アンラーニングとは?メリットやリスキリングとの違い、実施の方法
急速に変化するビジネス環境の中で、従来の考え方やスキルに固執していると、成長や変化に対応することが難しくなっています。こうした課題を克服し、柔軟に新しい知識やスキルを身につけるために注目されているのが「アンラーニング」というアプローチです。アンラーニングの意味やメリット、実践方法について解説します。
アンラーニングとは
アンラーニングを直訳すると、「学習棄却」という意味になります。学習を棄却するとはどのようなことなのか、まずは言葉の意味から押さえておきましょう。
アンラーニングの意味
ビジネス環境が目まぐるしく変化する現代において、これまでの価値観や方法論に縛られず、柔軟に新しい知識やスキルを取り入れる力が求められています。そこで注目されるのが「アンラーニング」という考え方です。
アンラーニングとは、これまで培ってきた知識やスキルの中で、現在や未来にそぐわないものを見直し、意識的に手放すプロセスを指します。ただ新しい知識を学ぶ「ラーニング」とは異なり、まずは余分なものを削ぎ落とすことから始める点が特徴です。
たとえば、過去に成功を収めた方法や、長年の経験に基づく固定観念は、時に新しい発想や柔軟な対応を阻む要因になり得ます。アンラーニングを実践することで、過去の成功体験や思い込みをリセットし、時代の変化に適応する余白を生み出せるのです。
アンラーニングが求められる理由
VUCA時代(不確実性や複雑性の高い時代)と呼ばれる現代では、未来を予測することが難しく、これまでの経験則や常識が通用しない場面が増えています。
ビジネスや社会の環境が変わるたびに、従来のやり方や価値観をそのまま適用しようとするのはリスクを伴います。その結果、企業や個人が時代に取り残されてしまう可能性があるのです。
たとえば、ある企業がかつて成功を収めた戦略を繰り返し採用していたとします。しかし、市場環境が変わり、その戦略がもはや効果を発揮しなくなると、結果的に競争力を失う事態に陥ります。
このような場合、アンラーニングによって新しい方法を模索し、柔軟に対応する姿勢が不可欠です。不要なものを捨て去ることで、未知の課題にも対応できる適応力や、先進的なアイデアを取り入れる余地が生まれます。
アンラーニングとリスキリングの違い
「アンラーニング」と似た概念に「リスキリング」がありますが、両者のアプローチや目的は大きく異なります。リスキリングは、新たな職務や役割に必要なスキルをゼロから習得するプロセスを指します。
たとえば、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中、従業員がプログラミングやデータ分析といった新たな技術を学ぶことがリスキリングの一例です。
一方で、アンラーニングは「過去の知識やスキルを取捨選択する」プロセスを重視します。たとえば、「これまでのやり方」にこだわる意識を手放し、新しいやり方を受け入れるための準備を整える段階と言えます。
アンラーニングが不要なものを手放すプロセスであるのに対し、リスキリングは新しい能力を習得することを目的としています。このため、両者は相互補完的な関係にあり、アンラーニングによって古い価値観を捨てた後にリスキリングを行うことで、より効果的なスキル習得が可能になります。
アンラーニングを取り入れるメリット
アンラーニングを職場に取り入れることで、企業にはさまざまなメリットがもたらされます。従業員が新しい視点を取り入れ、柔軟な考え方を身につけることは、組織全体の進化にもつながります。ここでは、アンラーニングを実践することで得られる主なメリットを解説します。
従業員の成長を促進できる
アンラーニングの導入は、従業員一人ひとりの成長を大きく後押しします。ある程度の経験を積んだ従業員の中には、「これ以上学ぶ必要はない」と考え、学びを放棄してしまうケースが少なくありません。過去の成功体験や慣れた方法に固執し続けることで、新しい挑戦や発想を遠ざけてしまうのです。
しかし、変化の激しい現代では、これまでの知識やスキルが次々と陳腐化していく可能性があります。アンラーニングを取り入れることで、従業員は自分自身のスキルや知識を見直し、何を保持し、何を更新すべきかを判断できるようになります。
このプロセスを通じて、個々の従業員が時代のニーズに合った人材へと成長し、組織全体の競争力を高めることができるのです。
業務効率の改善を図れる
アンラーニングは業務効率の向上にも寄与します。新しい価値観や考え方を取り入れると、従業員が日々の仕事に対して疑問を持ち、改善の可能性を模索するようになるためです。
従来のやり方に疑問を持たず、「問題がないからこのままでよい」と考える姿勢では、非効率なプロセスが放置され、生産性が向上しないままになります。
競合他社がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進して効率的な業務フローを構築しているにもかかわらず、自社が従来のアナログ作業を続けている場合、競争において取り残されるリスクがあります。
アンラーニングによって、古い習慣や価値観を見直し、新しいテクノロジーや方法論を積極的に取り入れることで、業務の無駄を削減し、持続的な成長を実現できるのです。
変化に強い組織をつくれる
