企業が重視すべきインテグリティとは。定義を理解して組織の成長に役立てる
コンプライアンス研修などにおいて、組織の成長を考えて「インテグリティ」の概念を取り入れたいと考えている企業も多いはずです。インテグリティとは何なのかという基本や注目したい理由、従業員のインテグリティ向上を目指すための具体策を整理します。
ビジネスにおけるインテグリティとは
人事領域に関わっていると、一度は「インテグリティ」というワードを耳にしたことがあるのではないでしょうか。ただ、正確な定義までは知らなかったという担当者も多いかもしれません。インテグリティとは何か、著名人のインテグリティに関する見解を交えて解説します。
「誠実」「真摯」「高潔」を意味する言葉
「インテグリティ(Integrity)」とは、英語で「高潔」「誠実」「清廉」「完全な状態」「無傷」という意味を持つ言葉です。ビジネスにおいては、誠実さや真摯さを持った行動を表すワードとして使われています。
インテグリティは個人の行動についてだけでなく、企業としての経営方針にも用いられる言葉です。組織においては、特に経営層や管理職にとって重要な要素として捉えられています。ただ、役職を持たない従業員にインテグリティが不要なわけではありません。個々がインテグリティを高めることで、組織としての力が上がります。
ルールによらない自律的な行動ともいえる
インテグリティの意味を見ると、コンプライアンス(Compliance)に似ていると思うかもしれません。しかし両者には明確な違いがあります。コンプライアンスが、法律や社内規則など「外部からの制約」に応じることであるのに対し、インテグリティは個人の資質です。
インテグリティという考え方に基づいた行動は、「ルールがあるから守らなければならない」といった他律的なものではなく、社会規範や自身の考えが基になります。
著名人も重視する概念の一つ
著名な経営学者ピーター・ドラッカーは、インテグリティ(真摯さ)が組織の成功に不可欠であり、その欠如は組織を腐敗させると強調しています。ドラッカーはインテグリティを欠く人物像を、次のように表現しました。
- 人の強みではなく、弱みに焦点を合わせる者
- 冷笑家・皮肉家
- 何が正しいかより誰が正しいかに関心を持つ者
- 人格より頭脳・能力を重視する者
- 有能な部下を恐れる者
- 自らの仕事に高い基準を定めない者
このような従業員がいると組織が成長できないことは、人事として実感できるのではないでしょうか。
投資家のウォーレン・バフェットも、人材に求める資質として「知性」「エネルギー」「インテグリティ(誠実さ・高潔さ)」を挙げています。インテグリティがなければ、知性とエネルギーがあったとしても組織に貢献できないという旨の発言をしました。
なぜ今インテグリティが注目されるべきなのか
現代の日本企業にとって、インテグリティは重要な概念です。ではなぜインテグリティに注目すべきなのでしょうか。主な二つの理由を挙げます。
成果主義の行き過ぎによる不正を抑止できるから
現代の日本では、長年続いてきた年功序列型の制度が崩れ、成果主義へと移行してきました。成果主義では「どれだけ成果を出したか」が重視される一方で、プロセスや手段が軽視されがちになる傾向も見られます。その結果、過度なプレッシャーの中で、正当とは言い難い手法を選ぶケースが出てくる可能性もあります。
こうした背景から成果主義では、ともすれば不正や不祥事が生じる土壌が生まれやすくなります。しかし、不正・不祥事は企業の信頼や存続を揺るがす深刻なインシデントです。だからこそ、不正を未然に防ぐ、あるいは疑義が生じた際に毅然と対応できる、インテグリティを備えた人材の存在が重要視されています。
インテグリティの向上が組織を成長させるから
全社的にインテグリティが向上すると、企業を良くするために進んで行動する従業員が増えます。改善点のアイデアが生まれやすくなり、イノベーションが推進されるでしょう。
また、インテグリティを持つ人材は不正・不祥事の抑止力になり得ます。健全な組織運営は企業としてのブランディングとなり、顧客からの信頼を得やすくなる要因となります。
日本企業は、イノベーション意識や新たなマーケット開拓、自らコーポレートガバナンスを進める意識に課題があるといわれています。こうした課題を克服し、持続的な成長を遂げていくためにも、インテグリティの向上は欠かせない鍵といえるでしょう。これらを解決しなければ、今後も生き残っていくための成長が望めません。
インテグリティの重要性を認識してもらうには
コンプライアンス研修のような場でインテグリティの重要性を語っても、従業員にとっては「現場に関係あるのだろうか」という疑問が生まれるかもしれません。ではどのように伝えれば、インテグリティが必要とされていることを理解してもらえるのでしょうか。
インテグリティを欠いたときのリスクを個人の視点から伝える
インテグリティの重要性を伝える際は、企業全体の話だけでなく、個人の行動がどのような影響を及ぼすかを具体的に示すことが大切です。
