エンゲージメント向上・強化の取り組み7選と3つのプロセスを解説
現代は人材の流動化やワークモチベーションの多様化が進んでいるため、同じ会社で生産性高く働き続けてもらうためには、会社と従業員の「エンゲージメント」が非常に重要になってきています。
2020年以降、コロナウイルスの感染拡大によってリモートワークへの移行を余儀なくされた企業も多く、リモートでも従業員が生産性高く業務をするためにエンゲージメントを高めることはますます重要になるでしょう。
今回は、エンゲージメントの意味や、エンゲージメントの向上にはどのような取り組みがあるのか、そしてエンゲージメントを高める方法を解説します。
エンゲージメントとは?
エンゲージメント(engagement)は、使われる場面によって様々な意味や解釈を持つ言葉です。日本語訳すると「契約、約束、婚約」という意味になります。
人事領域におけるエンゲージメントでは、「会社と従業員の結びつきや信頼関係。従業員会社に対する愛着心」というように、会社と従業員の関係を表現する言葉として使われています。
また、マーケティングやビジネスシーンでは、「顧客が商品やサービスに対してどれだけ好意や愛着心を持っているか」という意味を表しており、TwitterやInstagramなどのSNSを活用したマーケティング指標として使われることも多い言葉です。
企業におけるエンゲージメントの定義
エンゲージメントとは、会社と従業員、従業員同士のタテとヨコ双方の信頼関係が築かれている状態のことをいいます。会社と従業員、従業員同士が貢献したいという気持ちでつながっている関係や、愛着心という言葉でも表現されることがあります。
書籍『エンゲージメント・マネジメント戦略』によると、エンゲージメントについての定義は以下のように記載されています。
“従業員の一人ひとりが組織に対してロイヤリティを持ち方向性や目標に共感して『心からの愛着』をもって絆を感じている状態”
同書によると、「会社が好き」という気持ちだけではなく、「仕事のやりがい」「成長実感」など、会社と仕事に対してポジティブな気持ちを持っていることが求められていることが分かります。
▼参考書籍
稲垣公雄 (2010) 『エンゲージメント・マネジメント戦略』(日本経済新聞出版社)
ワークエンゲージメントとの違い
企業におけるエンゲージメントと類似した概念として、学術的にも使用されるワークエンゲージメントという言葉があります。
「ワーク・エンゲイジメント」(Work Engagement)とは、オランダのユトレヒト大学のシャウフェリ( Schaufeli) 教授らが提唱した学術的概念で、現・慶應義塾大学教授の島津明人氏(2014)99 の資料によると、「仕事に誇りや、やりがいを感じている」(熱意 / dedication)、 「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭 / absorption)、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力 / vigor) の3つが揃った状態として定義されています。関連する概念として「バーンアウト(燃え尽き)」 「ワーカホリズム」「職務満足感」があります。
島津氏の研究によると、ワーク・エンゲイジメントは、生活満足感、仕事のパフォーマンスについて、正の相関があるという報告がされています。また、海外の研究でも、従業員エンゲージメントが、仕事のパフォーマンスや会社の業績に対して肯定的な影響を与えるという報告がされています。
ワーク・エンゲイジメントの尺度は、シャウフェリ教授らによって、2002年に確立されたもので、今日まで様々な研究者による学術研究も蓄積されています。測定に当たっては、ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメン ト尺度(Utrecht Work Engagement Scale:UWES)が最も広く活用されています。
厚生労働省発行の「労働経済の分析」(労働経済白書)」においても、「ワーク・エンゲイジメント」は、「働きがい」分析するための概念として紹介され、活用されています。 平成30年版ではコラム「ワーク・エンゲイジメントが労働者の健康・仕事のパフォーマンス等へ与える影響」で、令和元年版では「『働きがい』をもって働くことのできる環境の実現に向けて」という章で、言及しています。
