育休復帰の受け入れを組織活性化のきっかけに。支援制度や助成金の活用も

専業主婦の世帯を共働き世帯が上回っている昨今、出産後に仕事復帰する女性が多くなってきました。企業としても、優秀な人材が戻ってきてくれることはウェルカムなこと。仕事と生活のバランスを保ち、今後も活躍してもらうために、「育休復帰」について人事担当が知っておいて欲しいことをご紹介いたします。 ⇒社内ポータル・SNS「TUNAG(ツナグ)」が3分で分かるサービス資料はこちら

育休復帰従業員を迎えるにあたり、人事担当が知っておくべきこと

もとの部署への配置が原則

育休復帰後、どんな業務を任せるか会社としては悩ましいところかと思います。育児介護休業法、第22条、第23条では、「事業主が定めた内容を従業員に周知すること」および「育児休業後の就業が円滑に行われるようにするため、従業員の配置に関して必要な措置を講ずるよう努めること」として、もともといた部署への復帰を義務化しているわけではありません。 しかし、厚労省は、「事業主が講ずべき措置に関する指針」にて、原則として原職に復帰させるよう求めています。
「育児休業後においては、原則として原職又は原職相当職に復帰させることが多く行われているものであることに配慮すること」
また、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の第十条では、「事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」(不利益取扱いの禁止)と定めています。
不利益取扱いとなる行為の例 ・解雇すること ・期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと ・正従業員をパートタイム労働者等の非正規雇用従業員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと ・労働者が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限又は所定労働時間の短縮措置等を適用すること ・減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと ・昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
よって、育休後の異動については、本人の強い意向がない限り行わず、産休前に所属していた部署への復帰が基本となります。 参考: 厚生労働省 育児・介護休業法について

復帰する従業員に伝えておきたい社会保険料や給料のこと

育児休業期間中は社会保険料の支払い(健康保険・厚生年金)が免除されるという制度があります。手続きは会社が代行して行いますので、申出書に記入してもらいましょう。社会保険料免除申請は、育児休業開始日~育休が終了するまでの間に申請する必要がありますので、休業中の従業員と面談をする機会を作りましょう。 育休から復帰した後の働き方は、時短勤務を選ぶ方が多いと思いますが、その場合、これまでより給料が減ることが一般的です。さらに、育休前の給与額を基準に社会保険料が決まるため、手取りがとても少なく感じてしまうことがあります。従業員から問い合わせがあることも踏まえ、回答できるようにしておきましょう。 育児休業等終了時改定という制度を利用すれば、復帰後の給料に合わせた社会保険料に変更することができます。事業主が日本年金機構に提出する必要があるため、復帰後の従業員のため、活用すると喜ばれるのではないでしょうか。

参考:育児休業等終了時報酬月額変更届の提出 -日本年金機構-


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妊娠・出産する従業員を支援する制度や助成金

育休復帰支援プランとは

「育休復帰支援プラン」とは、中小企業が、自社の従業員の円滑な育休の取得及び育休後の職場復帰を支援するために策定するプランです。 従業員の育児休業取得・職場復帰を支援する中小企業向けに、「育休復帰支援プラン」策定マニュアルが策定されています。復帰する従業員が育休取得から復帰するまでの期間を支援するポイントが解説されていますので、ご参考ください。 プランを策定・実施することで、従業員は安心して育休を取得し復職でき、他方、制度利用者の所属する職場では、快く休業に送り出すことができます。また、プランを実行し、職場のマネジメントが改善されることは、職場全体の業務の効率化にもつながります。 ※参考:育休復帰支援プラン策定のご案内 -厚生労働省-

両立支援等助成金の活用

「両立支援等助成金」とは、事業主が、従業員のために育児と仕事の両立を行うための社内制度の導入や、環境づくりを対象者が制度を利用した場合に支給されるものです。 仕事と育児の両立支援する「育児休業等支援コース」などがあり、男性の育児休暇取得の促進や、育児介護などによる離職者の再雇用などをすることで、助成金が給付されます。 詳しくは、厚生労働省のHPで確認できます。 ※参考:平成30年度 両立支援等助成金のご案内

育休復帰前の受け入れの準備

面談等でのコミュニケーション

人事担当が、慌てて復帰する従業員を迎え入れるなんてことがないよう、事前から準備をしておけると良いですね。厚生労働省も休業終了予定の1~2か月前頃に、今後の働き方について本人と話し合うことを推奨しています 形式的な面談は、後々の不満につながり、離職してしまうことも。面談の際にしっかりとコミュニケーションを取ることが大事です。まずは担当者がヒアリングし、そのあとに所属上司が同席で話し合う時間を取ると良いでしょう。
【面談で確認する内容例】 ・本人の環境や状況について(保育園の時間、両親の協力など) ・短時間勤務の取得の有無について ・会社からのサポート体制の説明 ・仕事内容や担当業務に関してのヒアリング ・部署内や組織内の変化について

時短勤務など、社内の仕組みを整える

改正育児・介護休業法では、会社は、原則1日6時間の短時間勤務ができる制度を作り、就業規則に規定するなど制度化された状態にしなければならないと定めています。 また、所定労働時間を超えて労働させてはいけません。詳しくは、以下をご確認ください。
・短時間勤務制度(所定労働時間の短縮措置) 事業主は、3歳に満たない子を養育する従業員について、従業員が希望すれば利用できる、短時間勤務制度を設けなければなりません。 短時間勤務制度は、就業規則に規定されるなど、制度化された状態になっていることが必要であり、運用で行われているだけでは不十分です。 短時間勤務制度は、1日の労働時間を原則として6時間(5時間45分から6時間まで)とする措置を含むものとしなければなりません。 ・所定外労働の制限 3歳に満たない子を養育する従業員が申し出た場合には、事業主は、所定労働時間を超えて労働させてはならない。
その他、勤務時間に関しては、残業の制限、残業時間数の上限設定、深夜労働の制限などが定められています。このような対応を会社が行わず、復帰した従業員が退職に追い込まれてしまうような場合は、労働基準監督署へ相談するケースもあるでしょう。 人事担当が法律を理解し、会社の仕組みを整えること、不足している点があれば随時丁寧に対応していくことが求められます。 厚生労働省では、中小企業が自社の従業員の円滑な育休の取得及び育休後の職場復帰を支援できるよう、「育休復帰支援プラン」策定マニュアルを作成しています。 面談シートもありますので、ぜひ活用してみてください。 ※参考:厚生労働省 育休復帰支援プラン ※参考:育休・介護休業制度 ガイドブック

