企業のエンゲージメントレベルを物語る、オフィス内の「あるもの」とは

− 人と組織が強い会社の深イイ仕掛け - 職業柄、日々多くの企業を訪問しています。都心の一等地にあるハイスペックなオフィスや自社所有のビルもあれば、リノベーションされたオフィスまで、企業によって様々です。各社、趣向を凝らしたオフィス環境を用意して、働きやすさや採用へのアプローチをしています。 実はエンゲージメントの観点では、オフィスのハード面(施設の立地やスペック、内装など)よりも、ソフト面(掲示板やポスターなどのリアルな社内掲示物や施策)の方が重要な項目であり、コンサルタント目線ではソフト面の観察を必須事項としています。 (※ハードとソフトはエンゲージメントと従業員満足度の違いに紐付くため、別の機会に説明します) 執務スペースの掲示板や共有スペースはもちろんですが、エレベーター内や通路などにも掲示物などが存在している企業もありますよね。 実は、それらを見るだけでその企業のエンゲージメントへの関心度が一目瞭然なのです。 ※本コラムでは、社内にある掲示物や施策の告知などを総称して「リアルな社内施策」と呼びます。

勢いのあるベトナムのベンチャー企業が「こだわっていたもの」

社内掲示物のクオリティと、情報の鮮度の高さ

昨年、ベトナムのスタートアップの企業をいくつか訪問する機会がありました。弊社の取締役の縁もあり実現したのですが、打ち合わせスペースだけでなく執務スペースなど、会社全体の見学をさせていただきました。 どこの会社も急スピードで拡大中のITベンチャー企業。従業員の方も笑顔で迎えてくれて、明るく元気な雰囲気があり、イキイキと働いている様子でした。しかし、それ以上に一番勉強になったのは、“社内掲示物へのこだわり”でした。 ある企業では、社内表彰のポスターのクオリティーの高さに驚愕しました。もはや社内ポスターの域を超えて広告かと見間違えるほどでした。その後、弊社でも影響を受け作成したくらいです。 別の企業では、社内で企画しているフットサル大会の速報が掲示されていました。これも驚きで、数ヶ月に渡り開催されているにも関わらず、リアルタイムに試合結果が反映されていたのです。 ロシアワールドカップ後ということもあり、その完成度はワールドカップ期間中にみるそれと遜色のないぐらいのレベルでした。 著しく経済成長をしているベトナムの2018年の実質GDP成長率が7.1%。同時期の日本の平均実質GDP成長率は1.3%です。それでもまだまだ物価は日本の3分1と言われています。 一概に言うことはできないかもしれませんが、ベトナムの成長を支えている要因として、こういったリアルな社内施策を通じたエンゲージメント経営が寄与しているとも言えるのではないでしょうか。

失敗したリアル社内報の事例

掲示物やリアル社内報など、目に見えるものが形骸化すると、信頼感が低下する

話を戻しましょう。僕が過去に経験したある失敗例を紹介します。 過去に働いていた企業で、「社内報」を企画して運用をしたことがあります。その当時の背景としてはこのような狙いがありました。 ・事業成長に伴い拠点数も増加。会社の動きや各拠点の動きを共有する ・称賛の文化を作る ・会社として大事にしたいことを繰り返し伝達する 月に1度発行する計画を立ててスタートしました。しかしながら、運用から間もなく下記のような状況になってしまったのです。 ・最新の社内報が各オフィスに掲示されていない ・回数を重ねる度に、同じコンテンツの繰り返しになる ・実態としてほとんどの社員が社内報など見ていない 「社内施策は形骸化しがちである」という、これまでお話してきた内容の通り、まさにお手本のように自然消滅していったのです。同じような事例を抱える企業はたくさんあるはずです。 このようなことになると、従業員は会社に対して信頼を失ってしまうのではないでしょうか。エンゲージメントを向上させるどころの話ではありませんよね。

リアルな社内施策に潜む“3Mの壁”

誤解を恐れずに表現をすると、リアルな社内施策にはいつも“3Mの壁”がつきまといます。 私自身も、当時はこの“3M”を言う側にまわっていました。今になると整理がつくのですが、当時の失敗は明らかにこの“3M”が原因だったと言えます。
1.(そもそもリアルなんて)無駄である 2.(準備や仕込みが)面倒くさい 3.(人的リソースやコストが)もったいない
いかがでしょうか。社内で一度は聞いたことのあるフレーズではないでしょうか。これらは、リアルな社内施策をする時に周りからあがりがちな意見であり、実際に失敗する原因となるものです。