エンゲージメント向上の取り組み5選
それでは、一体どのようにしてエンゲージメント向上に取り組めば良いのでしょうか。ここでは、エンゲージメント向上の取り組みの例を5つご紹介いたします。
1)会社の情報、経営者の考えを伝える
会社に対して不信感を持つのは、会社の情報やトップの考えがオープンにされていないことが原因の1つです。
その解決のためには、会社がどこに向かおうとしているのか、どんな世界を実現したいと思っているのか、考えていることやメッセージを定期的に従業員に伝えていく必要があります。
社長などの経営層からのメッセージ、普段業務で接する上司からのメッセージなどが正確に現場の従業員に伝わっているのか、そのメッセージに矛盾は無いか、振り返ってみると良いのではないでしょうか。
また、自社のホームページ上に載っている決算情報や新サービスの情報を知らない従業員もいるかもしれません。勉強会を実施したり、社内のイントラネットなどで情報発信したり、社内報で案内するなどの手段を使って広報していくのがおすすめです。
【経営理念やビジョンの浸透に取り組む事例】
訪問看護や有料老人ホームを運営する寿々グループ様では、20施設で、1,000人以上のスタッフが働いています。寿々グループ様では、同じ理念のもとでサービスを提供する理念追求型経営を大事にされていましたが、グループの規模が大きくなるにつれて経営理念の浸透が難しくなるという課題を抱えていました。
エンゲージメントプラットフォームの「TUNAG」導入後は、経営の想いや会社の情報を動画を活用して投稿したり、各施設の理念が現れた取り組みをTUNAG上で共有し従業員が見れるようにするなど、グループ内の一体感の醸成や経営理念の浸透を図っています。
▼関連事例
経営理念を浸透するには?成功事例7社から考える具体的な取り組みを解説
▼参考
「グループ内の想いをひとつにつなぐ」経営理念を浸透させるための寿々グループ様の取り組み | 社内ポータル・SNSのTUNAG
2)会社のビジョンや方針に沿った人事制度による評価を行う
経営理念や行動指針の浸透には、人事評価との関連づけを行うことも重要です。評価に納得感を得られない場合、上司や会社への不信感につながることもあります。
また、人事異動や組織の改変などが起こった場合、周りがネガティブに受け取らないよう、できる限り情報をオープンにするほうが良いでしょう。
人事制度や評価制度は、経営理念や行動指針を浸透させ、会社の想いを可視化しやすいものです。評価の方法は給与などの金銭的報酬だけでなく、表彰やサンクスメッセージなどの非金銭的報酬を活用することもあります。
▼参考
形だけの評価は不満を招く?組織を成長させる鍵は評価制度を納得させる仕組み
サンクスカードとは?3つのデメリット、4つの効果、成功事例3社を解説 - TUNAG
3)従業員同士を近づける接点を増やす
お互いの信頼関係構築のためには、共に働くメンバーとのコミュニケーションをとる必要があります。しかし、休日にBBQに強制参加させられた……などの例は、お互いの距離をますます引き離してしまいます。
“信頼関係”は長期的な視点を持ち、少しずつ築いていくものです。日報の共有や、シャッフルランチによってのお互いを“知る”ことから始め、共通点のあるメンバー同士を近づける機会を設けることから始めるなど、小さなことから自社の従業員の性質に合うことを実施していくと良いのではないでしょうか。
お互いのことをよく知らないまま結婚することが無いのと同じで、少しずつ関係を作っていく根気強さが求められます。
【従業員の双方向コミュニケーションを促進した事例】
「資材を運び、日本の未来を創る」をスローガンに、鉄鋼製品を中心として、年間約250物件、75万トンの運送・搬入を行う中央ロジテック様では、TUNAGを「ドライバーにとっての情報のプラットフォーム」として活用しています。
例えば事故報告やヒヤリハットの情報をTUNAGで共有したり、経営層と従業員のコミュニケーションを活性化させるための「社長メッセージ」などの取り組みも行っています。また、業務に関する共有にとどまらず、趣味やペットに関する話題もTUNAGで投稿して、従業員同士のカジュアルなコミュニケーションを促進しています。TUNAGを通じて、従業員の人となりを知るきっかけが生まれ、雑談の機会も増えるなどの効果を実感したとのことです。
▼関連事例
エンゲージメント向上の第一歩は「会社・人・事業」を知ること:コミュニケーションを活性化し、自走できる組織へ | 社内ポータル・SNSのTUNAG
