女性管理職・リーダーが6年で8.5倍に。企業内保育園とアドベンチャーワールドが推進する理念経営とは

約1,600頭の動物が暮らす和歌山県白浜町のテーマパーク『アドベンチャーワールド』を運営する株式会社アワーズは、「こころでときを創るSmileカンパニー」という企業理念を掲げ、教育とエンターテイメントを掛け合わせた「エデュテインメント」をテーマに、楽しく学べるテーマパークを目指しています。

同社では、仕事と育児の両立に難しさを感じる女性社員の退職が続いていましたが、企業内保育園『キラボシ』を開設してから、女性管理職・リーダーの大幅増加を達成しています。また、理念浸透やエンゲージメント向上を目的にTUNAG(ツナグ)を導入し、『キラボシ』のインナーブランディングや産休・育休中の社員とのつながり維持にも活用しています。

多様な人材が活躍できる環境づくりや、その中でのTUNAG活用法について、総務部 ゼネラルマネージャーの篠原様と企業内保育園『キラボシ』チームリーダーの鬼澤様(以下、敬称略)にお話を伺いました。

(取材:2025年3月)

「社員のSmile」実現を目指し、企業内保育園を開設

仕事も会社も好き。でも、退職を決断せざるを得なかった理由

企業内保育園『キラボシ』チームリーダー 鬼澤様

〜貴社では2018年に初めて企業内保育園を開設したそうですが、開設に至るまでのエピソードをお伺いできますでしょうか。〜

篠原:代表の山本は理念経営に取り組む中で、「ゲストのSmileを創り出すためには、まずは社員のSmile(しあわせ)を創る必要がある」「そのためには誰もが活躍できる環境づくりが必要」と常々考えてきました。

しかし以前は、「会社は好きだけど、仕事を手放すしかない」と泣く泣く退職を選ぶ女性社員が多い状況でした。多くの社員は県外出身で、子どもが生まれても祖父母や親戚のサポートを受けるのが難しく、特に2人目の子どもが生まれると仕事と育児の両立が一層難しくなります。

貴重な仲間である女性社員が離職していく現状を何とかしなければという想いから、2018年4月に企業内保育園『キラボシ』を開設しました。

社員の声を丁寧に聞き、自社ならではの保育園を創り上げる

株式会社アワーズ 公式サイトより

〜開設にあたり、準備などはどのように進めていったのでしょうか?〜

鬼澤:まず、有志の社員でプロジェクトを立ち上げました。「開設しても利用者が集まらないのでは?」というのが何よりの懸念だったため、プロジェクトチームで社員への丁寧なヒアリングを行い、期待やニーズに応える弊社ならではの環境を整えました。

具体的には、アドベンチャーワールドの豊かな自然や動物との触れ合いを生かした独自のプログラムを導入しています。天気の良い日にはお散歩がてらパークへ赴き、動物への餌やりを体験したり、飼育スタッフから「いのち」の話を聞くことができます。

社内周知は丁寧に。実態に合わせた勤務体系も手厚く整備

〜会社としてはどのように動いていきましたか?〜

篠原:企業内保育園があることで、子どものいる社員が「もっと働かなければ」とプレッシャーを感じ、かえって働きにくさにつながることが懸念でした。そこで、「企業内保育園は『無理して働くためにある施設』ではなく、子どものいる社員が安心して働くための『選択肢の1つ』です」と丁寧に社内に周知しました。

また他の社員に対しても、仕事と育児の両立を会社としてサポートする重要性を説明し、全社的に協力体制を築きました。

鬼澤:保護者と保育園がスマホアプリを通してコミュニケーションを取れる、保育施設向けのICTサービスも導入しました。保育士が写真付きの連絡帳を作成し、その日の活動が分かるようにするなど、保護者がより安心して働ける環境を整えています。

〜子育て中の社員が働きやすいような社内ルールも整備していったのでしょうか?〜

篠原:柔軟な勤務体系などの整備にも取り組みました。

たとえば、育児のための短時間勤務制度は法定では子どもが3歳になるまでですが、弊社では小学校6年生まで利用できます。他にも、退勤時間を10分単位で短縮できる「子育てアシスト制度」があります。

