テレワークの課題はコミュニケーション不足、解決策は?

ここ数年で一気に普及したテレワーク。働き方改革やコロナ禍もあり、テレワークを経験した方も多いのではないでしょうか。 しかし、組織としてテレワークに取り組む中でコミュニケーションに課題を感じるケースも多くなっています。 こちらの記事では、そんなテレワークのコミュニケーション課題と解決策をメインに、企業でのテレワーク導入事例についてまとめました。 ⇒お役立ち資料「部署間コミュニケーションの促進事例4社」はこちら

テレワークとは?

テレワークの意味

厚生労働省によると、テレワークの意味は「ICTを活用した場所にとらわれない柔軟な働き方」となっています。 ちなみに、テレワークは英語の「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語です。
参照:テレワークではじめる働き方改革 テレワークの導入・運用ガイドブック - 厚生労働省
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テレワークの課題は「コミュニケーション」

オフィスに出社して勤務する場合と比べて、テレワークではコミュニケーション課題を感じることも多くなっています。 2021年の調査では、東京都の企業のテレワーク導入率は59%。実に6割の企業がテレワークを導入しています。(※1) しかし、テレワーク実施での課題として「労働実態を把握しにくい」「社内コミュニケーションが取りづらい」という回答が目立つ調査(※2)や、在宅勤務の経験者のうち5割を超える人が「コミュニケーションがしにくい」と回答した調査(※3)もあります。 ここでは、テレワークにおけるコミュニケーション面の課題を詳しく見ていきます。
※1 参照:テレワーク導入率調査結果|東京都 ※2 参照:HR総研:テレワークの実態に関するアンケート 結果報告(1) - HR総研 ※3 参照:テレワークでの職場内コミュニケーション 「業務の話」は1日あたり「30分未満(0分含)」6割 「業務以外」は「0分」4割 ────若手ほど「コミュニケーションしにくい」と感じている傾向が | サイボウズチームワーク総研

業務状況や進捗管理についてのコミュニケーションが難しい

部署内・チーム内の業務進捗が分かりづらくなるので、タスクを依頼するタイミングを見計らって業務が遅れたりすることが考えられます。特に、他の部署の情報やメンバーの様子はほとんど分からなくなるので、連携が難しくなります。 また、上司にとっても部下の業務進捗が分かりづらくなり、進捗管理や人事評価を難しく感じるケースが多いです。さらに、オフィスでは部下の様子や話しぶりを感覚的に把握できますが、テレワークでは調子が良さそうなのか、落ち込んでいるのかなどが分かりづらくなり、マネジメントもしづらくなります。

▼関連記事 ・テレワークマネジメントの課題と成功させる3つの方法

雑談しづらい雰囲気でコミュニケーション量が減り、ストレスや孤独、不安を感じてしまう

オフィスで働いているときには、ちょっとした雑談で自然にコミュニケーションをとることができます。しかし、テレワークになったことで人に話しかけることへのハードルが上がり、雑談がしづらくなります。 黙々と業務に取り組むことになりやすいテレワークは、人によってはストレスや孤独、不安を感じることに繋がってしまいます。

▼関連記事 ・在宅勤務によるストレスの原因と3つの解決策

経営陣の考えや想いが現場の社員に伝わりづらい

朝礼や全社集合日などに、経営陣が会社についての考えや社員への想いを伝えている組織も多いかと思います。 テレワーク中はこうしたメッセージを伝えることが難しくなったり、会社の方針が思うように伝わらず不満を感じさせてしまうこともあります。

テレワークでコミュニケーション課題を解決する方法

テレワーク時のさまざまなコミュニケーション課題には、解決策もあります。その内容について見ていきましょう。

コミュニケーションツールを導入する

テレワーク時のコミュニケーションには、双方向かつリアルタイムのやり取りに向いているコミュニケーションツールが効果的です。例えばチャット、社内SNS、社内報ツールなどです。社内SNSや社内報ツールは、経営陣からのトップメッセージの発信にもおすすめです。 ちなみに、メールでのやり取りを基本としている組織も多いかと思いますが、メールはどうしても双方向のやり取りやリアルタイムのやり取りが難しく、またチームや部署を超えたコミュニケーションには繋がりづらいです。 これまでメールが一般的だった組織でも、テレワークを機にコミュニケーションツールを導入してみても良いでしょう。

