形だけの評価は不満を招く?組織を成長させる鍵は評価制度を納得させる仕組み
日本では終身雇用制や年功序列から脱却し、能力や成果で評価する企業が増えていますが、評価基準の作成に悩む経営者が多いようです。適正な評価基準は社員のやる気を高め、生産性を向上させますが、不適正な評価は逆効果になってしまいます。
本記事では、評価基準の改善が生産性向上に寄与する具体的な方法を紹介します。
【時間がない方のためのポイントまとめ!】
- 約4割の社員は評価制度に不満を持っている
- 評価には「透明性・公平性・納得性」を持たせる
- 1on1でしっかりとフィードバックして成長へつなげる
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形だけの評価は大きな不満を招く
日本では少子化による人口減少、そして労働力不足が深刻な問題となっています。
その結果、従来の若い人や新入社員でも成果を出せれば評価する「能力主義」に切り替える企業も増えてきています。
一見すると、能力主義は生産性を高めるための効率的な評価制度に思えますが、能力主義の評価に切り替えた結果、かえって生産性を落としてしまった企業も少なくありません。特に、長い間年功序列制度を続けてきた企業ほど、この切り替えに失敗してしまったケースが多くあります。
その原因として、以下が考えられます。
- 社員の多くが、評価制度に不満を持ちながら働いている
- 評価制度が不適正だと優秀な社員ほど早く辞めていく
- 評価制度が形骸化して意欲的な社員が減っていく
どうしてこのような状況が発生してしまうのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
4割近くの正社員が社内評価制度に不満を感じている
出典:パーソル総合研究所「人事評価制度と目標管理の実態調査」
組織・人事コンサルティングや人材開発・教育支援などを行うパーソナル総合研究所が公表しているデータによると、2021年に全国にいる20歳から60歳の男女、正規雇用従業員8,000人以上を対象に行った調査の結果、「自社の評価制度に対して、不満を感じている」と回答した社員は実に4割近くに上ったとのことです。
反対に「不満ではない」「あまり不満ではない」という回答は、2割を下回っています。
年齢が上がっていくほど不満を持つ回答者の割合は増えていく傾向にあり、不満の内容としては「結果への納得感のなさ」「公平性の欠如」「評価全体に対する不満」が高い傾向にあります。
この調査結果から、適正な人事評価を作るのがいかに難しいのかが見えてくるのではないでしょうか。
優秀な人材から去っていき現場が崩壊する
評価の基準が不適正である場合、優秀な社員ほど離職する確率が高くなります。
その理由は、以下の3つです。
- 優秀な社員は適正な評価を望む
- 優秀な社員は転職活動が成功しやすい
- 評価基準が不適正な場合、優秀な人ほど不利益を被る
評価制度が不適正であると、従業員は自分の努力や成果が正当に評価されていないと感じ、不満を募らせます。その結果、自分の能力がより評価される環境を外に求め始めます。
優秀な社員ほど行動的であり、転職を成功させる可能性が高く、そうでない社員は転職活動がうまくいかずに会社に残り続けます。また、評価が不適正であると、がんばらなくても一定の評価を受けてしまうことで、それまでがんばっていた社員も仕事で手を抜くようになります。
その結果、優秀な社員は評価を求めて他社に移行し、社内に残るのはそうでない社員と、がんばることをやめてしまった社員のみになってしまうのです。そうなってしまえば、生産性は低下して現場は回らなくなってしまいます。
評価制度が形骸化する
評価に納得しない社員が過半数を超え、優秀な社員が辞めていく状況になれば、もはや制度そのものが意味を成しません。
上司は学生の通信簿を付けるように、ノルマの一つとして社員を評価するようになります。社員側も、評価に対し一喜一憂するだけで、それを成長の機会と捉えることはありません。評価制度そのものが形骸化し、組織が衰退してしまいます。
失敗する評価制度の典型例
評価制度は、ただ導入すればいいというものではありません。 むしろ、形だけの評価制度を導入した結果、現場がかえって混乱したというケースの方が多いのです。
ここでは、失敗例としてよくある評価制度の例を紹介します。自社の評価制度が、以下に当てはまっていないかを確認してみてください。
