アルムナイ制度とは?メリットだけでなくデメリットまで詳しく解説

アルムナイ制度、これは近年注目されている採用手法の一つで、何らかの理由で一度退職した人材を再び採用する方法を指します。この制度は「カムバック制度」や「出戻り制度」とも呼ばれています。その最大の特徴は、自社の理念や目標をすでに理解している人材が戻ってくる点にあります。これにより、人材採用の失敗リスクを低減し、即戦力としての活躍を期待することができます。 では、なぜ今「アルムナイ制度」が注目されているのでしょうか。背景には、人材の流動化、働き方の多様化、優秀な人材を巡る競争の激化、労働人口の減少など、多くの社会的要因が影響しています。特に日本では、終身雇用制度の価値観が変わりつつある現代において、新しい採用の形としてアルムナイ採用が注目されています。 そんなアルムナイ制度ですが、メリットだけでなく、デメリットももちろんあります。この記事では、アルムナイ制度のメリット・デメリットについて詳しく解説します。

アルムナイとは?

アルムナイ(alumni)とは、卒業生・同窓生を指す英単語です。企業における離職者やOB・OGを指す言葉として使われています。「アルムナイという言葉を聞いたことがある」という方は、大学の卒業生という意味で使用しているのではないでしょうか?実は「アルムナイ」という言葉は、現在人事戦略の一つとして注目を集めています。

企業の離職者やOB・OGで形成される「アルムナイネットワーク」

アルムナイネットワークとは、企業の離職者やOB・OGで形成されるコミュニティのことをいいます。(大学の同窓生でのコミュニティも当てはまります。)SNSなどでつながったり、交流会を開催したりして情報交換を行っています。 コミュニティは、離職者のみで交流しているものと、現職の担当が交流に関わっているものがあります。企業との雇用関係は無い中、このように離職者との関係を継続しようとする企業は日本ではまだ多くありません。しかし、海外の企業や外資系企業では一般的に行われている制度になります。

アルムナイ制度とは、“出戻り制度”のようなもの

アルムナイ制度とは、一度自社を退職した方を再度社員として迎える制度です。アルムナイという言葉は耳慣れないかもしれませんが、“出戻り社員”という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。 出戻り社員とは、何らかの事情で離職したのち、機会があり再び同じ会社に入社した社員のことを指しますので、アルムナイ制度とほぼ同じ意味となります。 エン・ジャパンが2018年2月に実施した調査によると、一度退職した元社員を再雇用したことがあると答えた企業は、全体の72%と、2年前から5ポイント増加しているとのこと。出戻り社員の採用については一般的になってきているのかもしれません。 参考:出戻り社員(再雇用)について -エン・ジャパン株式会社-
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アルムナイが企業で注目される理由・背景

人材の流動化、優秀な人材確保の困難化

これまでは、入社した企業で長く働くという形が当たり前でした。しかし今は個人の様々な事情によって一度退職したり、転職したりと、流動化が進んでいます。 人材の流動化が進むと、企業はなるべく自社にマッチした人材の採用、さらに今働いている人が辞めないようにする施策、どちらも力をいれなければなりません。そんな中、過去に自社で働いていた人を採用できるということは、ミスマッチを防ぎやすいメリットがあります。 それだけでなく、昔退職してしまった優秀な人材を再度雇用できるのであれば、つながりを持っておくことだけでもメリットがあるといえるでしょう。

働き方の多様化

フリーランスやパラレルキャリアなど、一つの仕事に縛られない働き方も広まり、終身雇用のフルタイム勤務を希望しない方も増えてきました。また、フレックスタイム制やテレワークなど、様々な働き方ができるようになりました。 「育児や介護のためフルタイムで仕事ができなくなり離職した方」が、何らかの形で戦力になるかもしれません。 アルムナイ制度を設け、定期的に情報交換することで、お互いの状況を把握することができるようになります。お互いが必要なタイミングに、うまくマッチングするケースが生まれるかもしれません。 【関連記事】パラレルキャリアの始め方解説! 副業との違い、メリットとデメリットとは 【関連記事】テレワークがもたらすメリットとは? 導入企業事例や、効果を高めるためのポイントを解説

アルムナイ制度のデメリット4つ

アルムナイ制度は、退職した従業員を再雇用するための制度として多くの企業で導入されています。この制度は、多様な人材の獲得や協業の促進などのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。

1. 再雇用に対する後ろめたい気持ちを払拭する工夫が必要

アルムナイ制度を導入すると、退職した従業員が再び同じ企業で働くことになるため、再雇用時に前回の退職の理由や背景に対する後ろめたい気持ちを持つことが考えられます。このような感情は、再雇用後の業務に悪影響を及ぼす可能性があるため、企業側は再雇用時のフォローアップやサポート体制の整備が必要となります。

