子の看護休暇は何歳まで?2025年法改正で変わる対象年齢と取得条件を解説
子の看護休暇は、育児・介護休業法に基づく重要な制度です。しかし、対象年齢や取得条件について曖昧な理解のまま運用していると、従業員とのトラブルや人事対応の混乱を招く可能性があります。
この記事では、子の看護休暇の最新の対象年齢と取得条件について、実務的な観点から詳しく解説します。明日から使える制度運用のポイントもあわせてお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
子の看護休暇とは?制度の基本と改正ポイント
子の看護休暇制度の全体像を理解するため、まずは制度の目的と法的根拠、対象者の範囲について整理しましょう。
法改正により変更された点も含めて確認していきます。
子の看護休暇の目的と定義
子の看護休暇とは、労働者が病気やけがをした子どもの世話をするために取得できる休暇制度です。育児・介護休業法第16条の2に基づいて定められており、従業員の仕事と育児の両立を支援することが目的です。
この制度により、従業員は子どもが体調不良の際に、有給休暇を消化することなく看護に専念できます。また、病気の看護だけでなく、予防接種や健康診断の付き添いも対象となる点が特徴です。
看護休暇は法定の制度であるため、企業は従業員の申し出を拒否することはできません。ただし、無給とするか有給とするかは企業の判断に委ねられています。
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 | e-Gov 法令検索
制度施行の法的根拠と法改正(2025年4月)
子の看護休暇は、平成17年の育児・介護休業法改正により創設されました。その後、数度の法改正を経て制度が拡充されてきています。
法改正により、2025年4月から対象となる子どもの年齢が大幅に引き上げられました。改正前は「小学校就学前」だった対象年齢が、「小学校3年生修了まで」に拡大されています。そのため、9歳に達する日以後の最初の3月31日までの子どもが対象となりました。
また、取得事由も拡大され、従来の病気・けがの看護に加えて、学級閉鎖や入学式・卒業式への参加など、学校行事も一部対象に含まれるようになりました。これらの改正により、より柔軟で実用的な制度運用が可能になっています。
正社員・非正規雇用者など取得対象の範囲
子の看護休暇は、雇用形態に関係なく、ほぼ全ての労働者が取得可能です。正社員はもちろん、契約社員、パート、アルバイトも対象となります。
ただし、以下の条件を満たす必要があります。
- 申し出時点で継続雇用期間が6か月以上であること
- 週の所定労働日数が2日以下でないこと
これらの条件を満たしていれば、雇用期間の定めがある労働者も取得可能です。つまり、有期契約者であっても、6か月以上継続して雇用され、週3日以上勤務していれば看護休暇を取得できます。
労使協定により、勤続1年未満の労働者を除外することも可能ですが、多くの企業では法定通りの運用を行っています。
取得できる日数・時間単位
看護休暇の取得日数や取得方法について、具体的な運用ルールを確認していきましょう。子どもの人数や取得単位によって取得可能日数が変わるため、正確な理解が必要です。
年度内の取得可能日数(1人/複数子ども)
子の看護休暇は、1年度(4月1日から翌年3月31日まで)あたりの取得可能日数が決められています。
子どもが1人の場合は年5日まで、2人以上の場合は年10日まで取得できます。この日数は、対象となる子ども全体に対する合計日数であり、子ども1人につき5日ずつという意味ではありません。
例えば、対象年齢の子どもが3人いる場合でも、取得可能日数は年10日です。また、年度途中で子どもが生まれた場合や転職した場合は、按分計算により日数を算出します。
なお、この日数は法定の最低基準であり、企業はこれを上回る日数を設定することも可能です。
1日・半日・時間単位の取得方式
看護休暇は、従業員のニーズに応じて柔軟な取得が可能です。1日単位だけでなく、半日単位や時間単位での取得も認められています。
取得単位の種類
- 1日単位:終日休暇を取得
- 半日単位:午前または午後の半日休暇
- 時間単位:必要な時間だけ休暇を取得
時間単位取得の場合、1日の所定労働時間数を上限として、1時間単位で取得できます。例えば、所定労働時間が8時間の場合、最大8時間まで1時間刻みで取得可能です。
半日単位の場合、1日の所定労働時間の2分の1を「半日」として扱います。ただし、時間単位取得が困難な業務の性質がある場合、労使協定により半日単位までの取得に制限することも可能です。
取得単位を組み合わせることで、例えば「午前中は時間単位で2時間取得し、翌日は半日取得」といった柔軟な運用ができます。
子どもの対象年齢は何歳までか?最新制度の整理
最も重要なポイントである対象年齢について、法改正の内容と実際の運用方法を詳しく解説します。年齢の計算方法や特殊ケースへの対応も含めて確認しましょう。
改正前後の対象年齢の変遷
2025年4月の法改正により、子の看護休暇の対象年齢が大幅に引き上げられました。
対象年齢の変遷
改正時期 | 対象年齢 | 具体的な年齢 |
改正前(〜2025年3月) | 小学校就学前 | 満6歳年度末まで |
