ナラティブとは?言葉の意味やストーリーとの違い、活用方法などを解説

ビジネスやコミュニケーションの場において、ナラティブの概念が注目されています。単なる物語やストーリーとは異なり、より深い意味と広い応用範囲を持っています。ナラティブの意味やアプローチの手順、マーケティングへの活用方法をみていきましょう。

ナラティブとは?言葉の意味や使い方

ナラティブは語り口や話術といった意味を持つ言葉で、物語と同じ意味で使われることもあります。ただし、単なる物語やストーリーを指すのではなく、人々が経験や出来事をどのように意味づけるかを表した概念です。まずは、ナラティブの語源やストーリーとの違いを解説します。

ナラティブの語源

ナラティブという言葉は、ラテン語の「narrare(語る)」が語源です。中世ヨーロッパの文学や歴史書で広く使われており、もともとは出来事や状況を語る行為そのものを指す言葉でした。

しかし、現代では個人や集団が出来事をどう解釈し、意味づけるかを表す概念として使われています。ナラティブは単なる説明や記録ではなく、人間の価値観や感情を伴う「語り」としての意味を持っているのが特徴です。

ストーリーとの違いは?

ストーリーが出来事の時系列的な展開や構造を重視するのに対し、ナラティブはその出来事の意味に重きを置きます。例えば、ある企業の歴史をストーリーとして語るときは、創業から現在までの出来事を整理し、伝えるのが一般的です。

一方、ナラティブとして企業の歴史を語る場合、一つ一つの出来事が企業の価値観や使命にどう結びついているかに注目し、その背景にある信念や意図を浮き彫りにする形で語られます。その結果、企業の歴史そのものが単なる過去の記録ではなく、現在や未来に向けた意義を持つメッセージとして機能します。

この違いにより、ナラティブは単なる物語以上の影響力を持つようになるわけです。価値観に基づいた物語は、聞き手に共感や信頼を与え、強い印象を残します。

ナラティブが注目される理由

現代社会では、単なる商品やサービスの説明だけではなく、その背景にある物語や価値観が人々の関心を引き付けることが広く知られています。特に、インターネットやSNSの普及により、共感や信頼を生むストーリーが、企業のブランドはもちろん個人の成功にも直結する時代です。

ナラティブは、こうした背景の中で単なる情報の伝達手段を超えて、他者との深いつながりや感情的な絆を築く手法として注目されています。その効果は特にビジネスシーンで顕著であり、消費者や顧客との信頼関係を強化するため、多くの企業がナラティブなメッセージを発信しています。

ナラティブアプローチとは?

ナラティブアプローチは、もともと臨床心理学の分野で誕生した手法です。背景や価値観を交えて対象者に自らの物語を語ってもらうことで、カウンセリングに役立てるアプローチとして知られています。

ナラティブアプローチの手順

対象者が語りの中で自らの能力や価値を肯定し、新たな視点や可能性を発見してもらうのが、ナラティブアプローチです。まずは、対象者が自分の経験や背景を自由に語るところから始まり、その語りをベースとして、新しい視点や解釈を加えながら目標設定を行います。

次に、具体的な行動計画を策定し、実行と振り返りのサイクルにより、徐々に望む成果へと近づけるプロセスです。当事者自身の意識改革が重要なポイントであり、自己理解を深めることで、より現実的で実行可能な目標を設定できるようになります。

ナラティブアプローチでは、語りの中に潜む対象者の可能性や能力を引き出すサポートが必要であり、対象者が自信を持って、新たなステップに踏み出せる環境を整えることが重要です。

ナラティブアプローチが有効な分野

ナラティブアプローチは、従来は心理療法やカウンセリングの分野で使われていましたが、現在は幅広い分野で活用されています。

具体的には、キャリア支援や教育現場、マーケティングの分野など多岐にわたります。キャリア支援では、相談者のキャリアを物語に置き換えて、今後の展望や将来性を探るために活用されます。

教育現場では、生徒はもとより、悩みを抱える保護者や教育者に対して使われることがあります。親子間、教師と生徒間の価値観を浮き彫りにし、相互理解を育くむために用いられます。