小学校低学年はまだまだ手のかかる時期ですし、小学校中学年になると学童で優先的に預かってもらえないケースもあるためです。

コロナ禍、エンゲージメント向上のためTUNAGを導入

会社がピンチの時こそ、レジリエンスの高い組織づくりに取り組むと判断

〜2021年にTUNAGを導入されたきっかけは何だったのでしょうか?〜

篠原:もともと展示会でTUNAGのブースを見て、エンゲージメント向上のための多様な機能が揃っている印象を持っていました。その後、理念経営のためのツールを自社開発しようと考えていたタイミングで新型コロナウイルスの流行が始まったんです。

社会全体の価値観が大きく揺れ動く中で、どんな環境の変化にも左右されない、レジリエンス(※1)の高い組織づくりを進めていく必要性がある。その中で、会社と社員の相互信頼関係であるエンゲージメントの向上が今こそ不可欠だと考え、「TUNAGならそれが実現できる」と導入を決めました。

〜なぜあえて、そのタイミングで導入を決意されたのでしょうか?〜

篠原:確かに「こうしたツールの導入は『プラスアルファ』の施策として慎重に検討すべき」という考え方もあったかもしれません。私自身、コロナでパーク運営が厳しく先も見えない中で、もう少し様子を見るべきか迷った部分もありました。

しかし社長は「今だからこそ導入すべきだ」と。未来を見据えて、長期的な視点で決断したのだと思います。もちろん、金額は決して安くはありません。しかし、それ以上の効果や価値があるという、経営者としての意思ある決断だったのだと今では強く感じています。

※1:レジリエンス…困難をしなやかに回復する力のこと。

TUNAGは「社内の情報を集約するポータルサイト」になると感じた

〜機能や使い勝手の部分で、TUNAG導入の決め手になったことはありますか?〜

篠原:さまざまな業務のWeb上の入り口になる、いわゆる社内ポータルサイトとして使えそうだと感じたんです。当時は社内SNSやWeb掲示板のサービスも利用していたのですが、TUNAGにはそういった機能がありますよね。さらに、どの部署に誰がいるのか可視化できるので組織図の役割も果たしてくれて、社員手帳の内容をTUNAGに掲載しておくこともできる。

どれか特定の機能というよりも、「これまで別々のツールで運用していたものが、まるっとTUNAGに入っている」という点に強く惹かれました。

あとは、サンクスカードの機能ですね。以前は一部の部署だけが紙で運用していたのですが、TUNAG導入によって全社的にサンクスカードを展開できるというのも非常に大きかったです。

〜ツールを集約する上で、情報が多くなりすぎるという懸念はありませんでしたか?〜

篠原:TUNAGはコンテンツごとに「必読(※2)にするかどうか」などを柔軟に設定できます。必ず見てほしい情報と、読み物として気軽に見てほしい情報を設定で明確に分けられるのが良かったです。

移行できるものは全てTUNAGに統合し、従来のツールは利用をやめました。

※2:必読機能…「必読」に設定したコンテンツは投稿時にスマホアプリに通知が飛び、内容を確認するまでホーム画面にアイコンが表示されます。「会社からのお知らせ」「社長メッセージ」などの重要コンテンツでよく使われる機能です。

保育園と他部署をつなぐ情報発信。理念経営を具体化したコンテンツも

企業内保育園とその他の部署が、様子を社内に発信

〜『キラボシ』を運営する上でもTUNAGを活用しているのでしょうか?〜

鬼澤:TUNAG上で他の部署がどんなことをしているのか知ることができるので、たとえば「今度ここにお散歩に行ってみよう」と散歩ルートの下調べの際に参考にしています。保育園スタッフも休憩時間などにアプリでTUNAGを見ていますね。

篠原:逆に『キラボシ』からも、「今こんなことに取り組んでいます」「運動会を開催しました」など、全社向けの「保育園だより」的な内容をTUNAGで発信しています。

TUNAGで発信することには2つの意味があって、ひとつはインナーブランディングとして会社の中で『キラボシ』がどんなことをやっているかを発信すること。もうひとつは、「こういう保育をやっているなら、うちの子も通わせたいな」と入園につなげることです。

