ウェルビーイングサービスとは、従業員の心身の健康や働きがい、組織内のつながりを支援する仕組みです。本記事では、ウェルビーイングサービスを「組織活性化・施策運用型」「サーベイ・状態可視化型」「健康管理・メンタル支援型」「総合支援・健康施策型」の4タイプに整理します。
自社の課題に合わないサービスを選ぶと、サーベイを実施しても施策へつなげられない、導入目的が従業員へ伝わらず利用されない、必要のない機能へ費用をかけるといった状況が起こりかねません。そのため、機能数や知名度だけで比較せず、解決したい課題、利用者、運用体制、サポート、効果測定の方法まで確認する必要があります。
本記事を読むことで、自社が状態把握と施策実行のどちらを必要としているかを整理し、適したサービスタイプと候補を比較できるようになります。導入後の運用や改善まで見据え、自社に合うウェルビーイングサービスを選ぶ際にお役立てください。
ウェルビーイングサービスとは、企業が従業員の心身の健康や働きがい、職場でのつながりを支えるために導入するサービスです。従業員の状態を把握するサーベイだけでなく、健康情報の管理、メンタルヘルス相談、社内コミュニケーションの活性化、施策設計を支援するコンサルティングなども含まれます。
ただし、すべてのサービスが同じ課題へ対応するわけではありません。従業員の状態を把握することに強いサービスもあれば、把握した課題に対して社内施策を実行し、利用状況を確認することに強いサービスもあります。自社に合うサービスを選ぶには、機能の多さではなく、どの課題をどの段階で解決したいのかを明確にする必要があります。
なお、本記事で扱うのは、企業が従業員向けに導入する法人向けサービスです。個人が自分で利用する健康、金融、生活支援サービスは比較対象に含めません。また、複数の役割を持つサービスもあるため、次章では中心となる用途を基準に4タイプへ整理します。
企業向けウェルビーイングサービスは、解決する課題と支援する業務によって役割が異なります。本記事では、中心となる用途を基準に「組織活性化・施策運用型」「サーベイ・状態可視化型」「健康管理・メンタル支援型」「総合支援・健康施策型」の4タイプに整理します。
どのタイプを優先するかは、自社が従業員の状態を把握できていないのか、課題は分かっていても施策を実行・定着できていないのかによって変わります。一つのサービスが複数の機能を備える場合もあるため、名称ではなく主な用途と対応範囲を確認してください。
タイプ | 主な課題 | 代表的な機能・支援 | 適している企業 |
組織活性化・施策運用型 | 拠点間の交流不足、情報の未到達、称賛や理念浸透の停滞 | 社内SNS、情報発信、称賛、社内制度、利用状況の分析 | 多拠点・多店舗で働く従業員へ施策を届けたい企業 |
サーベイ・状態可視化型 | 従業員や組織が抱える課題を把握できていない | アンケート、部署・属性別分析、経年比較、レポート | 組織課題を数値や回答から確認したい企業 |
健康管理・メンタル支援型 | 健康情報の分散、不調者対応、相談体制の不足 | 健康データ管理、ストレスチェック、面談管理、相談窓口 | 健康管理や産業保健業務を整えたい企業 |
総合支援・健康施策型 | 方針や施策を自社だけで設計・運用しにくい | 課題整理、コンサルティング、研修、健康増進プログラム、運用支援 | 専門家の伴走や複数の健康施策を必要とする企業 |
組織活性化・施策運用型は、従業員同士の交流、会社からの情報発信、称賛、理念浸透などを日常的に運用するサービスです。経営や人事が施策を企画していても、店舗や工場、地方拠点へ情報が届かない場合や、制度の利用状況を確認できない場合に候補となります。
このタイプが適しているのは、課題の把握よりも、決めた施策を従業員へ届けて継続的に運用する仕組みが不足している企業です。
