社員のモチベーションが下がる原因は?モチベーションの種類ごとの要因と対策

社員のやる気が見られない、能動的に動いてくれないといった状況を受けて、モチベーション低下に対する対策を模索している企業もあるでしょう。自社の状況に合った対策を考えるには、モチベーションの種類によって異なる低下の要因を知る必要があります。社員のモチベーションが下がる理由と対策を見ていきましょう。

仕事に重要な「モチベーション」の種類

「モチベーション」とは、目標や目的を達成するために行動を起こす意欲・動機のことです。モチベーションには大きく分けて「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」の2種類があり、それぞれに特徴が違います。

まずは2種類のモチベーションについて、基本を押さえておきましょう。

内発的モチベーション

内発的モチベーションとは、その人の内側から湧き出る「やりたいからやる」という意欲です。人に強制されたから、何かを得たいからという理由で生まれるものではありません。

報酬や評価といった外的な見返りを求めず、「やりたい」という気持ちだけで持続するため、長期的に維持しやすいモチベーションといえるでしょう。内発的モチベーションは能動的な行動につながります。

外発的モチベーション

外発的モチベーションとは、「高い給料を得るために頑張ろう」「良い評価を受けるために頑張ろう」といった、自分の外から与えられる要因によって生まれる意欲です。給与や評価制度など企業側で調整しやすい一方、個人の期待値に左右されるため持続性に課題があります。

例えば「高い給料を得るために頑張ろう」と思っていた場合、期待していた昇給がなければモチベーションが下がってしまいます。一時的に意欲を向上させるには外発的モチベーションを高めるのも効果的ですが、持続しにくいのが難点です。

社員のモチベーション向上を考えるに当たっては、内発的モチベーションの向上を最終目的として、外発的モチベーションの向上はそれまでの補助、または短期間意欲を高めてもらうために必要と考えた方がよいでしょう。

社員の内発的モチベーションが下がる要因

社員の内発的モチベーションが下がると、能動的な行動が減って新たなアイデアやイノベーションが生まれにくくなります。内発的モチベーションが下がる原因は何なのでしょうか。社員の「やりたいからやる」という自発的で前向きな意欲を奪ってしまう要因の代表例を、四つ紹介します。

役割が不明確でやりがいを感じられない

社員本人が自身の会社における役割を明確に理解できていないと、やりがいが感じられなくなってしまいます。仕事の「やりがい」とは、自ら成し遂げた仕事に対して、自分自身の中で持つ「やってよかった」という気持ちや達成感です。

やりがいが先に生まれてモチベーションにつながることもあれば、モチベーションが高まった結果やりがいを感じることもあり、両者は相互に影響し合う関係にあります。

内発的モチベーションを高めて仕事をした結果やりがいが生まれ、やりがいがさらなる内発的モチベーション向上につながるという関係です。

自分に期待される成果・目標が不明瞭なときも、同様にやりがいを感じられなくなって内発的モチベーションが低下します。仕事に対して「やりたい」という気持ちを持つには、役割や目標の明確化が不可欠です。

キャリアプランが見通せない

キャリアプランの見通しが立たないことも、内発的モチベーションが低下する要因です。自分がこの会社でどのようなキャリアを築けるのかというビジョンがないと、自発的に仕事に取り組もうという意欲がなくなってしまうでしょう。

特に現代では転職が一般的になっているため、キャリアプランが見通せない環境はやる気の欠如につながりやすい現状があります。逆に明確なキャリアプランが描ける状態であれば、外部からの報酬や評価がなくても、自らの中で自発的に仕事へ取り組もうという気持ちが湧いてくるはずです。

成長機会に乏しい

仕事をする中で「自分は成長している」という実感を得られなければ、内発的モチベーションは下がります。例えば以下のような環境だと、自らの希望で仕事に取り組もうという気持ちを維持するのは困難です。

  • 本人の意思に反して簡単な業務ばかりを任される
  • スキルアップにつながる新しいプロジェクトに挑戦できない
  • 学習意欲があっても日常業務に追われ、時間を確保できない
  • 上司からの適切なフィードバックが得られず、成長を実感できない