▼参考
社内コミュニケーション活性化!おすすめツール12選と導入時の注意点
双方向コミュニケーションを活性化させるポイントと成功事例を解説
4)従業員の力が十分に発揮できる環境を整える
タレントマネジメントという言葉が浸透してきているように、従業員が持つ能力や資質を十分に発揮できるような環境を整える必要があります。
本当はAというスキルがあり、そこなら100%自分の力が発揮できるが、今はBという仕事をしているため、60%くらいしか発揮できていない。ということが起こると会社と従業員双方にとってよくありません。
例えば診断やアンケートの結果、仕事内容に対するモチベーションが下がっていることが分かった場合、社内でFA制度や公募制度を設けたり、自己のスキルアップを促進するような制度を設けたりします。
メンター制度(ブラザー・シスター制度)などの仕組みをつくることで、社員の離職を防ぐことに効果的であったという例もあります。
▼参考
メンター制度とは何か。導入目的、社員の離職を防ぐポイントとは - TUNAG
▼関連記事
社員の離職を防ぐ「リテンションマネジメント」の施策とは? 〜青山学院山本教授インタビュー(前編)〜
社員の離職を防ぐ「リテンションマネジメント」の施策とは? 〜青山学院山本教授インタビュー(後編)〜
5)従業員の頑張りを称賛する文化を醸成する
従業員の日々の良い行動や頑張りを可視化し、称賛する仕組みを作ることもエンゲージメントを高める一つの取り組みといえます。
日頃の頑張りをサンクスカードや社内表彰などの形で仲間や企業から褒めてもらうことで、「頑張りが認められた」「自身の行動が感謝された」というポジティブな気持ちになり、モチベーションの向上や離職率の改善などの効果が期待できます。
【称賛の文化・仕組みを構築した事例】
ウェディング事業を中心にサービスを展開する株式会社BP様では、エンゲージメントプラットフォームの「TUNAG」で、従業員がサンクスカードを送りやすい仕組みを構築しています。さらに、サンクスカードを送った数・もらった数で評価して、社内で表彰するような体制をとっています。また、アルバイト従業員が1,000名を超える同社では、新人アルバイトの日報に対して先輩スタッフから称賛のコメントを送り、頑張りを評価するなど、会社を挙げて従業員同士が称賛する文化を醸成しています。
その結果、アルバイトの定着率が30%改善されただけではなく、エンゲージメント向上によってリファラル採用が進み、3ヶ月で300人のアルバイト採用を実現した時期もあったとのことです。
▼参考
「褒める文化」で人材定着率が30%向上!ポイントは「みんなの前で褒める」こと
▼関連事例
アルバイト定着率が30%改善、3ヶ月で300名採用:BPが「友達に紹介したくなるバイト先」を作るまで | 社内ポータル・SNSのTUNAG
ワークライフバランスの改善
ワークライフバランスを整えることは、従業員エンゲージメント向上において重要な要素です。従業員が仕事とプライベートの両方を充実させられる環境を提供することで、仕事に対する満足度ややる気が自然と高まります。
例えば、残業時間の管理や有給休暇の取得を奨励する施策を取り入れることで、従業員はより健康的で持続的な働き方ができるようになります。このような取り組みにより、組織全体の生産性向上にもつながると考えられています。
従業員のキャリア支援
従業員のキャリア支援は、彼らのモチベーションとエンゲージメントを高める効果があります。企業が従業員のスキルアップやキャリア形成に積極的に関与することで、従業員は自分が大切にされていると感じ、より積極的に仕事に取り組むようになります。
具体的には、キャリア面談や外部研修の提供、異動制度の整備などが効果的な手段として挙げられます。これにより、従業員は自分のキャリアビジョンに向けて自律的に成長できる環境が整います。
エンゲージメント向上の3つのプロセス
1)エンゲージメント診断を実施して、課題を把握する
エンゲージメント向上・強化のためには、組織の現状を把握することがまず最初のステップです。組織診断やサーベイなど、様々な企業がツールやサービスを提供しており、そのようなサービスを活用して組織の状態を把握します。
様々な企業がツールやサービスを提供しており、「TERAS」もその一つです。TERASは組織のエンゲージメント状態を可視化し、従業員の課題を多角的に分析する基本無料のエンゲージメントサーベイツールで、離職兆候の早期発見や改善策の提案機能も備えています。これまでに900社以上の組織改善を支援してきた実績があります。