例えば、サーベイから「部署間のつながりが弱い」と分かっていても、交流を促す施策を案内し、参加を募り、反応を確認する環境がなければ改善活動は進みません。社内SNSやサンクスカード、社内ポイント、アンケートなどを使い、施策の実行から利用状況の確認までを支援します。
ただし、健康診断結果の管理や産業医面談、専門家によるカウンセリングを主目的とするサービスではありません。健康情報や不調者対応を一元管理したい場合は、健康管理・メンタル支援型を比較します。
サーベイ・状態可視化型は、定期的なアンケートを通じて、従業員の心理状態、エンゲージメント、職場環境などを確認するサービスです。全社平均だけでなく、部署、拠点、属性、時系列による違いを分析できるサービスもあります。
自社のどこに課題があり、どの従業員層へ支援が必要なのか分からない場合は、施策を決める前に状態を把握する仕組みが求められます。
離職が増えている場合でも、上司との関係、業務量、将来への不安、職場内の孤立など、背景によって必要な対応は変わります。サーベイ結果を部署別や時系列で確認すると、全社共通の課題なのか、一部の職場に偏った課題なのかを切り分けやすくなります。
一方で、サーベイを実施しただけでは、職場の状態は変わりません。結果を受けて誰が施策を決め、従業員へ届け、実行後の変化を確認するのかまで決めておく必要があります。
健康管理・メンタル支援型は、健康診断、ストレスチェック、勤怠、面談記録などの情報を管理し、健康管理担当者や産業保健スタッフの業務を支援するサービスです。相談窓口、カウンセリング、セルフケア教材などを提供するサービスも含まれます。
健康情報が複数のファイルやシステムへ分散している企業や、不調の兆候を把握して適切な支援へつなげたい企業に向いています。
例えば、健康診断結果と長時間労働の情報が別々に管理されていると、面談が必要な従業員の確認に時間がかかります。必要な情報を同じ環境で確認できれば、担当者が対象者を把握し、面談や受診勧奨などの対応を進めやすくなります。
健康情報は取り扱いに注意が必要なため、機能だけでなく、閲覧権限、認証方法、データの保存先、外部専門家と共有される情報の範囲も確認します。
総合支援・健康施策型は、企業の課題整理や方針策定を専門家が支えるサービスと、複数の健康増進施策を従業員へ提供するサービスを含みます。社内に専門知識や運用人員が不足している場合や、一つの機能では対応しにくい課題を抱えている場合に候補となります。
このタイプを比較する際は、課題整理、施策設計、従業員向けプログラム、導入後の運用支援のうち、どこまでが契約範囲に含まれるかを確認します。
例えば、健康経営の方針から相談したい企業には、現状分析や施策設計を支援する伴走型サービスが合います。一方、実施する施策が決まっており、従業員の運動習慣や健康行動を支えたい場合は、アプリや健康イベントを提供するサービスが候補です。
外部サービスを利用しても、経営判断、社内周知、参加しやすい勤務環境の整備などは企業側に残る場合があります。サービス提供会社と自社の担当範囲を分け、導入後に確認する指標まで決めておきます。
ウェルビーイングサービスは、機能数や知名度だけで選ぶと、自社の課題と合わず、導入後に利用されない可能性があります。まずは、従業員や組織のどの状態を変えたいのかを明確にし、必要な支援の種類を絞ります。
候補を比較する際は、状態を測る機能だけでなく、施策を実行する仕組み、従業員の使いやすさ、分析、セキュリティ、導入後の支援まで確認します。次の判断フローを使うと、自社が優先して比較するサービスタイプを整理できます。
従業員や組織の状態を把握できているか
↓
いいえ:サーベイ・状態可視化型、または健康管理型を検討する
はい
↓
実施する施策を決められているか
↓
いいえ:総合支援・健康施策型のうち、課題整理や施策設計の伴走に対応するサービスを検討する
はい
↓
施策が従業員へ届き、継続して利用されているか
↓
いいえ:組織活性化・施策運用型を検討する
はい
↓
利用状況と状態変化を確認し、現在の施策を改善する