テンプレート・他社の評価制度をそのまま使う
経営コンサルを営む会社が、評価制度の雛形を自社ホームページで公開していることがあります。こうした評価制度をそのまま社内に導入する、あるいは人事の役員が前職の評価制度をそのまま導入するといったケースもよく見られます。
結論から言えば、このケースはうまくいかないことが多いです。
なぜなら、自社の実情や文化に合わない評価制度は社員にとって理解しにくく、受け入れられにくいからです。例え同業種の評価制度であったとしても、自社に合わないことも多々あります。
評価の基準やプロセスが明確化されていない
失敗するケースとしては、評価の基準やプロセスが明確化されていないことが挙げられます。例えば、以下のような項目です。
「仕事に対して意欲的に取り組んでいる」
よくある評価項目ですが、このままでは問題が多いにあります。それは「何をもって意欲的とするか」が定められていないことです。
この場合、その基準は評価者に託されることになります。
「時間内に仕事を終わらせること」を意欲的だと評価する人もいるでしょう。その逆に、退社後も残って勉強する人を見て意欲的だと判断する人もいるかもしれません。
同じ評価項目であるにも関わらず、評価の内容が真逆になってしまいます。上司が替わるたびに評価が真逆になってしまったら、社員としてはたまったものではありません。
評価が業務実態や社員のレベルに見合っていない
評価制度が失敗するもう一つの典型例は、評価が業務の実態や社員のレベルに見合っていない場合です。
例えば、現場の実務を無視した非現実的な目標設定や、社員の能力や経験に対して過剰に高い期待を持った評価基準が設定されることがあります。
こうした場合、社員は評価基準に達することができず、結果としてモチベーションが低下してしまいます。
また、新入社員や若手社員に対して、いきなり高い成果を求める評価基準を設けると、プレッシャーに感じてしまい、パフォーマンスが発揮できないことが多いです。
一方で、ベテラン社員に対しても、経験やスキルに見合った適切な評価が行われないと、努力が報われないと感じ、やる気を失うことになります。評価は各社員のレベルや役割に応じて適切に設定される必要があります。
フィードバックが不十分で成長につながらない
評価制度のもう一つの失敗例は、フィードバックが不十分な場合です。評価結果を社員に伝える際に、具体的な改善点や次のステップが示されないと、社員は自分の成長のために何をすべきか分かりません。
また、フィードバックが単に結果を伝えるだけで、評価の根拠や背景が説明されないと、社員は納得できず、不満を抱くことが多くなります。
例えば、「コミュニケーションスキルを向上させる必要がある」と評価された社員に対して、具体的にどのような場面でどのような改善が必要なのかを説明しないと、その社員は何を改善すれば良いかが分かりません。
具体的なフィードバックを提供し、次の目標に向けたアクションプランを共に考えることで、社員の成長を促進することが重要です。
継続的な見直しと改善がない
最後に、評価制度が導入された後も継続的な見直しと改善が行われない場合も失敗の原因となります。評価制度は一度導入すれば終わりではなく、組織の変化や社員の成長に合わせて柔軟に対応する必要があります。
定期的に評価制度の運用状況を確認し、社員からのフィードバックを収集して改善点を見つけることが重要です。
例えば、新しいプロジェクトや業務内容の変更があった場合、その都度評価基準を見直し、現状に即したものに更新することが求められます。
また、社員の意見を反映した制度改善を行うことで、評価制度への信頼感が高まり、社員のモチベーションも向上します。
適切な評価制度を維持するためには、継続的な改善とコミュニケーションが欠かせません。これにより、社員が評価制度に納得し、自分の成長に役立てることができるようになります。
適正な評価に必要な3本柱「透明性」「公平性」「納得性」
では、具体的にどのような評価制度を作れば「適正」といえるのでしょうか。そのためには、「透明性」「公平性」「納得性」という3つの軸で評価基準を設計する必要があります。
【透明性】評価の基準とプロセスがオープンであること
評価制度における透明性とは、評価項目とプロセスが社内の誰にでも理解できるように明らかにされている状態を指します。
