理念の浸透とは?成功させるための具体的なポイントと企業事例を紹介
経営理念とは会社の羅針盤であり、組織の一体感を生み出すために大切にしている価値観・考え方を明文化したものです。企業が掲げるビジョンに従業員全員が共感し、理念実現に向けて行動すると、生産性向上や離職率の低下など企業の成長を促すさまざまな良い影響をもたらします。
一方で、以下のようなお悩みを抱えている経営者や人事担当者の方は多く、弊社にも頻繁にお問い合わせをいただいております。
- 理念浸透に向けた取り組みを行っているが、なかなか効果が実感できない
- 理念浸透のためにすぐに実行できる施策やステップを知りたい
- 浸透度合いを定量的に把握し、自社に合った施策を打ちたい
本記事では、1,000社以上の組織課題解決を支援してきたTUNAG(ツナグ)が、経営理念を浸透させるためのポイントと具体的な取り組みを詳しく解説します。
ステップごとの具体的な理念浸透の施策は『理念浸透を実現する4つのステップと施策20選』にて詳しくご紹介しています。自社の課題と照らし合わせてご活用ください。
理念浸透とは何か?
企業理念を策定しても、従業員の行動に反映されなければ意味がありません。理念浸透は単なる言葉の共有ではなく、従業員一人一人が理念を理解し、共感し、日々の業務で実践できる体制を指します。
多くの企業が理念浸透に苦戦する中、成功企業はどのような取り組みを行っているのでしょうか。
理念を組織に深く浸透させ、組織の成長に繋げる実践的手法を解説します。
企業理念とは?
企業理念とは、組織が存在する根本的な目的や価値観を言語化したものです。単なるスローガンではなく、経営判断の基準となり、従業員の行動指針となる組織の根幹を成すものといえるでしょう。
優れた企業理念には共通する特徴があります。まず、その企業ならではの独自性があり、社会に提供する価値が明確に示されていることです。次に、従業員が日々の業務と結び付けて理解できる具体性を持っていることも重要です。抽象的すぎる理念は、現場での実践が困難になってしまいます。
しかし、多くの企業では、理念が「きれいごと」として受け止められ、実際の業務判断では優先されないケースが散見されます。
理念と現実の乖離は、従業員のモチベーション低下や組織の一体感の欠如につながり、最終的には企業の競争力低下を招くのです。
エンゲージメントの浸透と重要性
理念浸透とエンゲージメント向上は、表裏一体の関係にあります。従業員が企業理念に共感し、その実現に向けて主体的に行動することで、組織へのエンゲージメントが高まるのです。
エンゲージメントが浸透した組織では、従業員が単なる作業者ではなく、理念実現のパートナーとして機能します。困難な局面でも理念に立ち返って判断し、顧客や社会に対して一貫した価値提供ができるようになります。これは特に、現場での判断が求められるサービス業や、イノベーションが必要な製造業において重要な競争優位性となるでしょう。
一方で、エンゲージメントの浸透には時間と継続的な努力が必要です。トップダウンの押し付けではなく、従業員との対話を重ね、理念と日常業務の接点を見出していく地道な取り組みが求められます。成功企業では、理念に基づいた評価制度の構築や、理念を体現した行動の称賛など、仕組みとして定着させることで持続的な浸透を実現しているのです。
経営理念が浸透している企業の共通点
理念を掲げる企業は多いものの、本当に浸透している企業はひと握りです。理念浸透に成功している企業では、売上や利益といった財務指標だけでなく、従業員の主体性や顧客満足度、離職率の改善など、組織全体にポジティブな変化が生まれています。
では、これらの企業は何が違うのでしょうか。理念を組織の原動力に変える企業に共通する実践的な取り組みパターンを明らかにします。
理念の意図・意味が言語化されている
理念浸透に成功している企業の最大の特徴は、理念の意図を具体的な行動例とセットで示していることです。顧客対応の場面、製品開発の場面、社内会議の場面など、さまざまなシーンでの理念の実践例を共有することで、従業員が迷わず判断できる環境を整えているのです。
この言語化のプロセスには経営層だけでなく、現場の声も反映させることで、実務に即した解釈が可能になります。
定量データに基づいて施策を実施している
理念経営を実現している企業では感覚や経験だけに頼らず、定量データをもとに施策を運用・評価・改善を行っています。
エンゲージメントサーベイを活用すれば、経営理念の浸透度を数値化することが可能です。
- 理念の認知度: 従業員の何割が理念を正確に理解しているか。
- 理念への共感度: 理念に対して従業員がどの程度共感しているか。
- 理念に基づいた行動率: 実際に理念に基づいた行動をしている従業員の割合。
これらのデータから、どの部門やチームに課題があるのかが明らかとなり、ピンポイントで課題にアプローチすることができます。
さらに、施策実施後のサーベイで施策の効果を検証します。データをもとにした施策の改善を繰り返すことで、理念の浸透を効率的に進めることができます。
弊社が提供するTERAS(テラス)は組織改善に特化した基本無料のエンゲージメントサーベイです。
「サーベイを実施したが、結局何をすれば良いのか分からず実行に移せなかった」という経験はございませんか?