サービスを比較する前に、自社が解決したい課題を一文で表せる状態にします。「ウェルビーイングを高めたい」という目的だけでは、必要な機能や利用者を決められないためです。
最初に決めるのは導入する機能ではなく、誰のどのような状態を変えたいのかです。
例えば、「従業員の離職を防ぎたい」という課題だけでは、原因を特定できません。上司との関係、業務量、健康不安、拠点間の孤立、将来への不安など、背景によって選ぶサービスは変わります。サーベイや面談、退職理由、既存制度の利用状況などから、対象者と困っている場面を整理します。
課題が複数ある場合は、影響を受ける人数、業務への影響、緊急性を基準に優先順位を決めます。一つのサービスですべてに対応しようとせず、最初に取り組む課題を絞る方が、導入後の効果を確認しやすくなります。
課題の存在は感じていても、原因や影響を受けている部署が分からない場合は、状態を把握するサービスから検討します。一方、課題と対応策が決まっているにもかかわらず、従業員へ届かない、利用されないという状況では、施策を運用する仕組みが必要です。
「何が起きているか分からない」のか、「何をすべきか分かっているが実行できない」のかを切り分けます。
例えば、拠点ごとのエンゲージメントの差を把握できていない場合は、サーベイ型が候補です。すでに「店舗間の交流不足」が明らかで、情報発信や交流施策を継続できていない場合は、組織活性化・施策運用型が合う可能性があります。
状態把握と施策実行は、どちらか一方を選べば終わるものではありません。サーベイ結果を施策へ反映し、実行後に再び状態を確認する流れが必要なため、複数タイプの機能を組み合わせる場合もあります。
管理者向けの機能が充実していても、従業員が利用しにくければ、十分なデータや参加を得られません。特に多店舗・多拠点の企業では、社用PCや法人メールアドレスを持たない従業員が使えるかを確認します。
操作性は画面の見やすさだけでなく、従業員が日常業務の中で無理なく利用できるかで判断します。
確認する項目には、スマートフォンや専用アプリへの対応、ログイン方法、通知、回答や投稿にかかる時間、外国語対応などがあります。夜勤やシフト勤務がある場合は、利用できる時間が限られないか、私物端末の使用が必要かも確認します。
無料トライアルやデモを利用できる場合は、人事担当者だけで試さず、実際に利用する部署や職種の従業員にも操作してもらいます。管理者には使いやすくても、現場では入力や閲覧に手間がかかる場合があるためです。
サービスを導入すると、従業員の回答、健康情報、利用状況などのデータを扱う場合があります。必要な分析ができるかと同時に、誰がどの情報を閲覧できるのかを確認します。
分析機能は項目数の多さではなく、自社が導入後に行う判断へ使えるデータを取得できるかで選びます。
例えば、部署別の違いを確認したい場合は、組織単位で比較できるか、過去の結果と経年比較できるかを確認します。個人フォローを行う場合は、本人の同意、閲覧権限、通知方法など、プライバシーへ配慮した運用が欠かせません。
既存の人事システム、勤怠システム、社内ポータルなどと連携する場合は、連携できるデータ、設定に必要な作業、追加費用を確認します。連携機能があっても、自社で使用している製品や契約プランが対象外となる場合があります。
健康情報やストレスに関する回答を扱うサービスでは、認証方法、権限管理、データの保存先、退職者データの扱い、外部専門家へ共有される情報も比較項目に含めます。
初期設定が完了しても、利用目的が従業員へ伝わらず、担当者が活用方法を決められなければ定着しません。導入前に、企業側が担当する業務と、サービス提供会社から受けられる支援を整理します。
サービスの導入支援は、操作方法の案内だけでなく、施策の設計や利用促進、結果を受けた改善まで含まれるかを確認します。