理念経営のため、社内SNSコンテンツ・サンクスカード等を運用

〜理念経営やエンゲージメント向上のための取り組みには、どのようなものがありますか?〜

篠原:「Smile+(スマイルプラス)」というコンテンツをTUNAGで運用しており、Smileを創る内容であれば誰でも投稿できます。

自分の部署に関する内容は部署専用コンテンツに投稿すればよいのですが、個人の出来事や、どのコンテンツにも当てはまらないような内容も当然出てきます。そうした内容の受け皿として、誰でも気軽に投稿できるコンテンツとして始まりました。

〜理念を意識する良いきっかけになりそうですね!〜

篠原:そうですね。他にも「心の花束」という、いわゆるサンクスカードを運用しているのですが、カードを送る際には「3つのこころ」から1つ選ぶルールになっています。

「3つのこころ」とは、企業理念「こころでときを創るSmileカンパニー」を実現する上で大切にしている「思いやりのこころ」「素直なこころ」「前向きなこころ」のことです。

企業理念に沿った「こころ」を選んでカードを送り合うことで、企業理念の浸透やインナーブランディングにつながると考えています。

女性管理職・リーダーが大幅に増加。多様性ある職場づくりの着実な一歩

園児の数は9倍に。利用する社員からも喜びの声

〜開設から数年経ち、『キラボシ』の状況はいかがでしょうか?〜

鬼澤:2018年の開設当初はスタッフ5名と園児2名でしたが、おかげさまで園児の人数も増え、2022年10月には『キラボシ』で初めての運動会を開催することができました。運動会の様子はTUNAGにも投稿され、約9割の社員が閲覧し、70件以上のコメントが集まる大反響を呼びました。

現在ではスタッフも11名になり、18名の園児が利用する保育園へと成長しました。コロナ禍で発信することの重要性と楽しさに改めて気づき、どんな時でもTUNAGを通してつながり続けたことが、『キラボシ』を続ける原動力になったと感じています。

〜実際に『キラボシ』を利用する社員からは、どのような声が寄せられていますか?〜

篠原:「子どもが近くにいて、すぐ様子を見に行けるので安心」「仕事の合間に子どもに会いに行くと、仕事ももっと頑張れる!」「アドベンチャーワールドが散歩コースになっているのは『キラボシ』ならではでよい」などの声が寄せられています。

社内にも変化がありました。お子さんがママやパパと一緒にオフィスエリアへやってくるのが日常の風景となり、「みんなで子育てを見守ろう」「子どものいる社員をサポートしよう」という雰囲気が生まれました。

女性管理職・リーダーの数が8.5倍に。多様な人材が活躍する環境づくりの土壌ができた

〜社員の働きやすい環境を整えた結果、社内にはどういった変化がありましたか?〜

篠原:女性管理職・リーダーが2名から17名に大幅に増加しました。出産を機に退職するのが当たり前だった時代から、「復帰したらこんなことに挑戦したい」「このプロジェクトに参加してみたい」と前向きに未来を描けるようになったのは大きいです。

ただ、女性の管理職や女性リーダーの人数が増えたことはもちろんですが、多様な人材が活躍できる環境づくりが重要だという意識の変化があったこと自体に大きな意味があると考えています。

今回は女性という属性に焦点を当てましたが、今後は障がいのある方、外国籍の方、LGBTQ+の方など、さまざまな方が活躍しやすい環境づくりにもつなげていきたいと思っています。女性社員の変化を他の属性にも広げ、誰一人取り残されない職場を実現したいです。

鬼澤:保育園のお散歩でオフィスを訪れることもあります。子どもたちにとっても、多様な性別・年齢の社員、そして女性の管理職・リーダーが働いている様子を見ることは良い影響だと感じています。

