アサーティブ・コミュニケーションとは?自己・他者ともに大切にする対話のポイントを解説
アサーティブ・コミュニケーションとは、自分の意見や感情を率直に伝えながらも、相手の立場や気持ちも尊重する対話手法です。対等な立場での意思疎通により、円滑な人間関係を築けます。アサーティブ・コミュニケーションのポイントを理解しておきましょう。
アサーティブ・コミュニケーションとは?
アサーティブ・コミュニケーションとは、自己主張と相手への配慮を両立させる対話のスタイルです。適切な自己表現とともに、相手の意見や感情にも敬意を払うことで、誤解や衝突を減らし、健全な人間関係を築けます。
まずは、アサーティブ・コミュニケーションの概要と、主にビジネスシーンで重視される理由を理解しておきましょう。
自己・他者ともに尊重するコミュニケーション
アサーティブ・コミュニケーションの本質は、自己主張と相手の尊重のバランスにあります。自分の考えや感情を正直に表現しながら、相手の立場や気持ちにも配慮する姿勢が求められます。自己主張が強すぎると攻撃的になり、逆に遠慮しすぎると受け身になりがちなので、注意しなければいけません。
アサーティブな対話では、相手を非難せずに「私はこう考えます」と伝える一方で、相手の意見に寄り添って理解を示したり、考えをサポートしたりするアプローチが必要です。このバランスを保つことで建設的な対話が可能となり、互いの理解を深められます。
アサーティブ・コミュニケーションが重視される理由
現代社会では、多様な価値観や働き方が認められる中で、相手を理解し、自己主張もできるコミュニケーション能力が求められています。とりわけビジネスシーンにおいては、周囲と協調しながら仕事を進める姿勢が必要であり、その重要性はますます高まっています。
アサーティブ・コミュニケーションが得意な人材は、職場においてチームワークの向上に寄与するだけではなく、問題解決や意思決定のスピードの向上にも大きく貢献するでしょう。さらに、パワハラやモラハラの防止といった観点からも、アサーティブ・コミュニケーションのスキルは不可欠です。
アサーティブではないコミュニケーションのタイプ
アサーティブ・コミュニケーションにより、相手と信頼関係を築くには、まず自分の現状における対話の仕方を把握することが大切です。
対話のスタイルにはさまざまな傾向があり、以下のようにアサーティブでない対話をしてしまう人も珍しくありません。アサーティブではない、典型的なコミュニケーションのタイプを知っておきましょう。
攻撃型(アグレッシブ)
攻撃型のコミュニケーションは、自分の意見や権利を常に優先し、相手の気持ちや権利を軽視する傾向があります。場合によっては声をあららげたり、威圧的な態度を取ったりする人も珍しくありません。また相手をことさらに批判・否定しがちな人や、感情的になりやすい人もいます。
こういったコミュニケーションスタイルは、相手が引くことにより、短期的には目的を達成できる可能性もありますが、長期的にはマイナスの面が大きくなります。人間関係を損ないやすく、職場の雰囲気を悪化させる原因にもなるでしょう。
受け身型(パッシブ)
受け身型のコミュニケーションは、相手の意見や要求を優先し、自分の意見や感情を抑制する傾向があります。自己主張を避けて相手に合わせ過ぎることで、自分の本音や必要性が伝わらず、結果として不満やストレスが蓄積されやすくなります。
波風を立てないように受け答えしているものの、相手に誤解を与えるケースも多く、適切な問題解決を阻害しているケースも少なくありません。相手の言いなりになるスタイルであるため、自己否定的な態度が習慣化し、自尊心の低下や周囲からの過度な要求を招きやすくなります。
作為型(パッシブアグレッシブ)
作為型のコミュニケーションは、表面的には協調的でありながら、内心では不満や怒りを抱えている状態です。相手との直接的な対立を避けつつも、遠回しに不満や反対の意思を示すスタイルであり、皮肉や嫌味・無視など間接的な方法で、不満を表現する人もいます。
こういった態度は結局のところ、相手との信頼関係を損なう可能性があり、問題の本質的な解決を困難にします。また組織内での人間関係を複雑化させ、職場の生産性の低下にもつながりかねません。
アサーティブ・コミュニケーションのメリット
アサーティブではないコミュニケーションは、対人関係のストレスや誤解を生みやすく、円滑な対話を妨げる要因となります。一方で、アサーティブ・コミュニケーションを実践すれば、自分の意見を適切に伝えつつ、相手の立場も尊重できるため、健全な人間関係を築きやすくなります。
特にビジネスシーンでは、周囲との対話の明瞭さが増し、コミュニケーションで起こりがちな誤解も起こりにくいのがメリットです。相手との相互理解が深まり、信頼関係の構築に役立ちます。
さらに自分の意見を適切に表現できることで、人間関係におけるストレスの軽減にもつながるでしょう。チームの生産性の向上や、創造的な問題解決も促進できるため、健全な組織文化の形成にも寄与します。
