特別休暇とは?有給休暇との違いや導入のメリットについて解説
現代の働き方改革の中で、多くの企業が取り入れている福利厚生の制度の中でも、今回は「特別休暇」というキーワードに焦点を当てて解説します。
特別休暇は、従業員に特定の事情や目的で休暇を与える制度であり、労働基準法では休暇は就業規則に記載すべき事項として規定されています。そのため、特別休暇を導入する際は就業規則に記載する必要があります。
特別休暇の例としてあげられるのは、病気休暇、慶弔休暇、ボランティア休暇、リフレッシュ休暇などがよくあります。
しかし、この制度を「なんとなく」で実施しているだけでは、従業員の真のニーズに応えることは難しいでしょう。
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特別休暇とは
従業員に与える「休暇」のこと
特別休暇は、会社が従業員に一つの福利厚生として与える休暇のことをいいます。法律では定められておらず、自由に付与できるものです。そのため、法律で義務化されている“法定休暇”とは異なります。
特別休暇の例としてあげられるのは、病気休暇、慶弔休暇、ボランティア休暇、リフレッシュ休暇などがよくあります。
また、失恋休暇やアニバーサリー休暇など、オリジナルの休暇制度を設けている会社もあります。
このような独自の特別休暇は、仕事に対する社員のモチベーションのアップや多様な働き方を行いやすくする効果が期待できるだけでなく、企業のイメージ向上につながることもあります。
特別休暇と有給休暇の違いとは?
法的な位置付け
特別休暇は、法定外休暇となり、法律で定められていません。そのため、有休にするのか、無休にするのかは会社ごとに決めることができます。また、有給休暇の持ち越しや、出勤日として扱うかなども自由に設定できます。
例えば、慶弔休暇は、お祝いやお悔やみの気持ちを表すために多くの会社が有休にしていますが、有休にしなければならないという定めはありません。
特別休暇と有給休暇は制度としては扱いが異なりますが、「会社が従業員に与える休暇」としては同じになりますので、明確にルールや条件を設定する必要があります。特別休暇は利用条件が限定されていることが多く、有給休暇は理由を問わずとることができます。
給与への影響
特別休暇が有給になるかどうかは、会社によって違います。就業規則等で、「特別休暇は有給休暇とする」と定めていれば給与は支払われます。
リフレッシュ休暇、バースデー休暇、慶弔休暇などの特別休暇で、それぞれ有給休暇となるかどうかは会社によって異なりますので、休暇制度をつくる側の方は他の休暇制度と合わせてしっかりと制度設計を行う必要があります。
特別休暇を取得すると有給休暇は減る?
特別休暇を取得しても、有給休暇は減りません。特別休暇と有給休暇は、目的や付与のルールが異なるため、一般的にはお互いに影響を及ぼさない仕組みになっています。
特別休暇と有給休暇を混同しないように注意が必要です。特別休暇として取得した休暇を取得義務のある有給休暇の日数にカウントしてはいけません。
特別休暇の条件
対象となる雇用者
特別休暇の場合は、対象になる人を決める必要があります。例えば、アルバイトの方は含むのかどうかなど、対象を明確にする必要があります。
就業規則などで対象になる人を明記しておきましょう。
設定する日数
特別休暇は、独自に会社がそれぞれ運用するものですので、設定する日数も会社によって異なります。ここでは、特別休暇として会社の多くで運用されている種類と設定する日数について例をご紹介します。
・忌引休暇
家族や身内の方が亡くなった時にとれる休暇制度です。社員自身との続柄によって休暇が1日間~7日間ほど付与され、一般的に有休扱いとなることが多いようです。
・結婚休暇
従業員自身が結婚する際に使用できる休暇です。休暇が3日間〜5日間ほど付与されます。こちらも一般的に有休扱いになることが多くあります。会社によっては結婚に伴いお祝い金を付与するところもあります。
・リフレッシュ休暇
一定年数以上勤めた従業員や、1年に1度のタイミングで利用できる休暇制度として設けられていることが多くあります。勤めた年数によって、休暇が3日間~7日間ほど付与されることがあります。会社によっては、1ヶ月の休暇をとれるような制度を設けているところもあります。こちらも、一般的に有給休暇として扱うところが多いようです。
・病気休暇
自身の病気で療養する場合にとることができる休暇制度です。勤めた年数によって、上限期間が違う場合があるなど、条件には各社によって違いがあります。