育休から復帰した従業員が抱える課題、不安とは

「復帰する前に面談しているから大丈夫だろう」と、安心はできません。復帰してからこそ、子育て中の従業員には色々な悩みが出てきます。状況を理解してくれる人がいなければ、せっかく復帰しても離職されてしまいます。 「子育て中の働く女性」が、会社の受け入れ体制が悪いことにより離職すると、企業イメージにも影響します。どのようなことに悩むのか、担当が想定しておけると良いですね。

1)会社や事業の変化についていけない

会社や事業の状況は1年もあれば大きく変化します。復帰後の従業員は、その情報をキャッチアップするのも一苦労です。 以前のような活躍がすぐできるとは限りません。仕事に慣れることができるよう、最初は支援が必要です。育休中の間に会社のできごとや組織の変化などを定期的にお知らせしておくと、ギャップが少なくてすむかもしれません。

2)保育園からの急な呼び出しがある

子どもの熱が、37.5℃を超えると、保育園では預かることができなくなり、呼び出されることがあります。朝は元気だったのに昼寝を終えると熱が上がる……ということも。 復帰後の従業員は、いつ急な呼び出しがかかるかわからない状態だということ、急な呼び出しが続くことで感じるストレスがあることを、想定しておけると良いですね。

3)有給休暇がすぐに無くなる

子どもがインフルエンザやRSウイルスなどの感染症にかかると、数日間は休まなければなりません。また、予防接種や保育面談などで仕事を休まないといけない日があります。あっという間に有休を消化してしまった、という方も多いようです。有給休暇が無くなると、その後は欠勤という形となります。

4)周囲の理解が得られにくい

時短勤務で働いているのに、夕方に会議を入れられたり、帰宅後もメールや電話の対応に追われることがあると、つい頑張ってしまう従業員もいるでしょう。頑張れば頑張るほど周囲が「大丈夫そうだ」と勘違いしてしまい、結果的に追い詰めてしまうことも。 時短勤務をすることや業務内容などは、上司や関係部署を含めしっかり周知し、子育てをしながら働くことがどのような状況なのか、少しでも理解してもらえると良いですね。

5)無理をしがちで、体調やメンタルを崩してしまう

育児、家事、仕事の両立は想像以上にハードです。帰ってからも子供の世話、食事の準備に追われ休む時間がありません。そういった生活から体調やメンタルを崩してしまう方も多いようです。頑張りすぎてないか、時々声をかけてあげると良いでしょう。

復帰した従業員に対して、どのような環境づくりが必要か

結果的に、他の従業員の環境も良くなる取り組みを

時短勤務などの最低限の環境を整えるだけでなく、復帰した従業員が活躍できる職場環境にするには、下記の4点がポイントです。 復帰したものの、両立が難しく退職してしまうことを防ぐために、会社の環境や制度も柔軟に変えていきましょう。結果的に、子育て中の従業員だけでなく、他の従業員にもメリットが生まれます。

1. 定期的な面談など、コミュニケーション頻度を上げる

前述したような悩みを抱えるママが多いため、身体のケアやメンタルのケアが必要です。直属の上司以外に、勤務のことを相談できる窓口を明確にし、少なくとも3ヶ月に1回は面談やカジュアルな1on1を行うようにしましょう。

2.テレワークなど、柔軟な働き方ができる制度を導入

一部の業務や会議を自宅でできたり、事情によっては自宅勤務を認める環境があると良いでしょう。会社に出勤しなくても業務ができることで、子育て中の従業員が必要以上に後ろめたくなることも少なくなるでしょう。ただし、子育て中であることには変わりませんので、子どもが病気であったり、育児の時間であったりする時に配慮せず連絡を続けたり、業務を強制したりしないようにしましょう。

3.無駄な会議や作業を省く

時短勤務で働く従業員は何よりも効率化が重要です。会議や単純作業はなるべく省略し、短い時間でパフォーマンスがあげれる環境を整備していきましょう。ITツールの導入も業務効率化に役立ちます。

4.社内のコミュニケーション活性化

時短勤務で働く従業員は、時間内に業務を終わらせるため、周りの従業員とのコミュニケーション不足になりがちです。直属の上司だけでなく、同じチームのメンバー、他部署との関わり合いの機会も意識的に作れると良いでしょう。 また、若い女性従業員は、子育て中の従業員の働き方を見て、将来のキャリアの参考にしていますので、子育て中の女性従業員と意識的に接点を設けてみてはいかがでしょうか。

まとめ

復帰前も復帰後も、育児休暇をとった従業員との面談などのコミュニケーションが重要。復帰する従業員の置かれている環境をしっかりと認識し、スムーズに業務にとりかかれるように環境を整えましょう。 時短勤務などで効率よく働ける環境を整備するということは、社内の理解を促進し、会社全体を変えていくことにもつながります。子育てしながら働く従業員は今後も増えてくるはずですので、長期的な視点で働きがいのある会社作りに取り組んでいきましょう。
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