アサーティブ・コミュニケーションに必要なポイント
アサーティブ・コミュニケーションを実践するには、単に意見を伝えるだけではなく、相手との関係を築くための姿勢が求められます。以下のポイントを意識しつつ、対話を重ねることで積極的にスキルアップを目指しましょう。
誠実であること
アサーティブ・コミュニケーションの基盤となるのが誠実さです。相手に対して嘘や隠し事をせず、自分の考えや感情を正直に伝えることが重要です。
しかし、誠実であることは殊更に感情的になったり、思い付いたことを全て口にしたりする態度とは異なります。自分の言葉が相手にどのような影響を与えるかを考慮しながら、建設的な対話を心掛ける必要があります。
率直であること
率直なコミュニケーションとは、自分の考えや感情を明確に表現することです。遠回しな言い方や曖昧な表現を避け、具体的で分かりやすい言葉を選びましょう。
ただし率直であることは、相手への配慮を欠いた発言を意味するわけではありません。相手の立場や感情を考慮しながら、適切な方法とタイミングで意思を伝える必要があります。
また、率直な表現や姿勢を心掛けることで、不要な誤解を防ぐ工夫も必要です。率直さと配慮のバランスを意識することで、互いに納得できるコミュニケーションが可能になります。
対等であること
対等な関係を意識したコミュニケーションも重要です。相手の立場や年齢・役職などにかかわらず、一人の人間として互いを尊重する意識が求められます。たとえ上下関係があっても、相手を見下したり過度に遠慮したりすることなく、建設的な対話を心掛けましょう。
また、相手の意見に耳を傾け、必要に応じて自分の考えを修正する柔軟性も必要です。意見の相違があっても、一方的に自分の主張を押し通すのではなく、相手の視点を理解しようとする姿勢が大切です。互いに尊重し合うことで対話の質が向上し、より良い関係を築けるようになります。
言動に責任を持つこと(自己責任)
自らの言動に対して責任を持つことも、アサーティブ・コミュニケーションの重要な要素です。自分の感情や考えを分かりやすく表現するとともに、行動や態度が相手に与える影響も考慮しましょう。必要に応じて、行動の修正や謝罪をする勇気も必要です。
こういった言動に責任を持つ姿勢は、信頼関係の構築にもつながります。発言や行動の結果を他者や環境のせいにせず、改善すべき点があれば率先して対応しましょう。結果的に、より誠実で建設的な対話を生み出せるようになり、円滑な人間関係の構築につながります。
アサーティブ・コミュニケーションのトレーニング法
アサーティブ・コミュニケーションは、一朝一夕で身に付くものではありません。意識的に練習を重ねることが大切です。さまざまなトレーニング方法が考えられますが、ここでは実践的な手法として広く活用されているDESC法と、アイ・メッセージを知っておきましょう。
DESC法
DESC法は、効果的なアサーティブ・コミュニケーションを実践するための手法です。以下の4つのステップを踏むことで、冷静かつ論理的に自分の意見を伝えられるので、意識して他者との対話を進めてみましょう。
- D (Describe): 状況を客観的に描写する
- E (Express): その状況について自分の感情や考えを表現する
- S (Specify): 具体的な解決策を提案する
- C (Consequence): その解決策によってもたらされる結果を説明する
- ※「C(Choose):相手が提案を受け入れた場合と受け入れなかった場合、それぞれの結果や選択肢を示す」とする説もあります。
この手順に従うことで、感情的になることを避け、建設的に話し合いを進めやすくなります。特に困難な状況や対立が生じた際に効果的です。
アイ・メッセージ
アイ・メッセージは、「私は~」という形で自分の感情や考えを表現する方法です。相手を非難せず、自分の気持ちや考えを主語に据えることで、相手の防衛反応を最小限に抑えながら、効果的にコミュニケーションを図るのに役立ちます。
ただし過度に自己主張をするのではなく、具体的な状況や影響を説明し、建設的な解決策を提案することで、相互理解を深めるのもポイントです。主語の使い方を意識しながら、相手との関係を良好に保ちつつ、自分の意見を適切に伝える練習をしてみましょう。
アサーティブ・コミュニケーションを活用する
アサーティブ・コミュニケーションは、現代社会において特に必要とされるスキルです。自己主張と他者尊重のバランスを取りながら、誠実で率直なコミュニケーションを心掛けることで、より良好な人間関係を築けるようになります。
ただし、自己も他者も尊重しつつ、円滑なコミュニケーションを取るには相応のスキルが必要です。DESC法やアイ・メッセージなどの具体的な手法を意識的に取り入れつつ、対話の練習を重ねましょう。日常の対話の中で自分の伝え方を振り返り、改善していく姿勢が大切です。