懲戒処分とは?種類・手続き・判断基準まで分かりやすく解説

「問題のある従業員にどう対応すべきか」「懲戒処分を検討しているが、手順を間違えたくない」と悩む管理職や人事担当者の方は多いのではないでしょうか。懲戒処分は適切に行われなければ、後に法的トラブルを招くリスクがあります。本記事では、懲戒処分の基本知識から具体的な手続き、判断基準まで分かりやすく解説します。

懲戒処分とは何か?企業が知っておくべき基本知識

従業員の問題行動に対処するための「懲戒処分」。その定義から種類、目的まで、企業が押さえておくべき基本的な知識を解説します。正しい知識を身に付けることで、適切な対応が可能になるでしょう。

懲戒処分の定義と目的

懲戒処分とは、企業が従業員の就業規則違反や職務怠慢などに対して、制裁的に科す不利益な処分のことです。

労働契約法第15条では以下のように定められています。

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」

懲戒処分は企業と従業員双方にとって健全な職場環境を維持するための重要な手段なのです。

出典:e-Gov法令検索「労働契約法 第十五条」

懲戒処分の種類

懲戒処分には、軽いものから重いものまで、一般的に以下のような種類があります。

  • 訓戒・戒告・譴責(けんせき):将来を戒める文書による処分。譴責は始末書提出を伴うことが多く、昇給・賞与に影響します。
  • 減給:制裁として賃金から一定額を差し引く処分。
  • 出勤停止:一定期間(通常7〜10日程度)の就労を禁止する処分。期間中の賃金は通常支給されません。
  • 降格・降職:役職や等級を引き下げる処分。役職手当の減額や基本給の引き下げを伴います。
  • 諭旨解雇:懲戒解雇相当でも本人に反省がある場合、説諭して退職を勧告する処分。退職金の一部支給が多いです。
  • 懲戒解雇:最も重い処分で即時解雇となり、退職金不支給を伴うことが多いです。再就職にも大きな影響があります。

これらの処分を実施するには、就業規則に種類と事由を明確に規定する必要があります。処分を誤ると訴訟リスクが生じるため、厳格な審査が必要です。

懲戒処分の対象となる行為と判断基準

どのような行為が懲戒処分の対象となるのか、また処分の重さをどう判断すべきか。企業側が公平かつ適切な判断を下すための基準を解説します。

懲戒処分の対象となる主な行為

懲戒処分の対象となる代表的な行為には、以下のようなものがあります。

  • 勤怠に関する問題:無断欠勤、遅刻・早退の常習化、タイムカードの不正打刻など
  • 業務命令違反:上司の正当な指示に従わない、業務上の指示を無視するなど
  • 職場秩序を乱す行為:暴言・暴力、ハラスメント行為、同僚への威圧的な態度など
  • 不正行為:横領、経費の不正使用、会社資産の私的流用など
  • 情報漏洩・守秘義務違反:顧客情報や企業秘密の漏洩、SNSでの機密情報の公開など
  • 私生活上の非行:飲酒運転などの刑法犯、会社の信用を著しく損なう行為など

ただし、これらの行為が全て自動的に懲戒処分の対象になるわけではありません。行為の内容や状況、影響の大きさなどを総合的に判断する必要があります。

処分の重さを決定する判断基準

懲戒処分の重さを決定する際には、以下の三つの基準を満たす必要があります。

  • 就業規則の規定:就業規則に懲戒事由と処分の種類が明記されていること。どんな行為にどの処分が該当するか具体的に定めておく必要があります。
  • 懲戒事由該当性:従業員の行為が就業規則の懲戒事由に該当すること。客観的な証拠に基づき、非違行為であることを明確にしなければなりません。
  • 社会的相当性:処分の内容が行為の性質や情状に照らして妥当であること。過去の類似ケースとの均衡や適正な手続きの確保も重要です。

これらの基準を満たさない処分は労働契約法第15条により無効とされる可能性があります。一貫性のある対応を心がけ、同様の行為には同程度の処分を行う「平等取扱いの原則」にも注意しましょう。

出典:e-Gov法令検索「労働契約法 第十五条」

懲戒処分の手続きと実務上の注意点

懲戒処分を実施する際には、適切な手続きを踏むことが非常に重要です。手続きに不備があると、後に処分が無効となるリスクがあります。ここでは具体的な流れと注意点を説明します。

懲戒処分を実施する流れ

懲戒処分を実施する際には、以下の手順で進めることが重要です。

まず「事実確認と証拠収集」から始めます。問題行動の詳細を客観的に調査し、関係者からの証言や記録などの証拠を収集します。できれば複数の証拠を集め、事実を裏付けましょう。

次に「弁明の機会の付与」が必要です。本人に事実関係を確認し、弁明する機会を与えます。この段階で事情聴取書や始末書を提出してもらうとよいでしょう。この手続きを欠くと、後に処分が無効となるリスクがあります。

その後「懲戒委員会などでの検討」を行います。収集した証拠や弁明内容を基に、過去の類似事例も参考にしながら処分内容を検討します。

最後に「処分の決定と通知」を行います。処分内容、理由、根拠となる就業規則の条項を明記した書面で通知します。

懲戒処分通知書の作成と交付方法

懲戒処分を行う際は、必ず書面による通知を行いましょう。懲戒処分通知書には以下の内容を記載します。

  • 処分対象者の氏名、所属
  • 社名、代表者名
  • 処分の種類(譴責、減給、出勤停止、懲戒解雇など)
  • 処分の理由と事実関係
  • 根拠となる就業規則の条項
  • 処分の効力発生日
  • 処分に関する問い合わせ先

また確実に交付したことをお互いが確認することが重要です。原則は手渡しで行い、受領書や受領印をもらいましょう。受け取りを拒否された場合は、その事実を記録しておきます。

通知書は単なる形式ではなく、処分内容や理由を明確に伝え、理解してもらうためのものです。丁寧に作成し、適切に交付することが重要です。

懲戒処分後のフォローアップと再発防止策

懲戒処分はゴールではなく、職場環境の改善と問題の再発防止が本来の目的です。処分後のフォローも重要なステップとなります。

まず「本人へのフォロー」として、特に軽い処分の場合は改善に向けた具体的なアドバイスを行いましょう。定期的な面談で状況確認し、改善が見られた場合は適切に評価することも大切です。

「職場全体への対応」としては、必要に応じてケースを匿名化した上で共有し、注意喚起を行います。類似問題の発生防止のため、研修や啓発活動を実施しましょう。

また「記録の保管」も重要です。処分に関する一連の記録を適切に保管し、将来的な類似事案の判断材料とします。ただし個人情報保護に配慮し、アクセス制限を設けるなどの対策も必要です。

懲戒処分を適正に行うために

懲戒処分は感情的に行うのではなく、冷静かつ客観的な判断に基づいて行うことが何よりも重要です。適切な手続きと公正な判断により、職場の秩序維持と健全な労使関係の構築につなげましょう。

組織内のコミュニケーションを活性化し、問題が深刻化する前に早期発見・早期対応できる環境づくりも大切です。

TUNAG(ツナグ)のような組織改善クラウドサービスを活用すれば、日常的な従業員とのコミュニケーションが円滑になり、小さな問題の段階で対応できるようになるでしょう。それが結果的に、懲戒処分に至るケースの減少にもつながります。

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著者情報

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