増える介護離職。企業と個人それぞれに必要な対策とは

社内ポータル・SNS「TUNAG(ツナグ)」が3分で分かるサービス資料はこちら 日本の高齢化社会が深刻になるにつれ、働き盛りの労働者が介護のために離職する「介護離職」が社会問題化しています。介護離職の問題は個人だけのものではなく、企業にとっても大きな課題です。増え続ける介護離職の現状や対策、企業としての取組みなどをまとめました。

介護離職とは

介護のためにやむを得ず会社を退職すること

親や親族など、家族の介護を理由に退職することを介護離職と呼びます。まだまだ働き盛りの40代〜50代が要介護者の子供に当てはまることが多く、職場でも周りで悩まれている方がいらっしゃるかもしれません。

増え続ける介護離職者

家族の中に要介護者がいた場合、配偶者や子供が介護に携わることになります。要介護者の子供世代というのは、40代から50代で、ちょうど企業の中核を担っている世代です。働き盛りの管理職も多く、日本の経済を支える層といってもいいでしょう。 総務省統計局が発表した「平成24年就業構造基本調査」によれば、平成23年10月~24年9月までの介護離職者は10万1,000人となりました。 平成19年から22年までの5年間は、8万人前半から9万人後半の中で推移していましたが、平成23年からの1年間でついに介護離職者は10万人の大台を超え、深刻さが浮き彫りとなりました。 さらに、2017年頃からはいわゆる「団塊の世代」が70歳代に突入し、要介護者の割合も増えています。今後ますます介護離職者が増加することは間違いありません。そのため、国を挙げた対策が急務となっています。 参考:平成24年就業構造基本調査 - 総務省統計局 -

介護離職による生活の変化

収入の低下

介護のために会社を辞めるという選択は、本人にとっても介護される側にとってもデメリットが大きいのが現実です。 最大の変化は、やはり収入の低下でしょう。今まで勤めていた会社を辞めることで、定期的な収入が減少します。パートタイムの仕事に就ければまだいいですが、介護の負担の大きさによっては仕事に就くこと自体が難しくなります。 介護の負担によって生活保護や借金、自己破産に陥ったという事例も多く、経済的に困窮するケースも発生しています。

介護うつなどの心身のトラブルが増加

介護というのは、プロでも大変な仕事です。慣れない介護は肉体的にも精神的にも負担が大きく、介護される側、する側の双方に大きなダメージを与えます。 介護離職を選択した人の中には「介護うつ」や「介護殺人」といった事例もあります。社会と切り離されて介護に追われる生活となることで、心身の余裕がなくなってしまうのです。 平成24年度に厚生労働省が実施した「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」では、介護離職者のうち64.9%が、仕事を続けている時より辞めてからの方が精神的な負担が増したと答えています。 さらに、肉体的な負担についても、56.6%の人が負担が増したという結果になりました。介護の負担を減らすはずの離職が、かえって心身の負担を増大させているのが介護離職の現実です。 参考:「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」 - 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 -

再就職が困難に

また、同じ調査では介護離職をした後の再就職についての調査も行っています。男性の56%、女性の55.7%は、介護のために仕事を辞めても、正社員として就業を希望しています。 しかし、介護離職後に正社員として再就職できたのは49.8%にとどまりました。介護離職した後に、望んだキャリアを継続するのは難しいという点でも、生活への負担は大きいでしょう。

介護が原因となる離職の現状

平成29年7月に、総務省は「平成29年就業構造基本調査結果」を発表しました。これによると、全国に約628万人の介護者がおり、そのうち約346万人が働きながら介護を続けています。 介護者の6割近くが介護と仕事の両方に従事しているという現実は、介護離職の問題に密接にかかわっているといえます。また、介護離職者の数は9.9万人で、以前として介護離職者は高い水準で推移しています。 参考:平成29年就業構造基本調査 -総務省 統計局-
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介護を理由として離職する原因

さまざまなリスクがあるにもかかわらず、介護離職が増え続けているのはなぜでしょうか。そこには、日本の社会を取り巻く複雑な原因の数々が絡み合っています。

少子高齢化で介護者の数が不足に

日本は少子高齢化社会といわれています。1949年に約270万人だった出生率は、2015年には約100万人と、ほぼ3分の1まで落ち込みました。 それに対し、65歳以上の高齢者の割合は増加の一途をたどり、要介護者数もそれに比例して増えています。要介護認定者数は、2000年に218万人でしたが、2017年にはついに600万人を突破しました。 要介護者に対して介護者の数が不足していることが、介護離職増加の第1の原因です。

在宅介護を推奨する政府

要介護者が増加すれば、介護給付費用も増えてきます。国家予算に対する介護費の負担は年々増大し、政府も介護費の抑制に苦慮しています。 そこで、これまで要介護度1でも利用できていた特別養護老人ホームもの介護度を3まで引き上げるなど、政府は在宅介護を推奨するようになりました。 施設に入れるハードルが上がったことで、在宅介護を選択せざるを得ない家庭が増え、介護離職まで繋がっているのが現状です。

「親孝行」という文化

日本では古くから「親孝行」の文化が根強くあります。子供は親のために尽くすことが美徳とされ、介護についても、親の面倒は子供が見るのが当たり前というのが暗黙の了解となっています。 そのため、施設に入れて介護を人に任せるのは親不孝という偏見を持った人も少なくありません。知らない他人に預けるよりは、多少の負担があっても家族が面倒を見た方がお互いに幸せだろうと考えるの人が多いのではないでしょうか。 こうした文化も、介護離職の背景にあるでしょう。

