外食産業が未来に向けてできること。人材定着に繋げる「カフェ・カンパニー」の価値観とは

■プロフィール 田口 弦矢(たぐち げんや) 成蹊大学法学部法律学科卒、2001年株式会社インテリジェンス入社。キャリアコンサルタント・人事部を経て、2003年株式会社サイバーエージェント入社。人事本部にて、人事、総務、情報システム部門責任者及び、株式会社サイバーエージェントウィルの代表取締役に就任。 2009年より株式会社ウエディングパークに出向、営業副本部長、販売促進・業務推進本部長、人事責任者に従事。2013年株式会社SOOL執行役員を経て独立、ワークディー株式会社を設立、経営顧問を行いながら、知るカフェ(エンリッション)常務取締役COO、株式会社オークファン 執行役員経営 管理副本部長、株式会社CRAZYにてManaging Director新規事業担当を歴任し、現在、HRtechのシングラー株式会社 執行役員CPOおよび現職。昔から続く企業から新しい会社まで、様々な会社の戦略経営人事の顧問を行う。
「会社をどうしたいのか?」は、経営者が考えるべきこと
有名企業の取り組みを取り入れるだけではうまくいかない。

風土、組織づくりは、誰の役割か?
成果を上げるため、組織づくりを一番考えているのは「現場」
森山:「人事」というと、採用や労務など、オペレーション型の業務を担う方が多いように思います。一方、組織を作ったり、課題に対して改善の手を打ったりする専門の方が人事部門にいることはなかなか少ないと思うのですが、そのあたりはどう思われますか? 田口:おっしゃるとおり、基本的にそのようなミッションを持った専任の方はいないことがほとんどです。接してきた範囲ですと、人事責任者は労務側の人が多いですよね。給与計算ですとか入社や退職などの雇用の労務手続き、給与の計算とか。このような業務はどうしても「守り」寄りになりますので、「組織をどうするか」などのクリエイティブな仕事を求めるのは、求められるスキルや特性、得意ジャンルが違うので難しいのではないかと思います。 一方、経営者や現場の部長職の方、役員の方は、現場のみなさんが成果を出すために「どうすればよいのか」「どう教育したらいいのか」ということを誰よりも考えているんですよ。ただ、そういった組織・会社づくりのミッションを会社としてその立場側の人がすべてを任されることはあまりなく、その業務を誰がどう進めるのかについては人事の仕事だろうとふわっとしてしまっていることが多いのではないかと思いますね。ですので、結果、何も変わらない。「人事部」にこだわらなくてもいい。現場から施策をまわして、全社に広げていく
森山:そこから、「攻める人事」に変化するにはどうしたらいいのでしょうか? 田口:「人」に関することは、経営戦略の一つであることは間違いありません。現場側からスタートした取り組みを全社に広めていったり、経営戦略室などを設け、「社員の成果を上げるために人事制度を変えていきましょう」という動きからまずは進めていくのが良いと思います。 過去、顧問をした中でも、そういったミッションを進めていく“人”を「人事部門」に配置することはあっても、「人事部」に対してそれをやるべきだ、と言ったことは無いですね。 森山:まずは現場から取り組みましょうというその提案は、お客様にスムーズに受け入れられるのでしょうか? 田口:経営者は、「人事には言ってるんだけど、やってくれないんですよね」って言うことが多いです。組織や人のことを“考えていない”ということはないんです。ですので、それは「人事の仕事だけではなく、むしろ現場の仕事でもあるんですよ」と伝えています。「人事には言ってるんだけど…」というところが間違っているのかもしれません。 組織や人を変え、改善していくということは、結論、「現場の数字が上がる」ことにつながるんです。現場の営業部を見る役員の方などはそれが分かっているはずなので、現場の人たちと「こういうことをやれば現場の成果が出て、より生産性が上がりますよ」と巻き込む必要があると思います。 人事や経理の方は、専門性が高く、最小限の人員で高い生産性を保って業務を進めていく人たちだと思うんですよね。日々の仕事の中で仕組みを変え、環境を変えることで爆発的に成果が上がる……という仕事とはまた少し違うじゃないですか。 技術の部門でも営業部門でも企画部門でもいいので、まずは現場の人たちに魔法をかけないと組織と人は急には変わりませんし、成果も上がりません。まずは現場で、手動でもいいので取り組みを始め、うまくいけばその運用や全社への展開を人事部門で引き取るスタイルならうまくいきやすいと思います。 人事主導で現場に協力してもらうスタイルやケーススタディを作ることはとても難易度が高いプロマネの業務なんです。現場主導で、運用のヘルプに人事を巻き込んで行う方ががスムーズに推進します。人と組織づくりを考える「専任の担当」の役割
経営会議の話題を、9割「人と組織の話」に変えることができる

