効果的な部下の褒め方のコツとは?やってはいけない例や参考書籍もご紹介

ビジネスでは「褒め方」が重要

褒めるマネジメント力が求められる時代に

ビジネス、特に仕事を通じての上司と部下の関係では、部下の管理や育成などのマネジメント力が必要となります。 一昔前までは部下を叱責する光景もよく見られましたが、パワハラなどの問題もあり部下を叱らずに褒めるマネジメントが主流となってきています。 これまで上司から叱られて育ってきた世代が上司になり、最近の部下への育成方法が分からないなどの意見も耳にします。ここでは褒める事の重要性や、効果についてご紹介いたします。

褒めるマネジメントのメリット

自己肯定感を上げ、前向きに捉えさせる

人は褒められると自己肯定感が増し意欲も増すと言われています。ルールを守れないなど叱るべきポイントもありますが、叱り方次第や部下の性質次第では失敗するとモチベーションの低下を助長してしまいます。 例えば、「君の資料はさっぱり理解できない。」など否定の言葉を投げかけられると落ち込みますし、資料作成は向いていないとネガティブに捉えてしまいます。 一度ネガティブに捉えてしまうと苦手意識が生まれ、「また怒られるのはイヤだし資料作成はやりたくないなぁ」という方向に意識が向かってしまうことも。 逆に「資料が分かりやすく纏まっていて良かったよ」などと褒めてもらえれば悪い気はせず、自分の長所だと認識する事ができるようになります。結果として次はもっと分かりやすい資料作りに専念しようと意識が向かいます。

部下の自主性を引き出す

一度褒められて自分の長所に目が向くと仕事が楽しくなり、「もっと仕事ができるようになりたい」と考えるようになります。 結果、「資料作成が上手くできるようなって褒められたから、次は提案書にも活用してみよう!」「営業も頑張ってみよう!」など、自発的に自分ができる範囲を広げていくことが期待できます。このように褒めることは部下の向上心を引き出すのにも有用です。

仕事で褒める時のコツ

否定語を使わない

「●●しない」「●●ではない」などの否定語は脳が理解しにくいと言われています。 例えばビジネスシーンでは、「納期に遅延しないで良かったね」と言われるよりも「納期前にちゃんと納品出来て良かったね」と褒められる方が効果的です。 前者は「遅延するかもしれないと思われていたのではないか」というネガティブな印象が残ってしまう可能性がありますが、後者は計画的に納品ができたことを褒めてもらえたという印象を与えることができます。

相手の名前を入れて褒める

褒める際のポイントとして「資料ありがとう。●●さんのおかげで私の仕事がスムーズに進んだよ」などと名前を入れる事は効果的です。自分の感情として伝える事で言葉に真実味が増します。 また、そうする事で相手は褒められていると実感しやすくなります。

嘘をつかない

無理に褒めようとしたり、見え透いた嘘は逆効果です。あきらかに嘘っぽい褒め言葉やお世辞は、その人の言う言葉の信憑性が問われてしまいます。 また、日頃から褒める事に慣れていない人にとってはハードルが高いかもしれませんが、無理に褒める必要もありません。本当に褒めたいと思った事を肯定的な言葉で口に出すことから始めると良いのではないでしょうか。

褒めるポイントは具体的に伝える

褒める時は、「何が良かったのか」をしっかり伝えないと受け取り方が異なってしまいます。「良かったよ」とだけざっくりと褒められても、そもそも褒められている事に気づけないことも。 例えば「今月は目標達成出来て良かったね」と全体を褒められるよりも「先月よりも3%成約率が上がっているし、目標も110%達成出来て良かったね」と何がポイントだったのかを伝えてあげる事も大切です。 この例でいえば、「成約率が上がった」=本人の営業スキルが上がったということに気づいて嬉しいと感じることができます。具体的な数値を伝える事で、部下自身の成長幅を客観的に捉える事ができるようになるでしょう。