個人のインテグリティが欠如すると、たとえ不正行為の主導者でなくても、「見て見ぬふりをする」「気づいても声を上げない」といった姿勢により、組織内での信頼を損なうことになります。
さらに、そうした小さな見過ごしや妥協が積み重なることで、不正や不祥事の温床が生まれ、企業全体の問題へと発展していきます。最終的にはブランド毀損や社会的信用の失墜を招き、企業の存続をも脅かす事態にもなりかねません。
だからこそ、インテグリティの欠如は「誰か一部の人」の問題ではなく、すべての従業員が自分ごととして向き合うべきテーマであると伝える必要があります。
インテグリティは先天的な素質ともいわれますが、日々の意識と実践で高めることができます。どのような行動が「インテグリティの欠如」と言えるのかを具体的に示し、従業員一人ひとりが自分の行動を振り返ることができるようにしましょう。
研修で著名人の発言を引用して説得力を持たせる
著名人の言葉には、背景にある経験や実績からくる重みがあります。特にインテグリティのような抽象的な概念に対しては、ピーター・ドラッカーやウォーレン・バフェットのような世界的に影響力のある人物の発言を引用することで、従業員自身が「これは社会全体でも重要視されている価値なんだ」と理解を深めやすくなります。
また、著名人の発言を出発点とすることで情報収集もしやすくなるため、より深く学びやすくなるというメリットもあります。
資料を作成する際には、単に言葉を引用するだけでなく、その背景や文脈をわかりやすく伝える工夫をすることで、受け手の納得感や腹落ち感を高めることができるでしょう。
管理職に規範となってもらう
管理職の行動は、役職を持たない従業員に影響を与えます。管理職研修もインテグリティを含めて設計し、日々の行動を通じて規範になってもらうと効果的です。
管理職がインテグリティを養って自律的な行動を実践することで、ほかの従業員も「この場面ではこのように判断すればいいのか」と実例を見て考えられるようになります。
ただ、管理職の地位にいる全ての人がインテグリティに基づく行動を取れるわけではありません。元々一定のインテグリティを持つ管理職をロールモデルとし、率先的に見本となるよう依頼するとよいでしょう。
インテグリティ向上の施策をサポートする「TUNAG」
インテグリティの全社的な向上は、一朝一夕で実現するものではありません。元々個人の持つ資質に左右される上、企業風土自体がインテグリティを育める状態になっている必要があります。
インテグリティ向上が難しいと感じたときの施策例として、組織改善クラウドサービス「TUNAG(ツナグ)」を活用する方法もご紹介します。
サンクスカードで誠実な行動を称賛し合う
インテグリティを全社的に向上させるには、誠実な行動を心がけたり促したりしている人を称賛する文化が必要です。TUNAGのサンクスカード機能を活用すれば、日々の業務の中で見過ごされがちな「誠実な対応」に対して、感謝のメッセージを送り合うことができます。サンクスカードは日々の小さな言動に対して感謝を伝えるツールであり、感謝の気持ちが可視化されるため、称賛の文化や好ましい言動を定着させやすくなります。
また、TUNAGではこのサンクスカードをピアボーナス(従業員間でポイントなどのインセンティブを送り合える仕組み)として運用することも可能です。「ありがとう」の気持ちを具体的なインセンティブに変えることで、従業員同士の称賛を促進できます。
タイムライン・社内掲示板で経営層の理念や行動方針を周知する
インテグリティを浸透させるには、経営層やマネジメント層が日頃からその重要性を発信し、方針として明示することが欠かせません。
TUNAGのタイムラインを使えば、経営層のメッセージや日々の行動指針をリアルタイムで全社に共有できます。たとえば、「今週あった誠実な取り組みの紹介」や「理念に沿った行動の事例発信」などを定期的に投稿することで、従業員が身近にインテグリティを感じるきっかけを作ることができます。
さらに、社内掲示板では、インテグリティに関する研修や行動規範、ルール改訂のお知らせなどをトピックごとにまとめて発信でき、必要な情報を見失わない仕組みづくりを支援します。
インテグリティの向上は組織の成長につながる
ビジネスシーンにおいて「インテグリティ」は、人材の誠実さや真摯さを表すワードとして使われます。インテグリティは組織の成長に不可欠だと、昔から著名人によって指摘されてきました。
現代日本でも、成果主義への傾きや日本企業が持つ課題から、インテグリティが注目されるようになっています。個人の素質といわれるインテグリティも、研修で重要性を意識してもらうことは可能です。
全社的にインテグリティが根付くことで、職場に信頼や安心感が生まれ、従業員の主体的な行動や健全な意思決定が促されます。そうした組織基盤の強化を通じて、イノベーションの推進や新たな市場の開拓、健全な組織運営が進み、最終的には組織の成長が期待できるのです。