評価基準と評価のプロセス、さらには誰が評価するかは全社的に公開しましょう。透明性を確保することで、社員は自分の評価がどのように決定されるのかを理解しやすくなります。
社員は自らの業務に対してどのように行動すべきかを具体的に把握でき、評価向上に向けた自主的な改善が促進されます。
【公平性】すべての社員に一貫した評価を行うこと
公平性は、専門的なスキル評価を除き、すべての社員が同じ基準で評価されることを意味します。
評価者の主観や個人的な好みによって評価が偏ることなく、同じ成果に対して一貫した評価が行われることが求められます。これを実現するためには、評価基準を明確かつ具体的に定義し、全ての評価者がその基準を理解し、適用することが必要です。
評価者の教育や研修を通じて評価基準や方法を統一し、評価のばらつきを減らします。さらに、評価プロセスの透明化やクロスチェックの導入により、評価者間のバイアスを最小限に抑え、客観的で公平な評価を実現します。
【納得性】評価結果に納得し、成長につなげること
納得性は、評価結果に対する社員の理解と受容を促進する要素です。評価結果が社員にとって納得のいくものであることが重要で、そのためには具体的なフィードバックが不可欠です。
評価の根拠や改善点を詳細に説明し、社員が次に何を改善すればよいのかを明確にするフィードバック面談を実施することが求められます。
また、評価結果に基づく具体的なアクションプランを策定し、社員の成長を支援することも重要です。定期的なフォローアップを行い、社員の進捗を確認し、必要に応じてサポートやアドバイスを提供することで、社員が自己成長を実感できる環境を整えることができます。
「TUNAG」の機能を使った評価適正化へのアプローチ
適正な評価制度を実現するためには、双方向のコミュニケーションや客観性の確保、そして評価者の教育が欠かせません。
「TUNAG」の機能を活用したアプローチ方法を紹介します。
【1on1】双方向のコミュニケーションで評価
1on1ミーティングは、上司と部下が定期的に行う対話の場であり、評価の納得性を高めるための重要な手段です。
1on1では、部下の業務内容や課題、成果について詳しく話し合い、フィードバックを提供します。この対話を通じて、部下は自身の評価の根拠を理解し、どのように改善すれば良いのかを具体的に知ることができます。
さらに、1on1は双方向のコミュニケーションを促進し、部下の意見や要望を直接聴く機会を提供します。部下は評価に対する納得感を得やすくなり、自身の成長に向けたモチベーションを高めることができます。
また上司としても、部下からの評価に対するフィードバックを得ることで、部下をどのように管理・成長させていくべきか、マネジメントを見直す機会を得られるでしょう。
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【社内ポイント】ポイントによって客観的に評価する
「TUNAG」では、オリジナルで設定した制度利用でポイントの付与や減算が可能です。明確な評価基準を設けてポイントを増減することで、社内の誰の目から見ても評価が明らかとなります。
ポイント制は、評価者の主観的な判断が入りにくく、公平かつ透明な評価が可能となります。
ポイント制を導入する際には、評価基準を具体的かつ明確に定義し、全社員に周知徹底することが重要です。また、定期的な見直しと改善を行い、評価基準が現状に適しているかを確認することも必要です。これらの周知活動や改善についても、「TUNAG」を活用して行うことができます。
▼従業員を客観的に評価できる社内ポイント・通貨の運用方法▼
社内ポイント施策の運用事例と解決できる三つの課題
適正な評価は経営陣から社員へのメッセージとなる
適正な評価制度は、単なる人事管理のツールではなく、経営者から社員への重要なメッセージを伝える手段です。
評価制度を通じて、企業は社員に対して期待する行動や成果を明確に示し、企業のビジョンや価値観を伝えることができます。
社員は自身の評価を通じて、企業が何を重視し、どのような成果を求めているのかを理解しやすくなります。社員は自らの業務に対する意識を高め、企業全体の目標達成に向けた行動を取るようになります。
適正な評価制度は、組織の成長と社員のモチベーション向上に欠かせない要素ですので、「TUNAG」を活用して導入と浸透を目指してみてください。