表情を見てコミュニケーションが取れるWeb会議ツール・ビデオ通話ツールを導入する

オンラインで顔を合わせてリアルタイムでコミュニケーションが取れるWeb会議ツールやビデオ通話ツールは、テレワーク中のコミュニケーションを大いに助けてくれます。 直接話すのには及びませんが、表情を見ながら話せるのでテキストでのやり取りに比べるとかなりコミュニケーションがとりやすくなります。

業務状況を可視化する仕組みやコミュニケーションの機会を作る

業務状況が見えにくいという課題に関しては、意図的に業務状況を可視化する仕組みを作ることが地道ながら有効です。
  • スケジュールやカレンダーのツールを活用し、予定やタスクを見える化する
  • プロジェクト単位でガントチャートを作成・運用する
  • 終礼やチャットなどで、日次で業務内容と進捗を報告する
など、組織に合わせて仕組みを作ったり運用したりしていくことが必要です。

テレワークのメリット・デメリット

テレワークのメリット・デメリットについても、それぞれ整理しておきます。

テレワークのメリット

テレワークは企業や従業員にとって、以下のようなメリットがあります。
  • 生産性向上・モチベーション向上に繋がる
  • 業務プロセスの効率化・コスト削減に繋がる
  • これまでなら離職せざるを得なかった従業員も引き続き働ける
  • 企業ブランディング・人材採用の強化に繋がる
  • 転居や勤務時間でこれまで選択肢になかった企業で働ける
  • 非常時でも事業を継続できる
  • 従業員や企業の内外での連携が強化され、事業の競争力が向上する
今後少子化が進み労働人口が減少していく中で課題となる人材の確保、離職の防止などの点では、テレワークも含めて柔軟な働き方を整備することが効果的だと言えそうです。

テレワークのデメリット

一方、企業や従業員にとってのデメリットは次のようなものがあります。
  • 労働実態の把握や労働時間管理が難しくなり、業務と業務外の線引きがしづらくなったり長時間労働になりやすい
  • これまでの人事評価制度やマネジメント手法で対応できない場合がある
  • コミュニケーション量が減少し、業務やメンタルヘルスに影響する可能性がある
  • 情報漏えいのリスクに対応が必要になる
企業として制度・仕組み・システムを整えることに加えて、従業員の意識改革の施策を行なったり、従業員への説明を丁寧に行なっていくことが重要となります。

▼関連記事 ・リモートワークとは?導入未経験企業が陥りやすい3つのデメリット

テレワークの事例 - 企業での取り組み

実際にテレワークを導入した企業や具体的な取り組みについてご紹介します。組織でテレワークの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

富士通株式会社

富士通株式会社では、約2年間のトライアルを経て、2017年よりテレワーク制度を正式導入しました。国内グループ社員 約8万人はテレワーク勤務が基本だそうです。過去1年間のテレワーク利用者数は約32,000人(2021年3月時点)で、テレワークの実施率は常時80%にも上ります。 また、テレワークの本格導入と併せてフレックス制度の適用範囲拡大を進めて、2020年より国内グループの全社員へ「コアタイムのないフレックス勤務」を適用拡大しているそうです。社員の93%が「コアタイムのないフレックス勤務」を活用しており、テレワークと併せて柔軟な勤務形態とワーク・ライフ・バランスの向上に貢献しています。 労務管理の工夫として、長時間労働となっている場合やPC起動時間と打刻時間に乖離がある場合、上司に速やかに是正指示がいくようになっています。また、コミュニケーションツールを全社で活用したり、上司・部下との定期的な「1on1ミーティング」やチーム会議を実施して、業務の進捗報告やチームメンバーの状態確認を行うことを推奨しています。 環境整備としては、ノートPCとスマートフォンを貸与したり、リモート会議を含めコミュニケーションツールを全社で提供してコミュニケーションの維持・活性化を推進しています。在宅勤務については、月額5千円の在宅勤務環境の整備費用補助も実施しているそうです。 2020年11月の社員へのアンケートでは、新型コロナウイルスの感染拡大前と比較して、生産性を維持または向上したという回答が75%に上っています。生産性向上に関して良くなった点としては「勤務場所・通勤」「勤務形態・制度」「テレワーク環境補助・金銭補助」を挙げる社員が多かったそうです。
参照:令和3年度 テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰 ~輝くテレワーク賞~事例集 - 日本テレワーク協会

