飲食店の人手不足の現状は?主な原因と有効な対策を具体的に解説
飲食店の人手不足は、業界全体で深刻な問題とされています。特に正社員の確保が難しい店舗が多く、既存の従業員の負担になっているケースが珍しくありません。飲食店における慢性的な人手不足の主な原因と、有効な対策を押さえておきましょう。
飲食店の人手不足の実態
近年、多くの業界・職種で人手不足に悩む企業が増えており、飲食業界も例外ではありません。まずは、飲食店の人手不足の現状について、詳しく見ていきましょう。
特に正社員不足が深刻な状態
多くの企業が人手不足に悩む中で、とりわけ正社員不足が深刻な状態にあります。帝国データバンクによる景気動向調査(2024年7月)によれば、正社員不足を感じている企業は51.0%で、近年高止まりの状態が続いているようです。
飲食店における正社員の人手不足割合は59.8%で、2023年の66.3%よりは割合が小さくなっているものの、それでも6割近い企業や店舗で正社員が不足している状況です。特に、飲食店はアルバイトやパートタイム労働者に頼る傾向が強く、店舗運営に大きな影響を与えています。
※出典:人手不足に対する企業の動向調査(2024年7月) | TDB景気動向オンライン
飲食業界の有効求人倍率
飲食店の求職者に対する求人数の割合を指す有効求人倍率は、他の業界に比べて高めで、2024年は約2.6~3.0倍で推移しています。全職種の有効求人倍率が1.21~1.25程度なので、数値から見ても人手不足の傾向にあることが分かります。
求人倍率が高いということは、求職者の選択肢が広がる一方で、企業が適切な人材を確保するのが難しいことも意味します。労働市場の競争が激化する中で、多くの飲食店では、求人の質と労働環境の見直しなどが求められている状況です。
コロナ禍の影響も尾を引いている
2020年ごろに世界各地で猛威を振るった新型コロナウイルスは、国内の飲食業界にも大きな打撃を与えました。2023年5月に感染症法上の5類に移行されて以降、徐々に持ち直してきたものの、当時営業制限や休業・時短営業などが相次ぎ、経営が厳しくなった店舗は少なくありません。
それに伴い、従業員の数を減らさざるを得ず、コロナ禍の収束後に求人をかけても、なかなか人材が戻ってこない店舗が多くあります。飲食店の人手不足には、いまだコロナ禍の影響が残っているといえるでしょう。
飲食店の人手不足の主な原因
飲食店における人手不足の背景には、さまざまな要因が絡み合っています。賃金や労働環境の問題、業務負担の大きさなどが影響しており、これらの要素が人材の定着率を低下させています。人手不足の具体的な原因を掘り下げてみましょう。
低賃金で雇用が不安定になりやすい
飲食業界は、他業種に比べて低賃金の傾向があります。多くの飲食店では、人件費を抑えるためにアルバイトやパートを中心に雇用していますが、賃金が低めで、従業員の収入が安定しにくい状況が生まれています。正社員の給与も他業種と比べて低い傾向があり、就業先としての魅力が薄いといわれる原因の一つです。
さらに、シフト制が多いため勤務時間が不規則で、収入の見通しが立てにくい点も、人材が定着しにくい原因といえるでしょう。特に、生活の安定を求める人にとっては不利であり、飲食業界を敬遠する理由となっています。
休暇が取りにくく負担が大きい
飲食店では繁忙期やピークタイムの影響で、従業員が休暇を取りづらい状況に陥りがちです。特に土日や祝日・年末年始など、多くの人が休暇を取る時期は、飲食業界にとって忙しいタイミングであり、従業員は働かざるを得ない状態が生まれやすくなります。
また、人手不足が常態化している店舗では、一人一人の業務負担が増えてしまい、体力的にも精神的にも大きな負担がかかります。加えて、急な欠勤やシフト変更が発生した場合、ほかの従業員がその穴を埋める形となり、長時間労働や連勤につながることも少なくありません。
接客などでストレスがたまりやすい
飲食店では、日常的に顧客と直接コミュニケーションを取る必要があるため、ストレスがたまりやすい環境にあります。理不尽なクレームや過剰な要求に対応する場合もあり、従業員にとって精神的な負担が大きくなりがちです。
さらに、ピークタイムには短時間で多くの顧客に対応しなければならず、迅速かつ正確な対応が求められるプレッシャーも加わります。笑顔や気遣いを求められる業務も、心身の疲労を蓄積させる要因となり、結果的に職場への不満や、モチベーションの低下を引き起こしやすくなります。
仕事の責任が重い
業務の幅広さや責任の重さも、飲食店の人手不足の原因の一つです。正社員や店長クラスの従業員は、接客や調理だけでなく、売上管理やシフトの作成・新人の教育など、運営業務全般を担うため、さまざまな責任を負うケースが多くなります。
また日常的に、アルバイトやパートのフォローやトラブル対応に追われることも、珍しくありません。マネジメント能力が強く求められるため、心身の疲労により体を壊してしまう人もおり、離職率を高める一因となっています。
飲食店の人手不足を解消するには?