TERASの最大の特徴は経営理念が浸透しない原因を把握できるだけではなく、具体的な施策の実施まで一気通貫で支援できる点です。
TERASでデータドリブンな理念浸透施策を実施しましょう。
経営理念に関する発信が継続的にされている
経営理念を組織に浸透させるためには、経営陣による継続的な発信が欠かせません。
理念は一度伝えただけでは浸透しづらく、日常的に耳にすることで従業員がその意味や価値を実感しやすくなります。経営理念に込められた想いや、事業への関連性を詳しく説明することで、従業員は自身の役割と理念の関係性を理解しやすくなります。
具体策としては、社内報やミーティング、掲示板で理念に関するメッセージやコラムを定期的に発信することが挙げられます。経営陣が継続的に経営理念に関する発信をすることで、従業員にとって理念が身近なものとして感じられるようになるでしょう。
従業員が日常的に経営理念に触れる機会がある
経営理念が浸透している企業では、従業員一人一人が日々の業務の中で経営理念に触れる機会が多く設けられています。
経営陣から経営理念について発信することは重要ですが、従業員が積極的に情報を取りに行かない限り、経営理念に触れることができません。そのため、日常業務の中で自然と経営理念に触れる機会を作ることが、理念を浸透させる上で重要です。
例えば、毎日記入する日報に「経営理念に基づいた行動」を記載する欄を設けることで、従業員は自らの業務が経営理念にどのように結び付いているかを考える習慣がつきます。
自分自身の行動や役割と経営理念が結びつくことで、理念が「自分ごと化」されるようになります。
経営理念に基づいた行動を評価している
会社が目指す考え方や価値観を広めるには、理念に沿って行動した従業員をきちんと評価することが大切です。行動が会社で評価されなければ、従業員は理念を体現する意義を見出せません。そのため、評価制度に経営理念を組み込みましょう。
また、理念に基づいた行動が、なぜ会社から評価されたのかを具体的に説明し、称賛することで、「どんな行動が経営理念に沿っているのか」を全社に周知させることができます。
経営理念を浸透させるステップ
複数の施策を一気に進めると、どの施策がどれだけ効果があったのかが見えにくくなります。貴社の状況に合わせて、ステップを踏んで施策を進めることが大切です。下記を参考に自社が今どこのステップにいるのか確認してみましょう。
Step1:自社の経営理念の浸透度を定量的に把握し、課題を分析する
まずは、現状を定量的に把握することから始めましょう。データがないと、何が理念浸透に効果的で、どこに課題があるのかを正確に把握することが難しくなります。
施策の効果があったのかわからないまま、新しい取り組みをはじめた結果「効果が薄い施策」を繰り返してしまうリスクが高まります。
施策を実施する前に、目に見えにくい経営理念の浸透度を可視化することが重要です。
具体的な施策
エンゲージメントサーベイ(従業員調査)の実施
- 従業員アンケートを通じて、経営理念の認知度、理解度、共感度を定量的に測定
- 部署、チーム別で経営理念の浸透度を分析
- 経営理念が組織文化や働き方にどの程度影響しているかを分析
Step2:経営理念を制定した意図や背景を言語化し、理念経営を目指す目的を定義する
課題を把握後、経営理念が生まれた背景やその理念を通じて実現したい未来を改めて整理しましょう。経営陣だけでなく、従業員全体がその意図を理解することで、理念への共感を得やすくなります。
具体的な施策
- 経営陣でワークショップを開催し、理念制定の背景や目的を深掘りする