介護と仕事の両立の難しさ

介護を担う40代から50代の世代は、管理職について重要な役割を任されているケースが多いです。管理職として会社の中心となり働きながら、介護もそつなくこなすというのは非常に難しいでしょう。 介護をする社員には、介護休業や介護休暇の取得が法律で認められています。しかし、この世代は会社の経営状況が悪化すれば真っ先にリストラ対象になる層ともいえます。 有給休暇の取得率が国際的にも低水準の日本企業で、介護のために長期休暇を取るのは非常に勇気がいることでしょう。結果的に、働きながらの介護を支援する制度があっても、それをうまく活用できずに離職を選択することになります。

介護離職を防ぐためにできる対策

介護離職を防ぐためには、周囲からの理解と支援が何よりも大切です。個人として、企業としての両面から、介護離職を防ぐ対策を見ていきましょう。

個人として対策すること

介護が必要になったら、介護にかかる負担をできるだけ少なくするようにしましょう。家族だけで介護しようとするのは辞めておきましょう。

公的サービスの利用を検討

まずは介護認定を受け、ケアマネジャーと相談して公的サービスを利用しましょう。また、地元の地域包括支援センターや社会福祉協議会、保健所などでは、介護に関する相談を受け付けています。 ささいな事でも介護で困ったことがあれば、積極的に相談していくことで介護のストレスを減らすことができます。

知人や職場に日頃から相談できる環境づくりを

ケアマネジャーや地域の専門家以外にも、知人や職場にも介護が必要な家族がいることを伝えておきましょう。介護は誰の身にも起こりうるものです。周囲とのコミュニケーションを通して、日頃から介護に対する理解を深めておきましょう。 介護を家族だけで抱え込むと、負担が非常に大きくなります。介護度が進行しても、状況に応じた対応がスムーズにできるように、早い段階で周囲に相談しておくのが一番です。いざというときに安心できる状況を作っておきましょう。

企業として支援できること

介護休暇と介護休業の制度の整備と告知

従業員が仕事と介護を両立できる環境を作るのは、企業としての義務です。 家族の介護を目的とした休業制度には、介護休暇と介護休業があります。従業員から介護のための休業を取得したいという申し出があった場合、すぐに対応できるようにしておきましょう。 介護休業とは、2週間以上の期間にわたって家族の介護が常時必要な場合に取得できる休業です。平成29年1月より全面施行された育児・介護休業法では、年間93日までの介護休業を年3回まで分割して取得することが可能となりました。 平成28年3月に育児・介護休業法が改正されるまでは、原則1回までしか介護休業の取得が認められなかったので、より介護休業が取りやすくなりました。 介護休業が年間93日まで利用可能なのに対して、介護休暇は要介護の家族1人につき年間5日までの休みが与えられます。要介護の家族が2人の場合、10日までの取得が可能です。 介護休業との違いは、半日単位で取得できる点です。介護のための手続きや通院の付き添いなど、短時間だけ介護のために休みたいという要望にも対応できるようになります。 また、改正された介護休業法では介護目的の短時間勤務が、介護休業と別枠になりました。制度の利用開始から3年以内の期間で2回以上の短縮措置を利用できるようになり、介護と仕事の両立のしやすさが大幅に向上しました。 介護休業と短時間勤務の併用も可能です。さらに、家族の介護に従事している従業員は、介護が終了するまで時間外労働の免除申請が可能です。

柔軟な働き方ができる環境づくり

介護離職を避けるためには、柔軟な働き方ができる環境作りも必要です。自宅で仕事ができるようにリモートワークを活用する企業も増えています。育児や介護で自宅を離れられないという場合でも、リモートワークなら離職することなく仕事を続けることができます。 こうした制度の数々を企業が率先して伝え、従業員が仕事と介護の両立をしやすいようにサポートしていきましょう。

職場に相談窓口を設置する

従業員が気軽に介護について相談できるよう、介護休業取得やリモートワーク支援のための相談窓口を設置するのも有効です。 介護の問題を当事者だけのものとしてとらえず、制度を全社員に周知することで、介護に対する意識を変えることも重要です。

介護離職はますます身近な問題に

防ぐことができる離職を発生させないような仕組みづくりを

介護離職は、今後ますます身近な問題となっていきます。介護のために離職するのは負担が大きく、結果的には後悔するケースがほとんどです。仕事と介護を両立できる環境を作ることが、企業にとっても介護者にとっても大切です。 そのためにも、介護者はできるだけ多くの人に相談し、企業は従業員の介護をサポートする仕組みを作るようにしましょう。

エンゲージメントを高めるための社内制度のプラットフォーム『TUNAG(ツナグ)』について

TUNAG(ツナグ)では、会社と従業員、従業員同士のエンゲージメント向上のために、課題に合わせた社内制度のPDCAをまわすことができるプラットフォームです。 会社の課題を診断し、課題に合った社内施策をご提案、その後の設計や運用のサポートまで一貫して行っています。課題の診断は、弊社の診断ツールを使い把握することが可能です。ツールと専任のコンサルタントの支援で、経営課題を解決に貢献いたします。 会社として取り組んでいる介護休暇や介護休業の案内や告知、相談窓口への相談など、従業員が本来知っておくべき制度や取り組みを浸透させるためにTUNAG(ツナグ)を活用いただいています。 会社の取り組みの周知、従業員がいきいきと働き、活躍し続ける会社づくりの支援をしておりますので、気になる方は下記より『TUNAG(ツナグ)』の資料を無料でダウンロードください。
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