モラールとモチベーションとの違いは?組織の士気を高めるポイントを解説

組織運営において「モラール」と「モチベーション」は重要な概念ですが、違いを正しく理解している人は多くありません。両者の違いを整理し、組織の士気を向上させるポイントを押さえた施策を実行できれば、離職率の低下や生産性の向上が期待できます。

モラールとは?

モラールとは、組織や集団における「士気」や「団結力」といった、集団的な感情や意識を指します。単なる個人のやる気とは異なり、組織全体が共通の目標に向かって一丸となる力や、困難な状況でも支え合いつつ、前進しようとする雰囲気を指す概念です。

組織のモラールが高ければ、メンバー同士の信頼や協力が自然と生まれ、困難な課題にも前向きに取り組む姿勢が生まれやすくなります。

現代の変化が激しいビジネス環境において、モラールの維持と向上は、組織の持続的な成長に欠かせない要素です。なお、モラールを「モラル」と混同してしまう人も少なくありませんが、モラルは道徳や倫理を意味する言葉で、基本的に使用される文脈が異なるので注意しましょう。

モラールとモチベーションとの違い

組織の活力を語る際、よく混同されがちな「モラール」と「モチベーション」ですが、両者には明確な違いがあります。それぞれの特徴を理解することで、より効果的な組織マネジメントが可能になります。主な違いを確認しておきましょう。

主体・対象の違い

モラールの主体は「集団」や「組織」です。複数人が集まる職場やプロジェクトチームといった単位で、共有される感情や雰囲気がモラールを形成します。

例えば、同じ目標に向かって前向きに取り組むチームには高いモラールが見られます。モラールは個人の内面というよりは、組織に広がる空気感や団結力のような性質を持ちます。

一方、モチベーションの主体はあくまでも「個人」です。自分自身の目標達成の欲求や成長意欲、報酬への期待といった、内面的な動機付けがモチベーションを構成します。

モチベーションは一人一人の働き方や姿勢に直結し、外部の影響よりも個人の価値観や意識が大きく関わってきます。

組織に対する影響の違い

モラールは、組織全体のパフォーマンスや雰囲気に影響を与えます。職場の空気が重く互いに不信感があると、全体の協働意識が下がり、業務の進行も滞りがちになるでしょう。目標に対して一体感を持って取り組むのが難しくなり、組織全体の成果にも悪影響が及びます。

一方、モチベーションの低下は、基本的には個人に限った問題です。本人の業務遂行力や積極性に影響しますが、それが周囲に波及しない限り、組織全体に大きな変化をもたらすとは限りません。

ただし、複数の個人が同時にモチベーションを失えば、全体の士気にも波及し、結果的にモラールの低下を招くことがあります。このように、モラールとモチベーションは相互に関連しつつも、影響範囲や本質的な性質が異なる点に注意しましょう。

組織のモラールを高めるメリット

組織のモラールを高めれば、単に組織内の雰囲気が良くなるだけではなく、業績アップや成長にもつながります。モラール向上がもたらすメリットについて、ここで確認しておきましょう。

社員の主体性が高まり生産性が向上する

モラールが高い組織では、社員一人一人が自分の役割に誇りや責任を感じ、主体的に行動するようになります。自発的なアイデアの提案や積極的な問題解決が促進されるため、業務効率や生産性が向上するでしょう。

さらに、チームメンバー同士が互いに助け合い、知識やノウハウを共有する文化が根付きやすく、組織全体のパフォーマンスが底上げされます。こうした好循環は、競争力の強化や市場での競争優位の確立にもつながります。

離職を防ぎ組織の成長に寄与する

モラールが高い職場では、社員が「この組織で働き続けたい」と感じやすくなります。職場に対する愛着や仲間意識が強まることで、離職率の低下が期待できます。

人材の流出が抑えられるため、組織は優秀な社員の経験・ノウハウを蓄積しやすくなり、安定した成長基盤の構築につながるでしょう。組織全体の学習スピードや成熟度が高まり、持続的な成長が見込めます。

逆に、モラールが低ければ、ささいなきっかけで人材が離れる土壌ができてしまい、ノウハウの流出や組織の不安定化を招きかねません。

組織の創造性が増し変化に強くなる

モラールが高い環境では、社員が失敗を恐れず、新しいアイデアに挑戦しやすくなります。心理的安全性が確保されやすく、意見交換が活発になり、組織の創造性が大きく高まるでしょう。固定観念にとらわれず、新たな手法や製品開発に取り組む力が育ちます。

また、環境や社会の変化にも、柔軟に対応できる組織の構築にもつながります。変化をチャンスと捉え、前向きに行動できる組織風土の醸成につながり、競争の激しい市場において、持続的に力を発揮できるようになるでしょう。

組織のモラールを高めるには?

モラールは自然に高まるものではありません。以下のポイントを意識しつつ、明確な方針や環境整備を通じて、組織として継続的に育てる必要があります。

目標・役割を明確にする

組織の目標やメンバーの役割が曖昧だと、組織内の士気はなかなか上がりません。まずは、組織全体のビジョンや目標を明確にし、それぞれのメンバーが自分の役割や期待される成果を、具体的に理解できるようにしましょう。

目標が共有されることで、メンバーは自分の仕事が組織全体にどう貢献しているかを実感でき、主体的な行動につながります。また役割分担が明確であれば、責任感や達成感も高まり、モラールが向上しやすくなります。

情報を積極的に共有する

組織内で情報が十分に共有されていないと、不安や不信感が生まれやすくなります。経営方針や事業状況・プロジェクトの進捗など、必要な情報をタイムリーかつオープンに共有することが重要です。

情報共有が進むことでメンバー同士の信頼関係が深まり、連携や協力がスムーズになります。さらに、現場の声やアイデアを組織のトップや管理者が吸い上げる仕組みをつくることで、全員が組織運営に参画している実感を持てるようになり、モラールの向上につながります。

公平で納得感のある業務分担を図る

業務の分担が偏っていたり不公平感があったりすると、組織の士気は低下しがちになります。一人一人のメンバーのスキルや負担を考慮しながら、納得感のある業務分担を実現することが大切です。

加えて、公正な評価やフィードバックの仕組みを整えることで、努力や成果が正当に認められる環境をつくりましょう。全員が安心して業務に取り組めるようになり、モラールの維持・向上につながります。

働きやすい職場環境をつくる

物理的・心理的に働きやすい環境を整えることも、モラールの向上には欠かせません。企業ならば、快適なオフィス環境や柔軟な働き方の導入、ワークライフバランスの推進など、社員が安心して力を発揮できる場を整えましょう。

また、上司や同僚とのコミュニケーションが活発で、困ったときに相談しやすい雰囲気づくりも大切です。社員一人一人が「自分は大切にされている」と感じられる職場であれば、自然と高いモラールが生まれやすくなります。

社員同士の協力を促してモラールを高める

組織のモラールを高めるには、共通の目標を掲げ、メンバー同士が対話や協力を重ねる中で、集団としての一体感を育むことが大切です。企業の場合は、経営層や管理職が積極的に環境づくりを主導し、職場に良好な空気感が循環するように働きかける必要があります。

さらに、日常的なコミュニケーションの活性化や、感謝の言葉を交わす文化の醸成も効果的です。小さな相互理解の積み重ねがメンバー同士の信頼を生み、変化に強い組織を支える基盤となるでしょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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