- 経営理念に込めたメッセージを文章や動画にまとめ、社内外に共有する
- 理念がどのように経営戦略や日々の業務に結びつくのかを具体的に示したガイドラインを作成する
Step3:経営理念について周知をして、認識をしてもらう
経営理念を従業員全員に周知し、認識してもらうことが次のステップです。単なる情報共有ではなく、理念に対して共感や納得感を持ってもらうための工夫が必要になります。
具体的な施策
- 全社ミーティングやイントラネットを活用して経営理念を繰り返し発信
- 理念の内容を分かりやすく伝える動画やパンフレットを作成
- 新入従業員研修やオリエンテーションで経営理念の意義を重点的に説明
Step4:経営理念について日常業務の中でアウトプットする機会を設ける
理念は理解して終わりではなく、日々の業務の中で実践してこそ意味を持ちます。アウトプットの場を設けることで、従業員が理念を体現できるようになります。
具体的な施策
- プロジェクトや業務目標に経営理念を反映させたテーマを設定
- 定例ミーティングで「経営理念に基づいた取り組み」の共有時間を設ける
- 日報に経営理念に基づいた行動を書く欄を設ける
Step5:経営理念に基づいた行動を称賛する
理念を基に行動した従業員を称賛することで、理念の価値を体感し、行動変容を促します。称賛は行動を促すだけでなく、従業員間のポジティブな空気感を醸成します。
具体的な施策
- 経営理念に基づく行動を評価する社内表彰制度を導入
- 経営理念を実践した従業員の事例を社内報や全社ミーティングで紹介
- 上司が日々の業務の中で部下の行動を理念と結びつけてフィードバック
理念経営に取り組む事例
TUNAGの導入によって従業員の行動変容を生み出し、業績向上にもつながった実例から、自社に応じた理念経営のヒントを見つけてみてください。
株式会社イーブレイン
ICT教育に強い学習塾を33校舎展開する同社では、拠点間の距離により理念が統一されず、「塾は勉強を教えるのが本質」という誤った考えが広がっていました。
そこでTUNAGを導入し、研修で学んだ内容の実践結果を全社で共有する「研修実践ニュース」を開始しました。
成功事例も失敗事例も含めて共有することで、「教育と教室運営とは実際にはつながっている」と従業員が気づけるようになり、生徒との信頼関係構築が新規紹介につながるという理念が浸透しました。
離れた拠点でも会社の方向性を統一し、互いを認め合う文化醸成に成功しています。
離れている33校舎をつなぐ。理念浸透とコミュニケーションで教育の本質を伝える方法とは。 | TUNAG(ツナグ)
株式会社大京アステージ
全国約54万戸のマンション管理を担う同社は、穴吹コミュニティとの統合に向けて共通のMVV(Mission・Vision・Value)を策定。TUNAGで「Value称賛カード」を導入し、日常的にValueを意識する仕組みを構築しました。
役員が優れたカードをピックアップする制度や、質を重視した表彰により、年間3万枚を超えるカードがやり取りされ、7割以上の従業員がMVVへの意識向上を実感したとのことです。デジタルの枠を超えて手書きカードも380枚送られるなど、理念が従業員の自発的行動を生む組織文化へと昇華しています。
年間3万を超える称賛カードで理念が行き交う職場を実現。社員にMVVを浸透させた施策とは? | TUNAG(ツナグ)
株式会社おおやま
寿司チェーン『若竹丸』を九州4県に約30店舗展開する同社では、現場の従業員だけでなく店長でさえ理念を知らない状態が課題でした。TUNAGを活用することで本部から理念を継続的に発信するとともに、役員の失敗談を共有して現場との距離を縮める工夫を実施しました。
