ハロー効果とは?具体例や類似現象、人事評価エラーの予防策を解説
認知バイアスの一つであるハロー効果は、思考の偏りや歪みを生じさせる心理現象です。誰にでも起こり得るものであり、正しい判断を行うための対策を求められます。ハロー効果の意味やビジネスシーンでの具体例、人事評価エラーの予防策を紹介します。
ハロー効果の基礎知識
適切な人事評価を行うために意識しておきたいのが、ハロー効果の影響です。ハロー効果とはどのようなものなのか、まずは意味や種類、似た心理現象について解説します。
ハロー効果とは
ハロー効果(halo effect)とは、ある対象の一つの突出した特徴(良い・悪い)によって、その他の特徴についても同様の評価をしてしまう認知バイアスのことです。ハロー(halo)が聖人の頭上に描かれる光の輪を意味することから、「後光効果」とも呼ばれます。
例えば、人事評価において、学歴が優秀だからといって仕事のパフォーマンスも高いと評価してしまうケースは、ハロー効果の典型です。
ハロー効果の種類
ハロー効果にはポジティブ・ハロー効果とネガティブ・ハロー効果の2種類があります。
ポジティブ・ハロー効果は、ある対象が持つ一部の高い評価に引きずられ、関係ない部分の評価も高くなる現象です。有名人をCMに起用するマーケティング戦略は、ポジティブ・ハロー効果を狙ったものであるといえます。
一方、対象の悪い評価が全体の評価を下げる現象がネガティブ・ハロー効果です。CMで起用した有名人が不祥事を起こした場合、悪いイメージが商品や企業にも波及するのを防ぐために、不祥事を起こした有名人はCMを降板させられるケースが多くなります。
ハロー効果と似ている心理現象
ハロー効果と似た心理現象には次のようなものがあります。
- 確証バイアス:既存の信念を支持する情報ばかりを探す傾向
- アンカリング効果:最初に提示された情報に引きずられる傾向
- 初頭効果:対象に対する最初の印象がその後の評価にも影響を与え続ける現象
- ホーソン効果:注目されているという認識が行動やパフォーマンスに影響を与える現象
これらはビジネスシーンでも使われることがあるため、意味を覚えておくとよいでしょう。
ハロー効果が表れやすいビジネスシーン
ビジネスシーンでは、主に人事評価や採用面接でハロー効果が表れやすくなります。具体例と併せて見ていきましょう。
人事評価
人事評価においては、評価者が評価対象者の特定の側面に強い印象を持ち、他の評価にも影響を及ぼしやすくなります。具体例は次の通りです。
- プレゼンテーション能力が優秀だからといって、分析力や企画力も高いと評価してしまう
- 難関資格を取得した人材に対し、「仕事もできているのだろう」と評価してしまう
人事評価におけるハロー効果は、正確な評価を阻害する恐れがあります。
採用面接
採用面接もハロー効果が表れやすいシチュエーションです。以下のような偏った判断をしてしまいやすくなります。
- 面接での受け答えが流暢だったため、論理的思考力やチームワーク能力も高いと判断してしまう
- がっちりとした体格の応募者を見て、「体力がある」「力仕事に向いていそう」と評価してしまう
逆に際立った特徴がない場合は、ネガティブ・ハロー効果が生じるケースもあるでしょう。
ハロー効果以外の代表的な人事評価エラー
適切な人事評価ができなくなる原因には、ハロー効果以外にもさまざまなものがあります。主な人事評価エラーを押さえておきましょう。
寛大化傾向
寛大化傾向とは、評価が全体的に甘くなることです。5段階評価なら「4」や「5」の評価が多くなり、厳しい評価を避ける傾向があります。
評価者の評価が寛大化傾向になるのは、「評価対象者に嫌われたくない」「評価対象者と仲が良い」「自分の評価スキルに自信がない」といった原因が考えられます。
中央化傾向
「とても優れている」「非常に劣っている」などの評価を避け、無難な評価が多くなる傾向が中央化傾向です。5段階評価の場合は「5」や「1」がほとんどなく、「2」「3」「4」に評価が集まります。
「評価が厳しすぎる」「評価が甘すぎる」と言われるのを評価者が嫌う場合や、評価者が評価対象者をしっかりと観察していない場合に、中央化傾向が表れやすくなります。
分散化傾向
中央化傾向と正反対の評価傾向が分散化傾向です。5段階評価なら「5」や「1」に近づけようとするため、評価が二極化しやすくなります。
分散化傾向が生じる主なシーンは、評価に差をつけて評価対象者のモチベーションを高めたいケースです。また、評価者が「自分はしっかりと対象者を観察している」と思われたい場合も、評価が両極端になりやすいでしょう。
逆算化傾向
逆算化傾向とは、総合評価を先に決めてから、それに合うように各項目の評価を無意識に調整してしまう傾向のことです。最終結果ありきで評価項目を組み合わせるため、適切な評価になるケースは少なくなります。
「特定の人物を昇進させたい」「チームとしての評価を高めたい」「評価に関して文句を言われたくない」など、評価者の打算的な勘定による評価になるのが一般的です。
人事評価エラーを防ぐための対策
ハロー効果をはじめとした人事評価エラーが発生すると、適切な評価ができなくなってしまい、従業員のモチベーションや生産性の低下を招きかねません。人事評価エラーを防ぐための対策を紹介します。
評価基準を見直す
評価者の判断にバイアスがかかることで評価が変わる仕組みは、適切な評価制度とはいえません。評価を何度実施しても、評価者が変わっても結果が安定するように、評価基準を見直すことが重要です。
成果・能力・情意という評価基準の3要素について、項目とそれぞれの基準を明確化しましょう。
評価項目や評価基準は企業により変わりますが、大事なのは評価者の認知バイアスに左右されない基準を確立することです。
評価者トレーニングを実施する
適切な評価制度には客観性も求められます。評価者が誰であっても、常に同じ結果が得られるような評価制度です。
評価者の客観性を高めるためには、評価者トレーニングを実施するのが効果的です。評価者トレーニングではさまざまな認知バイアスを学んだ上で、それらを意識的に排除する方法を習得できます。
評価基準を見直しても、評価者に左右される部分はどうしても残ってしまうものです。評価者トレーニングを実施し、評価の一貫性と公平性を向上させましょう。
360度評価を導入する
360度評価とは、一般的な評価者である上司だけでなく、同僚や部下も対象者を評価する制度です。さまざまな視点から対象者を評価できるため、特定の人の認知バイアスに評価が左右されにくくなります。
360度評価を導入する場合は、評価者間で評価結果を共有することで、バイアスに気づく機会を増やすことができます。自分以外の評価に目を通すことで、自分の評価のバイアスに気づけることがあり、結果として評価者の育成にもつながりやすくなります。
ハロー効果に左右されない適切な人事評価を
ハロー効果とは、ある対象を評価する際に一部の目立つ特徴に引きずられて、全体的な評価が歪んでしまう心理現象のことです。一部分の優れた特徴がある場合、他の部分も全て優れていると判断するケースが例として挙げられます。
ビジネスシーンでハロー効果の影響を受けやすいのは、人事評価や採用面接です。特に、人事評価でエラーが発生すると、従業員のモチベーションや生産性の低下を招く恐れがあります。
ハロー効果をはじめとした人事評価エラーについて理解を深め、適切な対策を講じて認知バイアスに左右されない評価の仕組みを構築しましょう。