▼参考
エンゲージメントサーベイとは?具体的な質問内容や活用事例を紹介
組織に特化したサーベイ/TERAS | 組織のエンゲージメント調査
2)課題解決のための社内施策や制度の設計
課題に対して、どのような社内施策を打つのか、その設計を行います。重要なのはその場限りの施策にしないこと。単発的な社内イベントを行ったり、一時的な研修だけを行うのではなく、長期的な視点で取り組む必要があります。
またエンゲージメント向上のためには、以下の4つのステップがあるとTUNAGでは考えており、各組織の課題やフェーズに合わせた施策を設計・運用していくことが求められるでしょう。
- 知る:組織のビジョンや理念など、従業員に経営の意図に沿った情報やそれらの背景や想いが届き、「組織や人」を知る。
- 理解する:従業員が「組織や人」を知ることをきっかけに会話が生まれ、コミュニケーションの質が高まり、会社や仲間への理解が深まる。
- 共感する:会社や仲間への十分な理解が得られていくと、会社や他社の出来事を自分ゴトとして考え、感じることができ、共感が生まれる。
- 行動する:理解や共感が深まることで、自身の働き方や考え方、発言などの行動の質が変わる。
そして、その施策によって課題が解決されたのかどうかをどのように測定するのかを決めておくことで、施策の評価を明確にすることができます。
3)社内施策のPDCAサイクルの実行
課題解決のために、どれだけ素晴らしい施策や制度を設計できても、実行しなければその効果は分かりません。「社内制度や施策を実行しても効果が出ない」という場合、その原因はそもそも「実行されていなかった」ということもよくあります。
会社の経営課題に対して最適な社内施策の立案と運用、その後の効果測定までが一貫していなければ、その社内施策の効果測定をすることはできません。
TUNAGでは社内施策の設計から運用のための社内体制づくり、PDCAの実行を自走できるようにすることまでを伴走して支援します。人事評価や日報、社内ポイントのように特定の課題解決に合わせたサービスではなく、会社それぞれの課題に対して実行していきます。
▼関連資料
なぜ、社内制度は続かないのか? 活用されるためにとるべき7つのステップ
エンゲージメントを高めるための3つのポイント
エンゲージメントを高めるためには、企業や組織に合った取り組みを行うことが重要で、画一的に「これが重要です」と答えがあるわけではありません。ただ、その中でも共通して重要なポイントが3つあります。ここでは、エンゲージメントを高める際に大切な3つのポイントを解説します。
1. 組織内の中間層をターゲットにする
1つ目のポイントは「組織内の中間層をターゲットにすること」です。「2:6:2の法則」をご存知でしょうか。集団において、全体の2割の人間が意欲的に働き、6割が普通に働き、残りの2割が意欲が低くなる傾向が高いという法則です。上位2割の積極層はどの企業でも目立ちやすく、存在感も大きいので、この層をターゲットにしようとする方もいらっしゃるかと思います。ただ、エンゲージメントを高めるには、実は組織の6割にあたる中間層をターゲットにすることが重要です。なぜなら、この中間層6割の方々は少し背中を押してあげれば上位2割の積極層と同じ働きをしてくれる可能性があるからです。逆にうまく巻き込めないと下位2割の消極層になる可能性も出てきます。
組織全体においてこの中間層6割の方が上位と下位、どちらに寄るかで組織の強さは大きく異なってきます。ボリュームの多い中間層がどう感じるか、どう思うかを踏まえて施策を実施・運用上することが大切です。
また、中間層の6割の方々を上位層2割に近づけるには、まず経営層が求めていることを伝えることが大切です。下位層の方々はそもそも会社と距離を置きたいと思っている人もいる可能性がありますが、中間層の方々は会社や経営へ近づきたくても、近づき方が分からない人もいます。経営層がどのような考えを持っていて、具体的にどのようなアクションを求めているかを明示することで、上位層に近づきやすくなるでしょう。
関連記事:2:6:2の法則 - 職場/組織のエンゲージメントを高めるために | 社内ポータル・SNSのTUNAG
2. 複数の施策を継続的に行う
2つ目のポイントはエンゲージメントを高める施策を実行する際には「複数の施策を継続的に行うこと」です。
