これからの時代に求められるエンゲージメント経営:飲食企業の経営者が見据える「人と組織」の未来(エンゲージメントアワード2022 経営者セッション後編)
TUNAGエンゲージメントアワード2022にて、TUNAGご活用中の株式会社ウェルカム、株式会社タイソンズアンドカンパニー、カフェ・カンパニー株式会社、以上3社の経営者の御三方を交えたトークセッションを実施しました。
前編では、エンゲージメントを重視するようになったきっかけや、コロナ禍など外部環境の変化で感じたことを伺いました(前編はこちら)。後編では、自社にとってのエンゲージメントや、飲食業界と人と組織、今後のエンゲージメント経営についてお話しいただいた内容を一部ご紹介します。
自社にとって、エンゲージメントとは
飲食業界ならではの有機的な動きには、「熱量のある繋がり」が必要
〜自社にとって、エンゲージメントはどのようなものだと捉えていらっしゃいますか?〜
カフェ・カンパニー 楠本:もともと日本の経営は人のつながりを大事にしていて、だからこそうまくいっていたと思うんですよ。だけど、その中でどういう事業をやっている会社かによって、エンゲージメントの方法だったり、人と人との距離の取り方が多分違う。
例えば、ITとか製造業は仕事が垂直型に決まっていて、ポジションが明確ですが、我々外食業界は有機的に動かなきゃいけないじゃないですか。仲間同士でアイコンタクトで動くとか、役割をその場その場で変えていく柔軟性が求められる。だから、一人ひとりの個性を徹底的に前に出させて、その分、人の後ろにまわるのが得意な人にも有機的に動いてもらうとか、お互いの強みや個性を分かってて引き出せるのが大事なんですよ。
製造業でも仲間意識は強いと思うんですけど、僕らがやっているもっと有機的で、仲間意識が強いからこそできる掛け算みたいな仕事というのは、製造業でのエンゲージメントとはまたちょっと違うのかなと思うんです。
ウェルカム 横川:楠本さんのおっしゃる通り、我々は決められたことだけをやって精度を上げていくというタイプの仕事じゃなくて、ある程度ベースはあるけれども、その都度状況に向き合って答えを出していくとか、パフォーマンスしていく仕事が多いですよね。
人のパフォーマンスって、スキルとか技術とか以前に、やりたいかどうか、しっかり前を向いているかどうかで全然変わると思うし、そういう熱量ってだいたいは、誰かと「やろうよ」「いいね」ってなって上がる。そういうのをたくさん繋いで持っている方が、圧倒的にチーム力が出ると思う。熱量のある繋がりみたいなことを、多分僕らの中ではエンゲージメントって言っているのかなと思います。
顧客へ企業文化を伝えるためのエンゲージメント
タイソンズアンドカンパニー 寺田:うちの場合、エンゲージメントの向こう側に、スタッフが接客してるお客さんがいるというのは常に見ていて。お客様と一番接しているのは、会社の8割、9割を占めるウェイターの社員やアルバイトになってくるわけですよ。スタッフに会社の考え方を理解してもらって、お客さんに会社の文化を伝えてもらうためには、みんなのエンゲージメントを高めるのはどうしても必要なことだと思いますね。
皆さんもそうだと思うんですけど、創業期とか会社が小さかった頃は、自分からみんなに直接話していれば熱量をそのまま伝えられていたけど、文化って弱まったり薄まったりしてくるところがあって。そういった中で、TUNAGのようなプラットフォームを使うのは必然だったと思います。
今後のエンゲージメント経営について
リアルとオンラインツールの融合を再設計、社内に熱量を伝えたい
〜最後に、人と組織、エンゲージメントに関して、今後の展望を教えてください〜
ウェルカム 横川:やっぱりコロナがあって、ビデオ会議ツールとかTUNAGもそうですけど、オンラインでのコミュニケーションが増えましたよね。移動時間が要らなくなって、すごい便利なんですけど、情報がスマートに入ってくる分、情報の量もどんどん増えていって、熱量はどうしても薄くなってしまう。
