費用対効果の高い人材戦略といえます。
従業員のモチベーションを高める
特別休暇制度は、金銭的インセンティブに代わる新たなモチベーション向上策として注目されています。成果を上げた従業員への報奨として特別休暇を付与することで、給与アップ以外の動機付けが可能になるのです。
業績優秀者への追加休暇付与や、プロジェクト完了後のリフレッシュ休暇など、頑張りに対する明確な報いが従業員の意欲を引き出します。
また、長期勤続者への特別休暇は、会社への貢献を認める姿勢を示し、ロイヤリティ向上にもつながります。休暇という形の報酬は、ワークライフバランスを重視する現代の価値観にも合致し、持続的なモチベーション維持に効果的です。
採用活動で「働きやすさ」をアピールできる
人材獲得競争が激化する中、特別休暇制度は他社との差別化要因として大きな武器になります。給与水準での競争に限界を感じる企業にとって、独自の休暇制度は費用対効果の高い採用戦略といえるでしょう。
求職者の価値観は大きく変化しており、特に若い人材は柔軟な働き方や充実した休暇制度を企業選びの重要な判断基準としています。ボランティア休暇やサバティカル休暇など、自己実現を支援する制度は、企業の先進性と従業員への配慮をアピールする格好の材料です。
採用サイトや面接で具体的な活用事例を示すことで、「働きやすい会社」というブランディングが確立できます。
特別休暇の種類
特別休暇は企業が自由に設定できるため、その種類は多岐にわたります。ここでは代表的な特別休暇と、ユニークな特別休暇を紹介します。
慶弔休暇
慶弔休暇は、従業員やその家族に結婚や出産などの慶事、または通夜や葬儀などの弔事があった際に取得できる特別休暇です。
企業ごとに付与日数が異なり、配偶者の死亡や親等の近い家族の葬儀では3〜5日間程度、兄弟姉妹や祖父母の場合は1〜3日間程度が一般的です。
結婚の場合は本人が5日程度、家族の結婚で1〜2日付与されるケースが多く見られます。
多くの企業が福利厚生の一環として導入しており、慶弔見舞金制度と併用されることもあります。
関連記事:冠婚葬祭の慶弔休暇は有給扱いになるの?休暇取得時の注意点について解説
病気休暇
病気休暇は、従業員がけがや病気で治療や通院が必要な場合に取得できる特別休暇です。
企業によって有給・無給の扱いが異なり、有給休暇とは別枠で設けるケースや、有給休暇をすべて消化した後に無給で利用できる制度として運用されることもあります。
長期療養が必要な場合に備えて病気休職制度を併設する企業もあります。特に感染症拡大時など、出社が困難な状況を考慮し、一定日数の病気休暇を有給休暇とは別に設ける企業が増えています。
ボランティア休暇
ボランティア休暇は、従業員が社会貢献活動に参加するための休暇で、企業のCSR(企業の社会的責任)活動の一環として導入されることが多いです。
環境保護、地域清掃、災害復興支援、教育支援など、さまざまな分野のボランティア活動に参加する際に取得できます。
企業ごとに取得条件は異なりますが、有給・無給のいずれかで提供されます。特にNPO団体と連携し、従業員のボランティア活動を積極的に支援する企業も増えてきています。ボランティア休暇を導入することで、企業のイメージ向上や社内外のネットワーク構築にもつながるメリットがあります。
関連記事:ボランティア休暇とは?制度設計のポイントや他社事例について
夏季休暇
夏季休暇は、夏の一定期間に取得できる休暇で、多くの企業が8月13〜15日のお盆期間を中心に設定しています。
企業によっては、お盆期間とは別に夏季休暇の日数を自由に取得可能な制度としている場合もあります。特に工場や製造業などでは、一斉休業の形で夏季休暇を設けることも多いです。
一方、サービス業や小売業などでは繁忙期にあたるため、交代制で取得する形が多く見られます。法的な義務はありませんが、従業員のワークライフバランスを考慮し、柔軟な運用が求められています。
リフレッシュ休暇
リフレッシュ休暇は、従業員の心身の疲労回復を目的とした休暇で、勤続年の節目に付与されることが一般的です。企業によっては、長期勤続者への慰労の意味を込め、1週間以上の休暇を付与するケースもあります。
