人生百年時代とは?超長寿社会において企業に求められる取り組み

日本では平均寿命だけでなく健康寿命も延びており、より長く活動的な生活を送れる可能性が高まっています。労働者の働き方も変わっていくため、企業も多角的な視点から対策を講じなければなりません。人生百年時代において企業に必要な取り組みを解説します。

人生百年時代とは

日本の平均寿命は過去数十年間で大きく延びており、100歳まで生きることが一般的になる時代を迎えようとしています。人生百年時代とは何か、まずは日本における平均寿命の現状を見ていきましょう。

長生きが当たり前になるという考え方

人生百年時代とは、平均寿命が大きく延び、百歳まで生きることが珍しくなくなる時代のことです。リンダ・グラットン氏の著書「LIFE SHIFT」で提唱され、長寿化に対応した社会制度や人生設計の見直しを促す動きが広がっています。

日本は世界有数の長寿国であり、平均寿命は今後も延び続けると予想されています。2007年に生まれた人の半数が107歳より長く生きるという研究結果もあるほどです。

人生百年時代においては、人の生き方や社会システム、さらに働き方も変化するとされています。さまざまな取り組みを通じて、企業は人生百年時代を生き抜くための人材戦略を実行し、持続的な成長を目指すことが求められます。

出典:「人生100年時代」に向けて|厚生労働省

日本の平均寿命の推移

2023年時点での日本の平均寿命は、男性が約81.09歳、女性が約87.14歳です。1947年の平均寿命は男性約50.06歳・女性約53.96歳であり、76年の間に男女とも平均寿命が30歳以上延びていることになります。

近年は上昇が緩やかになっているものの、今後も平均寿命は男女とも延び続けると予想されており、2070年には男性85.89歳、女性91.94歳となる見込みです。

また、健康寿命も延び続けており、近年は男女とも70歳を超える水準で上昇し続けています。平均寿命と健康寿命の差を縮めることが、人生百年時代をより豊かに生きるための鍵といえます。

※出典:主な年齢の平均余命

※出典:健康寿命と平均寿命の推移

人生百年時代に向けた国の対応

長い人生をより充実したものにするためには、幼児教育から社会人の学び直しまで、生涯にわたる学習が不可欠です。また、若者から高齢者まで全ての国民に活躍の場があることも重要になります。

これらを踏まえ、国は人生百年時代における対策として、次のような取り組みを進めています。

  • 幼児教育の無償化
  • 待機児童の解消
  • 介護人材の処遇改善
  • リカレント教育機会の拡充
  • 高齢者の就業促進

また、人生百年時代を見据えた少子高齢化対策の一環として、「人づくり革命」と「生産性革命」を軸とする「新しい経済政策パッケージ」を策定しています。

出典:「人生100年時代」に向けて|厚生労働省

人生百年時代の働き方

人生百年時代においては、労働者の働き方も大きく変化します。企業に必要な取り組みを考える上では、人生百年時代の働き方を知ることが大切です。

定年の概念がなくなる

人生百年時代では、60歳や65歳での定年という概念はなくなるでしょう。100歳まで生きるとなると、従来の定年を迎えた後も、30年以上の長い期間を老後として過ごすことになるためです。

定年後の生活を「余暇を楽しむ期間」と捉えるのではなく、「第二の人生を謳歌する期間」と捉えるようになる可能性があります。定年後も働き続けることが一般的になるのです。

そもそも、大半の国では定年制度がなく、年齢による雇用差別を禁止する法律により定年が廃止されている国もあります。日本でも、65歳までの雇用確保制度の設置は既に義務化されており、2025年4月からはこれまでの経過措置が終了し、継続雇用制度を導入する場合は希望者全員を対象とすることが完全義務化されるなど、定年に対する考え方は変わりつつあります。

出典:経過措置に基づく基準対象者に限定した継続雇用制度を利用している事業主の皆さまへ

パラレルキャリアとキャリアの二毛作・三毛作

パラレルキャリアとは、本業と並行して別のキャリアを進めていくことです。人生の後半をより充実させるために、本業以外にも活動の場を広げることが重要視されています。

また、キャリアの二毛作・三毛作も普通になっていくでしょう。定年まで同じ仕事をするのではなく、年齢にかかわらず人生においてフィールドを何回も変える働き方です。

このように、人生百年時代ではキャリアに対する考え方も大きく変化することが予想されます。

人生百年時代において企業に必要な取り組み

人生の進め方や労働者の働き方が大きく変化する人生百年時代では、企業も従来までの考え方を変えていく必要があります。人生百年時代において企業に求められる取り組みを見ていきましょう。

リカレント教育の支援

リカレント教育とは、学校教育を終えて一度社会に出た後も、必要に応じて学び直して仕事と学習を繰り返すことです。変化の激しい社会で常に最新の知識やスキルを身につけ、自身のキャリアを主体的に形成していくためには、リカレント教育が重要とされています。

リカレント教育における学び直しとは、再び教育機関に通ったり専門的な講座を受講したりして、知識やスキルを更新することです。必ずしも仕事を辞めて行う必要はなく、働きながら学ぶことも含まれます。

国もリカレント教育の重要性を認識しており、リカレント教育の機会を拡充するための取り組みを行っていますが、企業としても資格取得支援などの対策を講じることが重要です。

キャリア開発の支援

人生百年時代におけるキャリア開発支援は、個人がより長く働くことを前提に、主体的なキャリア形成を企業がサポートする取り組みのことです。

企業がキャリア開発支援を行うことで、従業員の主体的なキャリア形成を促進できます。キャリア開発支援により従業員が自身のキャリアを前向きに捉えられるようになれば、企業へのエンゲージメントも向上するでしょう。

企業が実施できるキャリア開発支援の例は次の通りです。

  • キャリアカウンセリング:専用窓口を開設し専門家によるサポートを提供
  • 研修制度の充実:年代や職種に合わせてキャリアアップにつながる研修を提供
  • 社内FA制度や公募制度の導入:新しい仕事に挑戦できる機会を提供

リテンションの強化

企業が従業員を組織に定着させるための施策がリテンションの強化です。具体的には、従業員が働き続けたいと思えるような環境を整備し、定着率を高めることを目指します。

人生100年時代においては、従来の3ステージ(教育・仕事・引退)の考え方を見直し、長期的なキャリアプランを考えなければなりません。リテンションの強化により仕事に対する考え方を変え、従業員のモチベーションを高く維持することが求められます。

企業が取り組むべきリテンション施策の例をまとめました。

  • 働きがいのある環境づくり:柔軟な働き方の導入、公平な評価制度
  • 従業員の成長支援:研修制度の充実、メンター制度の導入
  • 福利厚生の充実:多様なニーズに対応した福利厚生、退職金制度の見直し

健康経営の推進

健康経営とは、従業員の健康を経営的な視点から考え、戦略的に実践することです。平均寿命が延び、長く働き続けることが求められる時代において、企業にも従業員の健康をサポートすることが求められています。

健康経営を推進するためには、健康経営を経営理念や方針に組み込み、経営層がリーダーシップを発揮することが重要です。また、健康診断の受診率向上や運動機会の提供などについても、継続的な取り組みが必要になるでしょう。

人生百年時代に対応するための組織づくりを

人生百年時代を迎えるにあたり、従業員の自律的なキャリア形成支援や、多様な働き方に対応できる制度設計などが企業に求められています。

従業員の長期的な活躍を前提とした、柔軟で変化に強い組織文化の醸成を意識し、人生百年時代に対応するための組織づくりを進めましょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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