自社が上記の状況に当てはまっていないか、いま一度振り返ってみましょう。思い当たることがあるなら、社員のモチベーション低下はそれが原因かもしれません。

コミュニケーション不足で人間関係が悪い

コミュニケーションが不足すると、すれ違いが起こって人間関係が悪化しがちです。同僚や先輩・上司など、チームとして働く人との関係が良くないと、「このチームのために頑張ろう」という内発的モチベーションが下がってしまいます。

深刻な場合は業務上の連携がうまくいかず、生産性や集中力の低下につながることも少なくありません。そうなるとモチベーションの低下に伴い、チーム全体の業績も顕著に落ちるでしょう。

また、人間関係は周囲からの承認・感謝・評価など、外発的モチベーションにも影響すると考えられます。人間関係は、2種類のモチベーションのどちらにも影響する重要な要素です。

社員の外発的モチベーションが下がる原因

外部から与えられる評価・環境が不十分であれば、承認など他者要因による意欲、つまり外発的モチベーションが維持できません。社員の外発的モチベーションを下げてしまう要因として、代表的なものを紹介します。

給与などの待遇に不満がある

給与や賞与・福利厚生などの待遇は、外発的モチベーションを高める大きな要因です。待遇に不満があれば、「高い給料がもらえるから頑張ろう」「この企業で働いていれば福利厚生が充実しているから続けよう」といった外部要因に起因する意欲がなくなります。

特に優秀な人材は、待遇に納得していなければモチベーションを下げやすいでしょう。実際組織に利益を提供している分だけ、それに見合った待遇が得られなければモチベーションが下がるのは自然ともいえます。

人事評価に納得していない

人事評価は待遇を左右するのはもちろん、社員の承認欲求にも影響を与えます。「マズローの欲求5段階説」で第3段階の「社会的欲求」までは、現代の日本で働いている限り満たされないことは少ないと考えられます。 しかし、第4段階にある承認欲求は、働きぶりを適正に評価されない限り職場では満たされません。

「評価されたいから頑張ろう」という外発的モチベーションが、不適切な評価によって低下するということです。上司の感情や好みに左右される、高い評価を得られるだけの業績を上げているのに実際には評価が低いといった状況では、高評価を得られなかった社員のモチベーションは大きく下がってしまうでしょう。

日々の業務に追われて心身に余裕がない

仕事に対して前向きな気持ちを持てないほど多忙な環境も、外発的モチベーションを下げる要因です。外発的モチベーションは外部の影響によって上がる意欲であるため、労働環境ももちろん向上・低下に影響します。

日常の業務に追われていれば、何かに熱心に取り組もうというより「早く仕事を終えたい」という方向に意識が向いてしまうのは自然です。身体的にも、長時間労働で疲れ切っていたり何らかの不調を抱えていたりすれば、モチベーションを維持するどころか日常的な業務すら回らなくなってくる可能性があります。

社員のモチベーション低下が企業に与える影響

社員のモチベーションは、仕事に対する満足度や職業生活における幸福度に影響します。では企業から見て、社員のモチベーション低下は何が問題なのでしょうか。考えられる重大な影響を三つピックアップして解説します。

労働生産性が下がる

社員のモチベーションが下がれば、自ら動こうとする人が減るため、部署やチームのような組織の生産性が下がります。社員の間で「最低限の仕事で済ませよう」という意識が働き、言われたことしかしない人が増えれば、当然期待した成果は望めません。

組織や社員の業績評価は上がらず、余計にモチベーションが下がるという悪循環もあり得ます。

さらに特定の人のモチベーション低下が、組織内に波及していくという問題にも注意が必要です。社員のモチベーション低下を放置していると、どんどん組織の生産性が下がり、企業は競争力を失ってしまいます。

責任感の低下によるミスが増える

モチベーションが下がると、仕事に対する責任感も薄れていきます。責任感がない社員は意図的な手抜きをしたり、ミスが増えたりして、業務の質が低下するでしょう。

結果として取引先や顧客からのクレームが増えたり、自社の商品・サービスが売れにくくなったりします。

モチベーションと責任感の低下によるミスが組織全体に波及すれば、商品・サービスの品質低下が加速し、どんどん顧客が離れていく事態にもなりかねません。社員のモチベーション低下は、企業の利益を直接左右する問題です。

