介護休暇とは?取得要件や取得できる日数、介護休業との違いを解説
介護休暇とは、家族の介護に伴うちょっとした用事のために、仕事を休める短期休暇制度のことです。似た制度に介護休業もあるため、違いを理解しておく必要があります。介護休暇の基本や企業として押さえておくべきポイントを解説します。
介護休暇の基本
介護休暇は法律で保障された労働者の権利です。介護休暇とは何か、介護休業との違いと併せて見ていきましょう。
出典:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 | e-Gov 法令検索
介護休暇とは
介護休暇とは、労働者の家族が要介護状態にある場合、その労働者が対象家族の介護や世話をするために取得できる休暇のことです。育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)で定められています。
要介護状態とは、病気・ケガ・心身の障害などにより、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態です。次のように、日常生活で自立が困難なため継続的に介助が必要な場合が該当します。
- 食事・入浴・排泄などの介助が必要
- 病気や障害により通院や日常生活に付き添いが必要
- 認知症などで常時見守りが必要
また、法律上の対象家族は次の通りです。
- 配偶者(事実婚含む)
- 父母
- 子
- 配偶者の父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
親の通院に付き添ったり、介護サービスの契約手続きをしたりする場合に、介護休暇を活用できます。ケアプラン作成の打ち合わせのために取得することも可能です。
介護休暇の取得要件
介護休暇は原則としてすべての労働者が取得できます。正社員だけでなく、契約社員・パート・アルバイトも取得可能です。ただし、日雇い労働者は対象外となります。
なお、労使協定を締結している場合、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者が対象外になります。労使協定とは、会社と労働者代表が結ぶ労働条件に関する公式な合意文書のことです。労働者側の代表が合意することで、労働条件の一方的な不利益変更を防ぐ役割を持ちます。
以前は、労使協定を締結している場合に対象外となる労働者には、入社6カ月未満の労働者も含まれていました。2025年4月1日から、この要件は廃止されています。
介護休暇を取得できる日数
介護休暇を取得できる日数は、1年度につき対象家族1人あたり5日までと決められています。対象家族が2人以上いる場合は、合計で年10日までです。
介護休暇の取得単位は1日または時間単位です。ただし、労使協定を締結すれば、時間単位での取得を除外できます。この場合は1日単位でのみ取得可能です。
介護休暇と介護休業の違い
介護休暇と介護休業は名前が似ていますが、利用目的や期間、給付の有無などが異なります。分かりやすいように表にまとめました。
介護休暇 | 介護休業 | |
目的 | 通院の付き添いや介護サービス契約、ケアプラン作成などの短期的な用事 | 長期的な介護が必要で、まとまった時間仕事を休む |
対象家族 | 配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫 | 介護休暇と同じ |
取得可能日数 | 家族1人につき年5日(2人以上なら年10日まで) | 対象家族1人につき通算93日 |
取得単位 | 1日単位、時間単位 | 原則連続した日数(分割も可:最大3回まで) |
利用のしやすさ | ちょっとした介護の用事に合わせて取りやすい | 長期介護に備えてじっくり取得する制度 |
法的根拠 | 育児・介護休業法 | 介護休暇と同じ |
企業における介護休暇のポイント
従業員が介護休暇をスムーズに取得できるよう、企業が意識すべきポイントを紹介します。従業員任せにせず、企業としてもサポートすることが大切です。
制度の内容を周知する
介護に関する法令は頻繁に改正されます。企業としても最新の法改正内容を把握し、自社の就業規則や規定に適切に反映させるとともに、申請方法を分かりやすく周知しましょう。
また、従業員が相談しやすい窓口を設けることで、仕事と介護の両立を支援し、離職防止や人材確保にもつながります。
介護の進め方を家族で話し合ってもらう
介護休暇や介護休業の制度は徐々に柔軟になりつつありますが、取得できる日数には限りがあります。企業としては、従業員が計画的に制度を活用できるよう、事前に家族内での役割分担やケアマネジャーとの連携などを促す情報提供が重要です。
また、従業員が過度な負担を抱えないよう、制度の活用を後押ししつつ、業務の引き継ぎ体制や代替要員の確保など社内のサポート体制を整えることが求められます。
介護休暇に関するよくある質問
介護休暇について企業の担当者が悩みやすいポイントをまとめました。ひと通り目を通しておくことをおすすめします。
介護休暇の手続き方法は?
従業員の会社に対する介護休暇の申出の方法は、書面の提出に限定されていません。口頭での申請も有効です。
ただし、トラブル防止の観点から、多くの会社は書面や電子申請を義務づけています。緊急時などやむを得ない場合は電話やメールなどによる連絡を認め、後日改めて申請書や勤怠システムで正式に申請するなどの規定を設けておくとよいでしょう。
介護休暇中は給与の支払いが必要?
育児・介護休業法では、介護休暇について会社に賃金を支払う義務は規定されていません。ただし、会社が就業規則や労使協定で「介護休暇を有給とする」と定めている場合は、有給で取得可能です。福利厚生の一環として、有給の特別休暇として運用しているケースもあります。
なお、介護休暇は短期であるため、雇用保険の「介護休業給付」の対象にはなりません。長期の介護休業の場合に限り、要件を満たせば介護休業給付金が支給されます。
出典:Q&A~介護休業給付~について紹介しています。|厚生労働省
介護休暇の申請を拒否できる?
育児・介護休業法に基づき、労働者は介護休暇を取得する権利があります。会社は、「業務に支障があるから」などの理由で一方的に拒否することはできません。また、介護休暇の取得を理由に解雇や不利益な扱いをすることも禁止されています。
ただし、労使協定で介護休暇の除外対象となっている労働者から取得申請を受けた場合は、申請を拒否することが可能です。
対象となっている労働者からの申請を拒否する行為は法令違反となり、労働局からの是正勧告や企業名公表など行政指導の対象になり得ます。また、労働者とのトラブルに発展すると、労使関係の信頼低下・企業イメージ毀損・訴訟リスクにつながりかねません。
企業にとっては、コンプライアンス遵守が従業員の信頼確保・離職防止・企業価値向上に直結することも意識しましょう。
介護休暇と介護休業のどちらを勧めるべき?
介護休暇を勧めるべきケースと介護休業を勧めるべきケースをまとめました。
介護休暇を勧めるべきケース | 介護休業を勧めるべきケース |
通院の付き添い ケアマネジャーとの打ち合わせ 介護サービスの契約・施設見学 | 要介護度が高く、生活全般に介助が必要 介護サービス導入までの調整期間 家族が入院・退院し、生活環境の大幅な見直しが必要 |
「スポットで介護に対応したい」ケースでは介護休暇、「集中的に介護に専念したい」ケースでは介護休業が有効です。
まずは介護休暇を活用して短期的な対応や介護体制の整理に充ててもらい、その上で介護が長期化・本格化すると判断された場合に、介護休業を検討するよう勧めるのが現実的だといえます。
介護休暇と介護休業の違いを理解しよう
企業には従業員が介護に直面してからではなく、まだ関係のない段階からも情報提供や働き方に関する発信を続けることが望まれます。また、実際の介護は介護サービスや自治体支援の活用が不可欠であり、企業は従業員が適切に外部資源を利用できるようサポート体制を整えることが大切です。
介護は突発的に起こるからこそ、日頃から両立支援を行って従業員に安心感を与えることが、企業への信頼や働きがいにつながります。介護と仕事の両立を支援する姿勢を示し、より働きやすい職場環境づくりを進めましょう。