ウェルビーイングとは?日本における現状や企業が取り組むメリット

ウェルビーイング経営は、企業にとってさまざまなメリットがあります。これからの時代は、ウェルビーイングを意識した経営を進めることが重要です。ウェルビーイングとは何か、経営に関わる人が知っておきたい基礎知識を解説します。

ウェルビーイングとは

ウェルビーイング(Well-being)は、「Well(良好な)」と「Being(状態)」を組み合わせた言葉です。具体的にどのような意味を持つのか、まずはウェルビーイングの基礎知識を紹介します。

ウェルビーイングの定義

ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的に満たされた状態にあることを指します。心身が健康であるだけでなく、社会的なつながりにおいても満足感を得られていることがポイントです。

ウェルビーイングと意味が似ている言葉に、「ウェルネス」や「ハピネス」があります。いずれも良好な状態であることを指しますが、対象が限定的です。

  • ウェルネス:身体が元気な状態であること
  • ハピネス:精神的に満たされていること

つまり、ウェルビーイングはウェルネスやハピネスを含んだ概念であるといえます。

ウェルビーイングの種類

ウェルビーイングには、主観的ウェルビーイングと客観的ウェルビーイングの2種類があります。それぞれの測定指標の例は以下の通りです。

  • 主観的ウェルビーイング:人生への満足感、生活に対する評価、うれしさや楽しさ
  • 客観的ウェルビーイング:平均寿命、生涯賃金、GDP、失業率、育児休業取得者数

主観的ウェルビーイングは、一人ひとりが個人の感覚や価値観で感じるものを意味します。はたから見ると幸せそうな状態でも、本人に実感がなければ満たされているとはいえません。

一方の客観的ウェルビーイングは、統計データなど客観的な数値基準で測ることが可能です。ウェルビーイングの充実度を国や県で比較する際によく利用されます。

ウェルビーイングが重視される背景

かつては「国民の幸福は経済的な豊かさに比例する」と捉えられており、国別の幸福度の比較に「GDP(国内総生産)」が使われていました。

しかし、経済的な豊かさが社会の豊かさにつながるとは限らないという認識が次第に広がり、平均寿命・教育水準・一人当たりの国民所得を測る「HDI」が1990年に登場しました。HDIは客観的なウェルビーイングの物差しとして注目されるようになったのです。

社会が成熟した現代においては、個人が実感できる豊かさが重視されるようになり、主観的ウェルビーイングが注目を集めています。

主観的ウェルビーイングを測る指標として活用が検討されているのが「GDW(国内総充実)」です。GDPが物質的な豊かさを見るのに対し、GDWでは主観指標に重点を置き実感できる豊かさを測ります。

ウェルビーイングとSDGsの関係

SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-Being)」には、ウェルビーイングが言葉として含まれており、健康や福祉の意味合いで使われています。

そもそもSDGsは、「地球上の誰一人取り残さない」を掲げながら、経済・社会・環境のバランスがとれた社会を目指すものです。地球全体のウェルビーイングを目指すことが、SDGsの達成にもつながるといえます。

SDGsの達成期限は2030年です。その後の国際目標として、持続可能なウェルビーイングの状態を目指す「SWGs(Sustainable Well-being Goals)」を掲げる動きも始まっています。

出典:Goal 3: Good health and well-being - The Global Goals

ウェルビーイングの構成要素

ウェルビーイングの達成度は、いくつかの指標から測ることが可能です。どのようなことがウェルビーイングに影響するのか、代表的な構成要素を見ていきましょう。

ギャラップ社発表の5要素

さまざまな調査を世界規模で実施するギャラップ社は、ウェルビーイングを次の5要素から測定できるとしています。

  • Career Well-Being:総合的なキャリアの幸福度(経歴・育児・趣味など)
  • Social Well-Being:人間関係の幸福度(職場や家庭における人間関係)
  • Financial Well-Being:経済的な幸福度(収入・資産)
  • Physical Well-Being:心身の健康に関する幸福度(やりがい・やる気を含む)
  • Community Well-Being: 地域社会における幸福度(会社・家庭・学校・友人との関係)

※出典:Your Career Well-Being and Your Identity

PERMA理論の5要素

PERMA理論とは、アメリカの心理学者マーティン・セリグマン氏が、ウェルビーイングの実現モデルとして提唱したものです。次の5要素を満たすことでウェルビーイングを高められるとしています。

  • P:Positive Emotion(ポジティブな感情を持つこと)
  • E:Engagement(何かに没頭すること)
  • R:Relationship(人間関係が良好であること)
  • M:Meaning and Purpose(人生に意味や目的を持つこと)
  • A:Achievement(何かを達成すること)

出典:ポジティブ心理学とは|JPPA|日本ポジティブ心理学協会

日本におけるウェルビーイングの現状

日本は戦後復興と高度経済成長期を経て、世界有数の経済大国となりました。近年は経済の停滞が続いているものの、2023年の国別GDPランキングは4位です。

ウェルビーイングの観点から見た場合、日本の現状はどのようになっているのでしょうか。

出典:世界の名目GDP 国別ランキング・推移(IMF) - GLOBAL NOTE

国民の幸福度はG7の中で最下位

国連の持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)が公表する、2024年版の「世界幸福度報告書」によると、世界幸福度ランキングで日本は51位となっています。