よく1つの施策や取り組みだけで、エンゲージメントを高めようとする企業様もいらっしゃいます。しかしながら1つの手段だけでエンゲージメント=信頼関係の構築を実現するのは非常に困難であり、組織内の課題も1つだけではないはずです。理念浸透に課題がある場合は社長からのメッセージを定期的に配信したり、現場の情報共有に課題があると感じたらナレッジシェアの仕組みを構築するなど、自社の現状の課題や目指すべき理想の組織像に合わせて、複数の施策を企画・運用することが重要です。
また、自社の課題や理想の組織像は刻一刻と変化していきます。外部環境の変化が大きい昨今、組織に対しての施策を継続的に実施せずに放置していると、時間の経過とともに間違いなく組織課題は大きくなってしまいます。施策を1回で終わらせるのではなく、組織の”今”に合わせて継続的に施策を企画・運用していきましょう。
3. 施策を企画・運用した場合、効果検証・改善を行う
3つ目のポイントは「施策を企画・運用した場合、効果検証・改善を行うこと」です。2つ目のポイントでエンゲージメントを高めるには、複数の施策を継続的に実施し続けることが重要だとお伝えしましたが、全ての施策が成功し、百発百中でエンゲージメントを高め続けるとは限りません。むしろ取り組みを始めた当初は失敗の方が多くなる可能性があります。
重要なのは、施策を行う目的を明確にし、その目的が今の運用のままで達成できるのか、できないのであれば何を変えるべきかを高速で検証・改善することです。
エンゲージメント向上の取り組みを進めるうえでの注意点
組織診断で状態把握を行えば自然とエンゲージメントが高まるとお考えの方もいらっしゃいますが、組織診断はあくまで現状の課題を発見するためのもので、診断を行えばエンゲージメントは向上するとは限りません。このような、エンゲージメント向上の施策を行う際の注意点を説明いたします。
施策の実施と改善のサイクルを回す
組織診断を行って状態把握を行うだけで、自然とエンゲージメントが高まることは難しいでしょう。また、組織診断は「診断した瞬間を切り取った組織状態」を可視化したもので「その瞬間」の組織状態が分かるものではありません。刻一刻と変化する組織の状態を把握、課題を分析し、その課題に合わせて施策を”実行”すること、実行した施策の効果を検証し、改善のサイクルを回すことが重要です。
施策を実行する意図や背景を必ず伝える
施策を行う際に、意図や背景を伝えずに進めると、逆にエンゲージメントを下げてしまったり、思わぬ誤解を生んでしまう可能性もあります。また、あまり企画者側が張り切りすぎて実施するメンバー側が置いてけぼりになると、「施策に追いつけない」雰囲気を生む可能性もあります。
例えばこのようなお話があります。
ある企業で、福利厚生でマッサージ券を配布し、無料で施術を受けられる制度を設けました。ただ、この時その福利厚生の意図を伝えなかったことにより「もっと働けということか」と受け取る人が出てきてしまいました。
施策を行う際には、意図や背景をセットで伝えることで、誤解を生むことなく、成果につなげることができるでしょう。
エンゲージメント向上で得られる効果
会社の業績を上げるだけでなく、「離職率の低下」「採用費の低減」が期待できる
従業員エンゲージメントが2%増加するごとに、顧客満足度を1%増加させることができたという調査結果※1 や、フォーチュン誌では、アメリカトップ企業100社に選ばれた製造業部門にて、「エンゲージメントの高いチームが離職率を14.5%から4.1%に改善した」※2 との結果が出たと発表しています。
このように、エンゲージメントの高い従業員が増えると、売上や利益などが増加したり、離職率が低下するということが分かっています。
離職率を抑えることで、採用費を会社の中で活躍している従業員に還元する方が、さらなるエンゲージメント向上・強化に貢献でき、良いスパイラルを生むのではないでしょうか。
今後少子化が進み、新たな人材を確保することが難しくなってくることは明確です。その点からも会社と従業員のエンゲージメントを高めることの重要性は増しています。
※1 参考:Engagement Leads to Growth at Morrison
※2 参考:Employee Engagement: The Key to Realizing Competitive Advantage
エンゲージメントが高い状態とはどんな状態?
