■プロフィール 江夏 幾多郎(えなつ・いくたろう) 神戸大学経済経営研究所・准教授 2003年一橋大学商学部卒業、2008年名古屋大学大学院経済学研究科講師、2011 年名古屋大学大学院経済学研究科准教授を経て、2019年より現職。 人事管理論を専門とし、主な論文として、「人事システムの内的整合性とその非線形効果」(『組織科学』第45 巻3 号、2012 年。第13 回労働関係論文優秀賞受賞対象論文)、著書として、『人事評価における「曖昧」と「納得」』(NHK出版新書、2014年)。
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加藤:新入社員が入社する季節ですが、若手社員が活躍する会社づくりをどのように行うと良いでしょうか?
江夏先生(以下敬称略):年功序列をやめて、早期に次のステップの仕事を任せて、抜擢して……というのも、若手に活躍してもらうやり方の一つですが、全員にそれは難しいですよね。
仕事内容は新入社員向けだとしても、「新しいやり方」を考えさせるとか、「こういうことで困っているのだけど、あなたならどうする?」というような機会を与える方法もあると思います。
加藤:仕事の難易度はそのままに、やり方や進め方を工夫するということでしょうか。
江夏:結局は「頭を使ってもらう」ということですね。自分の目の前の仕事のためだけでなく、職場のため、同僚のため、上司のために、一歩前に進めるような改善につながる「頭の使い方」をしてもらう。
そういった経験をさせることで、「ちょっと壁に当たったのでおすすめの本ありますか?」ですとか、「セミナーに行く時間をもらえないですか?」という声が上がってくるんじゃないかと思います。
それぞれの仕事の範囲の中でも活躍できるようにするのがポイントだと思いますね。人事評価制度や抜擢の機会などのハードな面での仕組みも大事ですが、そこまで行く前に、一人ひとりが自分の仕事の中で「しっかり頭で考える経験」をいかに与えられるかが大事ですよね。
加藤:「若手が指示待ちで困っている」ですとか、「受け身である」という課題をよく伺うのですが、こういった課題に対しての打ち手はどんなものがあるでしょうか?
江夏:自分ががんばらなくても組織がまわってしまうところを目にしてしまうと、そうなりがちかもしれませんね。
加藤:確かに企業規模に関わらず、役員メンバーの経歴がすごい人だったりすると、そこに「ついていきます!」となってしまうかもしれませんね。
江夏:会社が大きくなればなるほど、トップの目が届かなくなるので、権限委譲を進めていく必要がありますよね。その過程で、それまでの「引っ張るリーダーシップ」から、「支えるリーダーシップ」に変わっていくことも必要かもしれません。
当然、外部に対する責任を果たすとか、そういうところはイニシアチブをとらないといけませんが、「組織の中で問題を見つけて改善する」という点については、ボトムアップで声があがるようになったほうが良いと思います。
加藤:「若手を活躍させたい」というメッセージは常に発信していても、それに対する若手社員の反応が薄い場合があるという声も聞きます。これを単純に若い人たちの草食化と捉えてよいのか、企業としてアプローチが間違っているのでしょうか?
江夏:会社におけるリーダーの役割の定義を明確にすると良いかもしれません。社長が「若手を活躍させたい」と言っていても、現場のメンバーは「こんな素敵な会社で、こんなすごい人についていけるなんて!私も活躍できそう!」とだけ思っていたとしたら、そこにはギャップが生まれていますよね。
「それは違うよ、あなたがリーダーシップを発揮しないといけないよ」と早い内からすり合わせないといけません。「私たち上司は責任はとるし、支援もするけど、あなたもリーダーシップを発揮して自分でやらないといけないよ」というように、入社前、採用時から伝えていくことですね。
若手の当事者意識や積極性を生み出すには、若手の変化を待つのではなく、「期待していること」と、「そことのギャップ」をしっかりと伝えていくことから始めることが重要だと思います。
〜江夏先生、ありがとうございました!若手社員へのコミュニケーションのズレは、その後防げたはずの「離職」を招いてしまうこともあります。お話を伺うと、会社からのメッセージを正確に伝える工夫を行うことはもちろん、若手社員に具体的にどういう行動をしてもらいたいのかも明確にしたうえで、伝えていくことが必要ではないかと感じました。 また、実際の「行動」に結びつくように、支援することも先輩社員や上司に求められているのではないでしょうか。〜