健康保険の加入条件や必要な手続きは?社会保険に加入するメリットや注意点も解説

健康保険は社会保険の一種で、条件によっては必ず加入しなければいけません。特に近年の法改正によって、厚生年金保険は適用範囲も拡大しているので、条件とともに、必要な手続きや注意点を押さえておきましょう。健康保険に加入するメリットも解説します。

健康保険の基礎知識

健康保険は、病気やけがなどを医療機関で治療する際、対象者が自ら負担する医療費を軽減できる保険制度です。社会保険の一種であり、加入条件や対象が決まっているので、まずは基本的なところから理解しておきましょう。

健康保険は社会保険の一種

社会保険は国民の生活における、さまざまなリスクに備えるための公的な保険の総称です。健康保険はその一種で、加入者が病気になったり、けがを負ったりした場合の医療負担を軽減します。歯医者にかかる場合や出産で入院する場合などにも、健康保険を適用可能です。

加入者は日頃から保険料を支払っておき、必要なときに給付が受けられる仕組みで、企業で働いている場合、「組合健保」あるいは「協会けんぽ」への加入が求められます。

健康保険の種類

健康保険には大きく分けて、次のように「被用者保険(被用者健康保険)」「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」があります。

  • 被用者保険(被用者健康保険):会社員や公務員が加入する保険で、「組合健保」や「協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)」「共済組合」がある。
  • 国民健康保険:自営業者やフリーランス、農業従事者などが加入する。被用者保険に加入していない場合も加入対象となる。
  • 後期高齢者医療制度: 75歳以上の高齢者(あるいは65歳以上で、一定の障がいを持つ人)が加入対象となる。

企業で働いている人は、上記のように被用者保険(「組合健保」か「協会けんぽ」)への加入が必要で、公務員も「共済組合」に加入します。一方、自営業者やフリーランスなどは、都道府県と各市町村が運営する国民健康保険の対象です。国民皆保険制度により、日本国民は必ず、何らかの健康保険への加入が求められます。

健康保険(社会保険)の加入条件を確認しよう

健康保険は社会保険の一種であり、社会保険の加入条件に準じます。ここでは健康保険を含む社会保険の加入条件を、従業員側・企業側のそれぞれについて、詳しく確認しておきましょう。

従業員の加入条件

企業で働く従業員の場合、まず正社員(正規雇用)の立場にある者は、原則として全員が加入対象となります。企業の代表者や役員なども同様です。一方、パートやアルバイトを含め、非正規雇用の立場にある者も、次の条件を満たしていれば社会保険の加入対象となります。

  • 週の勤務時間が20時間以上であること
  • 給与が月額88,000円以上であること
  • 2カ月を超えて働く予定があること
  • 学生の立場ではないこと(休学中の場合や、定時制・通信制の学生は加入対象)

これらに加えて、従業員の年齢も条件となり、原則として70歳未満の者が加入対象です。70歳を超えた場合には,高齢者医療制度や後期高齢者医療制度に切り替わります。

なお、企業の従業員数も社会保険の加入条件となるので、覚えておきましょう。詳しくは後述しますが、2024年10月からは従業員数が51人以上の事業所において、上記の条件を満たしている場合に加入対象となります。

企業側の加入条件

社会保険は事業所単位での適用となり、必ず加入しなければならない「強制適用事業所」と、一定の条件を満たせば、社会保険に加入できる「任意適用事業所」に分けられます。

法人の事業所は強制適用事業所であるため、一般企業は必ず、社会保険に加入する必要があります。また個人事業の場合でも、常時5人以上の従業員を雇用している場合は、強制適用事業所とみなされるので、加入が必要です。

それ以外の個人事業主は、原則として任意適用事業所となるため、社会保険には加入できません。ただし、従業員の半数以上が同意しており、事業主の申請によって厚生労働大臣の認可を受ければ、適用事業所として社会保険に加入できます。

健康保険(社会保険)の加入に必要な手続きは?

健康保険(社会保険)の加入に必要な手続きも、ここで押さえておきましょう。従業員の加入手続きも、雇用側(企業)がしなければならないので、経営者や労務担当者などは、きちんと理解しておく必要があります。

従業員の加入手続き

従業員を社会保険に加入させる必要がある場合には、事業主が年金事務所に対して、加入の届出をしなければいけません。加入義務の発生日から5日以内に、必要事項を記入した上で、事務所を管轄する事務センターや年金事務所に対して、申請書類(被保険者資格取得届)を提出します。

