組織の成長は「起業家精神」が鍵。重要性と人材育成のポイント
企業の持続的成長には、起業家精神を持つ人材が欠かせません。リスクを恐れずにチャレンジする姿勢は、組織にイノベーションをもたらすでしょう。起業家精神が重要視されている背景や人材育成のポイントを解説します。
起業家精神とは?
先行きの見えないVUCA(ブーカ)の時代、新しいビジネスチャンスを切り開くのは「起業家精神」です。起業する人に必要な資質と思われがちですが、現代では幅広いビジネスパーソンが身に付けるべき力とされています。
リスクを恐れず新たな価値創造に挑戦する姿勢
起業家精神とは、新たな事業や価値の創造に果敢に挑む姿勢を指します。アントレプレナーシップ(entrepreneurship)の日本語訳で、「企業家精神」とも表記されます。精神よりも、姿勢や能力と訳した方がしっくりくるかもしれません。
アントレプレナーシップに明確な定義はなく、人によって捉え方が変わります。文部科学省が主催するアントレプレナーシップ人材育成プログラムの中では、「急激な社会環境の変化を受容し、新たな価値を生み出していく精神」と定義されています。
起業家精神を持った人や事業を起こす人は、アントレプレナー(entrepreneur)と呼ばれることも覚えておきましょう。
出典:令和6年度全国アントレプレナーシップ人材育成プログラム 特別講演の開催について :文部科学省
アントレプレナーシップの由来
アントレプレナーシップは、フランス語の「entrepreneur」と英語の「ship」を組み合わせた造語の一種です。
entrepreneurの語源である「entreprendre」は、マルコポーロが活躍した13世紀ごろに生まれました。当時は「仲介人」や「貿易商」の意味で使われていましたが、産業革命の時代に入ると、新たな産業を支える人を指すようになります。
その後、経済学者のシュンペーター(Schumpeter,J.A.)が「イノベーションを遂行する当事者」として定義し、経済的用語として使われるようになりました。経営学者のドラッカー(Drucker,P.F.)が著書でアントレプレナーシップの概念に触れたことで、人々の間に広まったといわれます。
起業家精神を構成する要素
起業家精神はさまざまなスキルや資質によって構成されています。代表的な要素は以下の通りです。
- リーダーシップ
- マネジメント能力
- 人的ネットワークを構築する力
- イノベーションを生み出す創造力
- 課題解決力
- 精神力と行動力
リーダーシップとマネジメント能力は、組織のメンバーをけん引するのに欠かせないスキルです。リーダーシップは人を導く能力であるのに対し、マネジメント能力は経営資源を有効に管理する能力を指します。
ネットワークを構築する力は、「他者との信頼関係を築く力」と言い換えられます。新規事業を立ち上げたり、未知の領域を開拓したりする上では、人脈づくりが欠かせません。
起業家精神に関する2つの誤解
起業家精神は自分と無縁と感じている人は少なくありません。起業家やベンチャー企業に必要なものと思われがちですが、現代を生きる全てのビジネスパーソンが備えるべき姿勢ともいえます。起業家精神に関するよくある誤解を解説します。
【誤解1】起業家精神は先天的なもの
一つ目は、「起業家精神は先天的なものである」という誤解です。精神と聞くと、持って生まれた資質や能力のように思われがちです。
起業家の資質を生まれつき持っている人もいますが、起業家精神は複数の要素によって成り立つものであり、本人の努力や正しい教育によって後天的に身に付けられます。
近年は、起業家精神を養うための「アントレプレナーシップ教育」を実施する学校が増えています。ビジネスパーソンの場合、新規事業の立ち上げや副業といった新たな分野にチャレンジすることで、起業家精神が徐々に培われていくでしょう。
【誤解2】組織に属する会社員には不要
二つ目は、「組織に属する会社員に起業家精神は不要」という誤解です。先行きが不透明で、変化の予測が不可能な現代社会は、VUCAという言葉で表されます。
企業を取り巻くビジネス環境が猛スピードで変化する中、変化への適応力がない企業は衰退の一途をたどります。変化の時代で生き残るには、新しいビジネスモデルや価値を創造し続けなければなりません。
多くの企業は、起業家精神に富んだ人材を求めはじめており、「会社員だから起業家精神は不要」という考え方は過去のものになりつつあります。
起業家精神を持つ人材が組織にいるメリット
起業家精神は、ベンチャー企業はもとより、全ての中小企業に必要なものです。従業員にアントレプレナーシップ教育を行うことで、組織力が底上げされる可能性があります。起業家精神を持つ人材が組織にいると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
イノベーションの創出につながる
