誕生日休暇とは?導入するメリットから就業規則の設定まで
こんにちは、エンゲージメントプラットフォーム「TUNAG(ツナグ)」を提供する株式会社スタメンの編集部です。
現代の働き方改革の中で、多くの企業が取り入れている福利厚生の制度の中でも、今回は「誕生日休暇」というキーワードに焦点を当てて解説します。
誕生日休暇は、その名のとおり、従業員の誕生日に休暇を与える制度で、従業員のモチベーション向上や満足度を高めるための福利厚生として導入されています。
しかし、この制度を「なんとなく」で実施しているだけでは、従業員の真のニーズに応えることは難しいでしょう。
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誕生日休暇とは
誕生日や誕生日月などに休暇を取得できる制度
誕生日休暇とは、バースデー休暇とも呼ばれ、社員の誕生日月に1日、休暇を取得できる制度です。
労働基準法で定められている有給休暇とは異なり、会社が独自のルールで設定する「特別休暇」の一つとして導入している企業と、有給休暇の取得率を上げるための「年次有給休暇の計画的付与制度」の一つとしてアニバーサリー休暇に、誕生日休暇を含んでいる企業があります。
誕生日という限定があるため、年に1日のみの短期休暇ですが、従業員からは評価が高いようです。
“『あったらいいと思う特別休暇制度』についてオリコンが20代から40代の社会人にアンケート調査を行ったところ、1位となったのは、取り入れている企業も見られる【誕生日休暇】だった。”
引用元:https://career.oricon.co.jp/news/58192/
毎日忙しく働く従業員にとって、自分の誕生日はゆっくり休みたいという希望があることや、「会社から祝われているようで、嬉しい」といった感情が生まれるでしょう。
誕生日休暇が普及したきっかけは?
誕生日休暇が普及した背景には、日本の企業において有給休暇の取得率が低い現状があります。多くの企業が有給休暇制度を設けているにもかかわらず、実際には「職場の空気を読む必要がある」「休暇を取ることで周囲に迷惑をかける」といった理由で、有給を自由に取得できないという声が多く聞かれます。これに対し、日本政府は2025年までに有給休暇の取得率を70%に引き上げる目標を掲げていますが、2020年の実績は56.6%にとどまっています。
そのため、従業員が気軽に休暇を取れるようにする工夫として、誕生日や記念日を祝うためのアニバーサリー休暇が注目されるようになりました。この休暇制度は、従業員にとって特別な日を大切にしながら有給を取得しやすくするもので、企業にとっても従業員の満足度を向上させる効果が期待されています。
特別休暇の一つで、企業によって扱いが異なる
誕生日休暇は、主として特別休暇の一種です。特別休暇とは、有給休暇のように労働基準法で定められている休暇ではなく、会社が独自に定めている休暇制度のことです。
特別休暇には、慶弔休暇、リフレッシュ休暇、裁判員休暇といった一般的なものから、失恋休暇、親孝行休暇、ペット忌引き休暇など、会社の個性を出し、魅力的な福利厚生で社内外にPRできる制度でもあります。
有給休暇の計画的付与制度の一貫として活用する場合も
中には、誕生日休暇を、「年次有給休暇の計画的付与制度」の一環と位置付けている場合もあります。現状、年次有給休暇は取得できていない人が多くいます。
「休むことで周囲に迷惑がかかる」「職場が気軽に申請できるような雰囲気ではない」「仕事が終わらないので、休みを取る気がしない」などの様々な理由で、申請できずにいる人が多く存在します。
一般的な有給休暇10日間のうち、5日間は病気や冠婚葬祭などの突発的な事態に備え、残しておく場合が多く見られます。残りの5日間に対して、企業が目的を提案することで、取得を推進させようというのが、「年次有給休暇の計画的付与制度」です。
誕生日休暇を、この計画的付与制度に加えている企業がみられます。有給休暇は取得理由を会社側に述べる必要はないと定められていますが、「誕生日」という理由があれば、より休みやすくなるメリットがあります。
また、事前に休む日が予測しやすいことから、チームで仕事をしていても仕事の調整が可能であり、周囲に負担がかかりにくいというメリットもあります。
有給か無給かは会社が自由に設定