初期設定、管理者研修、従業員への案内文、定例会、分析結果の読み取り、施策提案など、支援範囲はサービスによって異なります。担当者が少ない企業では、設定や分析を自社で行えるか、専任担当者の支援が必要かを判断します。
効果検証では、ログイン数や回答率だけを追わず、導入目的に近い指標を決めます。情報を届ける施策であれば閲覧率、相談支援であれば利用のしやすさ、組織活性化であれば従業員の反応や状態の変化などを確認します。
料金を比較する際は、月額費用だけでなく、初期費用、最低利用人数、オプション、運用にかかる担当者の時間も含めて検討します。料金が公開されていない場合は推定せず、自社の利用人数と必要機能を伝えて見積もりを取得します。
ここまで紹介した15サービスを、中心となるタイプ、主な用途、適する企業、料金・試用の確認事項で比較します。複数タイプの機能を持つサービスもありますが、本記事では導入目的を判断しやすくするため、中心となる用途で分類しました。
料金は利用人数、機能、支援範囲、既存システムとの連携によって変わります。2026年7月31日時点で金額を公式サイトから確認できないサービスは、推定せず「要問い合わせ」としています。
サービス | タイプ | 主な用途 | 適している企業 | 料金・試用 |
組織活性化・施策運用 | 情報発信、称賛、社内制度、アンケートの運用 | 多拠点・多店舗で、情報や施策を現場へ届けたい企業 | 要問い合わせ。資料請求、デモあり | |
組織活性化・施策運用 | 投稿と応援による関係づくり | 新組織や研修、オンボーディングで交流を促したい企業 | 要問い合わせ | |
組織活性化・施策運用 | 感謝、称賛、日常的な交流 | 感謝を軸に部門間のコミュニケーションを増やしたい企業 | 初期費用無料。月額料金は要見積もり。無料トライアルあり | |
組織活性化・施策運用 | 社内情報、交流、学習のアプリへの集約 | 自社独自の社内アプリを構築したい企業 | 要問い合わせ | |
サーベイ・状態可視化 | 個人の心理状態の把握と管理職のフォロー支援 | 個人の状態に応じた声かけを支援したい企業 | 要問い合わせ | |
サーベイ・状態可視化 | エンゲージメントの測定とチームでの対話 | 管理職やチームが結果を使って改善を進めたい企業 | 詳細は要確認。無料トライアルあり | |
サーベイ・状態可視化 | 個人のコンディションと組織課題の把握 | 個人フォローと組織分析を組み合わせたい企業 | 従業員数に応じた料金。要問い合わせ | |
サーベイ・状態可視化 | 心身の状態と職場環境の分析 | 心身の健康と組織課題を多角的に確認したい企業 | 要問い合わせ | |
健康管理・メンタル支援 | 健診、ストレス、面談、就業判定の管理 | 産業保健業務の対象者と進捗を一元管理したい企業 | 要問い合わせ | |
健康管理・メンタル支援 | 健康管理から面談、休職・復職対応までの管理 | 不調者へのフォロー体制も整えたい企業 | 契約機能・支援範囲により異なる。要問い合わせ | |
健康管理・メンタル支援 | 人事・健康データの集約と施策検証 | 複数のデータから対象者や組織課題を把握したい企業 | 要問い合わせ | |
健康管理・メンタル支援 | 従業員向け健康サービスの提供と利用データの分析 | 健康行動と施策の利用状況をまとめて確認したい企業 | 要問い合わせ | |
総合支援・健康施策 | アプリやイベントを通じた健康行動の促進 | 運動習慣や健康施策への参加を後押ししたい企業 | 要問い合わせ | |
総合支援・健康施策 | 健康経営の課題整理、体制構築、施策運用 | 専門家の伴走を受けながら健康経営を進めたい企業 | 要問い合わせ | |
総合支援・健康施策 | 健診結果の確認と従業員参加型の健康施策 | 健康イベントを継続的に運用したい企業・健康保険組合 | 要問い合わせ |
TUNAGを最上段に掲載しているのは、本記事で最初に扱った「組織活性化・施策運用型」の代表サービスとして比較しやすくするためです。サービス全体の優劣を示す順位ではありません。
