有給消化とは?進まない理由と休みやすい職場づくりのポイントを解説
有給休暇を制度として整えていても、実際には「シフトが回らない」「取りづらい空気がある」といった理由で消化が進まないケースは少なくありません。有給消化の基本ルールから、取得が進まない原因や改善に向けたアプローチまでを解説します。
有給消化の基本ルール
有給休暇を取りやすい職場づくりを考えているなら、まず有給消化とは何なのか、有給休暇の基本から整理しておきましょう。
有給消化とは?
有給消化とは、従業員が有給休暇を取得することです。有給休暇は労働者に付与される賃金保証付きの休暇で、心身の回復やワークライフバランス実現を目的としています。
有給休暇の取得には原則、従業員からの申請が必要です。2年で取得の権利は消滅してしまうため、申請しないまま放置している従業員は、せっかく付与された有給休暇を無駄にすることになります。
企業には、従業員の心身の健康やワークライフバランスの維持を考慮し、有給取得を推進する取り組みが求められます。
参考:年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。|厚生労働省
参考:労働基準法 第115条|e-Gov 法令検索
有給休暇の取得条件と付与日数
有給休暇には、取得条件や勤務期間に応じた付与日数のルールが定められています(労働基準法第39条)。取得条件は以下の通りです。
- 雇入れから6カ月継続勤務している
- 対象期間の労働日の8割以上出勤している
いずれの条件も満たすことで、従業員は有給休暇を取得できます。有給休暇は勤続年数により、付与日数が増加します(最大20日)。有給消化できなかった分は翌年への繰越も可能ですが、保有日数は40日が上限です。
現在では、パート・アルバイトなどフルタイムで働いていない従業員にも、所定労働日数に応じた比例付与制度が設けられています。
参考:労働基準法 第39条|e-Gov 法令検索
参考:年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。(表2)|厚生労働省
有給消化の義務化と企業の努力
働き方改革が進むとともに、企業には従業員に有給消化を促進する動きが求められるようになりました。労働基準法の改正や企業ができる工夫など、近年の有給消化についての動向を解説します。
有給消化は義務化されている
2019年の労働基準法改正で、年10日以上付与される対象の従業員に、企業は5日の有給休暇を取得させるよう義務化されました。違反した企業には、30万円以下の罰金刑が科されます。
日本における有給消化率は近年上がってきたものの、過去最高の2023年でも65.3%です。国際比較を見ても高い水準とはいえません。法律による義務化だけでは、十分な有給消化ができる労働者が増えない可能性があります。
参考:年5日の年次有給休暇の確実な取得|厚生労働省
参考:令和6年就労条件総合調査の概況 P.8|厚生労働省
有給消化のために工夫している事業者も
有給消化を促進するため、以下のような制度を取り入れている企業もあります。
- 計画的付与制度:労使協定の締結により、計画的に有給消化の日を割り振る制度
- 半日・時間単位の取得制度:原則として1日単位だった有給消化を、労使協定の締結によって半日や時間単位で可能になる制度(年5日以内)
有給休暇は原則として従業員の希望する日に与えなければなりません。そのため、計画的付与制度の導入には労使協定が必要です。また、取得義務である年5日の有給休暇については、従業員が好きなタイミングで取得できるよう残しておく必要があります。
このように導入のハードルが低いとはいえない制度も、実際に取り入れている企業があります。従業員のワークライフバランスや心身の健康を促進し、エンゲージメントの向上や離職率の低下を目指す意図があると考えられます。
参考:年次有給休暇の計画的付与制度とは | 働き方・休み方改善ポータルサイト
参考:時間単位の年次有給休暇制度とは | 働き方・休み方改善ポータルサイト
有給消化が進まない職場で起きていること
有給消化が義務化されて企業が努力をしていても、実際には有給消化が進まず労働基準監督署の是正勧告が入ってしまう現場も少なくありません。そのような現場では、具体的に何が起きているのでしょうか。
制度上は取れても業務が回らず取得できない
企業が有給消化を促進する制度を導入していても、誰かが休むと業務が回らない状態では有給消化が進みません。
業務の属人化や人手不足などが壁となり、結果的に義務化された5日の有給消化もできず失効するケースもあるでしょう。特に離職率が高く常に人手不足の環境では、有給消化は難しくなります。
取得しづらい環境ができてしまっている