離職率が上がる

モチベーションが低い社員は、能動的に何かを達成しようと動かないため、「やってよかった」「遂行できた」というやりがいを感じにくくなります。やりがいはエンゲージメントに影響する要素であり、エンゲージメントは離職率と負の相関関係にあります。

エンゲージメントとは、社員と企業の絆・つながりを指します。社員の視点で見ると、企業への愛着や忠誠心と呼べるものです。仕事にやりがいを感じなければエンゲージメントは低下し、離職率が上がります。

下がったモチベーションが回復しなければ、転職などで離職する可能性が高くなるでしょう。モチベーションが低い社員を放置していると、意欲の低下がまん延して離職率が上がっていくリスクがあります。

社員の内発的モチベーションを下げさせない対策

社員の内発的モチベーションは、長期にわたって持続し、企業の利益に貢献します。企業としては、内発的モチベーションを低下させないための施策を練る必要があります。内発的モチベーションの維持に効果的な対策を見ていきましょう。

企業理念や個々の役割を明確に伝える

社員の自ら動こうとする意欲を維持するには、「企業の中で自分はどのような役割を与えられているのか」「何に貢献しているのか」をしっかりと伝えなければなりません。役割や貢献度を把握することで、社員が仕事に対するやりがいを感じられるようになるためです。

まずは企業理念や戦略を共有しましょう。説明会や広報での周知など方法は複数あります。そこから個別面談などを通じて、個々の社員に何を求めているのか、具体的な目標とともに伝えるとよいでしょう。目標は現実的に達成可能なものにするよう意識すると、社員は実際に達成して成功体験を得て、やりがいを感じやすくなります。

面談でキャリアパスを提示する

キャリアプランは社員個人が考えるものですが、その参考材料として企業からはキャリアパスを提示できます。昇進のためにはどのような実績が必要か、資格が求められる場合はその資格など、具体的な道筋を示すことで社員はキャリアパスを描きやすくなるでしょう。

自身でキャリアパスを描くのが苦手な社員には、キャリアデザイン研修を用意するのも一つの方法です。キャリアパスを描ければ自分の将来像が見えて、内面から湧き出る意欲、つまり内発的モチベーションが向上します。

スキルアップの機会を増やす

スキルアップさせて成長実感を与えると、内発的モチベーションを保ちやすくなります。成長を実感できるスキルアップの機会を与える方法は、いくつか考えられます。

  • 新たなプロジェクトへの参加を提案する
  • 資格取得を金銭的・時間的にサポートする制度を導入する
  • 現状の実力より少し上の目標設定をしてみる

このような施策は、特に成長意欲の高い社員のモチベーション維持に効果的です。ただし、新たなプロジェクトへの参加を提案する、現状の実力より少し上の目標設定をするという場合、失敗したときには上司や先輩がフォローし、失敗から学べる振り返りの機会を設けるなど、チャレンジを支援する体制も同時に用意しておきましょう。

コミュニケーションを活性化させる

内発的モチベーションにも外発的モチベーションにも影響する人間関係を円滑にするには、コミュニケーションの活性化が不可欠です。コミュニケーションが活発になると、チーム内で互いをフォローし合ったり悩みや課題を打ち明けやすくなったりして信頼関係が生まれます。

具体的な方法として挙げられるのは、社内イベントの開催や社内報の発行による頻繁な情報発信です。リモートワークを導入している場合や、本社と現場で分かれて働く社員がいる場合は、オンラインでもコミュニケーションを取れるツールの導入が有効です。

社員の外発的モチベーションを下げさせない対策

外発的モチベーションは、持続期間は短いとはいえ社員が仕事に打ち込む原動力になることは確かです。内発的モチベーションの向上につなげるためにも、外発的モチベーションを維持するための対策も押さえておきましょう。

可能な限り待遇の改善を目指す

月給や賞与・福利厚生などの待遇を引き上げると、短期間で外発的モチベーションを向上させられます。業績連動型の賞与などは一時的な待遇改善に過ぎませんが、ベースアップや福利厚生の整備は、モチベーションを高める外的要因として比較的長く企業が用意できるものです。

