バーンアウト(燃え尽き症候群)とは?主な原因や兆候、有効な対策を解説

現代の職場環境では、これまでやる気十分だった人が、突然モチベーションを失ってしまう「バーンアウト(燃え尽き症候群)」が増加中です。個人だけでなく、組織全体の生産性にも大きな影響を与えるので、主な症状や原因・対策を知っておきましょう。

バーンアウト(燃え尽き症候群)とは?

「バーンアウト(燃え尽き症候群)」とは、高いモチベーションで仕事をしていた人が、突然やる気を失くしてしまうことです。まずは、バーンアウトの主な症状について、具体的にみていきましょう。

バーンアウトの主な症状

バーンアウトは1970年代に、精神心理学者のハーバート・フロイデンバーガーによって、提唱された概念です。それ以降、多くの研究が進められてきました。近年は、以下のように「情緒的消耗感」や「脱人格化」「個人的達成感の低下」といった、特徴的な症状が定義されています。

これらの症状は、仕事や人間関係への意欲を低下させ、心身の健康を損なうだけでなく、職場環境やパフォーマンスにも影響を与えるので注意が必要です。どのような症状か確認していきましょう。

情緒的消耗感

バーンアウトの最も顕著な症状の一つが、情緒的消耗感です。精神的なエネルギーが枯渇し、日常業務や人間関係に対応する気力を失っている状態を指します。例えば、普段なら問題なくこなせていた仕事が重く感じられたり、同僚や顧客とのやりとりに強い疲労感を覚えたりすることがあります。

周りを思いやり、信頼関係の構築に注力した結果、情緒的に消耗してしまう人は少なくありません。情緒的な疲弊は集中力や判断力を低下させ、仕事のパフォーマンスに悪影響を及ぼすので注意が必要です。

脱人格化

脱人格化は、自分や周囲の人間に対して冷淡になり、感情的に距離を置こうとする傾向を指します。特に対人業務に従事する人に多い症状であり、相手に対する共感や配慮が薄れ、機械的に業務をこなすようになるのが特徴です。

その結果、人間関係の質が低下し、職場環境がさらに悪化する可能性があります。精神的に余裕がないため、問題に直面すると他者のせいにしたり、誹謗中傷してしまったりする人もいます。

個人的達成感の低下

個人的な達成感の低下もバーンアウトの症状の一つです。個人的達成感は、主に接客をはじめとした対人コミュニケーションで得られるものですが、情緒的な消耗により業務の質を確保できなくなります。

その結果、自分の仕事が価値を持たない、自分が職場や社会で役立たないと感じる状態に陥ってしまいます。行動や努力が報われないと感じることが、さらに自己肯定感を損ない、仕事に対する意欲を失わせてしまうわけです。何事にも達成感を感じられず、休職や退職に至る人は決して珍しくありません。

バーンアウトが起こってしまう原因や兆候

バーンアウトが起こってしまう原因は、個人的な部分と環境要因に大きく分けられます。それぞれ具体的にみていきましょう。

個人的な要因

バーンアウトを引き起こす要因には、個人の性格や日常の習慣が深く関係しています。特に完璧主義や過度な責任感を持つ人は、仕事での失敗やミスを極度に恐れる傾向があり、プレッシャーから逃れられない場合があります。

結果として、無理なスケジュールや過度に高い目標を設定し、自分を追い詰めてしまうことが少なくありません。さらに、自己管理が難しい環境の場合、十分な休息が取れず、精神的な疲労も蓄積してしまいます。このような状況が続くと、心身に大きな負担がかかり、バーンアウトを引き起こすリスクが高まります。

環境要因(社会的な要因)

職場環境や社会的なプレッシャーも、バーンアウトの大きな要因として挙げられます。過重労働や長時間労働、厳しい締め切りが続く環境では、徐々に仕事への意欲を失い、最終的に精神的な限界を迎えてしまう人は少なくありません。

また、同僚や上司との人間関係が良好でない場合、緊張状態が継続することで、精神的なストレスから情緒的に消耗してしまうケースもあります。成果主義が徹底されている職場でも、常に高いパフォーマンスを求められるため、精神的に参ってしまう人が多いでしょう。