休暇期間にも数日程度から長期に渡る場合があり、有休として扱う場合、無休として扱う場合双方あります。
参考:病気療養のための休暇
>>【参考記事】結婚休暇とは?日数や有給、制度導入のステップをまとめました
法律で定められている休暇について
法定休暇
法定休暇は、会社から自由に与えられるものとは違い、法律で決められている社員の権利として使うことができる休暇です。
法定休暇の種類
法定休暇としては、産前産後休暇、年次有給休暇、整理休暇、介護休暇、育児休暇、子の看護休暇があります。産前産後休暇、年次有給休暇、生理休暇は労働基準法で定められており、介護休暇、育児休暇、子の看護休暇は、育児介護休業法で定められています。
年次有給休暇は、毎年一定の日数が勤めた年数によって与えられますが、これ以外の法定休暇は就業規則等で条件や社内の申請フローなどをしっかり定めておく必要があります。
法定外休暇
法定外休暇は、これまで解説した通り、独自に会社が就業規則で決めるものであるため、休暇の種類は会社によって違っています。なお、就業規則に決まっていない休暇は取れません。
特別休暇の種類・例
慶弔休暇
社員自身が結婚したり、親族が亡くなったりしたなどの場合に取れるものです。大企業では多くの会社で定められていることが多い休暇制度です。
休暇日時は、少ない場合は1日〜2日くらい、多い場合は3日〜4日くらい取れる場合があります。
雇用契約書や就業規則で、社員自身が結婚すると何日、配偶者に子供が生まれると何日、配偶者、子供あるいは両親が亡くなると何日などというように、特別休暇の日数が慶弔の内容によって決まっています。
>>【参考記事】慶弔休暇の内容や取得日数、有休について解説! 導入する際の注意点をまとめました
ボランティア休暇
社会貢献活動を行う際にとることができる休暇です。日本では、特に東日本大震災が発生してから、社会的な責任として導入する会社が多くなっています。
ボランティア休暇がある会社の中には、ボランティア活動をする際のボランティア保険費用や交通費なども負担するような場合もあるようです。
最近は、大きな被害が豪雨や地震などによって発生する場合が多くなったり、東京オリンピックも行われたりするので、今後導入する会社は多くなると考えられます。
>>【参考記事】ボランティア休暇とは?制度設計のポイントや他社事例について
夏季休暇
夏の期間、お盆などに、まとまった休暇が与えられるものです。しかし、会社によっては、夏季休暇は有給休暇扱いとなり、特別休暇ではない場合もあります。
すでに付与されている有給休暇をどのように使うのかを計画し、夏季休暇として有給休暇を消化するよう促している会社もあります。
誕生日休暇
社員の誕生日に利用できる休暇です。「自身の誕生日を大切にしてほしい」というメッセージを込めることができ、会社の福利厚生の一つとしてアピールできる休暇制度の一つといえます。
誕生日休暇は、誕生日あるいはこの前後の1週間の間で、1日〜3日間休暇がとれる。というような条件になっていることが多いようです。
>>【参考記事】誕生日休暇とは?導入するメリットから就業規則の設定まで
リフレッシュ休暇
先程も少しご紹介したように、一定年数勤務した方、または年に一度のタイミングなどでリフレッシュを目的にとることができる休暇制度です。勤続の慰労として与えられるため、有給の法定外休暇としている会社が多くあるようです。
リフレッシュ休暇は、節目の5年、10年、15年などの場合に取れるように設定されていることが多くあります。
教育訓練休暇
仕事上の知識・スキルを社員がアップするために、仕事から一定日数離れて、教育訓練する際の休暇です。制度として教育訓練休暇を導入することによって、会社が助成金を国からもらえる場合があります。
この場合は、
- 有休扱いとする場合、5年に5日以上、かつ、1年間に5日以上の取得が可能としなければならない
- 無休扱いとする場合、5年に10日以上、かつ、1年間に10日以上の取得が可能としなければならない
という決まりがあります。そのため、教育訓練休暇は実際にこのような日数になっている場合が多くあります。教育訓練休暇が会社にある場合は、積極的にスキルアップのために利用しましょう。
特別休暇のメリット
従業員のモチベーションの向上
特別休暇を提供することで、従業員はリフレッシュする時間を確保でき、業務に対する意欲が高まります。定期的な休暇があると、ストレスの軽減にもつながり、結果的に仕事のパフォーマンスが向上します。
離職率の低下