特別休暇として設定する場合は、会社側が有給か無給かは自由に決定することが出来ます。特に無給にする際は社員に誤解を与えないよう、就業規則に規定しておくことが望ましいでしょう。
無給の場合というのは、給与が発生しないという状態ですが、通常の欠勤とは大きく異なります。精勤手当があるような場合は、無給の誕生日休暇で休んだからといって、欠勤としてカウントされ手当てがもらえない、といったことはありません。
人事評価の対象にも当てはまらず、就業規則に規定されたものとして堂々と休むことが出来ます。
傾向としては、誕生日休暇は、慶弔休暇やリフレッシュ休暇などと同様に、会社が労働者を労い、福利厚生の一環として与えるという性質から考えると、給料が支払われる有給である場合が多いでしょう。
誕生日休暇制度を導入する場合のステップ
有給か無給かを決める
有給か無給かは規定しておくことが重要です。就業規則に明記しておきましょう。前述の通り、一般的には有給であると捉えられがちのため、無給の際は特に誤解のないよう表現することが必要です。
取得できる日数を決める
誕生日休暇単体であれば、年に1日でよいでしょう。「アニバーサリー休暇」の一環として、「年次有給休暇の計画的付与制度」として誕生日休暇を設定している場合は、「誕生日の前後合わせて3日間を休暇とする」のように幅を持たせている場合もあります。
取得できるタイミングや申請フローを明確に決める
特別休暇の場合、誕生月がちょうど繁忙期と重なってしまった、重要なプロジェクトの納期であるなどの場合も考えられます。その場合は前後の月へ振替を調整できるようにするなど、業務への配慮も必要です。
有給休暇であれば、時季変更権というものが認められます。時季変更権とは、業務を行う上で、休暇取得が正常な運営を妨げるとみなされる場合は、会社が従業員の有給取得の時季を変更できる権利を持つというものです。 時季の変更は可能となりますが、労働者から請求があったにもかかわらず「有給休暇を与えない」ということは違法となりますので、注意が必要です。 時季変更権に関しては労働基準法第三十九条5項にも明記されています。
⑤ 使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
就業規則に記載する
(例) 第●条 誕生日休暇 1.労働者が申請した場合は、本人の誕生日月の1日、誕生日休暇を与え、その日は勤務として扱い有給とする。 2.希望日の1カ月前までに所属長に申請するものとする。 3.業務への影響等考慮される場合は、所属長と相談の上、前月もしくは翌月に振替る可能性がある。 4.入社後6カ月以上経過した労働者が取得できるものとする。
このような文例が想定されます。就業規則では、取得できる日数、誰に届け出るのか、何日前に届け出るのか、休暇が繁忙期と重なった場合はどうするのか、入社後全員がすぐに申請できるのか、有給か無給か、といったことを明記しておきましょう。 上記の例は特別休暇として、誕生日休暇が独立して規定される場合のものですが、アニバーサリー休暇として、有給休暇の計画的付与制度に誕生日休暇が含まれる場合は、まず「計画的付与制度」を就業規則に盛り込むことと、労使協定(会社側と労働者の過半数で組織する労働組合、もしくは労働者の過半数を代表する者との間の協定)を締結し、「計画的付与制度」に労働者から合意してもらう必要があります。 労使協定は会社と労働者の間で自由に決められるもので、所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありません。
誕生日休暇を設けるメリット
社員に対してのメッセージを込められる
誕生日休暇を設ける場合、社員に対して「会社が自分の誕生日を大切に扱っている」というメッセージにもなります。
また、誕生日を本人だけでなく「家族」の誕生日も含むことももちろん自由ですので、会社として大事にしたい理念やメッセージを伝えることができます。
採用時のアピールポイントにつながる
人事採用の場でも、福利厚生が充実しているという面を応募者にPRできるでしょう。しかし、実際には誰も活用していないという状況にならないように注意する必要があります。
有給休暇の取得率の向上につながる