G7各国を見ると、カナダの15位が首位、以下英国20位・アメリカ23位・ドイツ24位・フランス27位・イタリア41位です。51位の日本はG7の中で最下位です。

国別GDPランキング1位のアメリカも、日本ほどの差はないものの、世界幸福度ランキングで上位には入っていません。経済成長と実際の幸福度がイコールとは限らないことが分かります。

出典:Happiness of the younger, the older, and those in between | The World Happiness Report

政府によるウェルビーイング拡大の取り組み

政府による2021年の「成長戦略実行計画」では、新たな日常に向けた成長戦略の考え方として、「国民がWell-beingを実感できる社会の実現」を示しています。

また、2021年7月には第1回「Well-beingに関する関係省庁連絡会議」を開催し、ウェルビーイングの取り組みの推進に向けて省庁間の連携を図っています。

内閣府の「満足度・生活の質に関する調査」も、ウェルビーイングに関する取り組みの1つです。国民の生活の満足度を13分野で測定し、政策運営に生かしています。

出典:成長戦略実行計画 P2

出典:Well-beingに関する関係省庁の連携- 内閣府

出典:満足度・生活の質に関する調査 - 内閣府

企業がウェルビーイングに取り組むメリット

世の中における関心の高さや政府による取り組み推進を受け、ウェルビーイングを重視する企業が増えています。ウェルビーイング経営にはどのような効果があるのでしょうか。

売上が向上する

従業員の心身が健康で、自身の生活自体にも満足している状態なら、仕事に対する意欲が高まりやすくなります。結果として業務効率の改善や売上の向上につながるでしょう。

一人ひとりの生産性が上がれば、より少ない人員で事業を回していけるようになるため、経営コストの削減も期待できます。

離職率が低下する

仕事に対する満足度やモチベーションが高い状態は、会社に対する不満が少ない状態だともいえます。離職率が低下し、採用や教育にかかるコストを抑えられるでしょう。

離職する人が少ない状況は企業イメージを高めるため、採用活動でも好影響をもたらします。また、職場の雰囲気が良くなり心理的安全性が高くなると、多様な発言が飛び交いイノベーションの創出にもつながりやすくなるでしょう。

優秀な人材の確保につながる

ウェルビーイング経営に取り組んでいることをアピールすれば、企業価値やブランドの向上につながります。近年の企業には利益だけでなく社会貢献や労働環境整備も求められているためです。

近年の求職者は給与のみを重視するのではなく、ワークライフバランスや多様な働き方が実現できるかどうかも考慮する傾向があります。自分らしい働き方を実現できる企業には、優秀な人材が集まりやすくなるでしょう。

ウェルビーイング向上のために企業ができること

ウェルビーイング経営は、従業員がいきいきと働ける環境の構築を目指す手法です。ウェルビーイング向上のために、企業はどのようなことに取り組めばよいのでしょうか。

労働環境の見直し・改善

ウェルビーイング経営で最初に着手したいのが、労働環境の見直しです。従業員が働きやすい職場になっているか、次のポイントをチェックしてみましょう。

  • 長時間労働や休日出勤が常態化していないか
  • 時間や場所を選ばない働き方ができているか

上記はいずれも、従業員の満足度を高めるための重要な要素です。従業員の心身の健康を維持できるよう、労働環境に問題がある場合は改善に取り組みましょう。

健康増進に向けた取り組み

企業には従業員の健康診断とストレスチェックが義務化されていますが、実施して終わりという企業も多いのではないでしょうか。ウェルビーイング経営においては、健康診断とストレスチェックの結果を受け、しっかりと対策を講じることが大切です。

心身の不調に陥っていながら遠慮して声を挙げられず、最終的に大きなストレスを抱えて離職する人も少なくありません。従業員専用の相談窓口を設置したり、産業医との面談の機会を設けたりするなど、ストレスを抱えている従業員の早期発見にも努めましょう。

社内コミュニケーションの活性化

職場でのウェルビーイングに大きな影響を与えるのが人間関係です。社内コミュニケーションが不足すると、人間関係の悪化につながりやすくなります。

上司・先輩と部下の信頼関係を構築する方法としては、1on1ミーティングやメンター制度の導入がおすすめです。また、サンクスカードや社内イベントもコミュニケーションの活性化に役立ちます。

「TUNAG」は、Web社内報・チャット機能・サンクスカードなどにより、社内コミュニケーションの活性化を図れるプラットフォームです。自社の社内コミュニケーションに課題を感じているなら、TUNAGの導入を検討してみましょう。

ウェルビーイング経営で持続的な成長を図ろう

ウェルビーイングとは、身体的・精神的に健康な状態であるだけでなく、社会的にも満たされている状態にあることです。ウェルビーイング経営は企業にとってさまざまなメリットがあります。

ウェルビーイング向上のために重要なのは、労働環境の改善や健康増進に向けた取り組み、社内コミュニケーションの活性化です。可能な範囲で施策を講じ、従業員がいきいきと働ける職場環境の整備を進めましょう。



著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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