リアルな社内施策がうまくいくコツ

あえて“3Mの壁”に向き合うこと

人事関連の担当者であれば一度は出会う“3Mの壁”。僕はこの壁を超えた先に、リアルな施策の本当の効果が待っていると思っています。 そもそも社内施策においては、事業と違い数値化することが難しい分野です。合わせて、影響する時間軸が未来を指していることが多く、即効性や事業影響度が低い、もしくははっきりと見づらいものです。 例えば社内表彰のポスターを作成するという施策を検討したとします。仮に実施した際に、明日から事業や業務に影響を与えるかというと、そうではありません。実施した場合に生産性や売上が◯◯%改善するとも決めきれません。 だからこそ、リアルな社内施策を実施する場合に“3Mの壁”に対して、次のことを考慮して計画と実行をすることがおすすめです。
1.継続性や計画性をもち、施策そのものを一過性にせず無駄にしない 2.むしろ、面倒くさいを極めて細部の細部までこだわりを持って実施する 3.もったいないで終わらせないために、得たい効果を予めしっかりと設定する
再び、社内表彰のポスターのケースで考えてみましょう。上記を通り“3Mの壁”を超えるようにしてみると……
1.表彰実施日からポスター掲示までのフローを整える 2.ポスターの作成工程を決めて、最短でアウトプットできるように準備する 3.掲示方法や掲示期間などにもこだわる 4.表彰の焼き増し内容でなく、サプライズ的な内容や上司のコメントなど付加価値を用意する 5.ポスター掲示することで、社内における表彰のステータスを上げる 6.ざっくりでもいいので、ポスターきっかけで表彰への意欲を高める社員を◯◯名つくる
このよう考えてみるだけで、社内施策の価値がガラッと変化していくはずです。神は細部に宿るというように、成長企業ほど上記への徹底的なこだわりが見えます。 逆に「ただの社内施策」としてぼんやりと実施している企業は、一枚のポスターからもその低いテンションが伝わってきます。 社内報などのリアルな社内施策が上手くいかないのは、上手くいく定義や目的が無いままに形式的に施策を実施してしまっていることが理由です。 「以前からやっているから」「上からやれと言われているので」などが理由であれば、今すぐにやめるべきです。 リアルな社内施策ほど社内への影響度(見え方)は大きく、逆ブランディングになるリスクを持っているからです。

リアルな社内施策だからこそ、得られるものがある

ITが進化する時代だからこそ、ITとリアル双方の力を

TUANGというクラウド型のサービスを運営している立場からは逆説的になってしまうかもしれませんが、リアルな社内施策だからこそ得ることができる効果があると思っています。 むしろ、時代に合わせるのであれば、リアルとITの“両側面”が必要になります。実際、TUNAG(ツナグ)を通じて多くの企業の支援をさせていただくこの環境下で、その事実を強く感じています。 我々が目指すサービスは決してIT上で完結させてしまい最適化を図るものでもなく、効率性や合理性を追求するようなものでもありません。 実際、リアルで起こったできごとをTUNAG(ツナグ)上でみんなが見れるようになったり、TUNAG(ツナグ)上で得られた情報をもとに、リアルの取り組みに活用することもあります。

あえて“3M”に向き合う企業が、エンゲージメント向上につながるように

今後、組織運営においても、「業務時間の無駄を排除し、とにかく業務を合理的に、効率化をすすめていこう」ということを目指す企業と、あえて“3M”に向き合い、超えていく企業に分かれていくのではないかと個人的には感じています。どちらがいい・悪いという話ではありません。 もし、後者のような企業が増えていくのであれば、“3M”を超えることを目指す企業の代表になれるよう、会社としても、そしてTUNAG(ツナグ)というサービスとしても成長していきたいと思っています。
▼『TUNAG(ツナグ)』について 『TUNAG(ツナグ)』では、会社として伝えたい理念やメッセージを、「社内制度」という型として表現し、伝えていくことができます。 会社様ごとにカスタマイズでき、課題に合ったアクションを継続的に実行できるところに強みがあります。 「施策が長続きしない」「定着しない」というお悩みがございましたら、「現在のお取り組み」のご相談を無料で行っておりますので、お問い合わせください。
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