1)従業員が会社と仲間を信頼できている
従業員が本来の力を発揮するには、会社と従業員、または従業員同士での信頼関係を築くことが重要です。同僚、上司という近い関係はもちろん、従業員と会社の関係でも信頼関係が必要です。
会社と従業員という縦の関係、従業員同士の横の関係、双方の信頼関係があることが重要です。
▼関連サイト
2)仕事に対して貢献意識があり、前向きな気持ちを持てている
従業員同士の人間関係が良好なだけでなく、仕事そのものに対してポジティブな気持ちで取り組めていることも求められます。
仕事の難易度が高すぎず低すぎず、本人の目標と仕事・会社の目標が反対方向をむいていない状態が理想だといえます。仕事内容にもやりがいを感じ、顧客から感謝されるものである方が、前向きな気持ちで取り組めます。
3)自分の会社や事業を、家族や知人にも勧めたいという気持ちがある
会社の待遇や環境に満足しているだけでなく、他人にも勧めたいという気持ちになっている状態は、エンゲージメントが高い状態といえます。エンゲージメントサーベイなどでは、NPS調査を利用することもあります。
分かりやすい指標としては、リファラル採用(社員紹介採用)があげられます。従業員からの紹介採用が多い会社はエンゲージメント経営がうまくいっている会社といえるのではないでしょうか。
▼関連記事
リファラル採用のメリットや運用方法、事例を解説! 勝手に人が集まる会社へ
エンゲージメントと従業員満足度、ロイヤルティとの違い
従業員満足度は会社から与えられるモノの上に成立する
「エンゲージメント」と似た言葉で、従業員満足度があります。
エンゲージメントと従業員満足度は確かに似た表現に思えますが、実際には全く異なるものです。
従業員満足度はES (Employee Satisfaction)と略されることもあり、従業員が会社の人間関係や報酬、労働環境にどれくらい満足しているかを表した言葉です。
従業員満足度は、文字通り、従業員の「満足度」を示しており、上の図のように、会社から一方的に与えられた報酬や環境、待遇の上に成り立つものです。
そのため、昨今のコロナウイルスなどの影響で、会社の業績が厳しくなりこれまで用意していた福利厚生や給与条件などの待遇が悪化すると、失われてしまう可能性があります。
そして、福利厚生の充実や労働環境の整備などの施策は従業員満足度を高めることには繋がりますが、従業員の成長や企業の業績アップに必ずしも結び付くとは限りません。
一方で、エンゲージメントは会社と従業員との“信頼関係”がベースにあるため、会社経営が厳しい時こそ最大の効果を発揮し、会社全体で一丸となって支え合う強さがあります。
エンゲージメントが高い会社は従業員に貢献意欲や会社への愛着が芽生えるため、自発的に各個人の能力を発揮し、業績アップにつながる可能性が高まります。
▼関連記事
ロイヤルティは、忠誠心でつながる上下関係を示す
また、エンゲージメントとは「ロイヤルティ(Loyalty)」とも異なります。
ロイヤルティを日本語に直訳すると、「忠誠」「忠義」という意味になります。
エンゲージメントが会社と従業員の「相互」信頼関係なのに対し、ロイヤルティは従業員から会社への「一方的な」忠誠心を表します。
ロイヤルティは、従業員が会社やチームに対して忠誠心を持って行動するという、「会社が上、従業員が下」の関係性を前提にしています。
そのため、ロイヤルティが高くてもエンゲージメントの低い組織では、従業員が会社の命令に「忠実に従う」ことはあっても、「主体的に取り組み、クリエイティビティを発揮する」ことは難しくなると考えられます。
エンゲージメントが注目されている背景
人材の流動化
これまでの終身雇用や、年功序列といった人事制度が崩壊し、成果主義、実力主義の報酬体系へと移行する企業が増えてきています。
この動きに従って、労働者はよりよい待遇や環境を求めるようになりました。これにより人材の流動化が進み、優秀な人材であればあるほど、よりよい環境を求めて職場を移る可能性が高まります。
さらに最近はコロナウイルス感染拡大の影響で、リモートワークを導入する企業が増えてきていたり、副業を解禁する企業も多く、働き方も多様化してきています。
自分に合った働き方ができる環境を求めて職場を移る傾向は、今後ますます加速していくでしょう。
そのような中で、人材の流出を防ぐために「エンゲージメント」が注目されるようになりました。
従業員と、待遇面だけではなく「信頼関係」でつながることによって、会社と従業員の間の絆をつくり、人材の流出を防ぎます。
