男性も育児休業をとることが可能
そもそも育児休業とは
育児休業とは、労働者が原則として1歳に満たない子を養育するために取得する休業のことを言い、育児休業を取得できる労働者の条件は以下のように定められています。
・日々雇用ではない
・同一の事業主に引き続き1年以上雇用されている
・1週間の所定労働日数が3日以上である
・申出の日から1年以内に雇用期間が終了することがない(※1歳6か月までの育児休業の場合は6か月以内
※有期契約労働者の場合
・同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
・子が1歳6か月に達する日までに労働契約が満了し、更新されないことが明らかでない
育児休業と聞くと女性のための制度のように捉えられがちですが、決して女性だけの権利ではなく、条件を満たせば、男女関係なく誰でも取得することが可能です。
関連記事:
育児・介護休業法 - 2022年・2023年の改正内容をわかりやすく解説! | TUNAG(ツナグ)
参考:
育児・介護休業制度ガイドブック
男性の育児休業期間
子が1歳に達する日までの間で、申し出た期間を育児休業とすることができる
原則として子が出生した日から子が1歳に達する日(誕生日の前日)までの間で労働者が申し出た期間において育児休業が可能です。
子が1歳に達する時点で、労働者本人又は配偶者が育児休業をしており、かつ保育所に入所できない等、休業が必要と認められる場合においては、子が1歳6か月に達する日までの期間、事業主に申し出ることにより育児休業をすることができます。
1歳6か月に達する時点で同様の状況であれば、最長で2歳に達する日までの期間に延長することが可能です。
労働者が希望どおりの日から休業するためには、原則として休業を開始しようとする日の1週間前の日までに申し出ることが必要です。(出産予定日より早く子が出生したときや、配偶者が死亡したとき、配偶者が子と同居しないこととなったときなどの特別な事情がある場合を除きます)
参考:
育児・介護休業法のあらまし
男性の育児休業給付金
条件を満たしていれば男性も受給可能
育児休業給付金は雇用保険制度のひとつで、育児休業終了後に職場復帰することを前提として給付されます。
被保険者が1歳未満の子(条件によっては1歳2か月、1歳6か月、2歳未満)を養育するために育児休業を取得した場合に、休業を開始する前の2年間に賃金支払基礎日数11日以上ある完全月が12か月以上あることや、休業開始前の1か月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないことなど、一定の要件を満たす場合が対象となります。
もちろん女性に限定されたものではなく、男性も条件を満たしていれば受給することが可能です。
男性の場合、育児休業給付金の受給期間は配偶者の出産日当日から、原則、子が1歳となった日の前日まで支給対象となります。ただし、子が1歳になる前に職場復帰した場合は復帰日の前日までが対象期間です。
また、保育所に入所できない等の一定の要件を満たした場合は、最大で2歳となった日の前日まで期間を延長して受給することができます。
1か月当たりの支給額は、原則として休業開始時賃金日額×支給日数の67%(育児休業の開始から6か月経過後は50%)相当額となっています。
厚生労働省は、仮に父と母の両方が半年ずつともに育児休業を取得した場合、最大で1年間、67%の割増給付を受給できるとし、男性の育児休業取得を促しています。
出典:
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h26_6.pdf
男性の育児休業を支援する制度
パパ・ママ育休プラス
両親が協力して育児休業を取得できるよう、政府は様々な制度を特例として認めており、その一つに「パパ・ママ育休プラス」があります。父と母の両方が育児休業を取得する場合に適用可能で、1歳までとされている休業期間が1歳2か月に延長されます。
パパ休暇
もう一つの特例が「パパ休暇」と呼ばれる制度です。
育児休業は原則として1度しか取得できないとされていますが、産後8週間以内に父が育児休業を取得した場合に限っては、合計1年間を超えない範囲で父が2度目の休業を取得できるという仕組みです。
出典:
パパ休暇について
男性でも活用できる制度