特別休暇の取得は従業員がプライベートの充実を図るための大切な手段です。従業員が仕事と私生活のバランスが取れた環境で働けていると感じることで、職場に対する満足度が高まり、エンゲージメントが向上します。このような環境が整えば、従業員は転職を考えることが少なくなり、離職率が低下につながります。
企業のイメージアップ
特別休暇を提供することで、企業が従業員の健康やワークライフバランスを重視していることが明確になります。これにより、社内外から「従業員を大切にする企業」としての認知が高まり、働きたい企業としてのイメージがアップします。
特別休暇のデメリット
人手不足
特別休暇を取得する従業員が増えると、人手不足が起こる可能性があります。人手が不足すると、業務が滞り、進行が遅れることがあります。特に少人数のチームや、休暇中の業務のフォローが難しい場合には影響が大きいです。
運用の複雑化
特別休暇の規定や運用が複雑である場合、管理が難しくなる可能性があります。特に、休暇の理由や条件によって異なる規定がある場合、管理部門の負担が増えることがあります。
特別休暇の制度を導入する方法
休暇制度の目的を決める
特別休暇の制度の効果を出すためには、導入する前にどのようなものにするか、従業員のニーズも確認しながら制度設計をすることが重要です。
何が達成されれば、その休暇制度の目的を果たしているのか、できるだけ定量的に評価できるようにしましょう。
例えば誕生日休暇は従業員全員に年に1度必ず使用できるタイミングがあるものですので、「該当者の○%以上が利用する」などの目標を置くこともできます。
休暇制度の条件やルール、社内申請フローを決める
就業規則の特別休暇の決まりを作ります。決まりを作る際には、次のようなことが大切です。
- 休暇はどの程度の日数がどのような時に取れるかをはっきりさせる
- 取る時の手続きを決める
- 有給にするか、無給にするかを決める
- 社員と経営者が両方とも誤解が生じないように、はっきりした表現で決まりを作る
社内に周知する
せっかく制度を作っても、社内の人が誰も知らないようでは活用されません。周知方法にはメールや社内掲示板への設置、定期的な社内メルマガや社内SNSでの投稿、活用者のコメントの紹介など、様々なことを行いながら利用を促進していきます。
弊社サービスTUNAG(ツナグ)では、このような周知から運用、制度の改善などを簡単に行うことができます。
休暇を取りやすい環境を作る
制度として特別休暇の制度を定着するためには、取りやすい仕組みを作ることが大切です。
休暇制度を導入している会社では、同僚・上長の理解、職場の雰囲気、フォローを休暇中にしてくれる人員の確保、取ることを経営者からすすめることが大切であると考えているようです。
会社のホームページ等でのアピールとして休暇制度を打ち出す場合は、入社後に「誰も使っていなかった」ということが無いようにしなければなりません。
そういったミスマッチを防ぐためにも、「ちゃんと活用される」ということが重要なのです。
特別休暇導入における注意点
特別休暇を導入する際は、以下の点に注意しましょう。
目的とルールを定める
特別休暇を導入する際は、取得可能な日数や条件、給与などについて基準やルールを設定しておきましょう。ルールが定められていることで、従業員がどのような場合に利用できるか理解しやすくなります。また、公平に特別休暇を取得できるようになるでしょう。
就業規則への明記
特別休暇を導入する場合、就業規則にその内容を明記する必要があります。終章規則の変更には、労働代表の意見聴取や行政への届出が必要となる場合があります。
従業員への周知
特別休暇制度を導入する際には、全従業員に制度の詳細を周知し、正しく理解してもらうことが不可欠です。説明会やマニュアル配布などを通じて、利用方法を従業員に理解してもらうことを推奨します。
特別休暇は会社の文化や個性をつくる
目的を明確に、会社の想いを込めて制度設計を行いましょう
特別休暇とは、法律で定められている休暇について、特別休暇の種類、特別休暇の制度を導入する方法についてご紹介しました。
特別休暇とは、法律で決まっていませんが、社員に会社が一つの福利厚生として休暇で与えるもので、慶弔休暇、ボランティア休暇、夏季休暇、誕生日休暇、リフレッシュ休暇、教育訓練休暇、などがあります。
特別休暇制度は、会社ごとに異なりますので、会社が大事にすることを表現できるものです。しっかりと会社のメッセージを込め、従業員の方に活用してもらえるように運用していきましょう。
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