年間最低休日とは?労働基準法の105日ルールと企業が知るべき法的リスク

年間休日の設定は、単なる福利厚生の問題ではなく、労働基準法で定められた企業の法的義務です。本記事では、年間最低休日105日の根拠となる法的要件を詳しく解説します。さらに、法定基準を満たさない場合のリスクや、例外的なケースについても紹介します。適切な休日制度の構築は、法的リスクの回避だけでなく、従業員満足度の向上や優秀な人材の確保にもつながる重要な経営戦略となるでしょう。

年間最低休日とは何か

年間休日の適正な設定は、企業の法的責任を果たすだけでなく、従業員の健康と生産性を守る基盤となります。

まずは年間休日の基本的な定義と、法的に求められる最低基準について正確に理解しましょう。

年間休日の定義

年間休日とは、企業が定める1年間の休日の総数を指します。これには週休日、祝日、夏季休暇、年末年始休暇などが含まれます。ただし、有給休暇は含まれない点に注意が必要です。

労働基準法では「休日」を「労働契約において労働義務がない日」と定義しています。つまり、従業員が出勤する必要がない日全てが休日です。会社の創立記念日や、お盆休みなども年間休日に含まれます。

年間最低休日は105日

労働基準法に基づく年間休日の最低ラインは105日です。この数字は、法定労働時間から逆算して導き出されます。

労働基準法では、1週間の法定労働時間を40時間と定めています。1年間は約52週なので、年間の法定労働時間は2,080時間となります。1日8時間労働の場合、2,080時間÷8時間=260日が年間労働日数の上限です。

365日から260日を引くと105日となります。これが年間最低休日105日の根拠です。この計算は、全ての企業が守るべき最低基準といえるでしょう。

年間休日の平均日数

厚生労働省の「令和6年就労条件総合調査の概況」によると、年間休日の平均日数は112.1日です。多くの企業が法定最低日数を上回る休日を設定していることが分かります。

業界や企業規模により、年間休日数には差があります。1企業あたりの平均年間休日総数を企業規模別にみると、「1,000人以上」が117.1日、「30~99人」が110.0日となっており、大企業ほど休日数が多い傾向にあります。

優秀な人材を確保するためには、平均以上の休日設定が重要です。特に若い世代は、ワークライフバランスを重視する傾向が強くなっています。競争力のある休日制度は、採用活動における大きなアピールポイントとなるでしょう。

参考:令和6年就労条件総合調査の概況|厚生労働省

年間休日の最低ラインを割っても違法にならないケースとは

年間最低休日105日は原則として守るべき基準ですが、特定の条件下では例外が認められる場合があります。ただし、これらの例外は厳格な要件を満たす必要があり、安易な適用は避けるべきでしょう。

1日当たりの労働時間が短い場合

1日の所定労働時間が8時間未満の場合、年間休日が105日を下回っても違法とならないケースがあります。これは、年間の総労働時間が法定基準内に収まるためです。

例えば、1日7時間労働の場合を考えてみましょう。年間2,080時間÷7時間=約297日が年間労働日数の上限となります。365日から297日を引くと68日となり、105日を大きく下回ります。

ただし、このような設定は現実的ではありません。従業員の生活リズムや健康面を考慮すると、適切な休日の確保は不可欠です。短時間労働であっても、週休2日程度は確保すべきでしょう。

休日労働をしても年間休日105日は守らなければならない

労使間で36協定(時間外・休日労働に関する協定)を締結している場合、一定の条件下で休日労働が可能となります。ただし、これは年間休日を105日未満にできるという意味ではありません。

36協定により可能となるのは、法定休日における労働です。休日労働を行った場合でも、代替休日を付与する必要があります。つまり、年間トータルでの休日数は確保しなければなりません。

年間最低休日を下回った場合のリスク

年間休日が法定基準を満たさない場合、企業はさまざまなリスクに直面します。これらのリスクを正しく認識し、適切な対策を講じることが重要です。

労働基準法違反時の具体的罰則内容

労働基準法では第35条に休日の取得を義務付けており、これに違反すると、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。これは事業主だけでなく、人事責任者個人も対象となる場合があります。

悪質なケースでは、企業名が公表されることもあります。いわゆる「ブラック企業」として社会的信用を失い、あらゆるステークホルダーとの関係にも影響が出かねません。上場企業の場合、株価への影響も懸念されます。

