批判的思考とは?メリットや実践方法、習得するためのポイントを解説

組織で批判的思考を活用すれば、問題解決や意思決定の基盤を築けます。人材育成の一環として批判的思考の習得を取り入れ、変化に対応できる組織づくりを進めましょう。批判的思考とは何か、メリットや実践方法を解説します。

批判的思考とは

批判的思考には「批判」という言葉が含まれているため、他者を攻撃するネガティブなイメージで捉えられがちですが、一般的に認識されている「批判」のニュアンスはありません。批判的思考とはどのようなことを指すのか、まずは正しい意味を理解しましょう。

批判的思考の意味

批判的思考(クリティカルシンキング)とは、多角的な視点から物事の本質的な課題や解決法を導き出そうとすることです。経験や主観のみに頼らず、適切な根拠や基準に基づいて検証する思考を意味します。

批判的思考の重要なポイントは、常に疑う姿勢を持つことです。「本当にこれで正解なのだろうか」といった視点で物事にアプローチすることで、より適切な根拠や結論にたどり着きやすくなります。

批判的思考と論理的思考の違い

論理的思考(ロジカルシンキング)は、全体を俯瞰しながら物事を体系的に整理して道筋を立てる思考です。矛盾や飛躍がないように根拠を積み重ねて結論に導いていきます。

論理的思考と批判的思考の違いを次の例で見てみましょう。

課題

例年通り夏と冬にセールを行うべきか

論理的思考

  • 根拠1:昨年は夏の方が売り上げが大きかった
  • 根拠2:夏向けの在庫が大量に余っている
  • 結論:夏のみセールを実施した方が費用対効果が高い

批判的思考

  • 春や秋にセールを実施してはだめなのか
  • 季節限定セールをやめて年間プロモーションを強化してはどうか
  • そもそもセールを実施する必要があるのか

論理的思考が道筋を立てて結論に導いているのに対し、批判的思考ではさまざまな視点から懐疑的にアプローチしています。

批判的思考と論理的思考は、いずれもビジネスで積極的に活用すべき思考法です。両方を取り入れれば、異なるアプローチにより課題解決の精度を高められるでしょう。

批判的思考を取り入れるメリット

職場における批判的思考の実践が企業にもたらすメリットを紹介します。主に、問題解決や意思決定、アイデア創出を求められるシーンで取り入れることが可能です。

合意形成や意思決定の精度が高まる

合意形成や意思決定が必要なシーンでは、判断が適切かどうかの慎重な検討を求められます。このときに思考パターンがあいまいな場合、結論が出るまでに時間がかかってしまうでしょう。

一方で批判的思考を用いて検討すれば、懐疑的にアプローチすることで矛盾や抜け漏れを減らせるほか、より掘り下げた検討が可能です。合意形成や意思決定の精度が高まり、結論が出るまでの時間や労力も削減できるでしょう。

物事の本質を理解できる

批判的思考を使って物事にアプローチすれば、主観や経験によらない多角的な視点から矛盾や抜け漏れを探せるため、物事の本質に迫れます。無駄を取り除いて重要な情報のみを抜き出す際にも役立つでしょう。

トラブルが発生したときに本質的な問題解決を図れることもメリットです。経験による決めつけではなく、何が原因なのかをしっかりと見極められるため、トラブルを根本から解消できます。

新しいアイデアの創出につながる

批判的思考は新しいアイデアの創出にも活用できます。さまざまな視点から物事を懐疑的に見るため、今までにない発想が生まれやすいのです。

知識や経験が豊富な人は、自分の考えこそが正しいと思い込み、他の可能性を排除してしまうことがあります。しかし、今まで自社の常識だと考えられていたことも、批判的思考を用いると必ずしもそうではないことが分かるケースもあるでしょう。

変化が激しく先が読めない現代では、今までのやり方が通用しないシーンが増えてきます。批判的思考で新しいアイデアを次々と創出できれば、他社との競争においても優位性を保ち続けられるでしょう。

批判的思考の実践方法

批判的思考を実践する際は、正しい手順を踏んで進めていくことが重要です。主な流れと各ステップのポイントを見ていきましょう。

目的を明確化する

批判的思考の実践では、最初に目的を明確化することが大切です。より具体的な目的を定めることで、目的にアプローチする視点が増えるため、批判的思考の効果が高まります。

期限を区切れるものは期限を設定し、最終的な理想の状態があるなら具体的にイメージしておきましょう。議論や考察を進めていくうちに課題を見失いそうになっても、目的が明確になっていれば軌道修正できます。

前提条件を疑う

目的が明確になったら、次に前提条件をさまざまな視点から疑いましょう。「偏った考え方ではないか」「他の方法はないか」「矛盾が生じていないか」などを考察します。

前提条件を分析する際は、以下のフレームワークが役立ちます。

  • SWOT分析:自社の強みや弱みを把握する
  • MECE:漏れや重複を発見する
  • ロジックツリー:問題や課題を階層的に分解・可視化する

前提条件を疑う際は、一切の主観や経験を排除することがポイントです。あくまでも事実に基づいて検証する必要があります。

解決策を実行する

前提条件の分析により矛盾点や課題を洗い出したら、それらをどのように解決するかの方法や行動を決めます。矛盾点や課題を書き出せば思考が整理されていくため、新たな疑問点や解決方法も生まれるでしょう。

解決するための仮説を立てたら、実際の行動に移します。施策を実行する際はPDCAサイクルを回すことが重要です。PDCAサイクルは効果が出るまでにある程度の時間を要するため、早く結果を求めたいならOODAループを活用するのもよいでしょう。

批判的思考を習得するためのポイント

思考のパターンを変えることは、誰にとっても最初は難しいものです。以下に挙げるポイントを意識することで、批判的思考を習得しやすくなります。

事実と意見を区別する

批判的思考では事実のみを根拠に検証を行います。ある物事を批判的思考で考える場合、事実なのか意見なのかをきちんと区別することが大切です。

例えば、「明日は雨で来客が少ないからスタッフを減らそう」という発言に対しては、次の点の確認が必要になるでしょう。

  • 明日は本当に雨が降るのか
  • 雨が降ると必ず客が少なくなるのか
  • 来客が少ないことだけを理由にスタッフを減らしても大丈夫なのか

全て発言者の主観や思い込みによる意見だった場合、スタッフを減らすべきではないかもしれません。

習慣や癖を意識する

習慣や癖に基づく偏った思考があると、批判的思考の効果を発揮しにくくなります。無意識のうちに習慣や癖が身に付いていることもあるため、偏った思考に気付く力を養うことも重要です。

例えば、「多い・少ない」「忙しい・暇」といった表現は、程度を抽象的に示すものです。多い場合はどのくらい多いのか、忙しい場合はどの程度忙しいのかを、具体的な根拠を使って説明できなければなりません。

批判的思考でビジネス環境の変化に対応

批判的思考とは、経験や主観を排除し、多角的な視点から物事を懐疑的に検証する思考法です。物事を体系的に整理し道筋を立てて結論に導く論理的思考とは意味が異なります。

批判的思考をビジネスで活用すれば、合意形成や意思決定の精度が高まるほか、物事の本質を把握できるようになります。新しいアイデアの創出を図れることもメリットです。

職場に批判的思考を取り入れて思考の柔軟化を促し、ビジネス環境の変化に対応していきましょう。


著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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