リフレッシュ休暇取得の際に旅行券や特別手当を支給する制度を設けている企業もあります。
心身の健康を保ち、生産性向上につなげることが目的とされており、特に従業員のエンゲージメント向上を重視する企業で導入が進んでいます。
関連記事:リフレッシュ休暇の制度設計のポイントと運用ルールを解説。有休との違いや注意点も
バースデー休暇
バースデー休暇は、誕生日に取得できる休暇です。従業員のモチベーション向上やワークライフバランスの促進を目的として導入されています。
企業によっては、誕生日当日に限定せず、誕生月の好きな日に取得可能とするケースもあります。バースデー休暇とあわせてギフト券や特別手当を支給する企業も増えています。従業員の働きやすさを重視する企業文化の一環として、比較的導入しやすい特別休暇のひとつです。
関連記事:誕生日休暇とは?導入するメリットから就業規則の設定まで
アニバーサリー休暇
アニバーサリー休暇は、結婚記念日や家族の誕生日など、特別な日に取得できる休暇です。企業によって取得対象が異なり、結婚記念日限定のケースもあれば、家族の誕生日や記念日全般を対象とする場合もあります。
記念日当日に限定せず、前後の好きな日に取得できる柔軟な制度として運用されることもあります。家族との時間を大切にする文化がある企業に適した休暇制度です。
関連記事:「アニバーサリー休暇」導入のメリット、就業規則の設定や企業事例を解説
サバティカル休暇
サバティカル休暇は、長期休暇を取得し、自己研鑽やリフレッシュを目的とする制度です。欧米では大学教授や研究者が研究期間として取得する制度として知られていますが、近年は企業がキャリア成長支援の一環として導入する例も増えています。
取得期間は企業によって異なりますが、数週間〜数カ月単位で設定されることが一般的です。休暇中の給与は支給されないことが多いものの、企業によっては研修費補助や旅行手当を支給するケースもあります。
特に従業員の自己研鑽を重視する企業で導入が進んでいます。
関連記事:サバティカル休暇とは?メリットとデメリット、導入における注意点を企業事例とともにご紹介
初めて取り組む方はここから!特別休暇制度導入の流れを解説
特別休暇制度の導入を検討する企業が増えていますが、何から着手すべきか迷う担当者も多いでしょう。
成功する制度導入には、明確な目的設定から運用後の改善まで、体系的なアプローチが不可欠です。ここでは実効性の高い特別休暇制度を構築するための具体的なステップを、実務担当者の視点から解説します。
特別休暇制度の目的を設定する
特別休暇制度の成否は、導入目的の明確さで決まります。「他社もやっているから」という理由では、形骸化した制度になってしまうリスクが高いのです。
人材確保が喫緊の課題であれば採用競争力を高める独自休暇を、離職防止が目的ならライフイベント支援の休暇制度を検討するなど、経営課題と直結した設計が重要です。従業員アンケートや部門長へのヒアリングを通じて、現場の実態を把握することも欠かせません。
目的設定の段階で経営層と人事部門が共通認識を持つことで、制度導入後の推進力が大きく変わります。投資対効果を明確にし、経営戦略としての位置づけを確立することが、持続可能な制度運営の第一歩となるのです。
取得条件や申請フローを決定する
制度の実効性は、運用ルールの具体性で決まります。取得条件、申請期限、承認プロセスなど、現場で迷いが生じない明確な基準設定が必要です。
常時10人以上の労働者を雇用する企業では、就業規則への記載が必要となります(就業規則の作成・届出義務がある企業の場合)。法的要件を満たしつつ、自社の業務特性に応じた柔軟な運用ルールを設計することが求められるでしょう。
申請フローは可能な限りシンプルにすることが重要です。複雑な手続きは利用率低下の要因となるため、申請から承認までのプロセスを最適化し、必要最小限の書類で完結する仕組みを構築します。デジタル化による申請システムの導入も、利便性向上に効果的です。
社内周知をする
優れた制度も、従業員に認知されなければ意味がありません。導入時の周知活動が、その後の利用率を大きく左右するのです。