過程を褒める

目標を達成した結果を褒めるだけでなく、その過程や行動を褒める事も重要です。また、目標が未達だったとしても、「行動量は上がっているので良かったよ、次は○○を意識していこう」など、良かった点を褒める事ができれば、次の行動にも良い影響が生まれます。 目標に対して未達なのはもちろん良くない事ですが、「今月も未達」と言われ続けていると、ネガティブな方向に意識が向いてしまうでしょう。未達でも良かったポイントを伝えることで、少しずつ前に進んでいるという実感を持ってもらうことが大事です。 また、子育ての場でもいわれることですが、「生まれつきの頭の回転の良さ」を褒めると、簡単な方を選んでいくようになる研究結果も出ています。頭の良さを褒めるのではなく、過程・行動を褒める事で、難易度の高い課題にもチャレンジする姿勢が身につくようになります。

やってはいけない褒め方例

部下を褒める際は、ただ褒めれば良いわけではありません。褒め方によっては逆にモチベーションを下げてしまったり、これで良いんだと現状に満足させてしまう事もあります。ここでは失敗事例をいくつかご紹介いたします。

褒めるポイントを間違える

褒める水準は人によって異なる事に留意しましょう。例えば新卒の部下と30才過ぎのベテランではスキルや経験が異なります。 ベテラン社員にとって難易度の低い仕事に対して必要以上に褒めると反感を買い、逆効果になることも。自分を過小評価しているとプライドを傷つける事にも繋がります。

過度なインセンティブ賞与

営業達成などのインセンティブ賞与は営業マンにとってのモチベーションに繋がります。一方で与えすぎるとインセンティブがある事が当たり前となってしまいモチベーションに直結しなくなります。 営業成績を伸ばしたいのであればインセンティブに頼り過ぎない制度を構築しましょう。

尊敬と感謝がない

基本的に上司から部下へ褒めますが、褒めると同時に感謝の気持ちを伝えたりすることで、より伝わるでしょう。尊敬や感謝の気持ちが無いと、上から目線の嫌味な褒め方になってしまいます。

褒めるだけで終わる

褒められ続けていると慣れてしまいます。褒める事と同時に、場合によっては改善点も伝えてみましょう。客観的に、数字などの具体例を提示しながら「もっと良くなるよね」という意図で伝わるように工夫してみましょう。

効果的な褒め方を学ぶことができる参考図書

コーチングのプロが教える「ほめる」技術 鈴木義幸 日本実業出版社

2002年に創刊されて以来、ロングセラーの一冊です。 ほめるタイミングや言葉を相手によって使い分け、どのようにして人を動かすかについての手法が書かれた一冊です。

どんな年上部下でも一緒に働きたくなる上司のルール 浜村友和 青春出版社

年上部下との接し方に悩んでいる方に限らず、管理職にもオススメの一冊です。 小売・店舗マネジメントを中心に書かれていますが、どんな業態でもスタッフの多い職場では参考になります。

マインドセット「やればできる-」の研究 キャロル・S・ドゥエック 草思社

スタンフォード大学シリーズの話題の書籍で、ビジネス書としてもランキングの上位に入っています。博士の研究によると能力を褒めると子供の知能が下がり、努力を褒めると子供知能が上がったそうです。 つい言ってしまいそうな危険な褒め方などにも言及されており、部下育成にも役立つ一冊です。

ほめられると伸びる男×ねぎらわれるとやる気が出る女-95%の上司が知らない、部下の取扱説明書 佐藤律子 青春出版社

男性の部下、女性の部下、性別によってコミュニケーションの取り方や褒め方、叱り方などの事例が紹介されています。 また、モチベーションをあげるための声の掛け方なども性別によって異なるため、そのポイントを抑えるだけで仕事の成果が変わったり、上司と部下の信頼関係も変わってきます。

部下との良好な関係構築に「褒める」技術は必要

部下を褒めること、また褒め方にもポイントがあります。部下とも良好な関係を築き、人材育成にも繋がる「褒め方」は生産性の向上や離職率などにも直結します。 また上司としてのマネジメント力も向上しますので、「褒める」人材育成を試みてはいかがでしょうか。

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