準委任契約とは?請負契約との違いやトラブルを防ぐ実務のポイントも
自社に準委任契約を取り入れるに当たって、契約形態として適切かどうかで悩んでいませんか。準委任契約とは何なのか、適用に向いた業務の種類などの基本を整理します。実務上注意したいポイントも紹介しているので、準委任契約を検討する際の参考にしてみてください。
準委任契約とは?基礎知識と契約形態の整理
準委任契約を自社に取り入れようと考えているなら、まずどのような契約形態なのかを正しく理解しなければなりません。準委任契約の定義や請負契約との違いといった基本を見ていきましょう。
準委任契約の定義
準委任契約は民法第656条に基づく、法律行為以外の事務処理を委託する契約形態(業務委託契約の一種)です。同法第655条に規定される「委任」は売買契約など、法律効果を発生させる意図で行われる行為を他者に依頼することで、準委任にも委任の規定が準用されます。
準委任契約を含む委任契約において、受任者(委任された人)は「善管注意義務」を負います。善管注意義務とは、職業や地位に応じて通常求められる注意義務です。
準委任契約は民法上、報酬の発生条件に応じて「履行割合型」と「成果完成型」に分類されています。
第648条第2項で定義される履行割合型では、業務遂行のプロセス遂行が報酬の発生条件です。一方、第648条の2第1項で定義される成果完成型では、特定のアウトプットが報酬発生の条件となります。
参考:民法 第655条・第656条・第648条第2項・第648条の2第1項|e-Gov 法令検索
請負契約との違い
「請負契約」は民法第9節(請負)を根拠とする契約です。成果物の完成を目的とし、受任者は完成義務を負います。「成果完成型」の準委任契約では、成果を達成できなかったときに報酬を受け取れないリスクを負うため、請負契約と同じように思えるかもしれません。
ただし、請負契約と成果完成型の準委任契約には以下のような違いがあります。
- 請負契約:成果物を完成させられなかったとき請負人(仕事を請けた人)は債務不履行責任を負う
- 成果完成型の準委任契約:成果物が完成しなかったとしても、善管注意義務を果たしていれば受任者は債務不履行責任を負わない
履行割合型の準委任契約は、そもそも成果物の完成が報酬の発生条件ではないため、請負契約と明確に違うことが分かるでしょう。
成果物がない業務には準委任契約が適切
準委任契約は、成果物の完成が難しい業務にも適用できます。例えばシステム保守やコンサルティングなど、コンテンツ制作やシステム開発と違って成果物がない業務を依頼する際は、請負契約ではなく準委任契約が適切です。
準委任契約は基本的には業務遂行自体が目的であり、柔軟な対応が可能という特徴があります。業務に納期や期限を定めず、柔軟に応じてほしいときは、準委任契約を採用するとよいでしょう。自社で工数が足りていない業務フローのみ依頼する、時間単位で契約するといった契約も可能です。
準委任契約のトラブルを防ぐための注意点
準委任契約を含む業務委託契約では、業務を依頼する側が注意すべき点が多くあります。準委任契約においてトラブルを防ぐために気を付けたいポイントには、何があるのでしょうか。特に重要な注意点を三つ挙げ、詳しく解説します。
準委任契約に向く業務と不向きな業務を見定める
準委任契約を検討する際は、準委任契約に向く業務と向かない業務の見極めが必要です。準委任契約に向く業務と向かない業務を、改めて整理してみましょう。
- 向く業務:成果物の完成が難しい業務、プロセス重視の業務
- 不向きな業務:明確な成果物が求められる業務、納期厳守が必要な業務
依頼したい業務内容に応じて契約形態を選択しないと、トラブルにつながります。例えばソフトウェア開発のように、成果物に不備があると困る業務に準委任契約を適用してしまうと、修正を依頼できないという問題が起こります。
準委任契約の契約書に業務範囲と責任分担を明記する
準委任契約は成果物がない分、請負契約と比べて依頼する業務の範囲が不明瞭になりがちです。準委任契約書には、業務範囲や責任分担を明確にする必要があります。