経営トップからのメッセージ発信により、制度導入への真剣な取り組み姿勢を示すことが重要です。全社会議での説明に加え、部門別説明会を実施し、各部署の業務特性に応じた活用方法を具体的に提示します。管理職向けには、部下の休暇取得を促進する役割についても理解を求める必要があるでしょう。
周知活動は単発で終わらせず、継続的な情報発信が欠かせません。イントラネットでの事例紹介、社内報での特集記事、利用者インタビューの共有など、多様な手段で制度の浸透を図ります。質問窓口の設置により、従業員の不安や疑問に迅速に対応する体制も整えましょう。
定期的に見直し改善する
制度導入は始まりに過ぎません。PDCAサイクルを回し、継続的な改善を行うことで、真に機能する制度へと進化させることができるのです。
導入後3カ月、6カ月、1年といった節目で効果測定を実施します。利用率、部署別の偏り、従業員満足度などの定量データと、利用者へのヒアリングによる定性情報を組み合わせて分析することが重要です。想定と異なる利用実態があれば、その要因を深掘りし、制度設計の見直しを検討します。
改善の際は、小さな修正から始めることが効果的です。申請期限の緩和、対象範囲の拡大など、段階的な改善により従業員の反応を確認しながら、最適な制度へとブラッシュアップしていきます。この継続的な改善姿勢こそが、従業員エンゲージメント向上につながるのです。
特別休暇制度を導入する際の注意点
特別休暇制度を導入する際には、これから紹介する項目に注意しましょう。法令違反や、制度自体の形骸化を未然に防ぐことができます。
特別休暇は年次有給休暇の取得義務に含むことができない
特別休暇は企業が独自に設ける休暇制度であるため、取得が義務化されている年次有給休暇に含めることができない点に注意が必要です。
特別休暇を設けることで、有給休暇の取得を抑制しないよう配慮が必要です。
特別休暇と有給休暇の違いを明確にし、それぞれの目的や取得ルールを説明することで、従業員が適切に活用できる環境を整えましょう。また、特別休暇を有給休暇の代替手段とするのではなく、福利厚生の一環として位置づけることで、企業の魅力向上にもつながります。
従業員への周知の仕方を工夫する
特別休暇制度があっても、従業員に存在が知られていなければ利用されません。メールや口頭、掲示板での一方的な告知では全社員への周知が難しく、特に現場で働く従業員に情報が行き届かないことが多いです。
弊社が提供する組織改善プラットフォーム「TUNAG(ツナグ)」を利用すれば、社内全体に情報を正確に届ける仕組みを整えることができます。
例えば、情報の切り分け機能を活用し、従業員のスマートフォンに関連情報のみを配信することで、パソコンを持たない現場社員にも社内の情報が流れることなく手元のスマホに届けることができます。
また、プッシュ通知や必読投稿機能を活用することで、特別休暇制度が広く認識される環境を整えることも可能です。
制度の定着には、継続的な情報発信が不可欠です。適切な周知活動を行い、現場を含めた全従業員が制度を理解できるような環境を整えましょう。
「3分でわかるTUNAG」サービス資料 | TUNAG(ツナグ)
制度が形骸化しないように運用する
特別休暇制度を導入しても、従業員が利用しなければ意味がありません。制度を有効に活用してもらうためには、特別休暇取得のハードルを下げることが重要です。従業員が気軽に休暇を取得できる環境を整えることで、制度の定着につながります。
例えば、休暇の申請や承認をスムーズに行える仕組みを導入すると、利用が促進されます。弊社が提供する組織改善プラットフォーム「TUNAG」では、福利厚生制度が形骸化しないための仕組みづくりが可能です。
ワークフロー機能を活用することで、スマートフォンから簡単に申請でき、場所や時間に縛られずに手続きを完了できます。また、TUNAGのタイムライン機能を活用すれば、休暇の利用報告を社内に共有できるため、他の従業員にも制度活用の促進が可能です。
休暇取得のハードルを下げる仕組みを整えることで、特別休暇の利用を自然な形で促進し、社内文化として定着させることができます。
