仕事のストレスで従業員のパフォーマンスが落ちる?企業が取り組むべき対策とは
仕事に起因するストレスによって、心身に不調をきたす従業員が少なくありません。ストレスが蓄積することで、モチベーションの低下や離職につながるケースもあります。現代の労働環境では、多くの人が何らかのストレスを抱えていると言われています。この記事では、「仕事のストレス」とは何か、その要因と従業員・企業への影響を整理し、企業が取り組める対策についてご紹介します。
仕事が従業員に及ぼすストレスとは
「仕事のストレス」という言葉を耳にする機会は多いものの、その正体やメカニズムを正しく理解している方は意外と少ないかもしれません。ここではまず、ストレスの基本的な定義と種類を確認した上で、仕事に関連するストレスの特徴や、労働者が抱える現状について見ていきましょう。
仕事上の要素が原因で起こる身体・精神の反応
一般的にいう「ストレス」とは、ストレスの原因(ストレッサー)によって引き起こされるストレス反応のことです。ストレッサーは外部環境からの刺激であり、以下のように複数の種類があります。
- 物理的ストレッサー:暑さや寒さ・騒音など
- 化学的ストレッサー:酸素濃度の低さや薬物の影響など
- 生物的ストレッサー:感染や炎症など
- 心理的社会的ストレッサー:人間関係に起因する葛藤や社会的な行動に伴う責任、将来への不安など
仕事におけるストレスは、こうしたストレッサーが複合的に関わり、心身に負担を与えることが要因です。
参考:ストレス要因(ストレッサー):用語解説|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
約8割の労働者が何らかの強いストレスを感じている
厚生労働省が実施した「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」では、働く人の多くが強いストレスを感じている実態が明らかになりました。
調査では、約1万8,000人の常用労働者および派遣労働者を対象に、仕事や生活に関する不安・悩み・ストレスの有無を尋ねた結果、82.7%が「ある」と回答しています。
この割合は前年の82.2%、その前の53.3%と比較しても高い水準で推移しており、ストレスを感じる労働者が増えている傾向がうかがえます。こうした状況は、企業にとっても無視できない課題であり、職場環境や支援体制の見直しが求められています。
参考:令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況「調査の概要」PDF、「個人調査」PDF|厚生労働省
参考:令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況「調査の概要」PDF、「個人調査」PDF|厚生労働省
仕事のストレス要因の種類
企業が仕事のストレスについて対策を練るには、まず要因が何なのかを知る必要があります。厚生労働省の労働安全衛生調査で見えた上位のストレス要因と、近年増えたテレワークに見られるストレス要因を見てみましょう。
労働安全衛生調査の上位に上がった要因
厚生労働省の「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」では、次の5項目が仕事や職業生活におけるストレス内容として上位に上がりました。
- 「仕事の失敗、責任の発生等」:39.7%
- 「仕事の量」:39.4%
- 「対人関係」:29.6%
- 「仕事の質」:27.3%
- 「顧客、取引先からのクレーム等」:26.6%
これらは、いずれも心理的・社会的ストレッサーに分類されるものです。以前は工場などでの物理的ストレッサー(騒音・温度・作業環境など)が中心でしたが、近年ではサービス業や情報産業など人との関わりが多い業務が増えたことにより、対人関係や責任に起因するストレスの比重が高まっていると考えられます。
参考:令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況「調査の概要」PDF、「個人調査」PDF|厚生労働省
テレワーク特有のストレス要因
新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、テレワークを導入する企業が増加しました。これに伴い、従来とは異なる形のストレスも報告されています。
たとえば、次のような要因が挙げられます。
- 自宅の通信環境や作業設備が整っていないことによるストレス
- 家族や生活音など、業務に集中しにくい環境
- 対面でのコミュニケーション機会が減ることによる孤独感や不安
テレワークは柔軟な働き方を実現する一方で、こうした環境面や心理面での負荷も伴います。導入企業においては、業務上の利便性だけでなく、働く環境全体への配慮も欠かせません。
従業員のストレスが企業に与える影響
仕事のストレスは、従業員本人はもちろん企業にも大きな影響を与えます。ここでは、ストレスが企業にもたらす主な影響について整理します。
集中力の低下による重大なミスや事故
強いストレスが続くと、睡眠や生活習慣の乱れを招くことがあります。結果として、職場でも集中力が低下し、業務効率の悪化や判断ミスが生じやすくなる可能性があります。
こうした状況が続いた場合、重大なヒューマンエラーや事故が発生するおそれもあり、顧客対応や安全管理に関わる業務においては、企業としての信頼や事業継続性にも影響を及ぼすことが懸念されます。
身体的・精神的不調による休職や離職の増加