届け出の際には、当該従業員のマイナンバーか基礎年金番号が必要となるので、事前に用意してもらいましょう。窓口での申請のほか、郵送や電子申請も可能です。

出典:就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き|日本年金機構

企業側の加入手続き

企業が社会保険に加入する場合、適用事業所の条件を満たした日から5日以内に、新規適用届を事務センターか、事務所を管轄する年金事務所に提出します。

法人の場合は登記簿謄本が必要なので、事前にきちんと用意しておきましょう。適用事業所の要件を満たした個人事業主の場合は、住民票(世帯全員分)の添付が求められます。

出典:新規適用の手続き|日本年金機構

健康保険(社会保険)に加入するメリット

健康保険をはじめとして、社会保険に加入するメリットは、主に以下の通りです。病気やけがなどに備えられるのに加えて、経済的な負担を減らせます。

病気やけがなどの際に給付を受け取れる

突然の病気やけがなどの際、治療にかかる自己負担額を減らせます。社会保険に加入していれば、治療費の一部のみ負担すればよく、さらに傷病手当金や出産手当金の給付が受けられます。

給与の3分の2程度の給付を受けられるので、急な出費を抑えられるのは大きなメリットといえるでしょう。なお、国民健康保険の場合、傷病手当金や出産手当金の給付制度はないので、社会保険ならではの特徴です。

社員の経済的な負担を減らせる

国民健康保険や国民年金は、被保険者が全額保険料の納付をする必要がある一方で、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入した場合は、保険料の半分は会社が負担します。従業員にとって経済的な負担を減らせるのも、社会保険のメリットです。

実際、健康保険(協会けんぽ)と国民健康保険の保険料を比較すると、多くのケースで健康保険の方が被保険者が納付する保険料が安くなります。ただし、収入の状況によって変わってくるので、自分でシミュレーションしてみることも大事です。

扶養制度による保険料の削減も可能に

配偶者や子どもなどは、被保険者の扶養家族として認定されれば社会保険に加入できます。扶養家族の保険料は追加で負担する必要はないため、家族全体としてみると、納付する保険料が少なくて済むのも社会保険のメリットです。

扶養家族も病気やけがの際には、健康保険の給付を受けられるので、医療費の負担が軽減されます。高額医療制度の対象にもなるのに加えて、扶養控除など税制上の優遇措置を受けられる場合もあります。

厚生年金保険の加入で将来の年金額も増える

社会保険に加入すれば、健康保険とともに厚生年金保険にも加入します。厚生年金保険の加入により、将来受け取れる年金の額が増えるのもメリットです。

国民年金には、65歳から給付を受けられる老齢基礎年金と、障がいで生活が制限される場合に受け取れる障害基礎年金、自分が亡くなった場合に家族が受け取れる遺族基礎年金があります。

社会保険に加入している場合、基礎年金に厚生年金分が上乗せされるため、老後に生活しやすくなるでしょう。若いうちから社会保険に長く加入していれば、それだけ老後に多くの給付を受けられます。

健康保険に関する注意点

健康保険(社会保険)は一定の条件を満たすと、企業側も従業員側もともに、必ず加入しなければならない制度です。以下のように、加入義務があるにもかかわらず未加入だと、罰則を受けるケースがあるので注意しましょう。

また法改正により、健康保険・厚生年金保険の加入対象が拡大しています。従業員を雇用する立場にある人は、きちんと押さえておく必要があります。

社会保険に未加入だと罰則を受ける可能性がある

強制適用事業所が社会保険に加入していないと、罰則の対象となる恐れがあります。日本年金機構から社会保険への加入案内が届いた場合は、速やかに従うようにしましょう。案内を無視し続けていると、結果的に強制的に加入させられるのに加えて、過去にさかのぼって保険料を支払う必要が出てきます。

強制適用事業所は条件を満たしている従業員を、必ず社会保険に加入させなければいけません。必要な手続きをしていないと、6カ月以下の懲役、または50万円以下の罰金の対象となります。罰則の対象とならないように、加入義務が発生しがら、速やかに手続きをしましょう。

2024年10月から健康保険・厚生年金保険の加入対象が拡大

2024年の9月時点において、従業員数が101人以上の企業などで働くアルバイトやパートなどの短時間労働者も、健康保険・厚生年金保険の対象とされています。

しかし2024年の10月からは、健康保険・厚生年金保険の加入対象が拡大されるので、ここで押さえておきましょう。10月からは、従業員数が51人以上の企業などで働く短時間労働者も、社会保険への加入が義務化されます。

該当する事業主は必ず手続きをする必要があり、未加入の状態のままだと、上記のように罰則の対象とされる恐れがあるので、注意しなければいけません。

出典:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内|日本年金機構

加入条件を理解し、適切な手続きを行う

健康保険(社会保険)は、一定の条件を満たす場合、必ず加入が求められる公的な保険制度です。従業員にとっては、病気やけがなどの際に給付を受け取れるのに加えて、扶養制度により家族の保険料を削減できるなど、多くのメリットがあります。

強制適用事業所は必ず社会保険に加入する必要があり、条件を満たす従業員を加入させていないと、罰則の対象となる恐れがあります。事業主は加入の条件をよく理解しておき、必要ならば速やかに手続きをするようにしましょう。社会保険に関する法律はたびたび改正されるので、定期的にチェックすることも大事です。

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