第一三共株式会社

第一三共株式会社では、コロナ禍に関わらず、「テレワークが可能な業務に従事するすべての社員」を対象に、日数上限のないテレワーク制度を導入しています。 人事評価についての取り組みとして、2021年度より、テレワークを実施しているかどうかにかかわらず、マネジメント職の業績評価に生産性指標が組み込まれました。マネジメントを生産性を重視したものへ移行しています。 ペーパーレス化も推進しており、経費精算システムの刷新、名刺管理システムや音声議事録アプリの導入、社内資料の電子化や押印廃止を行っています。こういった動きも、テレワークの環境整備に繋がっていそうです。 2020年7月の社員向けアンケートでテレワークのメリットについて質問したところ、テレワーク実施者のうち82%が「通勤時間がなくなる」、74%が「時間が有効に活用できる」、68%が「柔軟な働き方ができる」といったメリットを感じたと回答しています。 具体的なコメントとしては、「会議室の制約がなくなり、必要な打ち合わせが必要なタイミングで実施しやすくなった」、「同僚のスケジュールや業務量を把握しようという意識が高まり、意識的な情報共有や互いの勤務計画の共有が進んだ」、「早朝・深夜のグローバル会議による負担が軽減した」、「通勤がない分、インターバルタイム以上の休息が確保できるようになった」、「今まで気づかなかった非効率な業務プロセスの改善のきっかけになった」、「テレワークという選択肢により働き方の幅が広がりワーク・ライフ・バランスが確保しやすくなった」などが寄せられました。
参照:令和3年度 テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰 ~輝くテレワーク賞~事例集 - 日本テレワーク協会

住友商事株式会社

住友商事株式会社では、2018年にテレワーク制度とびスーパーフレックス制度を導入。原則全社員が対象で、在宅勤務・サテライトオフィス勤務・モバイルワークを利用でき、育児・介護などに限らず理由不問で利用できます。テレワーク実施者は4,000名で、平均的には月4回〜8回(週1〜2回)の利用が多いそうです。 テレワーク導入にあたっては、会長・社長などトップを巻き込んで、経営層がテレワークを体験する様子を社内報で発信するという工夫もあったそうです。またテレワーク導入後は、利用する社員や経営層へのインタビューを継続的に動画で発信しており、理解促進の動きも活発です。 テレワーク導入後に実施したアンケートでは、「個人の生産性向上」、「組織の生産性向上」、「健康増進」、「自己価値向上」、「働きがい向上」、「働きやすさ向上」の6指標に対し、9割以上ポジティブな回答が得られたそうです。特に、「個人の生産性向上」や「健康増進」、「働きやすさ向上」に関する効果は、96%以上が効果を実感しているとのこと。 具体的には、「海外の取引先との電話会議も、一旦帰宅して食事や家事の後でweb参加できるようになった」「訪問前の在宅勤務で通勤ラッシュを回避したり、外出時の隙間時間にサテライトオフィスで時間を有効活用できるようになった」という声があるそうです。 さらに、「『自由な働き方を認められている』=『会社から信頼されている』ということであり、それに応えようとモチベーションが向上した」との声も多いそうで、テレワークが従業員のエンゲージメント向上にも貢献しているようです。
参照:令和元年度 テレワーク先駆者百選 取り組み事例 - 総務省