個人の価値観の多様化
また、近年、個人の価値観やワークモチベーションが多様化してきていることも、エンゲージメントが注目されている背景として挙げられます。
最近の世代は、昔ながらの画一的な日本の価値観にとらわれることなく、ワークモチベーションや雇用形態について多様な価値観を持ち合わせています。
昇給や出世よりも、自分が働くことの意義や仕事のやりがいを重視する人や、入社した会社の組織風土や仕事の内容が自分に合わないと感じたらすぐに辞めてしまう人も珍しくなくなってきています。
さまざまな価値観を持つ従業員に、やりがいを持って生産性高く働いてもらおうと考えたときに、これまでのような「会社が従業員を従える」ようなマネジメント方法では限界があります。そのようなマネジメント方法では、多種多様なワークモチベーションを持つ従業員を束ねていくことは難しいでしょう。
そこで大切になってくるのが、会社と従業員双方向の信頼関係である「エンゲージメント」の考え方なのです。一方的な支配ではなく、お互いに信頼できる関係性を作ることで、会社をひとつにしていくことができます。
エンゲージメントを向上させるメリット
職場の活性化と生産性の向上
エンゲージメントの向上は、従業員の主体性と積極性を高めることにつながります。従業員が企業に対して強い愛着を持ち、自らの役割に意義を感じることで、チーム全体のパフォーマンスが向上します。これにより、企業全体の生産性も自然と高まるため、業績向上に寄与する効果が期待されます。
離職率の低減と人材の定着
エンゲージメントが高い職場では、従業員の離職率が低くなる傾向があります。従業員が自社に対して強い帰属意識を持ち、自分のキャリアを長く企業と共に歩んでいきたいと感じるようになるためです。これにより、企業は優秀な人材を長期的に確保できるようになります。
顧客満足度と企業信頼度の向上
従業員のエンゲージメントが高まることで、仕事に対する熱意や意欲が増し、提供するサービスや製品の質が向上します。このような向上した品質が顧客満足度の向上につながり、結果的に企業の信頼度やブランド価値も高まることが期待できます。これにより、長期的な顧客関係の構築が可能になります。
解決すべき「人」と「組織」の課題とは
1)経営理念やビジョンの浸透(タテの関係)
“会社と従業員”の信頼関係を構築し、エンゲージメント向上・強化を目指すには、会社の考えを従業員が理解・共感したうえで業務に向かっていなければなりません。
会社の経営理念や行動指針は、従業員の方がどれくらい理解しているでしょうか?それに当てはまる行動がどう評価に結びついているでしょうか?まずは会社から従業員へのメッセージをしっかり伝えられていないと、あらゆる施策や業務においてその背景や目的、意図がうまく伝わらないままになってしまいます。
2)社内コミュニケーション(ヨコの関係)
“従業員同士”の信頼関係を構築し、エンゲージメントを向上・強化させるために課題になるのは“社内コミュニケーション”です。
社内コミュニケーションには、従業員同士の中でも、「上司と部下」「チーム内メンバー同士」「他部署と自部署」など、様々な方向があり、どの関係も一方通行ではいけません。そのため、社内コミュニケーション改善には、様々な施策が求められています。
しかし、近年では価値観の多様化、働き方の多様化がすすみ、社内コミュニケーションの難易度が上がっています。社内コミュニケーションの必要性は感じていながらも、昔と同じ方法ではコミュニケーションがうまくいかないケースも多く、どうしたら良いのか分からない。とお悩みの方も多くいらっしゃいます。
エンゲージメント向上の方法は会社によって異なるもの
エンゲージメントが高い方が、働きがいがあり、良い会社である。というイメージはあるものの、どういう状態がエンゲージメントが高い状態といえるのか、どんな取り組みを行うと良いのか、それは各会社によって異なり、答えは一つではありません。100社あれば100通りの組織課題があり、エンゲージメント向上のアプローチも異なります。
しかし、社会の変化のスピードが早くなっている今、エンゲージメント経営を無視することはできません。すぐに業績向上に結びつかないケースもありますが、じっくりと向き合っていく必要があるのではないでしょうか。
組織の現状を把握するためのエンゲージメントサーベイという選択肢
実際に自分の会社のエンゲージメントはどれくらいであるのかを調べたいときに有効なのが、エンゲージメントサーベイです。