コロナ禍当初に比べて、世の中がまたリアルの方向に戻っていく。その中で熱量をちゃんと伝えていくには、リアルと新しいツールの融合というか、バランスの再設計の話を、冷静になって一回テーブルに出さないといけないなと思います。
本来リアルでしか体験できないことを提供する業種・業態なので、大勢でリアルに集まる場は媒介できなくても、リアルでしかできないコミュニケーションをコンパクトにしっかり回すことを、今までの学びに合わせながら強くしたいなと思いますね。
働き手に選ばれる企業のポイントは、スタッフ間の繋がり
タイソンズアンドカンパニー 寺田:この業界のことを考えていくと、やっぱり人材の確保は、もう全ての人が抱えている課題だと思うんですよ。そうした中で、もちろん新しい人を入れるのも大変なんですけども、入った人間をいかに離職させずに、離れることなくずっと働いてもらうかって、結構大きなポイントになると思っていて。
ちょっと昔だと、時給が高いとか、月9日休みとかで「良い会社だね」で終わってたんですけど、その辺りの差別化がなくなってくる中では、やっぱり文化、まさにエンゲージメントですよね。スタッフ間を繋いでいるものが非常に重要になってくると思うんですよ。
そういったところで、社内コミュニケーションやカルチャーをテーマにした「人事」というのを、一つのきちんとした部門として育てたいんですね。会社の一体化を進め、より気持ちを入れて働いてもらうことが、長期的には人材の確保をする戦略として、大事なポイントなのかなとは思っています。逆に、そこがないと生き残れない時代になっちゃって。今はもう、顧客に選ばれるだけじゃなくて、やっぱり働き手に選ばれる企業じゃなきゃいけない。
会社のパーパスをより強く意識して、カンパニーだからこそできることを
カフェ・カンパニー 楠本:人材も本当に確保が難しくなっていて、だから逆にいうと「どう育てていくか」という局面にあるわけですよね。その中で少子高齢化が起きているわけですが、多くの人は「なんとなく」で捉えていて、どれだけ下がるかを可視化できていない。
そこに対する空想力みたいなものはすごく大事で、さっきから言っている問いの時代になってくる。「こうかもしれない、ああかもしれない」「いや、僕たちはブレずにこう行くんだ」とか、「俺たちは何のために、ここでおいしいものを出し続けるんだっけ」というのを強く意識しなきゃいけなくなるわけですよね。ビジョン・ミッション・バリューという言い方もあるし、今でいうとパーパス経営と言う言い方もあるんですけど。
しかも、社会構造が一極集中からどんどん分散型に変わって、実際、自然発生的に地方創生の仕事がものすごく増えていて。やっぱり拠点が分散しているんですよね。でも沖縄、北海道、海外と離れて行っても、「俺たちが乗せたいパーパスはこういうことだよね」というのを、どう同じ熱量で、一体化していくかというのが、実は企業経営で大事で。
事務所がどこにあるかじゃなくて、「我々のパーパスはこうなんだ」みたいなものがあるからカンパニーなんじゃないかという。そういうものを、よりいっそうエンゲージしなきゃいけないと思います。
ウェルカム 横川:個々でやれたら、それはそれで別にいいとは思うんですけど、せっかくカンパニーでしかできないこと、一人じゃできないことをやろうとしているわけですよね。多様化もしていくし、距離も広がる、いろんなものが複雑化していく時に、文化とかコミュニケーションの質をどう保てるか。
タイソンズアンドカンパニー 寺田:やっぱり、従業員のエンゲージメントは大切ですよね。今日はこうやって、TUNAGみたいなツールを導入して、前向きに取り組んで、色々みんな悩みつつも進んでいる方たちとお話しできて、非常に面白かったです。
〜飲食業界におけるエンゲージメントの意義や、これからのエンゲージメント経営について、大変興味深いお話を伺うことができました。楠本様、寺田様、横川様、本日はありがとうございました!〜