「選ばれる会社」になるために、働く人に対してメッセージを発することが求められる
森山:今はどのような役割を求められていて、何が大事だと考えていますか? 田口:「カフェのある風景をつくる」という会社の企業理念に対して「ここで働くヒトはどうあるべきか」というメッセージと具体的な事例を生み出して、考えや行動を常に発信・共有を全社にし続ければならないと思っています。 代表の楠本の本を何度も読み返して、楠本が考えていること、世界中の旅で得たこと、気づいたこと、そういったものから生まれている思考やメッセージをひたすら頭の中に入れ、「カフェ・カンパニーは社員の挑戦を支援する会社であるべきだ」と考えるようになりました。「人生の風景をつくる」支援ということでしょうか。一人ひとりの人生を応援できる会社でありたいですね。 森山:今の時代にも求められていることかもしれませんね。 田口:これからの時代は、ヒトがそれぞれやりたいことや夢に対して、所属や関わる会社が1つではなく、2、3つと出てくるかもしれませんよね。であれば、ヒトを応援できる会社でないとそもそも働き先として選ばれなくなっていきます。 ヒトを支援し、自分のやりたいことを実現しながら、複数の会社に関わり、シナジーが生まれ、結果、ヒトも会社も成長につながる。そういった会社がこれから求められるのではないかと思います。ヒトの可能性は無限であると信じること
森山:人生の風景をつくる。という言葉、素晴らしいですね。 田口:私は、人事の仕事に対するポリシーがあります。常に、「ヒトの可能性は、今この時点から先は無限に広がっている」と信じているんです。ただ、本人の思考の中だけですと、視野が狭くなってしまったり、選択肢が無い中で悩んでしまったりします。そこを企業が応援することで、可能性や選択肢を増やしてあげられれば、会社の中でも居場所、活躍できる場所をどこかに作ることができると思うんですよね。 森山:多くの企業は従業員に対して「こうあるべき」という姿を求める傾向がありますが、そこに合っていなくても、活躍できる場所があり、ヒトには可能性があるということなんですね。 田口:我々の会社だと「スジコ組織」と言っているのですが、組織って、パズル型のようにピースをはめ込んでいくものではなく、一人加われば新しい何かが生まれ、どんどん形が変わるものだと思っています。 そういう意味だと、採用の「募集要項」って好きじゃないんですよね。穴があいたところにピースをはめ込む形なので。「会社のビジョンに共感してくれる方、こんなことをしてみたい方」っていうくらい、ふわっとしていてもいいんじゃないかと。そこに来てくれたヒトに、「あなたならこういう仕事があるけどどうですか?」「こういうことはやってみたいですか?」みたいな話をして、組織づくりをしていきたいですね。今誰もやっていない仕事をお願いすることもあるかもしれません。そのヒトがいるから、できる仕事や業務や領域って無数に会社の中にあると思っています。外食産業における現状の課題とこれから
人手不足という課題に向き合わないと、もう生き残れない

経営と現場のズレが起きないように、コミュニケーションのあり方を常に「未来視点」で考える

経営陣がデータだけを見ていても、実態とズレてしまう
森山:改めて、今回の共同研究に期待すること、やってみたいことはありますか? 田口:TUNAGなどのツールを進める時は、現場のみんなが使いやすくて興味を持てるものでないといけないと思います。経営側が社内のことを知るためや管理するためだけに使うツールではだめですよね。経営側以上に、現場の社員が「おもしろいね」「いいよね」と日常的に使えるかどうかだと思います。 そこにフォーカスした取り組みの使いやすさやアクセスのしやすさ、参加のしやすさと同時に、その取り組みの結果をデータにして公開していきたいと思っています。 現場がそのような良い状態でないのに、データだけ見て経営陣が「ふーん」って見ていても、実態とずれてしまいます。それは私達がやりたいこととは違うんです。ツールをみんなに使ってもらうことよって「会社が理解できて、経営陣や本部と現場の距離が近くなることにより、店舗やチームがすごく良くなってきて、仕事が楽しいんです」とまずは現場が喜んで、結果的に会社として社内活性化につながったねという流れを作り出すことにこだわりたいんですよね。従業員全員が「見たくなる」「集まりたくなる」コンテンツや場をつくること
森山:データを「出す」ことが目的ではないということですよね。TUNAGは実態として何がよくなったかをデータですぐにつかみづらい部分があります。田口さんはどのようにデータを見ていきますか? 田口:全社員が絶対にアクセスしている。ということは必要だと思います。さらに、「アクセスしたくなるコンテンツ」を出すことはまず必要ですね。「何にみんなが反応しているのか」をつかみ、そのデータの中から、社員がシナジーをどう出しているのか、どのような成果につながっているのかを見つけ出し、アクションと連動させて実験をし続けていくこと。こういうことを継続的に、長期的な視点でずっとやらないといけないと思っています。 森山:田口さんがおっしゃるアクセスしたくなるコンテンツとはどのようなものでしょうか? 田口:「社内のイントラネット」というと、社員検索が一番使われていて、あとはワークフローとか申請をイメージするかもしれないのですが、そういうものではなく、「社内で一番見られているウェブサイト」とか、「社内向けのウェブマガジン」「社内向けの番組」というか……。そういう感覚でTUNAGの中で日常や業務以上の楽しみやワクワクが感じられるものを実現していきたいと思っていますね。 〜田口様、お話いただきありがとうございました!〜▼『TUNAG』について 『TUNAG』では、会社として伝えたい理念やメッセージを、「社内制度」という型として表現し、伝えていくことができます。会社様ごとにカスタマイズでき、課題に合ったアクションを継続的に実行できるところに強みがあります。「施策が長続きしない」「定着しない」というお悩みがございましたら、「現在のお取り組み」のご相談を無料で行っておりますので、お問い合わせください。
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