マーケティングでは上述の通り、商品や企業のアプローチにために用いられます。

このように、ナラティブ分野は現在ではさまざまな分野で展開されています。

ナラティブアプローチを成功させるコツ

ナラティブアプローチを成功させるには、まず対象者が安心して語れる環境を提供する必要があります。信頼関係を築くため、相手の話に真摯に耳を傾ける姿勢が重要です。また、語られた内容を否定せず、その中に潜む可能性を引き出す視点も欠かせません。

たとえネガティブな内容であっても、それがどのような価値や新たな解釈につながるのか、丁寧に探る必要があります。その上で、対象者と具体的な目標を共有し、進捗を定期的に確認することで成果を最大化を目指すことが重要です。

ナラティブマーケティングのポイント

ナラティブの概念は、マーケティングの分野でも大きな効果を発揮するため、ナラティブマーケティングとして注目する企業が増えています。ナラティブマーケティングでは、以下のポイントを意識しながら、顧客に共感や信頼を生む物語を戦略的に構築し、ブランド価値を高めることが大切です。

ブランドの物語を明確にする

ブランドの物語を明確にすることは、ナラティブマーケティングにおける初めの重要なステップです。ブランドの価値観や使命を中心に据え、顧客が共感できるストーリーを構築する必要があります。ブランドの誕生背景や創業者の想い、課題に対する解決策などを物語に織り込むと効果的です。

どのような問題を解決するためにブランドが生まれたのか、ブランドが目指す理想像は何かといったテーマが含まれると、顧客は単なる商品やサービス以上の意味を見出すでしょう。またナラティブな物語を通じて、顧客にブランドの一部であると感じてもらう仕掛けを作ることも大事です。

ユーザーの調査・分析を徹底する

ユーザーの調査・分析は、ナラティブマーケティングを成功させる基盤となります。ターゲットの顧客層がどのような価値観を持っており、何に共感を覚えるのかを深く理解する必要があります。アンケート調査や各種分析ツールを活用して、顧客のインサイトを掘り下げましょう。

顧客が共感するキーワードやテーマを特定し、ストーリーに反映させます。特に、顧客が抱える課題や感情に寄り添った内容を取り入れることで、ナラティブがより効果的に響くようになるでしょう。ユーザーの分析で得られたインサイトは、全体のマーケティング戦略を最適化する際にも活用できます。

SNSを積極的に活用する

SNSはナラティブを効果的に広め、顧客とのつながりを強化できるツールです。ブランドの物語をSNS上で発信することで、共感や信頼を得やすくなります。ビジュアルコンテンツや動画を使ったストーリーテリングにより、視覚的に訴求力が高められ、顧客の感情に訴えられます。

SNSを活用する際には、双方向のコミュニケーションを重視しましょう。顧客からのコメントやフィードバックに対し、迅速かつ誠実に対応することで、ブランドに対する親近感が生まれます。

さらにSNSの分析機能を使用し、どの投稿が最も多くのエンゲージメントを得ているかを把握することで、より効果的にアプローチの改善が可能です。

ナラティブマーケティングを実践する企業

日本国内では、無印良品を展開する良品計画が、Instagramを活用したナラティブマーケティングで成功を収めています。商品が生まれた背景を丁寧に解説し、具体的な使い方に関しては、顧客の経験やイメージに任せるアプローチを取っているのが特徴です。

顧客は自分なりに発見した商品の使い方について、SNSなどで発信するため、企業が活用方法を発信する以上に効果的なプロモーションとして機能しています。

また、株式会社SUBARUでは、顧客をイメージさせる主人公のストーリーを公開しています。車に関する思い出を振り返るような構成にすることで、視聴者の感情に訴えかけ、深い共感を生むことに成功しました。

単なる車両の性能やスペックの説明にとどまらず、顧客の人生における車の存在意義を訴求する内容にしたことで、継続的な売上アップに貢献しています。

ナラティブを活用して企業価値を高めよう

ナラティブは、カウンセリングの分野のみならず、企業のマーケティングやブランディングにも大きな効果を発揮する手法です。顧客の共感を引き出し、単なる商品やサービス以上の価値を提供できます。 

単に事実を羅列するストーリーではなく、背景や価値観を交えた物語を紡ぐことで、顧客との深いつながりや信頼関係を築くことが可能です。他社の成功事例も参考にしながら、独自のナラティブを構築し、企業価値を高めていきましょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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