また、育児をしながら働きやすい職場づくりを促進するたに、育児・介護休業法では、事業主に対する様々な取り決めや措置が設けられています。
【時間外労働や深夜残業の禁止】
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に対して、一か月24時間、年間150時間を超える時間外労働や、午後10時~午前5時の時間の深夜残業を禁止する
【労働時間の短縮】
3歳に満たない子を養育する労働者に対して、1日の所定労働時間を原則として6時間とする
【子の看護休暇の導入】
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に対して、ケガや病気をした子の看病のために1年に5日間(子が2人以上の場合は10日間)まで休暇の取得を可能とする
両立支援等助成金
子が生まれた男性を支援する事業主に給付される助成金制度
厚生労働省が事業主に対して支給する両立支援等助成金の一つに「出生時両立支援コース」というものがあります。
これは、子が生まれた男性に対して、管理職での育児休業取得を推奨したり、育児休業についての研修を実施したりするなど、男性が育児休業を取得しやすい環境づくりを積極的に行う事業主に対して一定額を支給するというものです。
出典:
両立支援等助成金のご案内
男性の育児休業取得の現状と課題
男性の育休取得推進の背景
男性も女性も均等な雇用機会のもと、同じように活躍できる社会の実現が求められている今日、女性の社会進出のさらなる促進が重要視されています。
これまで女性側に偏りがちだった育児や家事の負担を夫婦で分かち合うことができるように、政府は男性の育児休業取得を支援しています。平成27年6月に閣議決定された「日本再興戦略2015(※1)」では、2020年に男性の育児休業取得率13%という目標が明記されており、国をあげて支援を進めています。
(※1)
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/pdf/besshi01.pdf
男性の育児休業取得率
しかし、男性の育児休業の取得率は女性に比べまだまだ極端に少ないというのが現実です。
厚生労働省が発表した「平成28年度雇用均等基本調査の結果概要(※2)」の統計によると、平成26年10月1日から平成 27 年9月 30 日までの1年間で在職中に出産した女性のうち、育児休業を取得した人の割合が、81.8%だったのに対し、同期間に配偶者が出産した男性のうち、育児休業を取得した人の割合は3.16%という結果でした。
男性の育児休業取得率は近年増加している傾向にあるものの、その割合は政府が掲げる「2020年に13%」という目標値からは程遠いものです。
(※2):
「平成 28 年度雇用均等基本調査」の結果概要
現在の課題
内閣府が行った「平成27年度少子化社会に関する国際意識調査報告書(※3)」によると、「直近の配偶者・パートナーの出産時に、1ヶ月以上の育児休業を取りたかったか」という質問に対し、30.0%の男性は「取りたかった」と回答しています。
(※3)
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/research/h27/zentai-pdf/pdf/s2_4.pdf
ではなぜ実際の取得率とこれ程まで大きな差が出てしまっているのでしょうか。
その主な理由として、以下のことが考えられます。
・収入が減り家計が苦しくなるから
・休業中の自分の仕事を代替してくれる人がいないから
・職場での評価や昇進、配属などで不利な扱いを受けそうだから
・職場での子育て支援の制度が整備されていないから
・職場が育児休業をりにくい雰囲気だから
・職場で男性が育児休業を取得した例が過去にないから
企業が整備すべきこととは
男性の育児休業の取得を今後もっと増やしていくためには、取得しやすい環境を企業側が整えていく必要があります。
1)就業規則の見直し
育児休業は法律で認められた制度であるため、従業員から育児休業を取得したいという申出があれば、企業側はそれを断ることはできません。
育児・介護休業法は頻繁に改正されることも考慮し、常に最新の正しい規定に則った規則を整備しておく必要があります。
2)従業員への周知