エンゲージメントサーベイによって、上記の「解決すべき課題」の所在を明らかにします。
従業員に向けた複数の質問項目からなるアンケート調査が主流で、さまざまな企業が提供しています。
エンゲージメントサーベイには、社内のタテとヨコのつながりや社員同士の人間関係、従業員一人ひとりの仕事に対する意識などについても把握できるような診断項目が用意されています。
例えば、
・会社の使命や目的に共感している
・職場で何を期待されていると知っている
・職場において、1人の人間として気にかけてくれているという実感がある
・成長機会を与えられている
などの診断項目があり、社内の現状を詳しく把握することができます。
エンゲージメントサーベイに関する注意点
エンゲージメントサーベイをして現状把握をしただけで満足してはいけません。
サーベイは、診断した瞬間を切り取った組織状態を可視化したものです。
言い換えれば、診断を実施して結果が開示されたその瞬間、組織状態がもう変化していて実態とのギャップが生まれていることもありえます。
会社はエンゲージメントサーベイの結果で出た内容を調査・分析をして、エンゲージメントを高めるために不足している点を検討し、エンゲージメントを高める施策のPDCAを回し続けていく必要があります。
エンゲージメント向上に必要な機能が揃ったオールインワンツール「TUNAG」
TUNAGは、エンゲージメント向上や組織課題の解決に必要な機能が揃ったオールインワンツールです。各社の組織課題や目指したい組織像に合わせて、必要な施策をオリジナルで設計することができます。また、マルチデバイス対応で、社用端末や法人メールアドレスを持たない従業員も利用することが可能です。
伝えるべきメッセージや情報を従業員にスムーズに届け、従業員同士のコミュニケーションが活性化を促す。そんな循環をTUNAGで構築し、エンゲージメント向上や経営理念の浸透などを実現します。
1)会社やトップからの情報発信
経営陣が考えていること、会社の課題やビジョンなど、トップからのメッセージを発信する例です。代表が日々考えていることや会社の方向性などをコラムとして発信したりするケースが多くありますが、これまで「メール」で配信しても返信が無かったりと、反応が得ることが難しかったのではないでしょうか。
TUNAGでは、「既読数」を把握したり、気軽にコメントやスタンプなどを送るなどのSNSとして使いやすいという利点があり、メッセージの浸透に貢献しています。
拠点が離れていたり普段頻繁にコミュニケーションが取れなくても、TUNAGを通してダイレクトに発信することができます。言葉や結果だけでなく、意図や背景までも含めて伝達できることがメリットです。
ビジョンや理念に触れる回数が増えることで必然的に浸透が進み、意思統一や意識レベルの向上を促します。加えて過去の発信を確認したり、新しく入社された方も閲覧できることで、早期立ち上がりに大きく寄与します。
2)コミュニケーションが発生する活用事例「サンクスメッセージ」
日々の行動の中で感謝や称賛を送り合うサンクスメッセージを通して、個人の行動にフォーカスすることでコミュニケーションを生み出しています。
普段面と向かって感謝を伝えられない事や照れてしまう事、改めて感謝を伝えたい事などをピックアップし皆に共有することで当人同士のコミュニケーションだけでなく、多方面でのコミュニケーションのきっかけを生み出しています。
3)社内の情報共有が促進される活用事例
個人毎やチーム毎の日々の成功体験やノウハウの共有、課題や困りごとへのアドバイスなどをリアルタイムに共有することが可能です。
上司・部下や部署内での情報共有だけでなく、部署の垣根を超えた情報共有も可能で、横断的な会社の動きを見える化することでより一層の連携や新たな気づきを得るきっかけにつながります。
4)プロフィール機能の活用事例
TUNAGには、マイページにプロフィール機能があります。趣味や特技、好きな音楽などのカジュアルなものから、学歴や職歴、受賞歴まで幅広く個人の人となりを把握することができます。(プロフィール項目は会社によって自由に設定できます)
プロフィールをきっかけに思わぬ共通点を見つけて会話したり、部署移動後の同僚が一目でわかるので溶け込みやすい効果もあります。またタレントマネジメントなどの人材管理にも活用可能です。
エンゲージメント向上の施策や取り組みを検討中の方は、ぜひTUNAGの無料サービス資料をご覧ください。