候補を絞る際は、まず自社の課題に合うタイプを選び、その中で利用者、運用担当者、必要な支援、取り扱うデータ、費用を比較します。健康診断の管理と社内コミュニケーションの活性化のように目的が異なる場合は、一つのサービスへまとめることを優先せず、複数タイプを組み合わせる方法も検討してください。
ウェルビーイングサービスは、導入しただけで従業員の状態や職場環境が変わるものではありません。課題の設定、従業員への周知、担当者による運用、導入後の検証が欠けると、機能を十分に使えないまま費用だけがかかる可能性があります。
導入前に起こりやすい失敗を把握しておけば、サービスの選定条件や運用体制へあらかじめ対策を組み込めます。ここでは、特に注意したい4つの失敗と、その防ぎ方を整理します。
起こりやすい失敗 | 導入前に確認すること | 主な対策 |
課題を決めず、多機能なサービスを選ぶ | 誰のどの状態を変えたいか | 最初に取り組む課題と対象者を絞る |
サーベイを実施して終わる | 結果を確認し、施策を決める担当者 | 分析後の対応と期限を決める |
導入目的が伝わらず利用されない | 従業員への案内方法と利用場面 | 目的、使い方、個人情報の扱いを説明する |
利用率だけで効果を判断する | 導入前の状態と確認する指標 | 利用状況と従業員の変化を分けて測る |
多くの機能を備えたサービスを選んでも、自社が解決したい課題と合っていなければ、使われる機能は限られます。担当者が「ウェルビーイングへ取り組む」という目的だけで候補を選ぶと、サーベイ、健康管理、社内交流など、優先順位の異なる機能が混在しやすくなります。
導入前に、対象となる従業員と変えたい状態を一文で示し、その課題の解決に必要な機能だけを比較します。
例えば、店舗間の情報共有が課題であるにもかかわらず、健康診断管理を中心とするサービスを導入しても、現場への情報到達は改善できません。反対に、産業保健業務を整えたい企業が社内SNSを導入しても、健診結果や面談記録の管理には別の仕組みが必要です。
複数の課題がある場合は、すべてを一度に解決しようとせず、影響を受ける人数や緊急性から優先順位を決めます。最初の課題を限定すると、必要なタイプや機能を絞りやすくなり、導入後の変化も確認しやすくなります。
サーベイによって組織課題を可視化しても、結果を閲覧するだけでは職場の状態は変わりません。人事がレポートを確認した後、誰が原因を整理し、どの施策を実施するのか決まっていないと、次回も同じ課題が検出される可能性があります。
サーベイを導入する際は、結果を受け取る担当者だけでなく、施策を決める人、実行する人、進捗を確認する人まで決めておきます。
例えば、特定の部署で上司との関係に関する数値が低かった場合、すぐに全社研修を実施するのではなく、回答傾向や現場の状況を確認します。そのうえで、管理職への支援、面談方法の見直し、業務分担の調整など、原因に合う対応を選びます。
施策を実施した後は、次回のサーベイ結果だけでなく、面談の実施状況や従業員の反応も確認します。サーベイは課題を発見する手段であり、改善活動そのものではないことを社内で共有しておく必要があります。
企業側が必要性を理解していても、従業員が導入目的や利用方法を知らなければ、回答や投稿、健康施策への参加は進みません。特にサーベイや健康情報を扱うサービスでは、回答が評価に使われるのではないか、誰が結果を見るのかと不安を感じる人もいます。
従業員には、何のために導入するのか、どのように利用するのか、入力した情報を誰がどの範囲で確認するのかを事前に伝えます。
案内を一度メールで送るだけでは、店舗、工場、シフト勤務の従業員まで届かない場合があります。朝礼、社内アプリ、管理職からの声かけなど、職種や勤務環境に合う方法を組み合わせます。
利用開始後も、操作方法だけでなく、回答や参加がどのような施策へ反映されたかを知らせます。従業員の意見を集めても変化が見えなければ、協力する意味を感じにくくなるためです。