制度があっても有給消化が進まない原因として挙げられるのが、休みにくい職場環境です。「迷惑をかけたくない」「雰囲気的に取りづらい」などの、心理的ハードルが背景にあります。
実際、『令和5年度「仕事と生活の調和」の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査』で有給消化をためらうと答えた人のうち、理由に「周囲に迷惑がかかると感じるから」を挙げた人は44.9%に上りました。
休みたくても休めない状態が続くと、従業員満足度やエンゲージメントの低下を招きます。結果として離職率が上がって人手が不足し、さらに休みにくくなるという悪循環に陥りかねません。
参考:事業主の方へ | 年次有給休暇取得促進特設サイト | 働き方・休み方改善ポータルサイト
有給消化がしやすい職場体質に変えるためのアプローチ
マニュアル整備と業務の見える化で属人化を回避
業務の属人化によって有給消化が進んでいない場合は、誰でも同じように業務をこなせる体制をつくる取り組みが必要です。
業務の属人化を解消するには、業務マニュアルの整備や業務の可視化が効果的です。その業務を担当している人が具体的に何をしているのか・手順を透明化すれば、担当者が有給休暇を取得しても、ほかのメンバーでカバーできます。
ルールを明文化し全員に周知する
有給消化のハードルを下げるには、義務化されていることや導入している有給休暇の制度など、決まりを明文化するのも効果的な取り組みです。
有給休暇の取得ルールを明文化し、全従業員に周知することで、有給消化ができることや取得の手順が浸透します。
企業として「うちの会社にはこのような有給消化の制度があります」と周知することにもなり、有給消化のハードルも下がるでしょう。
心理的安全性の高い職場づくりを進める
有給休暇を取得しやすい職場環境を整えるには、心理的安全性の高い職場づくりが不可欠です。周囲に頼れない・休んだら責められるという不安がある状況では、制度があっても実際に有給消化がしにくい状況になってしまいます。
日頃から社内やチーム内のコミュニケーションを活性化させ、信頼関係の構築に努めましょう。
TUNAGを使って「有給消化がしやすい職場」を実現
属人化の回避やルールの明文化・心理的安全性の確保など、有給消化を促進する取り組みは一朝一夕では進みません。具体的にどのように進めればよいのか、迷う場合も多いでしょう。
解決策の一例として、TUNAGを活用して有給消化を促進できる環境づくりの方法を見てみましょう。
ナレッジ共有を促進する機能で属人化を解消
TUNAGには「日報」「リーダーコラム」「制度一覧」など、ナレッジ共有を促進する機能がそろっています。これらの機能を使えば、職員一人ひとりの担当業務や手順を可視化しやすくなるでしょう。
動画や画像を使った分かりやすいマニュアルを作成・格納できる機能もあり、属人化の解消に役立ちます。TUNAGを活用すれば属人化を解消でき、突発的な有給取得にも対応できる体制が整えられるでしょう。
外部リンク機能で取得ルールを分かりやすく周知
有給消化に関する制度やルールの明文化・周知には、社内ポータルとして使える外部リンク機能が有効です。
有給取得のルールをTUNAGアプリ内に常設できるため、自社の制度や有給申請のフロー・取得ルールをアプリ上でいつでも確認できます。業務用のパソコンを持たない介護業界・建設業界などの従業員も、スマホがあれば簡単に確認が可能です。
リアクション・コメント機能で心理的安全性を育てる
有給消化をしやすい環境づくりには、コミュニケーションの活性化が欠かせません。TUNAGではタイムラインへの投稿に対して、リアクションやコメント機能を使って気軽に返信できます。
文章で返信するのが苦手な従業員でも、リアクションだけならハードルが低いでしょう。コミュニケーションのハードルを下げることで従業員間のつながりが生まれ、信頼関係の構築・心理的安全性の確保が実現します。
また、日常のやり取りが活性化すれば、有給消化に関するちょっとした相談や申請もしやすくなるはずです。
制度と風土の見直しで有給消化の促進を
有給休暇の制度があっても、現場で実際に取得できる環境がなければ、消化率の向上は難しくなります。業務の属人化や取得しづらい雰囲気が壁となり、制度が形骸化してしまうおそれもあります。
有給消化を進めるには、制度を整備するだけでなく、業務が属人化しない工夫や心理的安全性の確保といった取り組みが不可欠です。
TUNAGのようなエンゲージメントツールを活用すれば、業務の共有・ルールの周知・日常的な対話の促進を仕組みとして整えることが可能です。現場の納得感を大切にしながら、有給消化が自然に進む職場づくりを目指しましょう。