株式会社ポーラ

株式会社ポーラでは、2018年よりテレワークを導入しています。対象は、百貨店・工場勤務者は除く全社員となっています。 環境整備としては、モバイルPCにSIMカードをセットで支給して、時間や場所を問わず個人の事情や業務状況に合わせて働けるようにしています。また、Web会議システムやチャットツール、ワークフローシステムの導入を行なったそうです。 併せて、フレックス制度におけるコアタイムの縮小や社内テレワーク事例の周知にも取り組んでいます。 労務管理としては、休日・深夜の利用禁止をガイドラインに規定したり、PC利用状況のログを管理することなどで長時間労働を防ぐ工夫をしているそうです。 テレワーク導入後の効果としては、残業時間が全社員平均で対前年1時間41分削減できたこと、モバイルPCの導入によりペーパーレスが促進されたこと、育児、介護等との両立支援につながり、多様な働き方を選択できるようになったこと、業務効率化につながり研修など自己研鑽に割ける時間が増えたことが挙げられています。
参照:令和元年度 テレワーク先駆者百選 取り組み事例 - 総務省

マツダ株式会社

マツダ株式会社では、もともとワークライフバランス充実の施策として2008年より在宅勤務制度を導入しており、育児・介護だけでなく業務効率化の理由でもテレワークを利用できるようになっています。特に2018年7月の西日本豪雨災害では鉄道の不通や道路の寸断により従業員の約25%が通勤困難となり、これがきっかけとなって在宅勤務利用者が拡大したそうです。 長時間労働抑制の観点からは、出退勤管理システムと会社支給PCのログイン/ログアウト履歴とを連動させて労働時間管理を行なっています。 育児・介護をはじめとした個々の事情を抱える社員が在宅勤務などを活用することで、社内にフレキシブルな働き方が徐々に浸透してきており、利用者からも個々の事情による業務への影響を最小限にできるという点が好評だそうです。
参照:令和元年度 テレワーク先駆者百選 取り組み事例 - 総務省

テレワーク導入のポイント

さまざまな企業のテレワークの取り組みを紹介しましたが、テレワークの導入にはいくつかポイントがあるようです。

段階的に導入する

まずはプロジェクトを立ち上げて限定的なメンバーで導入したり、テレワークと相性の良さそうな部署・職種に限定してスタートするのがポイントです。少人数での導入後は必ず検証や意見交換を行い、制度や仕組みを改善しながら適用範囲を拡大していくのが良いでしょう。 ただし、導入のスケジュールや利用状況などの情報は随時オープンにし、従業員に説明を行いながら導入を進めていきましょう。

経営者・管理職が率先して利用する

テレワークに対して、現場では多くの方が「若手は利用しづらい」「ずるいと思われるのではないか」と不安を感じます。「対象者なら誰でもテレワークを利用できる」という考えを社内で浸透させるには、経営者や管理職が利用する姿を意識的に見せていくことが効果的です。 また、対象となりそうなメンバーに声をかけ、活用しても良いという雰囲気づくりを行なっていくことも、地道ですが重要です。

メンバーの利用状況を公開する

経営者や管理職の利用状況を周知するだけでなく、従業員が実際に利用している様子を伝えることも大切です。周りの人が利用していることを知れば、「あの部署の人も活用しているんだ」と思えて、より利用しやすくなります。 社内ポータルサイトやメール等、従業員にアナウンスできる手段を活用し、利用状況をアナウンスしていきましょう。

効果測定の方法を事前に決めておく

テレワークはただ実施するだけでなく、従業員の声を集めてより利用しやすく実態に合った仕組みに改善していくことが重要です。 従業員満足度調査を行う、テレワーク導入前後での残業時間や会議の数を比較するなど、業務効率化が進んだのかを検証できるようにすることが大切です。

働き方改革とテレワーク

政府が推進している働き方改革では、対象分野として「柔軟な働き方がしやすい環境整備」が挙げられ、対応策として以下のように記載されています。
⑦雇用型テレワークのガイドライン刷新と導入支援 ⑧非雇用型テレワークのガイドライン刷新と働き手への支援   参照:働き方改革実行計画(概要)
働き方改革と聞くと「残業時間の削減」などのイメージが強いかもしれませんが、実は働き方改革の本質は働き方の選択肢を増やすことにあります。
「働き方改革」は、働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革です。 参照:厚生労働省 働き方改革特設サイト
これを実現するために、時間や場所にとらわれない働き方であるテレワークが対応策として含まれていると考えられます。

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