マインドセットとは?従業員を教育する重要性やビジネスでの活用事例
強い組織を作るためには、従業員のマインドセットを変えることが重要です。マインドセット教育のポイントを押さえておけば、今後の人材育成に生かせるでしょう。マインドセットの重要性や種類、改善方法について詳しく解説します。
マインドセットの基礎知識
私たちの思考や行動の根底には、必ず何らかの信念や価値観が存在しています。この思考の枠組みや物事の捉え方のことを「マインドセット」と呼びます。本来は心理学の専門用語として使われていましたが、現代のビジネスシーンでは成功の重要な要素として注目を集めています。
マインドセットとは
マインドセットは、単なる考え方や思考パターンではありません。それは私たちの経験、教育、環境、そして生まれ持った気質が複雑に絡み合って形成される、より深い層の思考基盤です。
幼少期からの家庭環境や学校教育、社会経験を通じて徐々に形作られ、時には意識せずとも私たちの判断や行動に大きな影響を与えています。
このマインドセットは、個人レベルだけでなく組織全体にも存在します。例えば、「イノベーションを重視する企業文化」や「安全性を最優先する組織の価値観」なども、一種のマインドセットと言えます。個人と組織のマインドセットが互いに影響し合い、相乗効果を生み出すことで、より大きな成果につながっていきます。
マインドセットが注目を集める理由
現代のビジネス環境において、マインドセットが注目される理由は、それが人々の行動や意思決定の根本的な原動力となるからです。例えば、同じ困難な状況に直面しても、「これは学びの機会だ」というマインドセットを持つ人と、「これは避けるべき危機だ」というマインドセットを持つ人では、まったく異なる行動を取ることになります。
特に、急速な変化と不確実性が増す現代において、柔軟で成長志向のマインドセットの重要性は高まる一方です。「失敗は成長の糧である」というマインドセットを持つ人は、新しい挑戦に積極的に取り組み、失敗からも多くを学び取ろうとします。一方、固定的なマインドセットに縛られていると、変化を恐れ、既存の方法に固執してしまう傾向があります。
このように、マインドセットは単なる考え方の枠組みを超えて、個人や組織の成長、イノベーション、そして長期的な成功を左右する重要な要素となっています。適切なマインドセットを育み、維持することは、現代のビジネスパーソンにとって不可欠なスキルの一つと言えるでしょう。
マインドセットの種類
マインドセットは成長マインドセットと硬直マインドセットの2種類に分けられます。また、見方を変えると、個人のマインドセットと企業のマインドセットに分けることも可能です。それぞれの特徴を解説します。
個人と企業のマインドセット
個人のマインドセットは、人が持つ考え方の癖や思考パターンのことです。現在までの経験や自分が置かれてきた環境などに影響を受けています。一般的にマインドセットという場合は個人のマインドセットです。
マインドセットは個人だけでなく企業にも存在します。企業が持つ独自の信念や価値観が企業のマインドセットです。
企業のマインドセットは、経営理念・ビジョン、マーケットや顧客の変化などの影響を受けて形成されます。企業を成長させるためには、良いマインドセット、組織風土を醸成することが大切です。
成長マインドセットと硬直マインドセット
成長マインドセットとは、学ぶことや成長することを大事にしているマインドセットのことです。成長マインドセットを持つ人は、積極的な行動を取る傾向があります。
ポジティブな思考が働きやすく逆境にも強い成長マインドセットは、全ての個人や企業が持つべきものといえます。
一方、能力や資質は何をしても変わらないと考えるマインドセットが硬直マインドセットです。硬直マインドセットを持つ人は自らの成長を求めないため、学ぶ姿勢を持とうとしません。
硬直マインドセットを持つと、保守的な現状維持の状態を望みやすくなります。個人や企業が成長を目指すなら、硬直マインドセットから成長マインドセットに変えなければなりません。
企業におけるマインドセット教育の重要性
近年は従業員のマインドセット教育に力を入れる企業が増えています。社内におけるマインドセット教育の重要性を確認しましょう。
従業員に自信が生まれる
従業員が成長マインドセットを獲得すると、自信を持って仕事に臨めるようになります。何事にもチャレンジすれば能力が伸びて成長することを実感できるためです。
自信がつけば気持ちがポジティブになり、目標に向かって努力できます。さらに成功体験を積み重ねていくことで、自信をより強めていけるでしょう。
従業員が努力してスキルアップしたり目標を達成したりすることは、結果として生産性や売上の向上につながるため、企業にとってもメリットがあります。
職場の雰囲気が明るくなる
マインドセットは周囲に伝播しやすい特性があります。マインドセット教育により成長マインドセットを獲得する社員が増えると、組織全体に良いマインドセットが波及していくでしょう。
ポジティブシンキングになる社員が増えれば、社内の雰囲気が良くなり、積極的に意見を出し合える協力的な環境ができます。
ただし、ポジティブシンキングを組織全体に広げるためには、長い時間が必要です。長期的な視点で教育を進めていく必要があります。
従業員がマインドセットを改善するポイント
多くの従業員がマインドセットを改善すれば、より強い組織への変革を図れるでしょう。個人が成長マインドセットを獲得するためのポイントを紹介します。
自分のマインドセットを定期的にチェックする