2. 退職のハードルを下げてしまう可能性がある

アルムナイ制度が存在することで、従業員が一度退職しても再び同じ企業で働くことができるという安心感から、退職のハードルが下がるというデメリットも考えられます。これにより、従業員の離職率が上昇するリスクがあるため、企業側はこの点を考慮してアルムナイ制度の運用を検討する必要があります。

3. 既存社員が不満を持つ可能性がある

アルムナイを再雇用することで、既存の社員が不公平感を感じる可能性があります。特に、アルムナイが昇進や特別な待遇を受ける場合、他の社員との間に緊張を生じさせることがあります。このような状況は、社内の士気やチームワークに悪影響を及ぼす可能性があるため、再雇用されるアルムナイと既存社員とのバランスを慎重に考慮する必要があります。

4. 以前に持っていた経験が現在の募集内容にフィットするとは限らない

アルムナイが以前に持っていたスキルや経験が、再雇用時に企業が求める職種や役割に完全に適合するとは限りません。特に、企業や市場が変化している場合、アルムナイのスキルセットが古くなっている可能性があります。そのため、再雇用にあたっては、アルムナイの現在の能力と企業のニーズとの間にギャップがないかを慎重に評価することが重要です。

アルムナイ制度のメリット6つ

アルムナイ制度のメリットについて解説します。

1. ミスマッチを防ぎながら即戦力人材を採用できる

アルムナイ制度を利用することで、企業は既にその企業文化や業務内容を理解している人材を採用することができます。これにより、新たな採用におけるミスマッチのリスクを大幅に減らすことが可能です。また、過去に同社で働いていた経験があるため、業務に必要なスキルや知識をすでに持っていることが多く、即戦力として迅速に業務を開始することができます。

2. 社内に新しい知識や価値観を取り入れられる

アルムナイとして再採用される人材は、他の企業や業界で新たな経験や知識を積んでいることが多いです。彼らが持ち帰る新しい知識や価値観は、社内のイノベーションを促進し、組織全体の成長に貢献する可能性があります。これにより、企業は変化する市場環境に対応するための新しいアイデアやアプローチを取り入れることができるのです。

3. 採用費や教育費を削減できる

離職者も企業側もお互いをよく知っているため、雇用するための不安材料が少ないのが特徴です。 また、人材紹介会社や求人媒体からの採用ではないため、採用費を削減できるのは大きなメリットです。採用費だけでなく、これまでの経験を活かすことができることから、研修やOJTなどの教育費もおさえられることも大きなメリットです。

4. 必要なタイミングで適切な採用を行うことができる

アルムナイ採用は、離職者がたまたま戻ってくるのを待つ形ではありません。意図的につながりを保ち、定期的な情報交換をする中で採用することができるという点がポイントです。 企業の成長や事業の立ち上げ時のタイミングなど、企業が必要とするタイミングで声をかけたりすることも可能になります。

5. 人材のネットワークを活用できる

アルムナイ本人を再雇用するかどうかに関わらず、関係性を維持することで様々なメリットがあります。
・友人知人の紹介採用(リファラル採用) ・ビジネスにおけるパートナーシップにつながる ・第3者目線で良い企業評価を得られる
アルムナイとの良好な関係性を維持できれば、営業面でもブランディング面でも貴重なネットワークが構築できます。まだ普及している概念ではないからこそ、仕組みを作っていくことにメリットがあるのではないでしょうか。

6. 企業のブランディング向上

自社に悪いイメージを持つ退職者が増えると、企業のイメージダウンにつながります。FacebookなどのSNSが活用されている今、口コミによる企業イメージの毀損は、回復が難しいもの。離職者との友好な関係を築くことによってそのようなリスクを軽減できます。 離職者とも良い関係を築いている会社は、イメージの向上につなります。その結果、採用ブランディングに貢献したり、商品・サービスイメージの向上につながることも期待できます。

アルムナイ制度の運用方法・ポイント

では、実際にどのようにしてアルムナイ制度を取り入れるのでしょうか。まずは企業の採用方針などを明らかにし、従業員とアルムナイに丁寧に情報発信していくことが重要です。以下、具体的な手順をご紹介します。

1.復職するための条件を明確にする

「辞めても復帰できるんだ」と安易に認識されてしまうことはデメリットもあります。“誰でも復職できるというものではない”という条件にするのであれば、雇用するためのスキル・経験などの採用基準を明確に提示できるようにしましょう。

2.受け入れ体制を整える

採用基準などの条件を決めるだけではなく、受け入れる現場側の体制も整える必要があります。「昔いた人が入社する」ということは、その時にいなかった従業員にとっては「どんな人なのだろうか」と不安になることもあります。 受け入れる側の従業員と面談をする場を設けたり、再度雇用する時のフローに現場の従業員を入れるなど、アルムナイと現場の従業員のコミュニケーションがとれる機会を設けましょう。