若手向けのチームビルディング研修と併せて理念浸透を図った結果、20代の従業員の「事業理解・共感」スコアが10以上向上したとのことです。
店長や副店長も自発的に理念について投稿するようになり、「見て覚えろ」という職人気質から、感謝を伝え合い理念を語り合う組織文化へと変革を遂げています。
承認欲求スコアが20近く上昇。寿司の世界で「見て覚えろ」を脱却し、若手定着に挑む | TUNAG(ツナグ)
経営理念の浸透ならTUNAG
ここまでの内容で経営理念は発信するだけでなく、日々の業務で自然と経営理念に触れる仕組みがなければ浸透しないことはご理解いただけたかと思います。TUNAG(ツナグ)なら、貴社の状況に最適な形で経営理念を浸透させる一連の流れをご支援します。
特徴①:社内制度とひも付けて日常的に経営理念に触れる機会をつくれる
「エンゲージメントサーベイを実施したが、結局何をすべきか分からず実行まで移せなかった」という経験はございませんか?
TUNAGでは、貴社の組織状態に合わせて経営理念の浸透を促進する施策を効果的に実施できます。特徴的なのは日常的に使えるチャット機能や掲示板機能、ワークフロー機能が含まれている点です。
社内制度と経営理念を紐付けることで、日常業務の延長線上で理念に触れる仕組みを作ります。従業員が自然な形で理念を意識する機会が増えます。
- 社長メッセージを、従業員のPCやスマートフォンに直接届ける(既読率やリアクションなど従業員の反応も見える)
- 従業員同士で経営理念を体現する行動にサンクスカードを送って称賛
- 日報で経営理念や行動指針に基づく業務を共有
特徴②:施策の改善サイクルを効率的に回せる
施策の改善サイクルを効率的に回すためには、組織の変化に合わせて経営理念の浸透施策を見直し、PDCAサイクルを回すことが必要です。
TUNAGの分析ダッシュボードでは、実施中の施策の効果を数値やグラフで可視化できます。これにより、どの施策が効果を発揮しているのか、どの部分を改善すべきかが一目で分かります。
また、部署単位や個人単位でデータを細かく把握できるため、それぞれに合った適切な改善活動につなげることが可能です。
特徴③:充実のサポート体制
過去に経営理念の浸透させる取り組みをしたものの成果が得られなかったケースや、経営理念を浸透させたいと思いつつ「何から始めれば良いのか分からない」とお悩みの方が多くいらっしゃいます。
理念経営は一朝一夕ではなく、長期的な取り組みが求められるもの。TUNAGでは1社に1人専任担当がつき、1,000社以上の導入実績で培った豊富なノウハウでお客様の組織課題や活用フェーズに最適なアプローチを提供します。
貴社の理念経営を実現するための心強いパートナーとして、成果を実感できるよう全力でサポートいたします。
経営理念の浸透で組織を強くする
本記事では、1,000社以上の組織課題解決支援の経験から得た、経営理念を浸透させるためのノウハウを紹介してきました。経営理念が現場の従業員まで浸透している会社では、従業員一人一人が理念を軸に主体的に行動し、外部環境の変化に柔軟に対応できる強い組織を築くことができます。
しかし、理念浸透は一朝一夕では実現しません。継続的な取り組みが不可欠であり、会社の成長・変化に合わせて、施策を進化させていく必要があります。理念経営に明確なゴールはありませんが、諦めずに施策を動かし続けることが重要です。
従業員全員が同じ目標に向かって同じ方向を向いて業務に取り組むことは、会社の持続的成長には欠かせません。
本記事で紹介したノウハウを活用し、理念経営実現への第一歩を踏み出しましょう。