「若手社員の離職が止まらない」「社員が指示を待つばかりで、自分から動かない」といった課題を抱えていないでしょうか。こうした問題の背景には、エンゲージメントの低下が隠れている場合があります。この課題を解消する有効な対策がエンゲージメント研修です。本記事では、エンゲージメント研修の目的や内容、期待できる効果を解説します。研修を組織改善につなげる実施方法も紹介するため、施策を検討する際の参考にしてください。
エンゲージメント研修という言葉は広く使われるようになりましたが、研修内容や目的は企業によって異なります。まずは基本的な意味と、従業員満足度やモチベーションとの違いを整理しましょう。
エンゲージメント研修とは、このような双方向の信頼関係を築くために不可欠な知識や、具体的な行動を習得することを目的として実施されます。
エンゲージメントとは、従業員が会社や仕事に対して抱く理解や共感、自発的に貢献しようとする意欲を指します。
単に仕事へのやる気が高い状態を示すものではありません。会社が従業員の成長や働きやすさを支え、従業員も仕事を通じて組織へ貢献するという、双方向の信頼関係を表す考え方です。
エンゲージメントは、従業員満足度やモチベーションと混同されることがあります。しかし、それぞれが示す内容は異なります。
指標 | 着目する点 | 特徴 |
|---|---|---|
エンゲージメント | 組織と従業員の双方向の関係 | 自発的な行動や組織への貢献につながりやすい |
従業員満足度 | 給与や福利厚生、職場環境への満足 | 満足度が高くても貢献意欲が高いとは限らない |
モチベーション | 個人の内面にある意欲 | 仕事や体調、環境によって変動しやすい |
エンゲージメント研修で目指すのは、単に従業員の気分や満足度を高めることではありません。会社の方向性を理解し、自分の役割に納得した上で、組織に関わる行動を変えていくことです。
人手不足や働き方の多様化に伴い、従業員の定着や主体性を高める重要性が増しています。ここでは、企業がエンゲージメント研修に取り組む主な理由を紹介します。
エンゲージメント研修では、部下の変化に気づく視点や、対話の進め方を学びます。
例えば、面談で業務の進捗だけを確認するのではなく、業務量、人間関係、体調、今後のキャリアなどについても話を聞けるようにします。「最近どうですか」と漠然と尋ねるだけではなく、具体的な質問を使って状況を確認する練習も有効です。
部下が相談しやすい関係を築き、不調や離職の兆候を早期に把握できれば、休職や退職に至る前に業務調整や支援を行えます。
社員が指示を待つばかりの職場では、判断や確認が管理職に集中します。この状態は、従業員の意欲が低いからとは限りません。仕事の目的や判断基準が共有されていないために、自分で動けない場合があります。
エンゲージメント研修では、自分の仕事が誰にどのような価値を提供しているのかを整理します。
例えば、営業事務の仕事を「依頼されたデータを正確に処理する業務」ではなく「営業担当者や顧客の不安を減らし、取引を円滑に進める役割」と理解すれば、必要な情報を先回りして共有したり、業務フローを改善したりする行動が生まれやすくなります。
仕事の目的や期待される役割が明確になれば、従業員は自分で判断し、改善提案を行いやすくなります。
エンゲージメント研修では、全社の方針を自部署の目標や具体的な行動へ落とし込む演習を行います。
例えば、「顧客体験を向上させる」という全社方針を、営業部門では「問い合わせへの初回返信を早める」、開発部門では「顧客の利用状況を開発会議で共有する」といった行動へ変換します。
理念や方針は、一度説明しただけでは定着しません。管理職が繰り返し説明し、業務上の判断や評価と結びつけることで、現場の理解と納得感が高まります。
厚生労働省の分析では、ワーク・エンゲイジメントのスコアが高い企業ほど、新入社員(入社3年後)の定着率が高く、離職率が低い傾向が示されています。
同じ分析では、ワーク・エンゲイジメントのスコアと企業の労働生産性の関係も取り上げられています。
問題が起きたときに早めに報告したり、他部署へ協力を求めたりする行動が増えれば、ミスや手戻り、調整にかかる時間を減らせます。
反対に、エンゲージメントが低い職場では、問題を抱え込む、必要最低限の仕事しかしない、他部署との連携を避けるといった状態が起こりやすくなります。
エンゲージメント研修を通じて、仕事の目的や組織内での役割、周囲との関わり方を見直せば、従業員の行動変化が期待できます。
エンゲージメント研修では、組織の状態や対象者に応じて様々なテーマを扱います。ここでは、代表的な五つの内容を紹介します。
研修の最初に行いたいのが、自社や自部署の課題を把握することです。
例えば、「成長実感」に関するスコアが低い部署では、社員に任せている仕事の幅が狭い、キャリアの見通しを伝えられていないといった可能性があります。
「上司からの支援」に関する数値が低い場合は、面談の頻度や仕事の割り振り、フィードバックに課題があるかもしれません。
最初に課題を明確にすることで、その後の研修内容を自分の職場と結びつけて考えられます。
上司と部下の信頼関係を築く上で、重要な役割を果たすのが1on1です。
エンゲージメント研修では、傾聴や質問、フィードバックの基本を、ロールプレイなどを通じて学びます。