起業家精神を持つ人材がいると、イノベーションが生まれやすくなるのがメリットです。 イノベーションとは、新しい技術や考え方を取り入れたり、既存のものを組み合わせたりして、新たな価値を生み出すことを意味します。
「技術革新」と訳されるケースが多いですが、ビジネスモデルやプロセスの変革も含まれると考えましょう。
起業家精神に富んだ人材は、柔軟な発想力とリスクを恐れない行動力で、イノベーションを起こします。結果として、新たなビジネスチャンスの創出や企業価値の向上、競争力の強化などがもたらされるでしょう。
グローバル化に対応できる
国内市場の縮小やグローバリゼーションの流れにより、多くの企業は事業の海外展開を視野に入れています。日本企業がグローバル市場で競争優位性を獲得するためには、多様なニーズに対応する力とグローバルな素養を備えたグローバルリーダーが欠かせません。
起業家精神のある人材は、国内のみならず、グローバル市場でも能力を発揮します。時代の流れや多様なニーズをいち早く察知し、新たな価値を生み出していけるため、事業のグローバル化が加速するでしょう。
優秀なグローバル人材を新規で採用するよりも、自社の事業を熟知した従業員に起業家精神を身に付けさせた方が近道であるケースもあります。
自律型人材が増える
従業員の起業家精神を養うことで、社内に「自律型人材」が増えるのがメリットです。自律型人材とは、自らの頭で考えて動ける人材を指します。
ビジネス環境は日々急速なスピードで変化しているため、指示がなければ動かない「指示待ち従業員」が多ければ多いほど、企業の競争力は低下します。逆に、自律型人材が多い企業は、ニーズや環境の変化にスピーディーに対応できるでしょう。
チームに起業家精神を持つ人材が1人いるだけで、周囲にもプラスの影響がもたらされます。リスクを恐れずにチャレンジする従業員が増え、組織力が強化されます。
従業員の起業家精神を育てるヒント
日々のルーティンワークを淡々とこなすだけでは、起業家精神は身に付きません。従業員の起業家精神を育てるために、企業はどのような対策を講じればよいのでしょうか?
チャレンジできる環境を整備する
リーダーシップやマネジメント力、創造性などを養うには、失敗を恐れずにチャレンジできる環境を整備する必要があります。
例えば、一部の企業では「社内ベンチャー制度」を設け、従業員の社内起業を支援しています。企業のリソースを活用して新規ビジネスを立ち上げる仕組みで、起業資金のない従業員でも思い切ってチャレンジができるのがメリットです。
従業員の起業家精神が磨かれるのはもちろん、イノベーションの創出や収益の拡大にもつながる可能性があります。
裁量権を与える
日々の業務においては、従業員に一定の裁量権を与えるのも有効です。裁量権とは、自らの責任の下で意思決定ができる権利を意味します。プロジェクトの人員配置や予算配分など、裁量権の大きさや範囲はさまざまです。
従業員に裁量権を与えることで、判断力や責任感が養われるのがメリットです。心理的な負担は避けられませんが、それ以上に仕事へのやりがいが生まれます。
業務の決定権が一部の管理職にしかない組織では、指示待ち従業員が増える傾向があります。起業家精神に富んだ人材を育成するのであれば、若手にも一定の裁量権を与えるのが望ましいでしょう。
オープンに情報共有できる場をつくる
風通しの悪い職場では、自分の思いやアイデアを発信しにくく、新たなことにチャレンジしようという気持ちが起こりにくい傾向があります。
企業が主体となり、オープンに情報共有できる場をつくることで、コミュニケーションが活発化します。挑戦や失敗を歓迎する文化が醸成され、イノベーションが生まれやすくなるでしょう。
起業家精神を育てる上では、相手のアイデアを否定しないことが重要です。互いのアイデアを尊重し、評価し合える仕組みが求められます。
情報共有と社内交流の活性化には「TUNAG」が有効
テレワークやフレックスタイムといった多様な働き方が進む現代、社内コミュニケーションに課題を抱える企業は少なくありません。
デスクレスワーカーを抱える企業においては、情報の共有漏れやコミュニケーション不足により、チームワークが低下するケースも見受けられます。
組織課題の解決は、起業家精神のある従業員を育てる第一歩です。組織改善プラットフォーム「TUNAG(ツナグ)」を活用し、従業員エンゲージメントの高い組織をつくりましょう。
社内チャット・掲示板・ワークフローなどの豊富な機能を通じて、企業と従業員、従業員同士のつながりを強化します。
TUNAG(ツナグ) | 組織を良くする組織改善クラウドサービス
起業家精神で変化の時代を乗り越える
起業家精神とは、リスクを恐れずに新たな価値創造に挑む姿勢です。変化の時代を乗り越えるには、組織に属するビジネスパーソンにとっても欠かせないものとされています。
起業家精神を持つ人材は、柔軟な発想で新たな事業分野を切り開いていきます。変化の波の中でも、多様な解決策を導き出せるため、組織は競争力を維持できるでしょう。起業家精神は一朝一夕で身に付くものではないため、企業が計画的に人材育成を行うのが理想です。