男性が育児休業を取得する場合、パパ・ママ育休プラスをはじめとする様々な支援制度があることは上述しましたが、このような制度はまだまだ一般に広く認知されておらず馴染みが薄いように感じます。
企業側が積極的に情報を発信し、男性の育児休業に対する知識を従業員へ広めていく働きかけが、育児休業の取得率の向上への第一歩となるはずです。
厚生労働省のサイトでは企業の担当者向けに、男性の育児休業取得促進のための参考資料が公開されていますので、このような情報を活用してみるとよいでしょう。
出典:
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/2-s-1.pdf
3)従業員への教育・研修
昨今はワーク・ライフ・バランスへの関心が高まり、男性の育児休業についても取得率こそ高くないものの、その認識は高まりつつあります。
しかしながら、一昔前までは女性の社会進出がまだ進んでおらず「育児は女性だけがするものだ」という考え方が当たり前にあったため、男性の育児休業を理解できないと感じる人も少なからずいるはずです。
育児休業を取得しやすい環境作りは、従業員間の理解無くしては成り立ちません。社内教育等を通じて育児休業への理解をより深める取組みも重要です。
男性の育児参加を支援する企業の事例
政府は現在、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、男性の育児休業を支援するための「イクメンプロジェクト(※4)」を立ち上げ推進しています。
このようなプロジェクトの趣旨に賛同することは企業イメージの向上にも繋がります。ここでは積極的に男性の育児参加を支援している企業を紹介します。
(※4)
イクメンプロジェクト趣旨
株式会社レオパレス21
2014年1月に「ワークライフバランス推進室」が社内で設立され、その取り組みのひとつとして「ウェルカムベビー登録制度」が導入されました。
本人もしくは配偶者が妊娠した場合に登録することで、育児休業取得の注意事項が本人および上長に送付され、取得の促進を図るという仕組みです。
2016年10月1日から2017年9月30日までに配偶者が出産した男性のうち、育児休業を開始した(申出中を含む)男性の育児休業取得率は21.43%にのぼり、前年度の2.88%から大幅に改善されました。
参考:
男性育児休業取得率21.4%達成 レオパレス21
ソニー株式会社
男性の育児休業の取得や積極的な育児を促進するための様々な取り組みが実施されており、平成28年度の男性従業員の育児休業取得率は51.1%にも及びました。
「一律20日の育児有給休暇と毎月5万円の育児支援金の支給」といった制度の整備や、ワーク・ライフ・バランス推進のために家族と職場の交流機会を設ける「Family Day」の導入など多様な施策が評価され、イクメン企業アワード2017ではグランプリを受賞しています。
参考:
イクメン企業アワード2017受賞企業の取組事例集
トゥインクルワールド株式会社
若者の建築業離れで人手不足が益々進むと予想される中、働きやすい職場環境をという想いで、男性の育児休業取得の推進や、働きやすい職場づくりの改革をスタートさせました。
20代30代中心の独身・新婚男性従業員に対して、赤ちゃんのおむつ交換や沐浴などの講習を行う「イクメン訓練研修」や、上司へ育児休業の申請の仕方をレクチャーする男性育児休業取得のための指導を社内で実施しています。
参考:
日本初!建設業の会社で男性社員に「イクメン訓練」を実施!
まとめ
いま現在、育児休業を取得する男性はまだまだ少数派です。しかし、従業員一人ひとりが自身の求める働き方を自身の意思で選択することができる環境を、まずは企業側が作っていくことが重要であると考えます。
そういった取り組みや姿勢が結果的に従業員の働く意欲や満足度の向上へと繋がり、他社との差別化が図られることで、優秀な人材を確保でき強い組織作りが出来るのではないでしょうか。
TUNAG(ツナグ)では、従業員のみなさんの働きやすい環境づくりを支援しています!
TUNAG(ツナグ)では、育休復帰を迎える方向けに会社の情報を発信したり、社内の制度や仕組みを分かりやすくお知らせすることができます。
また、復帰後の面談や1on1MTGもTUNAG(ツナグ)を通して行うことができます。男性が育児休業を取得した例を社内にも共有することや、子どもがいる方同士がつながれる仕組みをTUNAG(ツナグ)上で作ることも可能です。