ストレスが積み重なることで、従業員の心身に不調が現れるケースもあります。症状の程度によっては、一時的な休職や、やむを得ず退職を選択する状況につながることもあります。
人員が減少すると、他の従業員に業務負担が偏る可能性があり、それがまた新たなストレス要因となるなど、負の連鎖に陥るリスクもあります。持続的に健全な組織運営を実現するには、ストレスに配慮した環境づくりとエンゲージメント向上の取り組みが重要です。
安全配慮義務違反に問われるリスク
企業には、労働契約法第5条により、「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をする義務」が課されています。また、労働安全衛生法第3条第1項では、労働者の安全と健康の確保、快適な職場環境の実現に努めることが定められています。
従業員のストレス状態が深刻化しているにもかかわらず、適切な対応がなされていなかった場合、安全配慮義務違反や労働安全衛生法上の責任を問われる可能性もあります。企業は、予防的な視点での環境整備や早期のサポート体制づくりが求められます。
仕事のストレス対策として企業ができること
仕事に伴うストレスを長期間そのままにしておくと、従業員の心身や組織全体に悪影響を及ぼす可能性があります。ここでは、企業として取り組める代表的なストレス対策を紹介します。
ストレスチェックや1on1で実態を可視化する
厚生労働省では、ストレスチェック制度の導入を推進しています。2015年12月からは、常時50人以上の労働者を雇用する事業場ではストレスチェックの実施が義務化されました(50人未満の事業場は努力義務)。
労働安全衛生法第66条の10では、医師や保健師などの専門職によって、心理的負担の程度を把握するための検査を行うことが規定されています。
事業場の規模にかかわらず、従業員の心身の状態を把握する機会として、ストレスチェックは積極的に取り入れることが望ましいでしょう。また、1on1の面談で日常的に従業員の気持ちを聞くことも、ストレスの早期発見に有効です。
参考:労働安全衛生法 第13条・第66条の10・附則 第4条|e-Gov法令検索
業務配分や人間関係の改善を図る
業務量の過多は、代表的なストレス要因のひとつです。厚生労働省の「令和5年 労働安全衛生調査」では、「仕事の量」がストレス要因として2位に挙がっています。
まずは従業員それぞれに割り振られている業務量の実態を把握し、業務配分の偏りがないかを確認してみましょう。必要に応じてタスクの再調整を行うことが、ストレス軽減につながります。
また、同調査で1位だった「仕事の失敗や責任の発生等」は、良好な人間関係が築かれていれば、精神的な負荷を和らげることができます。たとえば、失敗を責めるのではなくサポートし合う文化があれば、責任の重さに対する不安や孤立感が軽減されやすくなります。
参考:令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況「調査の概要」PDF、「個人調査」PDF|厚生労働省
TUNAGで快適に働ける職場づくりをサポート
仕事のストレス対策には、状態の可視化から職場環境の改善、コミュニケーションの促進まで、複数の視点での取り組みが必要です。こうした課題に対し、組織改善クラウドサービス「TUNAG(ツナグ)」は多角的にサポートできます。
さらに、「TUNAG」で培ったエンゲージメント向上支援のノウハウを基に開発された組織サーベイ「TERAS」も提供しており、エンゲージメントの見える化や離職リスクの早期発見に活用できます。
「TERAS」でストレスの現状を把握
ストレスチェックに加えて、組織の状態そのものを把握することも大切です。特に、人間関係や業務負荷の偏りといった要因が、従業員のストレスにつながっていることがあります。
組織サーベイ「TERAS」は、基本無料で利用できるエンゲージメントサーベイツールです。従業員が約5分程度のアンケートに回答することで、エンゲージメントを構成する8つの要素をスコア化し、ストレス要因となりうる組織課題を可視化できます。
タイムラインや社内チャットでコミュニケーションを活性化
良好な人間関係を築くためには、日頃のコミュニケーションが欠かせません。TUNAGには、投稿に対してコメントやスタンプで反応できるタイムライン機能があり、気軽なやり取りを促します。
また、社内チャット機能では、個別・グループのリアルタイムなやり取りが可能です。テレワーク中の従業員も、孤立感を抱えにくくなり、組織へのつながりを感じやすくなります。
福利厚生機能でリフレッシュの手段を提供
TUNAGでは、福利厚生機能も提供しています。たとえば、飲食店や映画館、コンビニなどでの割引サービスなど、日常的に利用しやすい特典を通じて、従業員の気分転換やリフレッシュの機会を提供できます。
また、企業独自の福利厚生メニューを設定することも可能です。従業員の声を反映し、多様なニーズに合った制度設計を行うことで、より喜ばれる福利厚生の提供が実現できます。
仕事のストレスを放置せず従業員が働きやすい職場に
仕事に伴うストレスは、日々の業務の中で蓄積される可能性があります。とくに現代では、心理的・社会的ストレッサーが中心となり、多くの従業員がストレスを感じているという調査結果もあります。
従業員が強いストレスを抱えたまま働き続けると、業務ミスや体調不良、休職・離職、さらには企業の法的リスクにつながることもあります。
だからこそ、ストレスの予防・把握・対策のサイクルを意識した環境づくりが求められます。TUNAGやTERASのようなツールを活用し、誰もが安心して働ける職場を目指しましょう。