産休・育休中の社員もTUNAGを見て不安解消

〜産休・育休中の方も、TUNAGで会社のことを知れるのでしょうか?〜

鬼澤:そうですね。『キラボシ』の状況を知ることができるのはもちろん、産休・育休中の方向けの交流会やベビーマッサージ、フリーマーケットの告知もTUNAGで発信しています。

特に1人目の子どもを育てている方は不安を抱えやすく、産休・育休中は社会的孤立も感じやすい時期でもあるため、「一人で抱え込まなくてもいいんだ」と思えるきっかけになればと思い、「参加者同士がお互いに、パートナーにも話しづらいような悩みも話しています」と参加を呼びかけています。

「私も行ってみようかな」と思ってもらえているようで、回を重ねるごとに参加者が増えていますね。前回も育休中の社員が10名ほど参加してくれました。

会社としても育休中の社員ともつながりを持てていますし、参加者の表情からもポジティブな影響を強く感じています。

最新の技術も取り入れ、生産性が高く働きやすい組織をつくる

『キラボシ』を、もっともっと地域に開かれた保育園へ

〜『キラボシ』の今後の展望について教えてください。〜

鬼澤:今は社員が利用する保育園で、福利厚生の意味合いが強い『キラボシ』ですが、ゆくゆくは社員かどうかは関係なく、利用したい人が誰でも使える地域の保育園にしていきたいと考えています。アドベンチャーワールドの保育園にしかできないことを通して、地域社会にもっともっと貢献したいですね。

TUNAGで発信したことで社内の利用者が増えたように、今後は地域の方々に向けた発信などをして、どんどん繋がっていきたいです。

「テーマパークならでは」の業務に注力できる、より働きやすい環境へ

〜貴社がどんな組織を作っていきたいか、ぜひお聞かせください〜

篠原:コロナ禍を経て価値観が大きく変化し、ここ数年「今まで通りのやり方が通用しない」「何か新しいものを生み出そう」という動きが強まっています。企業としても、革新的な動きを支えるツールの導入や柔軟な働き方を整備して「社員の心身の負担を減らしつつ、生産性の高い組織体質を作っていく」ということが喫緊の課題だと思います。

特に採用は年々難易度が上がっていますが、2030年までには労働人口が1割〜2割減ると言われています。その中で必須なのは、やはり一人当たりの生産性を向上させることです。

〜具体的にどういったアプローチをしていこうと考えていますか?〜

篠原:今まで社員が一生懸命あくせくやっていた業務も、必ずしも社員がやる必要のないことはDXや生成AIの力でどんどん置き換えていく。特にテーマパークという特殊な業界なので、「その人が本当にやった方が良い仕事」に注力できる環境づくりを進めていきたいです。

そういった働きやすい環境作りはもちろんですが、同時に「そもそも人が辞めない環境」をもっともっと作っていく必要がありますね。弊社もTUNAG活用を含め導入などいろいろ取り組んでいますが、今後は特に人間関係に起因する退職をできる限り減らして、できればゼロにしていきたいです。

『キラボシ』によって子育てをする社員の働きやすさが向上したように、引き続きさまざまな属性の方が働きやすい環境づくりを積み重ねていきたいです。

業務領域でもTUNAG活用を進める

〜今後、TUNAGで取り組みたいことについても教えてください。〜

篠原:弊社にとってTUNAGは、これまで業務ツールというよりエンゲージメント向上のツールでしたが、、HACCP(※3)も運用できると知って早速レストラン部門で使い始めました。

機能を組み合わせれば、まだ他にもさまざまな業務活用が可能だと思っています。他のツールをまた費用をかけて新しく導入するのではなく、「業務を便利にするアプリ」としても使えると良いですね。またカスタマーサクセス担当者にも相談しながら進めていきたいと思います。

あとは、TUNAGに投稿すること、あるいはTUNAGの投稿を読むことが人材育成にもつながるような仕組みづくりができると良いですね。

※3:HACCP(ハサップ)…食品の安全を確保するために工程ごとの危害要因を管理・予防する衛生管理手法のことです。食品関連事業での品質管理に欠かせない仕組みとして、世界的に広く採用されています。

〜篠原様、鬼澤様、お話しいただきありがとうございました!〜

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