ログイン率、回答率、投稿数などは、サービスが利用されているかを確認する指標です。しかし、利用者数が増えたことだけで、導入時に設定した課題が改善したとは判断できません。
利用状況を示す指標と、従業員や組織の状態を示す指標を分けて確認します。
例えば、社内情報を届けることが目的であれば、ログイン率だけでなく、対象となる情報の閲覧状況や制度の利用状況を確認します。拠点間の交流を増やす場合は、投稿数だけを追うのではなく、参加者の偏りや、部署を越えたやり取りが生まれているかも見ます。
効果を確認するには、導入前の状態を記録しておくことも欠かせません。導入後の数値だけでは、以前より変化したのか判断できないためです。
ただし、離職率や業績は、景気、採用状況、上司の交代など複数の要因から影響を受けます。サービスの利用と同時期に数値が変化しても、サービスだけの効果と断定せず、従業員の回答や利用状況など複数の情報を組み合わせて判断します。
ウェルビーイングサービスは、契約前に課題と運用方法を整理し、小さく試してから対象を広げると、自社に合うか判断しやすくなります。最初から全社へ導入すると、利用されない原因がサービスにあるのか、周知や運用にあるのかを切り分けにくくなるためです。
導入は、課題整理、既存施策の棚卸し、候補比較と試行、運用開始、効果確認の順で進めます。各段階で決める内容を明確にし、利用率だけでなく従業員の状態や行動の変化まで確認してください。
課題整理 → 既存施策の棚卸し → 候補比較・試行 → 運用開始 → 効果確認・改善
最初に、経営側が解決したい課題と、従業員が実際に困っている状況を分けて整理します。経営側が「離職を減らしたい」と考えていても、従業員が感じている問題は、業務量、上司との関係、情報不足、健康不安などさまざまです。
導入目的は「ウェルビーイングを高める」ではなく、対象者と変えたい状態が分かる文章にします。
例えば、「店舗スタッフへ福利厚生の情報が届かず、制度の利用が進んでいない」「特定の部署で不調者が増えているが、背景を把握できていない」といった形です。誰に何が起きているかを具体化すると、組織活性化型、サーベイ型、健康管理型など、優先して比較するタイプが見えてきます。
従業員の課題は、人事担当者の推測だけで決めず、既存サーベイ、面談、相談記録、制度利用状況、退職理由など、確認できる情報を使います。必要な情報がない場合は、サービス選定前に簡易アンケートやヒアリングを行います。
課題を整理した後は、現在行っている施策と使用中のシステムを一覧にします。すでに似た機能があるにもかかわらず新しいサービスを追加すると、従業員の利用先が増え、担当者の管理も複雑になります。
新しいサービスで何を増やすかを考える前に、現在の仕組みで足りない部分を特定します。
棚卸しでは、社内ポータル、チャット、サーベイ、健康管理システム、相談窓口、研修、福利厚生制度などを対象にします。各施策について、対象者、利用率、担当部署、費用、使われていない理由を確認してください。
例えば、社内ポータルに情報を掲載していても、店舗スタッフが閲覧できない場合、足りないのは情報そのものではなく、現場へ届ける手段です。サーベイを実施済みでも、結果を受けた施策が動いていない場合は、調査機能より運用機能を優先します。
既存システムとの連携が必要な場合は、取り込むデータ、管理する担当者、追加費用も整理します。この段階で不要な施策を終了したり、重複する機能を統合したりすると、導入後の運用を複雑にせずに済みます。
不足している機能が分かったら、同じタイプのサービスを複数比較します。サービス名や知名度から選ばず、課題、利用対象者、対応デバイス、運用支援、セキュリティ、料金を同じ条件で確認します。
候補を絞った後は、全社導入の前に一部の部署や拠点で試し、実際の利用環境に合うかを確かめます。