さらに、従業員から未払い賃金の請求を受ける可能性もあるでしょう。休日労働に対する割増賃金の支払い義務が発生し、過去に遡って請求されるケースも考えられます。

労働基準法 35条| e-Gov 法令検索

従業員満足度や離職率への悪影響

休日が少ない職場では、従業員の疲労が蓄積しやすくなります。心身の健康を害し、生産性の低下につながることは明らかです。より良い労働環境を求めて転職を考える従業員も多くなるでしょう。

離職率の上昇は、採用コストの増加を招きます。新人教育にかかる時間と費用も無視できません。結果として、組織力の低下と業績悪化につながる悪循環に陥ります。

また、休日の少なさは採用活動にも悪影響を及ぼします。求職者は労働条件を重視する傾向が強まっているため、競合他社と比較して見劣りする休日設定では、優秀な人材の確保は困難でしょう。

労働基準監督署による是正勧告を受けることも

従業員からの通報により、労働基準監督署の調査が入る可能性があります。年間休日の不足が確認されれば、是正勧告を受けることになります。

是正勧告を受けた場合、指定期日までに改善報告書の提出が求められ、改善が見られない場合は、より厳しい行政指導や刑事告発に発展する可能性もあるでしょう。

労基署の調査は、年間休日だけでなく労務管理全般に及びます。他の法令違反が発覚すれば、さらなる是正勧告を受けることになるため、企業イメージの低下は避けられません。

適切な年間休日制度構築のためのポイント

法令順守はもちろん、従業員が働きやすい環境を整備することが重要です。適切な休日制度の構築は、組織の持続的成長を支える基盤となります。具体的な取り組み方法を理解し、実践に移していきましょう。

勤怠管理ツールの導入

正確な労働時間の把握は、適切な休日管理の第一歩です。勤怠管理ツールを導入することで、客観的なデータに基づく管理が可能となります。

勤怠管理ツールでは、以下の項目をチェックできます。

  • 実労働時間:始業・終業時刻の正確な記録
  • 休日出勤状況:法定休日と所定休日の区別
  • 時間外労働時間:月次・年次での集計
  • 有給休暇取得状況:取得率の把握と促進
  • 代休・振替休日:適切な管理と消化促進

これらのデータを活用することで、労働基準法違反のリスクを未然に防げます。また、従業員ごとの労働状況を把握し、適切な業務配分も可能となるでしょう。

休む文化を醸成する

制度を整えるだけでなく、休みやすい職場文化の醸成が不可欠です。経営者や役員、管理職が率先して休暇を取得し、部下にも積極的に休むよう促しましょう。

休暇取得を促進するための具体的な取り組みとして、以下が効果的です。

  • 計画年休制度:年度初めに休暇計画を立てる
  • 連続休暇の推奨:5日以上の連続休暇を奨励
  • 休暇取得率の見える化:部署ごとの取得率を公開
  • 評価への反映:適切な休暇取得を評価項目に含める

これらの施策により、「休むことは悪いこと」という意識を変革できます。従業員が心身ともにリフレッシュすることで、生産性の向上も期待できるでしょう。

企業文化の醸成・コミュニケーション活性化にはTUNAGがおすすめ

休む文化を根付かせるには、組織全体のコミュニケーション活性化が欠かせません。組織改善クラウド「TUNAG(ツナグ)」では、そうした企業文化の醸成を支援しています。

TUNAG上で、全従業員に向けたメッセージやお知らせを配信することで、経営層からの「しっかり休もう」というメッセージも、効果的に伝えることが可能です。また、休暇中の楽しい過ごし方を社内SNS機能で共有することで、休暇取得への抵抗感を減らせるでしょう。

さらに、サンクスカード機能を活用すれば、休暇前の業務引き継ぎへの感謝も伝えられます。お互いに協力し合う文化が醸成され、安心して休暇を取得できる環境が整います。

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適切な年間休日制度を構築して働きやすい職場を

年間最低休日105日は、企業が守るべき最低限の基準です。しかし、真に働きやすい職場を実現するには、法令順守だけでは不十分でしょう。従業員の健康と幸福を考慮した、より充実した休日制度の構築が求められます。

適切な休日制度は、法的リスクの回避だけでなく、組織の競争力向上にもつながります。従業員満足度の向上、離職率の低下、優秀な人材の確保など、多くのメリットをもたらすでしょう。

従業員一人一人が心身ともに健康で、生き生きと働ける職場環境を目指しましょう。それが、企業の持続的成長への確かな第一歩となるはずです。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
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