「年次有給休暇の計画的付与制度」として誕生日休暇を運用する場合は、有給休暇の取得率をアップさせることにつながるでしょう。 有給休暇は取得率が低調な中、労働基準法が改正される法案が国会で成立しました。2019年4月から全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者は、年次有給休暇の日数のうち年5日、休暇を取得しなければならないことになっています。
誕生日休暇を設けるデメリット
業務の負担が増える可能性がある
誕生日休暇を導入すると、特に小規模な企業では、他の社員に業務の負担が集中する可能性があります。休暇を取る社員がいることで、その分の業務を代わりにカバーする必要があるため、チーム全体に負担がかかることがあります。これが長期間続くと、他の社員のモチベーションや業務効率に悪影響を及ぼす可能性も考えられます。
休暇を平等に取れない場合がある
誕生日休暇は特定の時期にしか取得できないため、繁忙期やプロジェクトの進行に影響を与えることがあります。そのため、従業員によっては誕生日休暇を希望通りに取れないケースが発生する可能性があります。繁忙期の社員が誕生日に休暇を取るのが難しい場合、社員間で不平等感が生まれる可能性があります。
コストがかかる可能性がある
誕生日休暇を有給で設定する場合、企業にとってはコストが増加する可能性があります。特に休暇を有給で提供する企業では、従業員が休んでも給与を支払わなければならないため、コスト管理が課題になることがあります。休暇中の業務をカバーするために、追加のリソースや人員を配置する必要が出てくる場合もあります。
誕生日休暇の他社事例
セラテックジャパン株式会社
セラテックジャパン株式会社では、特別休暇として誕生日休暇を導入しています。この休暇は有給であり、誕生月に1日間、取得することが出来ます。
また、該当社員名は社内報で掲載するという取り組みも行っており、誕生日休暇の存在が広く告知され、また会社全体で取得に対して前向であるというメッセージを出しています。このような施策は取得を促進する効果が期待できるでしょう。
トレンダーズ株式会社
トレンダーズ株式会社では、「家族バースデー休暇」という誕生日休暇と、お祝い金の制度があります。「社員の家族を大切にする」という会社側のメッセージを込めて、社員の配偶者・子供の誕生日には特別休暇が付与され、さらにお祝い金も支給しています。
福井県民生活協同組合
福井県民生活協同組合では、社内全体で年次有給休暇を取りやすい雰囲気づくりを心掛けているそうです。「年次有給休暇取得促進のため」として、誕生日休暇制度を導入しています。 誕生日月の 1 ヶ月前になると、所属長から有給申請用紙が渡されます。
上司から有給の申請を促されるため、「周囲に遠慮して休暇を申請しにくい」という心配がありません。 誕生日休暇だけではなく、同時にアニバーサリー休暇制度も導入し、最短で3日以上の特別休暇を可能としています。ほかに導入している年次有給休暇の計画的付与制度と組み合わせることで、連続 88日以上の長期休暇が取得できるそうです。
株式会社東急百貨店
年次有給休暇の取得促進のため、半期ごとに8日または11日の連続休暇、およびアニバーサリー休暇が取得可能な制度になっています。
あらかじめ休暇の編成表を部署ごとに作成、事前に社員個々人の予定をとりまとめて人事部に提出させています。そのような工夫の元、計画的な年次有給休暇の取得促進を行っています。アニバーサリー休暇の内容は、以下のような形で設定されています。
「本人及び家族の誕生日又は記念日・家族的行事の属する月に、年次有給休暇を年間2日取得するもの」としています。
引用元:https://work-holiday.mhlw.go.jp/detail/04176.pdf
事例参考元:https://work-holiday.mhlw.go.jp/case/
会社の想いを込めた休暇制度を
有給休暇取得促進のためにも、活用されやすい休暇制度が必要です
誕生日休暇は、慶弔休暇のような冠婚葬祭ではありませんが、誕生日という社員全員に訪れる記念日です。そのような機会を特別休暇として設定する、あるいは有給の計画的付与制度に活かすことで、会社から「社員を大切に扱っている」というメッセージになります。
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