改正後(2025年4月〜) | 小学校3年生修了まで | 満9歳年度末まで |
改正の背景には、小学校入学後も子どもの病気や学校行事への対応が必要であり、働く親の負担軽減が求められていたことがあります。コロナ禍における学級閉鎖への対応なども、改正の要因の一つです。
実際に「小3修了」までと解釈される具体的年齢
「小学校3年生修了まで」という表現について、具体的にいつまでが対象になるのかを正確に理解しておきましょう。
法律上は「9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子」と定義されています。これは以下のように解釈されます。
- 4月生まれの子ども:小学校3年生の3月31日まで(9歳の誕生日後の3月31日)
- 12月生まれの子ども:小学校3年生の3月31日まで(8歳のまま小3修了)
つまり、子どもの誕生月に関係なく、小学校3年生の学年が終了する3月31日までが対象期間となります。9歳の誕生日を迎える時期は関係なく、学年単位で判断することがポイントです。
実務的には、年度初めに対象従業員とその子どもの学年を把握し、年度途中で対象外となる従業員がいないか確認することが重要です。
特殊ケース(就学猶予や年齢延長)への対応
就学猶予を受けた子どもや、特別な事情で年齢が通常と異なる場合の取り扱いについても理解しておく必要があります。
就学猶予を受けた子どもの場合
就学猶予を受けた子どもの場合、看護休暇の対象期間も延長されます。具体的には、小学校3年生修了まで(9歳になった年度の終わりまで)が対象となります。
この場合、以下の点に注意が必要です。
- 就学猶予の事実を確認する書類の提出を求める
- 対象期間の延長について従業員に説明する
- 社内システムでの管理方法を検討する
企業としては、このような特殊ケースに備えて、事前に対応手順を整備しておくことが重要です。就学猶予は比較的稀なケースですが、該当する従業員がいた場合に適切に対応できるよう準備しておきましょう。
取得の対象範囲や申請について
看護休暇の取得事由や申請手続きについて、実務上重要なポイントを整理します。2025年の法改正で対象範囲が拡大されているため、最新の内容を正確に把握しておきましょう。
病気・ケガ以外:予防接種や健康診断も対象に
従来から、子の看護休暇は病気やけがの看護だけでなく、予防接種や健康診断の付き添いも対象となっています。
取得可能な事由(従来からの対象)
- 病気・けがの看護:風邪、発熱、外傷など
- 予防接種の付き添い:定期接種、任意接種を問わず
- 健康診断の付き添い:乳幼児健診、学校健診など
これらの事由では、必ずしも医師の診断書は必要ありません。企業は合理的な理由なく証明書類の提出を義務付けることはできませんが、事後的に申請内容を確認することは可能です。
予防接種については、コロナワクチンなどの臨時接種も対象となります。また、健康診断には歯科検診なども含まれるため、対象範囲は意外に広いことを理解しておきましょう。
学級閉鎖や入学式など新たに追加された取得事由
2025年4月の法改正により、新たに以下の事由が追加されました。
- 学級閉鎖・学年閉鎖・休校:感染症等による臨時休校
- 入学式・卒業式への参加:保護者として参加する場合
- 授業参観・運動会:学校行事への参加
- 面談・懇談会:担任教師との面談等
これらの追加により、看護休暇の活用場面が大幅に拡大されました。特に学級閉鎖については、コロナ禍で頻繁に発生したことから、働く親のニーズが高い事由として追加されています。
ただし、学校行事への参加については、すべての行事が対象となるわけではありません。子どもの健康や安全、教育に直接関わる重要な行事に限定されると解釈されています。
事後申請や申請様式の注意点と証明書類要否
看護休暇の申請については、柔軟な取り扱いが認められています。申請のタイミングは原則として事前申請が望ましいですが、緊急時ややむを得ない事情がある場合は、当日や事後の申請も認められています。
ただし、事後申請の場合は、できるだけ早期に申請するよう従業員に周知しておきましょう。
申請様式と証明書類
申請様式については、企業が独自に定めることができます。ただし、以下の点に注意が必要です:
- 過度に複雑な手続きを要求してはならない
- 医師の診断書を必須とすることはできない
- 合理的な範囲での事後確認は可能
証明書類については、企業が求めることは可能ですが、従業員の負担を考慮した合理的な範囲に留める必要があります。例えば、学級閉鎖の場合は学校からの通知書のコピーなどが適切でしょう。
看護休暇を最適に運用するために
子の看護休暇制度を効果的に運用し、従業員の仕事と育児の両立を支援するには、単に法令を遵守するだけでなく、従業員が安心して制度を活用できる環境づくりが重要です。
まず、制度の周知徹底を図りましょう。2025年4月の法改正内容について、対象となる従業員に詳細を説明し、取得可能な事由や申請方法を明確に伝えることが必要です。特に、新たに対象となった学級閉鎖や学校行事への参加について、具体例を示しながら説明すると理解が深まります。
組織全体で子育て支援に取り組む姿勢を示すことで、優秀な人材の確保・定着にもつながります。看護休暇制度を通じて、従業員が安心して働き続けられる職場環境を構築していきましょう。