予算が少ないという場合も、最低限、業績や働きぶりに見合った待遇は用意すべきでしょう。もちろん待遇の改善は、限界がある上、一時的なモチベーション維持になってしまう可能性もあります。

とはいえ、内発的モチベーションの向上には時間がかかることも多いため、併用すると効果的です。

公正な人事制度を再設計する

もし自社の人事制度が公正性に欠けているなら、社員それぞれの貢献度を正しく反映させられる人事制度を再設計する必要があります。努力に見合った評価が得られる環境は、承認欲求が十分に満たされるため、外発的モチベーションを高める大きな要因です。

公正な人事制度には、評価基準の明確化、360度評価などを用いた客観的な評価が求められます。評価に対して納得してもらうための、適切なフィードバックも必要です。人事制度の見直しとともに、1on1などの面談を実施する立場の上司・管理職に対して、フィードバック研修を実施しましょう。

業務の配分や効率を改善する

日々の業務に追われてモチベーションが下がっている従業員が多いなら、業務配分の見直しが求められます。場合によっては追加の採用も視野に入れる必要があるでしょう。

業務の効率化も、「忙しすぎてやる気が出ない」という状況の打破に効果的です。業務量があまり変わらなかったとしても、効率良く仕事をこなせる仕組みやツールがあれば、労働時間を短縮して負担を減らせます。

モチベーションが下がってしまった社員への対応

モチベーションの種類を問わず、低下防止の対策に加えて、既にモチベーションが下がってしまった従業員への対応も必要です。放置していると離職につながったり、やる気のなさが組織全体に波及したりするリスクがあります。では、どのような対応がモチベーションの回復に効果的なのでしょうか。

セルフモチベーションの研修に参加してもらう

モチベーションは、社員個人でもある程度はコントロールできるものです。ただ、ほかの社員より先にモチベーションが下がってしまった社員は、モチベーションを維持している社員よりコントロールがうまくない可能性があります。

外的要因を整えることは前提として、セルフモチベーションの研修を実施するとコントロールしやすくなる場合があります。セルフモチベーション研修のプログラム例は、以下の通りです。

  • 業務の振り返りシートを作成し、強みと弱み・今後の課題を明確にする
  • 自らの思考や行動のパターンを認知する
  • 自らの良い部分を褒め、弱みは素直に認める(ほかの人を褒める練習も効果的)
  • チームのメンバーを信頼してコミュニケーションを取る
  • 今日からでも始められるアクションプランを作成する

1on1で抱えている悩み・課題を把握する

モチベーションが下がった社員がいる場合、できるだけ早めにモチベーションが下がってしまった原因を探る必要があります。そのために適切なのが1on1です。

込み入った事情が存在するケースも考えられるので、1on1で安心して悩みや不安を話せる状況をつくりましょう。実施する上司や管理職には、心を開いて話してもらえるようなヒアリング方法など、コミュニケーションの研修を実施するのが理想です。

必要に応じて配置転換や業務内容の変更を検討

1on1の結果、取引先の担当者や上司に問題がある場合、配置転換も視野に入れる必要があります。モチベーションが低下した社員の得意・不得意と業務がかみ合っていないことが原因の場合は、業務内容を変更するのも一つの方法です。

ただし待遇が著しく悪くなるなど、本人の不利益になる変更は極力避けなければなりません。モチベーション回復を目的として配置転換や業務の変更が、逆にモチベーションを下げる原因になってしまいます。

社員のモチベーションが下がらない環境づくりを

モチベーションには「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」の2種類があり、どちらも仕事に対して熱心に向き合ってもらうために必要です。ただ内発的モチベーションは持続性があり社員自らがコントロールしやすいので、長期的に意欲を持って取り組む人材を増やすには、内発的モチベーションの向上が重要とされます。

モチベーションが下がる原因は、解説した通りさまざまです。自社で思い当たる要因があれば、それに対応した対策を取りましょう。コミュニケーションの活性化や福利厚生の充実には、エンゲージメント向上を包括的にサポートする「TUNAG(ツナグ)」のようなツールの導入も選択肢です。全社的なコミュニケーションを活性化させる機能や称賛文化を育てる機能から、福利厚生の充実に使える機能までそろっています。

TUNAG(ツナグ) | 組織を良くする組織改善クラウドサービス

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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