アンラーニングを実践することで、変化に強い組織を築くことができます。従業員一人ひとりが自らの知識やスキルを見直し、変化に適応する力を身につけることで、組織全体が柔軟性と適応力を備えるようになるのです。
変化に強い組織は、市場環境の変化に迅速に対応できるため、競争優位性を確保しやすくなります。
また、業績の向上が従業員のモチベーションを高め、さらに大きな成果を生む好循環が生まれます。アンラーニングを取り入れることは、組織の成長を支える基盤を強化する上で欠かせないアプローチと言えるでしょう。
アンラーニング導入の注意点
職場にアンラーニングを取り入れる際には、ただ導入するだけでは十分ではありません。従業員の理解を深め、組織全体での効果を最大化するために注意すべきポイントがあります。
変わらない従業員を責めない
アンラーニングを導入しても、すぐに変化を実感できない従業員が一定数いることは避けられません。誰もが同じペースで実践できるわけではないため、変わらない従業員に対して批判的な態度を取ることは逆効果です。
また、従来の方法や価値観を捨てることに対して疑問を抱く従業員がいる場合、そのまま放置するとモチベーションが低下するリスクがあります。
こうした状況を防ぐためには、アンラーニングの重要性を丁寧に説明し、従業員の理解を深めることが大切です。
さらに、アンラーニングのプロセスをラーニング(新しい知識やスキルの習得)と連携させることで、従業員は「過去の知識を捨てる」だけでなく、「新たに学ぶ楽しさ」を実感できるようになります。
アンラーニングを単独で実施するのではなく、ラーニングと併用することで、より高い効果が期待できるでしょう。
チームや組織で取り組む
アンラーニングは、一部の従業員だけで実施するのではなく、チームや組織全体で取り組む必要があります。特定の従業員だけが新しい仕事の進め方を取り入れると、他のメンバーとの間にズレが生じ、業務の進行に混乱を招く可能性があります。
アンラーニングを組織全体に浸透させるためには、まずチーム内で課題意識を共有し、業務の優先順位や重要事項を明確にすることが求められます。組織全体で同じ方向を向いて進めることで、アンラーニングの効果をスムーズに適用できるでしょう。
さらに、保守的な文化が根付いている組織では、アンラーニングの導入に対して抵抗感が生じやすい点にも注意が必要です。
このような場合、経営層や管理職が積極的に主導し、アンラーニングの意義やメリットを繰り返し伝えることで、従業員の理解と納得感を得やすくなります。リーダーシップを発揮しながら進めることが成功の鍵となります。
アンラーニングを実施する方法
アンラーニングは、適切な手順を踏むことで、その効果をより高めることができます。ここでは、アンラーニングを職場で実施する際の具体的な流れを解説します。実践の際の参考にしてみてください。
従業員の内省を促す
アンラーニングの第一歩は、自分自身の知識やスキルを見つめ直す「内省」です。
従業員が自分の強みや弱みを把握し、何が新たな学びの妨げになっているかを明らかにすることで、アンラーニングへの準備が整います。
例えば、「従来のやり方に固執していないか」「過去の成功体験に頼りすぎていないか」など、自分の価値観や行動を振り返る機会を提供することで、従業員が自己理解を深められるようになります。
このプロセスを通じて、自らの課題や改善ポイントを明確にし、新たな成長への意識を高めることができます。
価値観を取捨選択する
内省を終えたら、次に行うべきは「価値観の取捨選択」です。これまでの知識やスキルの中から、これからも必要なものと、手放すべきものを振り分けます。
この段階では、個人が自分だけで判断するのではなく、上司やメンターからのフィードバックを活用することが重要です。
例えば、1on1ミーティングやフィードバックセッションを実施し、従業員が適切に価値観を取捨選択できるようサポートしましょう。単なる自己判断にとどまらず、組織やチームの目線を取り入れたバランスの取れた取捨選択が可能となります。
また、取捨選択の過程で新しい目標や方向性を共有することで、従業員のモチベーションをさらに引き上げることができます。
実践を通じて学びを定着させる
価値観を取捨選択した後は、実際の行動に移して新たな学びを進めていく段階です。アンラーニングの効果は、短期間で現れるものではありません。
継続的に取り組むことで徐々に成果が見えてくるため、長期的な視点で進めることが求められます。
具体的には、実践を通じて学びを深め、一定の期間ごとに効果測定を行うとよいでしょう。例えば、新しい業務フローを取り入れた際に、定期的にその成果や課題を確認し、必要に応じて改善を行う仕組みを整えます。
また、上司やメンターとともに振り返りを行い、フィードバックを共有することで、従業員の成長を組織全体で支える文化を醸成します。
アンラーニングで変化に強い組織をつくる
アンラーニングとは、不要な知識やスキルを捨てて新しいものを取り込むことです。従業員の成長促進や業務効率の改善といった導入効果を得られます。
変化が見られない従業員を責めないことや、チームや組織で取り組むことが、アンラーニングの効果を高めるためのポイントです。自社でもアンラーニングを導入し、変化に強い組織づくりを進めましょう。