マインドセットを変えるためには、自分の考え方の癖や思考パターンをこまめに確認することが重要です。自分を客観的に見つめ直すことで、変化のきっかけをつかめる可能性があります。
思考をアウトプットする方法としては、マインドマップを書いてみるのがおすすめです。思考を図式化できるため、頭の中で考えていることを整理したいときに役立つでしょう。
また、マインドセットは変わる可能性があります。自分でも気づかないうちに硬直マインドセットになっていることがあるのです。定期的なチェックにより、マインドセットが変わるのを防ぎやすくなります。
努力で成長できることを信じる
硬直マインドセットを持つ人は、努力しても自分は成長できないと考える傾向があります。成長マインドセットに変えるためには、この考え方を改めなければなりません。
ただし、いきなり大きな目標を設定すると、目標を達成できなかった場合に元のマインドセットに戻ってしまうでしょう。成長マインドセットの獲得には、小さな成功体験を積み重ねることが重要です。
小さな成果を出し続けていれば、努力は無駄ではないことを実感できるようになります。周囲からの評価も集まりやすくなり、マインドセットにも変化が生じてくるでしょう。
結果より過程を重視する
マインドセットを改善するためには、結果以上に過程を大事にすることが重要です。成長マインドセットを持つ人は、結果よりも過程を重視する傾向があります。
一方、硬直マインドセットを持つ人は、とにかく結果にこだわりがちです。結果を出せなければ全てに意味がないと感じてしまい、自分を否定しやすくなります。
目標を達成できなくても、その過程において人は何らかの成長を遂げているものです。成長できた部分を自分で褒めてあげましょう。他人に対しても結果だけでなく、過程も評価することが大切です。
目標を言語化する
目標達成に向けた行動は、マインドセット改善の大きなチャンスです。最初に目標を設定したら、ゴールまでの明確な行動指針を考えます。
目標を言語化すれば、曖昧だった目標を具体的な行動目標に変えることが可能です。目標達成への道筋が明確になるため、より効率的な行動を取れるようになります。
目標の言語化とは、目標やそれに向けた行動を、紙に書いたり声に出したりすることです。あまり意味がないと思われがちですが、人によっては大きな効果があるため、マインドセット教育に取り入れるとよいでしょう。
ビジネスにおけるマインドセットの活用事例
マインドセットはビジネスのさまざまな場面で活用できます。ポイントになるのは、人材が成長マインドセットを持っているかどうかです。
採用面接における活用事例
人事部が採用面接を実施する際は、応募者に成長マインドセットが備わっているか確認しましょう。次のような質問を投げかければ、応募者が持つマインドセットの種類を把握しやすくなります。
- 部活・サークル・仕事などで過去にチャレンジしたこと
- スキルアップや資格取得に向けて現在頑張っていること
- 過去の成功体験と成功までのプロセス
- 行動するときに優先すること
- 物事がうまくいかないときに原因をどこに見るか
例えば、過去の成功体験と成功までのプロセスをすぐに答えられる応募者は、成長マインドセットを持っている可能性が高いと判断することが可能です。
採用側もマインドセットについて理解を深め、成長マインドセットを獲得している人の特徴をしっかりと把握しておきましょう。
目標設定における活用事例
ビジネスシーンで目標設定を行う場合、成長マインドセットを持って業務に臨んでいる人は、より野心的な目標にする傾向があります。
目標が高いほど達成までの行動の難易度も上がりますが、強い成長マインドセットを持っていれば、より精力的な行動指針を設定するのです。
組織やチームの目標を設定する際は、成長マインドセットを獲得している人が中心となって戦略を練ることが重要です。硬直マインドセットを持つ人がメンバーにいたとしても、成長マインドセットを持つ人に引っ張られてマインドセットが改善するケースがあります。
また、不確実性の高い現代においては、目標達成までの過程で方向転換を余儀なくされるケースもあるでしょう。そのような場面でも、成長マインドセットを持って行動できれば、試練や難局を乗り越えやすくなります。
人材育成における活用事例
成長マインドセットは人材育成で獲得を目指すことが可能です。まずは従業員のマインドセットの種類を診断し、硬直マインドセットを持つ人には改善策を講じる必要があります。
マインドセットの改善で重要なポイントは、硬直マインドセットを持つ人に現在のマインドセットを気づかせることです。自分の強みの発見・活用方法を知ってもらえば、成長マインドセットに変容できる可能性を理解してもらいやすくなります。
また、成長マインドセットが持続しない従業員がいる場合、周囲の先輩社員や上司に影響を受けている可能性もあります。本人の考え方が変わってしまうような言動がないか、先輩社員や上司を注意深く観察しましょう。
従業員のマインドセット教育で企業全体の改革を図る
マインドセットは、個人の行動や組織の文化を形作る重要な要素です。特に、能力を成長させることができるという「成長マインドセット」の育成は、企業の持続的な発展に不可欠といえます。
従業員一人ひとりが成長マインドセットを持つことで、失敗を恐れない挑戦精神が育まれ、職場全体の活性化につながります。また、お互いの成長を支え合う文化が醸成され、組織全体の生産性向上にも貢献します。
マインドセット教育を通じた組織改革は、決して簡単な道のりではありませんが、長期的な視点で取り組むことで、必ず企業の競争力強化と持続的な成長をもたらすでしょう。