3.アルムナイとどのように関係性を保つか決める

このような再雇用ができる関係を築くためには、どのようにコミュニケーションをとっていくかを決めなければなりません。 アルムナイとのコミュニケーションの取り方は様々です。個人SNSでゆるくつながるのか、メールで定期的に連絡を取るのか、会員制サービスを利用するのか、アプローチ方法はたくさんあります。最近ではアルムナイに特化したサービスも登場しています。 参考:HACKAZOUK コミュニケーションのとり方も、外部の方には出せない情報などがあるため、どのような情報を発信するのか、明確に基準を決めておくほうが安心です。

4.アルムナイ制度があることを周知する

退職者にはもちろん、社内にアルムナイ制度があることを周知しましょう。退職者には最後の面談時に伝えたり、社内のイントラネットなどに掲載したりして案内しましょう。 離職を考えている従業員はもちろん、そうではない従業員にとっても、「社員を切り捨てるような会社ではないのだ」と安心感を与えることができます。

アルムナイ制度を活用する企業の事例

アクセンチュア

アクセンチュアでは「アクセンチュア・アルムナイ・ネットワークサイト」というアルムナイ専用のサイトがあります。「アルムナイ・プログラム」にアクセスすれば、多数のメンバーとコミュニケーションをとることができます。
"現在40以上の国と地域で200,000名のメンバーが登録しており、年間150以上のイベントが開催されています。対面やオンラインでアクセンチュアの同僚や友人、同窓生とつながることにより、あなたの人脈を世界中へと広げることができます。”
参考:アクセンチュア・アルムナイ・ネットワーク ネットワークメンバーになると、新しい求人情報が入ってくるのはもちろん、各種イベントへの招待、サービスのディスカウント、ビジネスのアイディア共有など、様々な情報の交換をすることが可能です。

P&G

P&GではP&Gを卒業した方のページが用意されています。イベントの案内や、メンバーのプロフィール機能など充実したサイトがあり、現職の役員がメッセージを送ることもあるそうです。 参考:P&GAlumniNETWORK

サイボウズ

サイボウズでは、退職したエンジニアの方が集まるイベントを実施したことがあります。エンジニアの採用は各社の競争が激しく、課題になっている企業が多いのが現状です。このように自社での勤務歴があり、さらに外で経験を積んだエンジニアの再雇用は大きなメリットがあるでしょう。 参考:「Cybozu 辞めたエンジニア Meetup(社外向け)」(過去のイベントページ)

 TUNAGでもアルムナイ制度を運用できます

TUNAGは、社内の制度やあらゆる取り組みを一元管理することが可能なサービスです。例えば、会社からの情報共有(社長メッセージや広報・採用情報など)の投稿、プロフィール機能、チャット機能など、会社とメンバーのエンゲージメントを高めるための様々な社内制度の運用を行うことができます。 また、ツールの提供だけでなく、専門のコンサルティングスタッフが活用面をフルサポートすることも特徴の一つです。 従業員向けとして活用できるツールですが、課題や行いたいことに合わせて、内定者向け、育児休暇中の従業員向けなど、一部のメンバーに限ることもできますので、ご紹介したような“アルムナイ制度”の運用も可能です。 運用の方法は大きく2つに別れます。

1)アルムナイのみで運用する

TUNAGにアクセスできるアカウントを、アルムナイのメンバーのみ限定して運用する方法があります。 イベントの写真をUPしたり、アルムナイがそれぞれビジネスの宣伝をしたり、素敵な知人がいれば紹介したり……と、必要に応じて様々な形でメニュー設計をすることが可能です。 アルムナイが自分のSNSアカウントをあまり他人に共有したくないという場合、TUNAG上で専用のアカウントを作成できるため、参加しやすいメリットがあります。 また、アルムナイメンバーの中に、一部自社のメンバーを交え、在籍メンバーも含めた形で運用することも可能です。 例えば情報交換の一環としてアルムナイとランチをしたり、一緒にサークル活動をしたり、在籍メンバーの様子を公開したりと、ゆるやかな形で繋がることができます。

2)従業員に対して情報発信するために活用する

現職の従業員内での利用として活用する場合は、「アルムナイ制度」というものが自社にあるということをアナウンスするために使うことができます。 様々な社内制度の中にアルムナイ制度も入れ、認知を促したい場合に活用することが可能です。 ご興味がある場合は、お客様の課題に合わせた運用方法をご案内しますので、お気軽にお問い合わせください。 【関連事例】「内定辞退率が30%から5%に」懇親会より効果的な 学生向けのTUNAG活用方法とは

まとめ

アルムナイという耳慣れない単語ですが、今後重要な人材リソースとなることは間違いありません。優秀な人材を確保しておくために、今から色々な手をうつことが必要です。 一方、離職予定者と友好な関係を築くためには、働いている時から従業員と会社とのコミュニケーションが円滑である必要があります。
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