このような環境下では心身への負担が増加し、バーンアウトを引き起こすリスクが高まります。

バーンアウトが起こるサイン

バーンアウトが進行しているサインとしては、情緒的に不安定になりやすく、ちょっとしたことでイライラしたり、逆に無気力になったりすることが挙げられます。仕事に対する意欲や興味が徐々に失われ、以前は楽しく感じていた業務にも、関心を持てなくなるケースもよくあります。

さらに身体的な症状として、慢性的な疲労感や睡眠障害、頭痛や胃痛といった不調が現れる場合も少なくありません。人間関係においても、同僚や家族との交流を避けたり、孤立しようとしたりする傾向がみられます。このようなサインを早期に認識し、適切な対策を講じることが重要です。

社員のバーンアウトを予防するには?

社員のバーンアウトを防ぐには、職場全体でのサポートが必要となります。適切な業務配分や継続的なサポート、心理的安全性の確保など、職場環境の改善が欠かせません。以下のポイントを意識して、全社的に取り組むようにしましょう。

継続的なサポートとキャリア支援

定期的かつ継続的なサポート体制を整えることが、社員のバーンアウトを防ぐのに有効です。上司や人事担当者が社員の悩みや課題に耳を傾ける場を設けたり、キャリアに関する相談機会を増やしたりすることで、社員が仕事へのモチベーションを維持しやすくなります。

また、スキルアップのための研修やセミナーを定期的に提供し、成長を実感できる環境を整えることも効果的です。特に、キャリアの方向性に迷いがある社員には、具体的なアドバイスをしつつ、将来への不安を軽減する取り組みが求められます。社員が「会社に支えられている」と感じられる体制が、バーンアウトの予防につながります。

適切な業務配分

過重労働や不均等な業務負担は、バーンアウトのリスクを高める要因です。社員一人一人の能力や状況に応じた業務配分を実現できるように、業務量を適切に管理し、必要に応じてチーム内でタスクの再調整を実施しましょう。

定期的なミーティングを通じて、特定の社員に業務負担が偏っていないかを確認し、透明性のある労働環境をつくることが重要です。さらに休暇を取りやすい仕組みも整備し、社員がリフレッシュする時間を確保することも、バーンアウトの予防に有効です。

ストレスチェックの実施

ストレスチェックは、社員の精神的な健康状態を早期に把握するのに効果的です。定期的なストレスチェックを実施することで、社員が抱える不安や問題を客観的に評価できます。チェックの結果に基づき、必要なサポートを迅速に提供すれば、バーンアウトを未然に防げるでしょう。

また、チェック結果は個人のプライバシーに配慮しつつ、職場全体のストレス要因を見直すきっかけとして活用することも重要です。社員が安心して利用できる体制を整えることで、一人一人のメンタルヘルスの向上にもつなげられます。

心理的安全性の高い職場づくり

心理的安全性が高い職場では、社員が安心して意見を述べたり、失敗を恐れずに挑戦したりできるので、バーンアウトが発生しにくくなります。たとえバーンアウトの兆候があっても、社員が周りに相談しやすいため、早期に適切な対策を講じられるでしょう。

まず上司や同僚が積極的にコミュニケーションを取り、互いの意見を尊重する姿勢を示すことが、職場の心理的安全性を高めるポイントです。また、ハラスメントや差別を防止するための研修なども実施することで、社員が周りを信頼できる職場環境をつくれます。

さらに、困難な状況に直面している社員には、チーム全体でサポートできる体制を整えましょう。こうした取り組みが、社員のバーンアウトの予防に効果的です。

健康的な労働環境で社員のバーンアウトを防ぐ

バーンアウトを防ぐには、個人の意識改革だけではなく、職場環境や組織体制の改善が不可欠です。定期的なサポートや業務の適切な分配、心理的安全性の確保など、社員が安心して働ける環境の整備に注力する必要があります。

特に、経営者や管理者は、社員一人ひとりの健康が組織全体の成長につながることを意識し、社員が互いにサポートし合える体制を目指しましょう。長期的な視点に立った継続的な取り組みが求められます。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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