休暇を取得しやすい職場づくり
特別休暇の制度が整っていても、取得しづらい職場の雰囲気があると、従業員は利用をためらいます。「周りに迷惑がかかる」「後でしわ寄せが来る」「上司の目が気になる」といった理由で、休暇の取得を遠慮するケースも少なくありません。
そのため、経営陣が率先して特別休暇を利用し、取得しやすい雰囲気を作ります。また、従業員が安心して休むことができるよう休暇取得時のフォロー体制を整えることも重要です。チーム内で業務の引き継ぎを標準化し、タスクを分担する仕組みを整えることで、従業員が気兼ねなく休暇を取得できる環境を作りましょう。
特別休暇制度の導入事例
2024年に厚生労働省が発行した「特別休暇制度導入事例集2024」の中から特別休暇制度を導入している3社の事例を紹介します。
レック・テクノロジー・コンサルティング株式会社
IT コンサルティング企業の同社では、本人の通院・健康診断、家族の通院・健康診断の付き添いに利用できる有給休暇「シックリーブ」を年10日付与しています。入社初日から利用可能で、半日単位での取得もできる柔軟な制度です。
2023年度は90名(ほぼ全従業員)が利用し、1人あたり平均3.5日取得。歯科通院など日常的な医療ニーズにも対応し、利用時は領収書をスマホで撮影してアップロードする簡便な手続きとなっています。
従業員からは「年次有給休暇を病気のために残す必要がなくなり、プライベートで安心して使える」と好評で、従業員アンケートでは3割強が「嬉しい社内制度」として挙げています。採用活動でも求職者の関心が高く、人材確保にも貢献している制度です。
岩渕薬品株式会社
医薬品総合商社として地域の健康に貢献する同社では、がんに罹患した従業員をきっかけに、両立支援コーディネーター資格を持つ従業員の提案で2021年に治療休暇とドナー休暇を導入しました。
治療休暇は、がん・精神疾患・循環器系疾患など7つの疾患を対象に年10日を有給で付与。診断書と領収書の提出により半日単位で取得可能です。2023年度は7人が利用し、1人あたり平均8.3日取得。主にがん治療での利用が多く、40~60代の従業員が中心です。
ドナー休暇は骨髄移植等のドナー登録・提供のために年10日を有給で付与。まだ利用実績はありませんが、従業員の家族や地域への貢献意識を高める制度として、企業の社会的責任を体現しています。
オルガノン株式会社
同社では、利用実績の低かった生理休暇を2023年9月に「Her Day Leave」へ改称し、月経随伴症状や更年期症状まで対象を拡大。月3日まで有給で取得可能で、上司には「体調不良」とだけ伝えればよい運用として心理的ハードルを下げました。
また、年次有給休暇取得率6割弱の現状を踏まえ、2024年5月に「Flexi Leave」を導入しています。不妊治療、妊娠時の体調不良、子の看護、弔事、看取りなど幅広い事由で利用可能な有給休暇です。導入から7ヶ月で11人が利用し、平均1.3日取得されたとのことです。
その他、ボランティア休暇(年5日有給)、ディスカバリー休暇(年40日無給のサバティカル休暇)、公務執行休暇も整備し、従業員からは「無理をせず休んでもいいという会社のメッセージとして安心感につながる」との声が寄せられています。
特別休暇制度の導入で働きやすい職場へ
特別休暇制度は、従業員のワークライフバランスを向上させ、企業の魅力向上や離職率の低下に貢献する重要な施策です。
企業が独自に定めるため、適切に運用すれば従業員満足度の向上につながります。ただし、導入するだけでは効果が得られないため、周知の徹底や取得しやすい職場環境の整備が必要です。
導入直後は、徹底した社内通知を行い、従業員が制度の存在と利用方法を正しく理解できる環境を整えることが重要です。
また、休暇を取得しやすいよう、管理職が率先して休暇を取得することで、利用のハードルを下げる工夫が求められます。さらに、定期的な振り返りと制度の改善を重ねることで、従業員のニーズに合った特別休暇制度の運用が可能となります。
特別休暇制度を効果的に活用し、従業員が安心して働ける環境を整えましょう。