管理職が一方的に話すのではなく、部下が考えや悩みを話せる時間を確保することがポイントです。上司はすぐに答えを与えるのではなく、質問を通じて部下自身が考えを整理できるよう支援します。
研修後も1on1を継続できるよう、質問例や面談記録のフォーマットなどを用意すると良いでしょう。
従業員が自分の仕事に意味を感じるには、担当業務と組織のミッションとのつながりを理解する必要があります。
研修では、日々行っている業務を書き出し、その仕事が誰にどのような価値を提供しているのかを整理します。顧客だけでなく、社内の別部署や同僚が受け手になる場合もあります。
例えば、経理業務であれば、「数字を集計する仕事」ではなく、「正確な経営判断を支えるための情報を提供する仕事」と捉え直せます。
管理職向けの研修では、自部署の仕事と組織のミッションとのつながりを、部下へどのように説明するかまで練習します。
自分の仕事が組織や顧客に与える影響を理解できれば、業務への納得感や主体性を高めやすくなります。
心理的安全性とは、意見や疑問、失敗などを率直に伝えても、不利益を受けないと感じられる状態です。
単に社員同士の仲が良いことを意味するのではありません。必要な指摘や異なる意見を、立場に関係なく伝えられることが重要です。
エンゲージメント研修では、日常の会議や面談で管理職がどのように反応しているかを振り返ります。
例えば、部下からミスの報告を受けた際に、「なぜできなかったのか」と責めるように聞けば、次回から報告が遅れる可能性があります。一方、「何が起きたのか」「どうすれば再発を防げるか」と事実や改善へ意識を向ければ、率直な報告を促しやすくなります。
小さな反応の積み重ねが、安心して発言できる職場をつくります。
一般社員向けの研修では、自分の強みや価値観、キャリアを整理する内容も扱います。
これまでの仕事を振り返り、成果を出せた場面や、周囲から感謝された経験を洗い出します。その中から、自分が得意とする行動や能力を言語化します。
次に、その強みを現在のチームや仕事でどのように生かせるかを考えます。
例えば、調整力が強みであれば、部署間の連携や新入社員の支援に生かせるかもしれません。分析力が強みであれば、業務データの整理や改善提案につなげられます。
今後身に付けたいスキルや、挑戦したい仕事についても整理します。研修でまとめた内容を上司とのキャリア面談で共有すれば、仕事の割り振りや育成計画に反映しやすくなります。
社員の強みを理解し、それを発揮できる役割を与えることが、貢献意欲の向上につながります。
エンゲージメント研修は、実施しただけでは十分な成果を得られません。研修前に課題を整理し、研修後の行動や効果測定まで設計する必要があります。
誰を対象に研修を行い、研修後にどのような行動ができる状態を目指すのかを決めます。
到達目標は、「理解する」「意識を高める」といった抽象的な表現ではなく、行動で設定することが重要です。
例えば、管理職向け研修であれば、次のような目標が考えられます。
行動まで具体化しておけば、研修後に実践できたかを確認できます。
対象者によって課題が異なる場合は、全社員へ同じ内容を実施するのではなく、経営層、管理職、一般社員でプログラムを分けましょう。
研修の最後には、参加者一人一人が職場で実践する行動計画を作成します。
「部下との関係を改善する」「コミュニケーションを増やす」といった抽象的な目標では、具体的な行動につながりません。翌週から始められる単位まで落とし込みましょう。
行動計画には、次の項目を含めます。
作成した計画は、本人だけで保管せず、上司や人事担当者と共有しましょう。周囲が内容を把握していれば、進捗を確認しやすくなり、実行率も高まります。
研修の効果を確認するには、研修前後での変化を測定します。
受講直後の満足度だけでは、職場の行動や組織状態が変わったかは分かりません。時間軸を分けて複数の指標を確認しましょう。
研修前と同じサーベイ設問を使えば、スコアの変化を比較できます。
ただし、数値が改善しなかったからといって、すぐに研修内容だけを問題視するのは適切ではありません。管理職に行動する時間がない、評価制度が研修内容と合っていない、現場での支援が不足しているなど、職場の仕組みが妨げになっている可能性があります。
測定結果を、研修の成否を決めるためだけでなく、次に改善すべき制度や職場環境を見つける材料として活用しましょう。
エンゲージメント研修は、従業員の意欲を一時的に高めるための施策ではありません。経営方針と日々の仕事を結び付け、上司と部下の関わり方や職場のコミュニケーションを変える取り組みです。従業員が力を発揮できる環境をつくることが、本来の目的といえるでしょう。
エンゲージメント研修の実施に最適なのが課題に応えるのが、「TUNAG」の研修サービスです。
課題の診断から研修の設計、実施後の定着支援までを一気通貫で支援します。進め方は次の流れです。
研修後は、学びをTUNAG上で共有し続ける仕組みまで一緒に設計します。1,400社以上の支援で得た知見を基に、階層別や目的別の研修体系も設計できます。
まずは、自社が抱えている課題と、研修によって変えたい行動を明確にしましょう。研修と日常の施策を連動させることが、従業員が働きがいを感じ、力を発揮できる組織づくりにつながります。