試行対象には、課題が表れている部署だけでなく、勤務形態や職種が異なる従業員を含めます。例えば、本社では問題なく使えても、店舗や工場では勤務中にスマートフォンを確認できず、利用が進まない場合があります。
試行前には、確認する項目と期間を決めます。ログイン率、回答率、情報の閲覧状況、担当者の作業時間、従業員からの質問などを記録すると、機能だけでなく運用上の負担も比較できます。
無料トライアルで確認できる範囲が限られる場合は、デモ画面だけで判断せず、自社の利用人数、必要機能、連携条件を伝えて見積もりと運用方法を確認します。
導入するサービスが決まったら、従業員へ利用目的と使い方を伝えます。操作手順だけを案内しても、何のために利用するのか分からなければ、サーベイへの回答や社内施策への参加は続きません。
導入時には、利用目的、従業員に行ってほしいこと、入力した情報の利用範囲を具体的に説明します。
例えば、サーベイであれば、回答を人事評価へ使うのか、誰が個人結果を閲覧するのかを明らかにします。社内コミュニケーションサービスであれば、投稿内容、利用できる時間、業務上の連絡との使い分けを示します。
周知方法は、メールだけに限定しません。社用PCを持たない従業員がいる場合は、朝礼、掲示物、社内アプリ、管理職からの案内などを組み合わせます。問い合わせ先と担当者も明示し、利用開始後に質問が集中しても対応できる体制を整えます。
運用担当者は、配信や集計だけでなく、利用状況を確認し、必要に応じて案内方法や施策内容を見直します。担当者の業務が属人化しないよう、実施手順と確認日を共有しておくことも欠かせません。
運用開始後は、サービスが使われたかと、導入目的に近づいているかを分けて確認します。ログイン率や回答率が高くても、情報が理解されていない、相談しにくさが残っているなど、課題が解消されていない場合があります。
効果検証では、利用状況を示す指標と、従業員や組織の変化を示す指標を組み合わせます。
情報発信が目的であれば、対象記事の閲覧率や制度の利用状況を確認します。組織内の交流を増やしたい場合は、投稿数だけでなく、参加者の偏りや部署を越えたやり取りも見ます。健康施策では、イベント参加率に加え、従業員の反応や継続利用の状況を確認してください。
試行段階で想定した結果が得られない場合は、すぐにサービスを入れ替えるのではなく、周知不足、操作の負担、対象者とのずれ、担当者の運用時間などを切り分けます。原因がサービスの対応範囲にある場合は、別タイプとの組み合わせや候補の見直しを行います。
最初の90日を目安に進捗を確認する場合は、30日までに課題と対象者を整理し、60日までに試行と利用促進を進め、90日までに利用状況と従業員の反応を確認します。ただし、必要な期間は企業規模や施策内容によって異なるため、90日以内に成果が出ると断定せず、次の改善点を決める区切りとして扱います。
サービスの機能を確認するだけでは、自社でどのように運用できるかまでは判断しにくいものです。活用事例を見る際は、導入後の変化だけでなく、導入前の課題、利用した機能、社内での運用方法を確認します。
ここでは、組織活性化・施策運用型に該当するTUNAGの活用事例を3件紹介します。各社の変化をそのまま自社へ当てはめるのではなく、企業規模や勤務環境、運用体制が自社と近いかを判断する材料として活用してください。
スーパーサンシでは、従業員の約8割を占めるパート・アルバイトまで、会社からの情報が十分に届いていないことが課題でした。人事から店舗の管理職へ伝え、掲示物で案内する方法では、勤務時間が異なる全従業員が確認したか把握できない状態だったとしています。
同社はTUNAGを通じて、独自の社内通貨制度「サンシコイン」に関する申請、福利厚生制度の案内、従業員アンケートなどを運用しました。利用者から制度への評価や改善案を集め、評判の良くない制度を見直すなど、従業員の声を制度運用へ反映しています。
福利厚生を用意するだけでなく、従業員へ知らせ、申請を受け付け、利用者の意見から見直す流れを同じ環境で運用している点が特徴です。