具体的な業務内容や報酬・期間などを記載するとよいでしょう。依頼される側にも明確に業務範囲や責任分担が伝わることで、「契約外の業務を頼まれた」「自分の責任ではないのに責任を問われた」といったトラブルを防止できます。
委任者に指揮命令権がないことを認識する
準委任契約において、委任者(仕事を頼む側)には指揮命令権がありません。請負契約も同様です。準委任契約や請負契約で派遣契約のように指揮命令をしてしまうと、職業安定法第44条や労働基準法第6条の規定に反することになります。
これは「偽装請負」とも呼ばれる、明確な違法行為です。外部の人材を自社の指揮命令下で働かせるには、手間やコストがかさんだとしても派遣契約が必要になります。
予算がないからといって、準委任契約を結んで指揮命令下で業務に当たらせるのは、絶対にやめましょう。
参考:職業安定法 第44条|e-Gov 法令検索
参考:労働基準法 第6条|e-Gov 法令検索
準委任契約の運用をTUNAGで仕組み化
準委任契約の運用には、請負契約との違いや指揮命令権がないことなど、法律の知識が必要です。契約の仕方にも、業務範囲や責任分担を明記するなどの工夫が求められます。
煩雑な準委任契約の運用を属人化させないためには、ツールによる一元管理も選択肢です。一例として、「TUNAG(ツナグ)」を活用した仕組み化の方法を見てみましょう。
契約判断の基準を明文化して社内ポータルに常設
TUNAGの外部リンク機能は、社内ポータルとして活用できます。準委任契約(履行割合型や成果完成型)・請負契約といった契約形態について、どれを採用すべきかの判断基準を社内で共有・明文化することが可能です。
外部リンクに常設されたドキュメントなどは、パソコンやスマホからいつでも確認できます。外部との契約に携わる従業員が準委任契約かほかの契約か迷ったとき、判断しやすくなるでしょう。
同じ判断基準を社内で共有すれば、契約判断の属人化を防げます。
契約検討時のやりとりや判断経緯を社内チャットで共有
社内チャット機能も、準委任契約の運用をスムーズにするのに役立ちます。契約検討時の議論や判断経緯を社内チャットで共有すれば、契約の判断や実務を進めやすくなるはずです。
外部委託契約に関わる部署のメンバーが、疑問を解消できる状態をつくるのにも社内チャットが活躍します。外部委託に関する質問・相談スレッドを作っておけば、気軽に質問できて勝手に誤った判断をするのを防げるでしょう。
対応履歴や事例をタイムラインと制度一覧で蓄積
準委任契約やほかの外部委託契約に関する対応履歴や事例を、TUNAGのタイムラインに投稿していけば、ナレッジの蓄積が可能です。投稿は制度一覧でカテゴリごとにまとめられるので、過去の対応履歴を検索できます。
組織全体で外部委託契約についての学習が進むと、誤った契約判断やトラブルが起こりやすい契約書の作成が減るでしょう。TUNAGは社内でのナレッジ共有を促進し、属人化しない外部委託契約の運用を助けます。
社内アンケートで準委任契約に対する現場の不安を把握
準委任契約を含む外部委託契約について、現場で「本当に外部の人に任せて大丈夫だろうか」という懸念が出ることもあります。特に初めて準委任契約を取り入れるとき、現場の不安は大きいでしょう。
現場の不安や課題をTUNAGの社内アンケートで収集すれば、早期に課題を把握し、適切な対応を検討できます。TUNAGの導入により、準委任契約業務がスムーズになるだけでなく、組織全体でのエンゲージメント向上につながるのです。
準委任契約の基本を理解して社内運用の仕組み化を
準委任契約は、基本的には業務プロセスの遂行を目的とした契約です。成果物の完成を目的とする請負契約との違いに注意して、外部に依頼したい業務にどちらを適用すべきかを判断する必要があります。
また契約書を明確化する、指揮命令権がない前提で業務を依頼するといった実務上の注意点も把握しなければなりません。TUNAGのようなツールを活用すれば、煩雑になりがちな外部委託契約の運用をシンプルにし、属人化を防止できるでしょう。