飲食店の人手不足を解消するには、以下のポイントを押さえることが重要です。雇用条件や労働環境の改善をはじめ、研修制度の充実や業務効率化に力を入れましょう。採用活動の強化も必要です。
雇用条件や労働環境を改善する
雇用条件や労働環境の改善は、飲食店の人手不足解消の第一歩です。給与の見直しや労働時間の短縮、福利厚生の充実など、従業員が働きやすい環境を整えることが、人材の定着率向上につながります。また、シフトの柔軟性を高めることで、従業員の負担を軽減することも重要です。
同時に有給休暇を取得しやすい体制や健康管理への配慮など、従業員の生活全体をサポートする取り組みも進めることで、従業員にとって魅力的な職場環境になります。
研修制度や評価制度を充実させる
従業員の定着率を高めるには、研修制度や評価制度の充実も効果的です。日々、スキルの向上を感じられる職場ならば、従業員にとってモチベーションのアップややりがいにつながります。
将来のキャリアを明確に考えている人も多いので、自らの努力で目標を実現できる環境ならば、積極的に仕事に取り組むようになるでしょう。また評価制度の充実により、仕事に見合った報酬を提供するのはもちろん、成果に対してインセンティブを提供するのも、従業員のモチベーションアップに寄与します。
従業員の業務効率化を図る
積極的に従業員の業務効率化を進めることで、日々の負担を減らし、少ない人数でも円滑に仕事を進められる体制の構築も必要です。例えば、業務マニュアルの整備により、新人でも問題なく業務をこなせるようにするのは、店舗運営の基本といえるでしょう。
また、多くの店舗は業務効率化に役立つITツールや、さまざまな管理システムを導入しています。予約管理やオーダー管理などの業務をデジタル化することで、従業員の負担を減らし、顧客の利便性も高められます。特に近年、飲食業界ではAIやロボットの導入が進んでおり、注文や会計の自動化も盛んです。積極的に運用することで、従業員の負担を大幅に軽減できるでしょう。
採用活動の強化も必要
人手不足を解消するには、採用活動にも力を入れることが大事です。広告やさまざまな求人媒体を活用しつつ、より多くの求職者にリーチし、応募数を増やすようにしましょう。店舗の魅力や働きやすさなどを、多くの媒体でアピールするのも大切なポイントです。
さらに、SNSや口コミサイトなどを活用して、店舗の雰囲気や従業員の声を発信することで、求職者に親しみやすさを感じてもらうのもよいでしょう。インターンシップやアルバイトから正社員へのステップアップを促進する仕組みをつくることも、安定した人材確保につながります。
飲食店の人手不足解消に役立つツール「TUNAG」
「TUNAG(ツナグ)」は店舗のコミュニケーション活性化から教育の仕組みづくり、業務効率化まで行えるクラウドサービスです。
「離職を未然に防ぎたいが、離職予兆を把握したい」「早期離職が止まらず教育コストが無駄になる」「適切なフォローができず一体感がない」など離職に関する課題は各社によって異なり、一社一社に合わせた取り組みを実施する必要があります。
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◾️関連するお役立ち資料
まずは店舗の現状と課題を把握しよう
飲食店の人手不足は深刻な状況であり、事業の運営そのものに影響しているケースも珍しくありません。人材が定着しづらい要因をよく理解し、適切な対応を取る必要があります。そのためには、まず店舗の現状と課題をきちんと把握するようにしましょう。
労働環境や従業員の働き方を見直すとともに、人事評価制度やキャリア制度の整備も必要です。さらにデジタル技術も積極的に活用し、効率的な業務運営を実現することで、従業員の業務負担が減り、働きやすさが向上するでしょう。必要な対策を見極めた上で、一つ一つしっかりと対応することが重要です。