作業手順の動画や就業規則も配信し、人事から従業員一人ひとりへ直接情報を届けられるようになったと紹介されています。多店舗で勤務時間や雇用形態が異なり、紙の掲示や管理職経由の連絡だけでは情報が行き渡りにくい企業が参考にしやすい事例です。
YARD by fan’sでは、トレーニングジムとヨガスタジオという異なる部門を運営するなかで、店舗・部門間のコミュニケーションが少なくなっていました。店舗が増えるにつれ、会社が大切にしている考え方を従業員間で共有しにくくなったことも、導入の背景にあります。
同社は、社員プロフィールや社内投稿に加え、スキルアップ、トレーニング、サンクスメッセージなどにポイントを付与する制度を運用しました。貯めたポイントは、学習、休暇、従業員同士の食事会などに利用できる仕組みとしています。
ポイントを配ること自体を目的にせず、交流や学習、社内企画へ参加するきっかけとして使っている点が参考になります。
導入後は、異なる店舗で働く従業員がプロフィールを確認し、入社した人や普段会わない人へ関心を持つ場面が生まれたと紹介されています。ただし、同社も導入時点ですべての従業員が使いこなしていたわけではなく、ポイントの利用促進や新入社員がなじみやすい運用を継続して検討しています。
アルメックでは、従業員満足度調査を通じて、福利厚生制度の存在や使い方が十分に知られていないことが分かりました。トラック運転手や事務職など業務内容が異なる従業員が働き、他部署の仕事や人を知る機会が少なかったことも課題でした。
同社は、最初からコミュニケーションを求めるのではなく、福利厚生制度や会社の情報を確認できる環境としてTUNAGを導入しました。プロジェクトメンバーが先に投稿や反応を行い、その様子を見た従業員へ利用を広げています。
従業員へ交流を強制せず、会社や他部署の動きを見えるようにしたことが、会話を始めるきっかけになっています。
事例では、他部署や別工場の仕事内容が投稿から分かるようになり、「何か手伝いましょうか」といった声かけが増えたと紹介されています。その後はサンクスメッセージも開始し、経営陣から現場へ感謝を伝える運用へ広げています。職種や勤務地が異なり、従業員同士の接点をつくりにくい企業が参考にできる事例です。
参照記事:アルメック株式会社のTUNAG導入事例
ウェルビーイングサービスは、従業員の状態を測るもの、施策を実行・定着させるもの、健康管理や相談を支えるもの、方針策定や健康施策を支援するものに分かれます。サービスごとに対応できる課題が異なるため、機能数や知名度だけで選んでも、自社で十分に活用できるとは限りません。
まずは、自社が「従業員の状態を把握できていないのか」「課題は分かっているが施策を実行できていないのか」「施策が従業員へ届かず利用されていないのか」を整理します。そのうえで、利用する従業員、運用担当者、扱うデータ、導入後に確認する指標を決めると、比較すべきサービスと機能を絞りやすくなります。
自社に合うサービスを選べれば、サーベイの実施や制度の導入を目的にせず、把握した課題を施策へ移し、従業員の反応を見ながら見直す流れをつくれます。ただし、一つのサービスですべての課題へ対応しようとせず、必要に応じて異なるタイプを組み合わせることも検討してください。
最初の行動として、現在抱えている課題を「誰が、どのような場面で困っているか」まで一文で書き出してみましょう。既存の施策やシステムで対応できていない部分を確認してから、同じタイプのサービスを複数比較し、一部の部署や拠点で試すことが導入判断の第一歩です。
店舗や工場など複数の拠点へ情報や施策が届きにくい、称賛や社内制度を継続して運用できないといった課題がある場合は、TUNAGの対応範囲と活用方法も確認してみてください。健康診断や産業保健業務の管理、医療相談を中心に検討している場合は、健康管理・メンタル支援型のサービスが適しています。